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あの夕暮れ時を仲間と見よう(映画『くれなずめ』)

成田凌、高良健吾、若葉竜也、藤原季節、浜野謙太、目次立樹と聞くと、ここ数年の映画、ドラマに出演し、注目されている役者達だ。そんな6人がメインキャストの映画と聞いたら、観たくなるにきまっているではないか。

このキャストで挑むのは松居大悟監督のゴジゲンワールド。かっこいいオーラなんてどこにもない、その辺にいる普通の男達がそこにいた。

映画のタイトルは『くれなずめ』。
くれなずむではない。くれなずめと命令形だ。くれなずむ夕方に一体何があるのだろう?この6人で何が描かれるのか?この6人の化学反応はどんなものか。

あらすじ

お気に入りの鞄を高校時代から持ち続ける優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、いつのまにか既婚者となったソース(浜野謙太)、会社員で後輩気質の大成(藤原季節)、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹)。高校時代の帰宅部仲間がアラサーを迎えた今、久しぶりに友人の結婚式で再会した。 満を持して用意した余興はかつて文化祭で披露した赤フンダンス。そして迎えた披露宴は……だだスベりで終わった。二次会までは3時間。誰からともなく、学生時代に思いをはせ、思い出すのはくだらないことばかり。
「それにしても吉尾、お前ほんとに変わってねーよな。なんでそんなに変わらねーんだ?まいっか、どうでも」

©2020「くれなずめ」製作委員会

©2020「くれなずめ」製作委員会

男6人、だらだらと時間を潰す

結婚式の披露宴の余興のために集まった仲間6人が過ごす夕暮れまでのわずかな時間。披露宴から二次会までの間でいろんなことをきっかけに昔を思い出す。文化祭のあとの打ち上げ、する前に手を洗うか洗う前にするか、話が通じない屋台の店主、吉尾の好きなヨックモックのくるくる巻かれたお菓子などどうでもいいことばかりが思い出されてくる。今と過去が入れ違いに描かれ、少しずつ事実も見えながら、夕暮れに向かっていく。

『アフロ田中』、『アズミ・ハルコは行方不明』、『バイプレイヤーズ』の松居大悟監督が自身の劇団ゴジゲンで上演した作品を映画化。松居監督の脚本がとにかく面白い。
『くれなずめ』とは日が暮れそうでなかなか暮れないでいる状態を表す「暮れなずむ」を変化させ、命令形にした造語だ。夕方の暮れるか暮れないかがあやふやな時間。それがなんとも愛おしい時間に感じる話なのだ。演劇は決められた空間で、観客の想像で景色を補完しているところがあるが、今回は映画だから表現出来たシーンがある。夕暮れの逢魔が時には不思議なことが起こり、とても演劇らしい展開もある。演劇×映像のコラボレーションでその力が増した感じだ。映像の世界でも映画やドラマだけではなく、ミュージックビデオ、ドキュメンタリーにも携わる松居監督ならではの感覚だ。

注目の俳優が勢揃い

登場人物達はどこにでもいるような普通の男たち。6人が集まると、くだらないことで盛り上がる。

6人を演じているのは注目の俳優陣。
朝の連続テレビ小説「おちょやん」で主人公の夫・一平を好演、『スマホを落としただけなのに』、『愛がなんだ』、『カツベン!』と出演作で様々な顔を見せる成田凌、主役も脇役もこなし、『青天を衝け』で主人公のいとこ・喜作役で大事なポジションを担う高良健吾、主演作『街の上で』が公開中、脇役としても存在を放つ若葉竜也、『his』、『佐々木、イン、マイ、マイン』の演技が評価され、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞した藤原季節、朝鮮ファンクのボーカルであり、ハマケンと愛称がつく名バイプレイヤー浜野謙太、『アルプススタンドのはしの方』での声を嗄らして応援する教師役が記憶に新しい劇団ゴジゲンの役者、目次立樹。この6人が演じると何か非凡なところがあるのでは?と考えてしまうのだが、最初から最後まであんまりオーラもない平凡な男達の十数年を演じている。実年齢はバラバラなのだが、同年代の仲間の空気感が漂っているのは見事だ。撮影のために一週間6人で交流してから撮影に臨んだ。松居監督はその6人の雰囲気を大事にして撮影したという。
前田敦子、城田優、滝藤賢一、近藤芳正が脇でインパクトを出している。彼らが演じる人物達のキャラクターにも注目してほしい。

©2020「くれなずめ」製作委員会

©2020「くれなずめ」製作委員会

バカで、ちょっとこじらせている感もある6人の姿を通して、自分や友人達と似たところを感じる。「なんだ、みんなそうだよね」と思い、観ながら笑ったり、泣いたり。
映画の中ではしゃいだり、泣いたりする彼らに思いを重ねる。
くだらない話ばかりして笑い転げて。回りから見れば何が面白いかきっとわからなかっただろうことに腹が痛くなるまで笑ったこともあった。そう、それは仲間と一緒に過ごしたからこそ面白く、笑えたのだ。

仲間といた楽しい時間は忘れることはない。私たちは死んでしまうと物体としては消えてなくなる。だが、存在はそんなすぐ簡単に失われることはない。あの日、あの時、一緒に笑ってくれた仲間は今でも心の中にいる。自分の中に生きている。

©2020「くれなずめ」製作委員会

©2020「くれなずめ」製作委員会

くだらないあの日は愛すべき日。
6人の男達の夕暮れまでの時間はかけがえのない時間になる。

『くれなずめ』https://kurenazume.com/ は5月12日(水)よりテアトル新宿他で全国順次公開。
東海3県では5月12日より愛知 ミッドランドスクエアシネマ、ミッドランドシネマ名古屋空港、ユナイテッド・シネマ豊橋18、TOHOシネマズ(木曽川、東浦)、MOVIX三好、岐阜 TOHOシネマズモレラ岐阜、5月14日より三重 109シネマズ明和にて公開。

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