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映画『みんな笑え』岐阜CINEX鑑賞&舞台挨拶レポート
チラシがまず印象的だ。
寄席で高座にいる男。
とても気迫が感じられるのだが、誰だ?
私の興味はそこから始まった。
タイトル『みんな笑え』
ビジュアルからするとやっぱり落語の映画なのか?
久しぶりにあらすじも全く読まず
CDのジャケット買いならぬ映画のチラシ買いを
行うことにした。
落語家の二代目として高座に上がる太紋はいつもベストナインを選ぶネタを繰り返し、演芸場の常連からは呆れられている。認知症になっている先代との生活のためにバイトをしながらなんとか暮らす毎日。
そんな太紋の元にベストナインネタを漫才で使いたいとやってきた希子が何かと世話を焼きにやってくるようになる。
自身もまともではない生活をしてきたからか
親との未来を感じたからなのか。
好きだからやめられないからか。
笑いながら泣いている自分がいた。
なんかね、自分もこんなだけど、
大人なんて絶対いえない考え方のままなのに
年だけはくっていくけど
頑張れる何かがあれば生きてていい気がした。
初主演なんて思えない野辺さんの存在感は
役を生きているからなんだろうな。
そして父親役の渡辺哲さん。巧すぎる。
そして漫才で笑わせたい希子役の辻凪子さんのコメディエンヌたる絶妙な間。
マドンナ的存在の片岡礼子さんのかっこよさ(あんな風になりたい。憧れ)。
悲喜こもごもあって、笑いに昇華する。
作品のパワーを受けて、観たあとなんだか爽快感もあった。
岐阜CINEX舞台挨拶レポート
映画『みんな笑え』公開記念舞台挨拶が3月16日岐阜CINEXで開催された。
鈴木太一監督、主演の野辺富三さん、プロデューサーのワダシンスケさんが登壇した。
野辺富三さんは、映画を観る前にそのビジュアルから映画がドキュメンタリーだと思われたり、本当の落語家と間違えられることが多いと述べましたが、それが彼の知名度の少なさゆえで、逆にそれがこの映画の良さだと話した。 野辺さんは蜷川幸雄さんの劇団での舞台俳優としての長いキャリアがあることを明かしました。鈴木太一監督と出会って生まれたこの作品で主演に抜擢された。
野辺富三さん
「見掛けたら『みんな笑え』の野辺富三さんと気楽にお声をかけていただければと思います。ぜひともよろしくお願いいたします」

野辺富三さん
鈴木監督は野辺富三さんをキャスティングした理由として、そのキャラクター性が太紋にふさわしいと感じたことを挙げ、映画制作において自らの表現を大切にしたいと話した。 監督は親子の関係をテーマにしたストーリーや、落語と関連があることを強調し、自身と母親との関係や過去の経験を通じて物語を作ったという。
鈴木太一監督
「大きい作品を撮っている方に比べるとまだ無名な監督なんですけれども、僕らにしかできない、テレビでもできない、映画でしかできない映画を作りたいなと思って。自分の表現というか、僕は48歳にもなって、映画ですごく稼げている人間ではなくて、母親と2人暮らしをしていて、独り身で、映画を作っていない時はぼーっとしているような人間なんですが、そんな人間でも何か作れるものがあるんじゃないかなと。ダメな大人を描くのが落語であるので、僕と富三さんにふさわしいのがこの落語を題材にした映画だと思い、僕らにしかできない映画ができたんではないかなと思っています」

鈴木太一監督
演芸場はセットではなく、実際に芸人達が毎日板に立っている浅草演芸ホールを使用し、会場前の朝数時間で撮影するということを繰り返し、最後にクライマックスの落語「抜け雀」を撮影したという。映画では編集でカットされているものの、撮影では実際に最初から最後まで野辺さんが語っていたことも明かされた。
野辺富三さん
「初日は緊張でセリフが飛んでしまいましたが、撮影の段階を経て、最後の「抜け雀」という古典落語1本やるというところまでたどり着いているので、半ばドキュメンタリーのような感じもありました。頭の中を落語でいっぱいにして、終わったシーンは忘れて、また入れてを繰り返しました。セリフを書かないと覚えられないので、自分でノートに書いて、終わったら✕をつけていきました(笑)」
鈴木太一監督
「2月8日から東京では上映が始まっている映画なんですが、まだまだいろんな全国の劇場で上映していきます。メジャーな映画のようにCMをしていたり、有名な俳優が出ている話ではない、日本映画にしては小さな映画ですが、少しでもとにかく映画館でいろんな人に観てほしいです。落語ファンの方、映画ファンの方、演芸ファンの方に観てほしいと思って作りましたので、心に少しでも残ることがありましたら、ご近所の方や友達、SNSなどに広げてください。より多くの方に広げられたらと思いますので、ご協力いただけたらと思います」
最後は鈴木監督と観客が「みんな笑え!」と叫んで締めくくった。
映画『みんな笑え』は現在全国順次上映中。
上映劇場は公式サイトを参照
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