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映画『若き見知らぬ者たち』名古屋舞台挨拶レポート 磯村勇斗さん、福山翔大さん、内山拓也監督登壇
映画『若き見知らぬ者たち』公開記念舞台挨拶が10月13日(日)名古屋ミッドランドスクエアシネマで開催された。磯村勇斗さん、福山翔大さん、内山拓也監督が登壇した舞台挨拶の様子を一部お届けする。
磯村勇斗さん(以後 磯村さん)
「皆さん、こんばんは。本日は劇場に足を運んでいただきましてありがとうございます。 この『若き見知らぬ者たち』は2日前から公開が始まりまして、今日名古屋のこの場所で舞台挨拶できることを非常に嬉しく思います。本日はよろしくお願いします」
福山翔大さん(以後 福山さん)
「皆さん、こんばんは。風間壮平を演じました福山翔大と申します。いろんな話ができればと思います。本日はよろしくお願いします」
内山拓也監督(以後 内山監督)
「監督をしました内山と申します。本日は貴重なお時間をこの映画に使っていただいて、たくさんのイベントがある中で出会っていただいてありがとうございます。短い時間ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
Q.名古屋に来られたのは久しぶりですか?内山監督は前作『佐々木、イン、マイマイン』以来ですか?
内山監督
「『佐々木、イン、マイマイン』は4年前です。今回、劇中に登場する重要なアイテムの日本酒に「敷島」というものを使わせていただいてまして、蔵が愛知県にあるので、そこに今年訪れて、そこの方ともお話しして思いをお伝えして。半歩目というお酒を彩人が壮平にあげるというシーンで使っています」
磯村さん
「名古屋は『最後まで行く』の撮影で訪れた以来になると思います。名古屋はいいサウナがあるので。プライベートでもサウナ入りに来たりとか。『最後まで行く』の撮影の時も(綾野)剛さんとよく行っていたので。サウナのイメージがあります」

磯村勇斗さん
福山さん
「僕も数年ぶりにお邪魔させていただいていて。神社巡りが好きなので熱田神宮には定期的に参拝しています」
Q.内山監督はこれが商業長編映画デビューですね。おめでとうございます。 この作品は随分前から企画を温めていらっしゃったとお聞きしているんですが、どのくらい前からですか?
内山監督
「2016年に自主映画を撮って、公開で映画祭とかを回らせていただいたんですが、その後が『佐々木、イン、マイマイン』で、その前に書き始めているので、今から考えると8年前から、撮影で言うと7年前から温めていたというか、書き進めてきました」

内山拓也監督
Q.今になって企画が通ったという感じなんですか?
内山監督
「そうですね。時代と脚本がある種寄り添っていったというか、お互いがお互いを求め合ったような感じではありました」
Q.今回の役を引き受けようと思ったポイントを教えてください。
磯村さん
「まずはやっぱり脚本ですよね。僕は脚本が全てだと思っているので、その脚本を最初に読んだ時に、内山監督の描くこの世界観であったり、その作家性に惚れて。彩人が置かれている環境とか、息をすることもすごく一生懸命な状態というのが、そうさせてしまっている世の中であったり、社会に対して、僕も一個人として色々思うことがすごくあるので、それを彩人は何も喋れないですが、自分が感じているものを彩人というフィルターを通して表現したいとすごく思ったんです。そういうこともあって、本当に彩人という役を引き受けたいと思いました」
福山さん
「僕も内山監督が描く脚本の強度というところにもちろん惚れたというか、素晴らしいなと思ったんですが、元々このお話を聞いたのが約8年前で、監督と出会ったのも8年前で、 出会ったその日に台本をまずいただきまして。その時にはまだ共にこの作品をやるかどうかという話ではなくて、お互いが何者であるかと確認し合う1つの証明書のような形で、僕はこの『若き見知らぬ者たち』という物語を手元にいただいて。それから巡り巡って8年経って、ようやくこの時が来た感じなんですが、この8年いろんなことがあってお互いいろんなアップダウンもある中で、その8年という時間が決め手と言いますか、監督が本当に苦悩している時間も見ていたので、監督の思いを僕に託してくれるのであれば、全力で人生をかけて臨みたいなと思いました」

福山翔大さん
Q.すでに8年前に福山さんにはお話をされていて、オファーをされたんですね。
内山監督
「そうですね。出会ったのが仲間のKing Gnuというバンドの事務所で。一緒にたまたまいて、初めましてと言って、朝まで過ごしたんです。みんなが寝落ちしていく中で僕と翔大だけが生き残って。その時に僕は彼の出演作を2本立て続けに朝まで見て、すごいねという話をして。でも僕が見せられるものは何もなくて名刺も持っていなかったんです。その名刺代わりじゃないですが、今こういうことを考えているんだ、僕ってこういう人間なんだよという感じで台本良かったら読んでみてと渡したところから関係を築き上げてきました」
Q.磯村さんへのオファーはいつぐらいだったんですか?
内山監督
「撮影がちょうど1年前ですが、そのちょっと前です。特に何かを共有していたわけではなかったんですが、観客の皆さんと同じように彼の出演作は見ていて、皆さんが感じるように僕も感じていて。 一方で、僕がキャスティングさせていただくときは、俳優のお芝居も大事だとは思うんですが、その人がどういう人かというところが大切かなと思っていて。心の窓である目が磯村さんはとても印象的で。その目、その視覚、力を借りたいと思ったと同時に、この大きな背中から感じる小さな寂しさであったり、その歩いてきた足跡がとても素敵だなと思っていて。本当にその背中を僕も一緒に見させてもらえないかという気持ちでオファーをさせていただきました」
Q.演じる上で、最も大事にしていた部分を教えてください。
磯村さん
「生き続けることじゃないですかね。やはり家族の介護があったり、弟の面倒を見て、お金も自分で働いて稼がなければいけないという状態になっていくと本来であれば苦しいはずなので、取材させていただく中で、やはり自分で死んでもいいかなと思った方もいたし、逃げたくなる方もいたというお話も聞いていたので、きっと彩人もそういう思いに絶対なっているはずだろうなと思ったんですが、でもそこでもやっぱり生き続ける意思というか、生かされているというところは大事にしたいなと思っていて。それがなぜかというと、弟の存在はすごくあると思うので、この芯みたいな部分は大事にしていました」
Q.福山さんは、感情の部分もですが、 総合格闘技の選手ということもあって、体作りも結構前からされていたんですか。
福山さん
「はい。クランクイン1年前から、本当に0からトレーニングを始めさせていただいて、 本当の格闘家の方と同じ生活リズムで1年を過ごすということで、もちろん 必要なスキルもたくさんあったんですけれども、壮平にとって何が核になるんだろうというところで言うと、もちろん格闘技のスキルが高められるほどいいんですが、 なぜ戦うのか。何を思ってリングに上がるのか。風間家において、壮平とはなんなのかという、そこを見つめていく1年間だったような気がしていて。もちろんそこにトレーニングは入ってくるんですけれども、 僕にとってもっとアスリートっぽい1年間になるのかなと思っていたんですけれども、 なんか全然違って、むしろ自分の内面とどんどん向き合って行く、苦しくも幸せな時間でした」
Q.今回もリハーサルはかなりされたんですか?
内山監督
「『佐々木、イン、マイマイン』は約8か月ぐらい本読みとリハーサルを重ねてやっていったんですが、それはどちらかというと、役者さんから見えている、僕から見えている先をどんどん先に行こうというところで重ねていったのかなと自分なりに解釈をしていて。今回は俳優さんがどういう面持ちになるかということは容易に想像ができていて、その肉体というものを僕は 燃やさなければいけない、焼き付けなければいけないと思っていたので、どんなに遠くに行っても焼き付けられないものが1つだけあるんだなという想像を想定して。それというのは逆に僕の視界に1つだけある感情をもっと踏み込まなきゃいけないと思って。この感情を見るためには、僕からは見えないから、彼らが見ているものを、感情をテストとか本読みで消耗しないで、そこから出てくるものを現場で掴もうと思いました。それはとても簡単なことではないので、彼らが動いたとか受け取ったものを、スタッフは全て受け取らなければいけないので、それは何があってもスタッフが対応するという入念な準備をした上で、役者さんに全てを委ねながら、感情は寄り添いながら、話し合っていくという感じでした」
Q.観客の皆様に最後に一言お願いいたします。
内山監督
「本日はありがとうございました。僕自身がヤングケアラーだったということ、 実際に友人が経験した、実際に起こった事件の2つを主軸にしながら向き合い続けた時間でした。受け取っていただいたものがどんなものか、僕には想像はできないんですが、仮になぜそういう描き方だったのかとか、なぜそこを描かなかったのかということがもしあるとすれば、その要素は点だと思っています。点と点が結ばれた線は、この世の中はとても見えづらくなっていて、時には隠されたりもしていて、そこに宿っている事実というのは簡単に変化をしたり、簡単に変化をさせられたりしています。 僕の考えですが、真実というのは1つじゃないなと思っていて、皆さんが受け取っていただいた数だけ真実があると思っています。その余白を僕たちがもし作れるなら余白を作ろうと。その余白を埋めてもらうために、映画館から出た後の補助線になりたいなと思って挑んでいたので、補助線にもしなれたとすれば、出ていった先で、この映画を環境的に見えない人もたくさんいたりするかもしれません。僕自身がそういう1人だったんですが、たった1人のそういう人のために書こうと思って。でも、そのたった1人というのは、たくさんいて、その人に皆さんの力をお借りして届けられたらいいなと思うので、現実の世界にもし戻ったら力を貸してください。今日はありがとうございました」
福山さん
「大切な人を抱きしめていただきたいです。突然そのチャンスすらなくなることもあります。何か躊躇していたり、まだ時間があるかななんてことをどこかで思っている方がいらっしゃったら、真っ先に劇場を出て抱きしめてあげてほしいです。そして壮平の言葉を1つ借りるのであれば、自分の居場所は必ずあります。本日はありがとうございました」
磯村さん
「まずは、本日本当にこの夜の時間帯に見ていただきまして、ありがとうございます。 監督からも翔大くんからも伝えたいことは今、言葉になったのかなと思っています。そこに何を僕は言ったらいいのか考えていたんですが、映画も、世の中のニュースの捉え方もそうだと思うんですが、非常に楽な方へと進んでしまっているような気がしています。僕たちは隠されて楽な方へと導かれてしまっている気がするんです。これは今すごい抽象的な言い方をしているんですが、ヤングケアラーのことだったり、実際に起きている事件、戦争はなんか事実としてしっかりとしていない気がしていて。どんどんいろんな要素で隠されてきてしまっている、薄まってきている気がするんです。それによってどんどん自分たちの気持ち、思っていること、感じていることを意見として全然言えない。言える場所が少なくなってきている気がするんですね。そういった声を上げることすらもできない人たちが増えていっている。それを見て見ぬふりをしている人たちがたくさんいるというこの世の中に僕はすごく怖さを感じていて。捉え方は自由なので、皆さん1人1人があなたの言っていることと違うと思えばそれでも全然いいです。まずはこれを受け取って考える時間を持ってほしいと僕は思います。余白をすごくたくさん作っている映画です。もちろんわかりやすく受け取れる映画も面白いんですが、そうではなく映画にやアートを通して一度自分の中で考える時間をこれからもっと大切にしていくべきなのではないかなと思っています。僕はこの映画はそういう映画だと思っているので、皆さんの中で1個1個ゆっくりでいいので咀嚼していただけたら、すごく作った意味があるなと思います。本日はありがとうございました」
映画『若き見知らぬ者たち』 https://youngstrangers.jp/ は現在全国公開中。
東海三県ではミッドランドスクエアシネマ、イオンシネマ(ワンダー、岡崎、長久手、東員)、コロナシネマワールド(中川、安城、豊川、大垣)、ユナイテッド・シネマ(豊橋18、稲沢、阿久比)、ミッドランドシネマ名古屋空港、MOVIX三好、関シネックスマーゴで公開中。伊勢進富座では11月15日(金)より公開。
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