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ポップな映像と音楽の中に見る現代の人の心の闇(映画『#ミトヤマネ』)
2023/08/22
ネット社会ならではの職業「インフルエンサー」を生業にする女性を主人公に、ネット社会の恐ろしさを描いたスリラー『VIDEOPHOBIA』が国内外の話題となった宮崎大祐監督が描く、今までにない新しい「ジャパニーズ・ノワール」作品『#ミトヤマネ』が8月25日(金)より公開される。
あらすじ
「ミトヤマネ」は絶大な人気を誇るカリスマ・インフルエンサー。日々様々なSNS投稿をして忙しい生活を送っている。
そんな姉を陰で支えているのは妹のミホだ。
ある日、ミトが所属しているインフルエンサー事務所のマネージャー田辺から、「ディープ・フェイク」アプリとのコラボ案件を持ちかけられる。アプリは大人気となり、世界中の至る所にミトの顔が拡散された。ミトの顔を悪用する者も次々と現れる。そんな状況すら自分の人気につながると喜ぶミトだが…。
自身の顔が自由に使われるようになったら……?
インフルエンサー「ミトヤマネ」の活躍を圧倒的なものにしようとマネージャーが持ち込んだ誰もが自由に顔を使えるアプリとのコラボ企画で世界に「ミトヤマネ」の顔が広がっていく。
初めは商品の紹介をしていたインフルエンサー・ミトヤマネが、マネージャーの田辺が持ち込んだ他のインフルエンサーとの絡みや演技にも挑戦し、ついには海外のアプリコラボ企画により、世界中の人々に顔を知られる存在に。しかし、アプリを悪用する人々が出たことで、妹のミカやマネージャーの田辺だけでは対応しきれないとんでもない事態に発展していく。
本作はインフルエンサーが主人公。宮崎監督の前作『VIDEOPHOBIA』と同じネット社会である現代での情報拡散というテーマを扱いながらモノクロの世界とは一転、ポップな空間と音楽が目の前に広がる。日本でありながら、日本ではない。そんな不思議な感覚が映画の最初から最後まで続く。
撮影監督のステファニー・ウェーバー・ビロンが切り取る世界に女性ラッパーvalkneeのラップが重なる。眩しいくらいに活躍するインフルエンサーの輝きと国境もなく数時間で正しいかどうかがわからないまま情報が広がるネットワーク世界の動きを捉えたこの作品にはネットワーク社会の光と闇をみることが出来る。
インフルエンサー・ミトヤマネ役にはモデル・女優として幅広く活躍する玉城ティナ。『グッバイ・クルエルワールド』で見せた熱い演技とうってかわり、時には可愛らしく、時には人形のように違和感があるくらい動かない表情を見せる時もある。その役づくりは見事だ。
忙しさの中でもミトを支える顔の似ていない妹には湯川ひな。ミトとは逆に巻き起こる事態に合わせて様々な感情を見せる。動じないミトの分も反応しているように見える時も。顔は似ていないが、2人で同じ動きをしていることもあり、やはり姉妹だと思える。
ミトヤマネに様々な仕事を持ち込んでくるマネージャー田辺には稲葉友。ミトヤマネに無茶ぶりしているのではないかという合わない仕事も利益優先で持ち込み、ミトのことをちゃんと考えているのかがわからない。飄々としていて、腹の底が見えない不思議なキャラクターだ。
片岡礼子、安達祐実、筒井真理子という演技派女優も出演している。ミトヤマネにどう絡んでいくのかも注目してほしい。
自身を全面に出して、世界に飛び出すインフルエンサー達。挑戦する姿は素敵だ。いいね!や登録数、再生数が多ければ報酬が得られるこの職業は子ども達にも憧れの職業になった。
数だけで評価されるということがいいとは思わないが、世の中の主流であり、数を得るためにインフルエンサー達が必死になるのは仕方ないことだろう。
SNSは匿名性の高い世界でもあり、いいね!をしてくれる人がいる一方で、インフルエンサー達がたくさんの誹謗中傷を受けていることも事実だ。
本作は有名になることの怖さも描いている。
なんでもすぐ知れ渡ってしまう世の中で、隠しておきたいことも、プライベートな時間も暴かれてしまう。
「みんなに知られているのと知られていないのとどちらがいいい?」
ミトヤマネが言うこのセリフ。
観終わった後、頭の中に残る。
あなたならどちらがいい?
映画『#ミトヤマネ』https://mitoyamane.jp/ は8月25日(金)よりTOHOシネマズ新宿他で全国公開。
東海3県ではTOHOシネマズ(津島・モレラ岐阜)、センチュリーシネマ、MOVIX三好、イオンシネマ(名古屋茶屋、ワンダー)にて8月25日(金)より公開。
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