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映画『光る川』岐阜CINEX公開記念舞台挨拶レポート
映画『光る川』公開記念舞台挨拶が3月23日岐阜CINEXで開催され、金子雅和監督が映画製作について語った。
映画の原作は岐阜出身の作家・松田悠八の小説『長良川スタンドバイミー1950』。16年前に映画化プロジェクトが始まったが、この間様々な困難があったためなかなか映画製作まで実現できずにいたが、映画化の思いが絶えることはなく、金子監督の手に引き継がれ全国公開が実現した。 金子監督は映画のオファーを受けた経緯については以下のように話した。
金子雅和監督
「3年前の2022年の3月、自分の長編第2作目の『リング・ワンダリング』という映画が公開されている時に、「こういうお話があるが、興味がないか」と連絡がありました。観ていただいても伝わったかと思いますが、川であったり山であったり、自然の中で撮影をするというのが自分の今までのすべての作品のスタイルです。川を舞台にした物語なので向いているんじゃないかと思っていただいて、お声がけいただいたようです。長編で原作がある映画製作をやったことがなかったので、どうしようかなと思いましたが、まずは原作を読ませていただきました。岐阜市を流れる長良川やここからすぐそばにある金神社も原作に登場していますけれども、岐阜に来て実際に見てみました。金華山も登りました。同時に原作者の松田悠八さんが、『リング・ワンダリング』を観てくださって、「金子監督でぜひ映画化したい」ということも言ってくださって、それもあってチャレンジしてみたいと思いました」

金子雅和監督
小さい頃から水や川に興味があり、引き付けられるものがある中で19歳の時にそのテーマで撮影をしてから25年という区切りで長良川が舞台の映画製作に声をかけてもらったことは運命的で使命のようにも感じたという金子監督。
映画の舞台となる岐阜県の長良川についてはその美しい景色に感動したが、岐阜市内を流れる長良川や市内の風景は舞台設定の1950年当時の環境を再現するにはCGやセットを製作する必要が出てくるため、原作に忠実に映画化することは難しいと判断。シナリオの変更を提案し、原作者の理解を得た。
金子監督
「長良川の河口から源流、ひるがの高原の方の分水嶺までくまなく回り、同時に長良川本流だけではなく、そこに流れ込む支流も巡りました。すごい印象的だったのは、その支流に入って見ることが出来た、この映画でも出てくる青い淵の水の青さの美しさです。松田さんにご相談したのは、上流に舞台を変えて映画のシナリオを書く形にしてもいいですかと。松田さんが「もう金子さんの世界観で自由に飛躍してください」と言ってくださって。松田さんが全幅の信頼を私に持ってくださったので、そこからはかなり自由にやらせていただきつつ、同時に松田さんには都度脚本を読んでいただいていました」

©⻑良川スタンドバイミーの会
お葉と朔の恋について、何か岐阜の伝承と繋がるところがあったのかという問いにはその土地に伝わっている話を取り入れていることを明かした。
金子監督
「映画には木地屋が出てきますけれども、実際、標高700、800メートルぐらいのところに木地屋たちが住んでいた穴や小屋の跡があるんですね。木地屋は東近江から発祥しているので、岐阜へ結構近いんです。それと椀貸し伝説というものが岐阜だけではなく、日本中に残っているんです。里の人が、水辺で会ったこともないような美しい人から見たこともない綺麗な器を貸りる。その器を最初はありがたく借りていますが、次第に欲が出てきて、欲しくなって返さない。返さなくなったらその里が没落してしまったというものなんですが、美しい人というのは、里の人とは生活圏が違う、山人などのストレンジャーを表している。その伝承を民俗資料館で読んで、この話が膨らんでいきました」
岐阜ゆかりの円空にも興味を持っていた金子監督。岐阜県内の記念館はほぼ回ったという。
金子監督
「その中でも郡上市の美並にある粥川(かいがわ)に行った時にすごく自分的にピンと来るものがありました。土地がいいなと思いました。粥川周辺で映画全体の40%ぐらいを撮影しています。実際800メートルぐらいのところで近くの林業者の方にご協力いただき、昔の木地屋さんが作ったように、そこの木を切ってもらって、小屋を建てて、映画の撮影中に全部壊すことも行いました。またNPO法人グリーンウッドワークの小野さんに木の器を作ってもらいました」
舞台挨拶後半では長良川スタンドバイミーの会の代表でエグゼクティブプロデューサーの中谷克彦さんからも挨拶があった。

中谷エグゼクティブプロデューサー
映画『光る川』はヒホン国際映画祭ユース審査員最優秀長編映画賞を受賞し、若い年代に高く評価された。またポルト国際映画祭でもオリエントエクスプレス最優秀作品賞を受賞した。海外での反応は良好で、物語の普遍性や日本独自の語り口、特に子どもの活躍が評価されている。
金子監督
「映画は例えば10歳の時に見て100%理解できなくても、何か印象に残ったり、忘れられないものがあれば、その後の人生の中でまた思い出して、観直します。自分の成長とともに映画も育っていくものだと思うんです。老若男女、本当にいろんな方に観ていただきたい作品だと思っています」
映画『光る川』https://www.culture-pub.jp/hikarukawa/ は現在ユーロスペース、岐阜CINEX、ミッドランドスクエアシネマほかで公開中。
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