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紳士=ジェントルメンの駆け引きが楽しめるガイ・リッチー監督の快作(映画『ジェントルメン』)
2021/05/07
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』、『スナッチ』、『シャーロックホームズ』などのガイ・リッチー監督によるクライムサスペンスが登場。今回の舞台はイギリス・ロンドンの暗黒街。総額500億円に及ぶ大麻ビジネスの利権をめぐって悪党たちが熾烈な駆け引きを繰り広げる。
オスカー俳優マシュー・マコノヒー、『キング・アーサー』などのチャーリー・ハナム、『クレイジー・リッチ!』などのヘンリー・ゴールディング、『ダウントン・アビー』シリーズなどのミシェル・ドッカリー、そしてコリン・ファレル、ヒュー・グラントととにかく豪華キャスト。
あらすじ
イギリス・ロンドンの暗黒街。アメリカからやって来て一代で王国を築き上げたマリファナ王のミッキー(マシュー・マコノヒー)が、総額500億円に相当するといわれる大麻ビジネスの全てを売却し、引退するという情報が駆け巡る。そのうわさを耳にした強欲なユダヤ人大富豪、ゴシップ紙の編集長、私立探偵、チャイニーズマフィア、ロシアンマフィア、下町の不良たちが、巨額の利権をめぐって動き出す。
これぞ、ガイ・リッチーの世界
ガイ・リッチー監督が久しぶりに舞台をイギリスに置き、話の展開も原点回帰した。『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』を彷彿とさせる。ガイ・リッチーはこうでなければ!と見始めて早々ニヤニヤしてしまった。
彼の頭の中には完全に撮りたい絵が出来上がっている。
話自体が面白いのはもちろん、計算され尽くされたカット割、映画ファンが喜ぶテイスト、動画配信にUKラップと今のイギリスの話題も盛り込み作られている。
実は貧窮している貴族やスラム街の若者も巻き込み、様々な世代の男達=ジェントルメンが集まってお互いを監視し合い、だまし合う。裏をかけばまたその裏をかく。大人達は落ち着こうとするのに、若者たちに掻き回され、思った通りに進まないという構図が映画の中には複数ある。ただ大人達も負けてはいない。その展開はガイ・リッチー監督ならではの緩急が程よく効いてラストへ向かえば向かうほど面白くなっていく。
とにかく豪華なキャスト陣
つい最近観た『ビーチ・バム』で放蕩詩人を演じていたマシュー・マコノヒー。その時のぐうたら感はどこにもない。今回演じるのはアメリカからやって来て一代でマリファナ王になった男・ミッキー。金には寛大だがいざ怒ると眠れる狂気を覗かせるあたりは王の風格だ。
チャーリー・ハナムは鍛え上げた筋肉を今回は一切封印して、ミッキーの頼れる片腕・レイを演じる。決してマリファナ王の片腕というような風貌ではなく、いかにもビジネスマンというスタイルなのがいい。性格も結構お堅い性格だがいざとなるととんでもなく大胆で、ミッキーが信頼しているのもわかる気がする。
弟子たちの仕業のせいで騒動に巻き込まれるコーチ役はコリン・ファレル。強いのに全くそんな雰囲気は見せない飄々とした感じがいい(多分怒らせたら一番怖いのはこの男なんじゃないかという得体のしれない怖さがある)。カジュアルな着こなしがよく似合う。
私立探偵・フレッチャーはレイの家に忍び込み、自分の知り得た情報を脚本に仕立て、情報を買ってもらおうと話していく。演じているのは還暦を迎えたヒュー・グラント。ヒュー様が演じてきた今までの紳士的役柄とはかけ離れたゲスな親父。ただそれが妙に似合っている。レイとの絶妙な会話のリズムが楽しい。フレッチャーが狂言まわしのように話が展開していけばいいのだが、この親父、自分で話を創作するため話に尾ひれがついたり、脱線したり、また元に戻ったりするのでレイが突っ込む。フレッチャーはレイを巻き込んで話を進めていく。レイがフレッチャーを邪険に扱いつつもしっかりと話を聞くのには何か魂胆があるのか。フレッチャー視点で進んでいた話が他の人間からの目線で描かれていく後半には面白い展開が待っている。
手に入れるならどんな手でも。ジェントルメンの利権争奪戦の結末はいかに?!
『ジェントルメン』http://www.gentlemen-movie.jp/は5月7日よりTOHOシネマズ日本橋他で全国公開。
東海3県では109シネマズ(名古屋、四日市、明和)イオンシネマ(名古屋茶屋、岡崎、豊田KiTARA、津南、東員)、中川コロナシネマワールド、ミッドランドスクエアシネマ、ミッドランドシネマ名古屋空港、ユナイテッド・シネマ(豊橋18、稲沢、阿久比)、TOHOシネマズ(木曽川、赤池、東浦、津島、岐阜、モレラ岐阜)で公開。
監督・脚本・製作:ガイ・リッチー
撮影監督:アラン・スチュワート 美術デザイン:ジェンマ・ジャクソン
衣装デザイン:マイケル・ウィルキンソン 編集:ジェームズ・ハーバート、ポール・マクリス 音楽:クリストファー・ベンステッド
出演:マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ドッカリー
ジェレミー・ストロング、エディ・マーサン、コリン・ファレル、ヒュー・グラント
【2020年|英・米合作|カラー|スコープサイズ|DCP|5.1ch|113分|字幕翻訳:松崎広幸|原題:THE GENTLEMEN|PG12配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ】
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