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自分の生きる道を探して(映画『バカ塗りの娘』)

「バカ塗りの娘」というタイトルはインパクトがある。気になってバカ塗りの意味を調べた。そして映画を観てなるほどと思った。

バカがつくぐらい丁寧に丁寧に作る。9月1日(金)公開の映画『バカ塗りの娘』は津軽塗に情熱を注ぐ親子の物語だ。

あらすじ

青森県弘前市。津軽塗職人の父・清史郎と仕事を手伝う娘・美也子が年季の入った工房で作業をしている。工房からは漆が何度も塗られ、研がれ、その音だけが響いている。美也子は高校卒業後、家計を助けるために近所のスーパーで漫然と働きながら家業を手伝っていた。清史郎は、文部科学大臣賞を獲ったこともある津軽塗の名匠だった祖父から津軽塗を継いだが、今は注文も減ってしまい苦労している。幼い頃から漆に親しんできて、津軽塗の仕事が好きだが、堂々とその道に進みたいと公言できずにいた美也子。花屋で働く青年・鈴木尚人との出会いをきっかけに、漆を使ってある挑戦をしようと心に決める。

女性は家業を継げないのか

幼い頃から人とコミュニケーションを取るのが苦手で、恋人や仲のいい友人もいない。しかし、長年清史郎の近くで技術を身につけ、これからも津軽塗を繋げていきたいと秘めた思いを持っている美也子。静かな雰囲気の中に熱く強い津軽塗への思いを持つ女性を演じるのは様々な話題作に続けて出演、NHK「大奥」家光役のインパクトが記憶に残る堀田真由。期待された手先の器用な兄・ユウとは違い、何をやっても不器用だと言われてきた美也子の劣等感、漆をやりたいと思うただ漠然とした夢。兄が描く未来を知り、父と話す中で、その漠然とした夢が確かなものに変わっていく。ぶつかりながら、自分の道をみつけていく美也子を堀田真由が繊細に演じている。

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そんな美也子を見守り、職人の道の厳しさを教える父・清史郎には小林薫。工房で津軽塗の工程を繰り返す職人の佇まいが見事だ。漆職人で生活していくことの難しさを知っているからこそ、美也子の夢を知りながら、強く反対する清史郎。青森で生きているという生活感を出す大事なアイテムが津軽弁だが、役作りのためにかなり早いうちから津軽弁の習得をしたという。

伝統を守って行くというプレッシャーと闘うがゆえに家庭を省みず、仕事に冒頭した清史郎に愛想をつかせて家を出た母に片岡礼子、父と祖父の期待を裏切り、家業を継がなかった美容師の兄・ユウには坂東龍汰。
美也子に津軽塗を継ぐ意思を固めさせるきっかけを作る尚人には宮田佑哉。彼との出会いが彼女の考え方を変化させていく。

美也子が唯一心を開く隣に住む吉田のばっちゃには青森出身の木野花、その他にも酒向芳、坂本長利と演技派が揃う。

監督は『まく子』の鶴岡慧子。高森美由紀の「ジャパン・ディグニティ」を原作に津軽塗の工程を丁寧に取材し、津軽塗を作るシーンをしっかりと作り上げた。

青森でのオールロケで、実際の津軽塗の工房や民家を借りて撮影している。機械は使わない、人の感覚だけがたよりの津軽塗の工程は繰り返しだが、繰り返しているだけではない。気候や木材の状況によって変えていくものもある。作業している音も魅力的だ。清史郎の手つきを見る美也子、美也子の作業を見つめる清史郎。二人の間で技術は受け継がれていく。

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作品の中で描かれたのは津軽塗の素晴らしさ、伝統を伝えることの難しさだけではない。自分らしく生きること。家業は男が継ぐというようなジェンダーの既成概念を越え、自身の夢に向かって生きること。

美也子の家族の生き方を通して日本の新たな流れを感じることが出来る。

映画『バカ塗りの娘』https://happinet-phantom.com/bakanuri-movie/ は現在青森先行公開中。9月1日(金)よりシネスイッチ銀座、シネマート新宿他で全国公開。東海3県では伏見ミリオン座、イオンシネマ名古屋茶屋、ミッドランドシネマ名古屋空港、大垣コロナシネマワールドで9月1日(金)より公開。

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