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第76回 CINEX映画塾 映画『波紋』 筒井真理子さんトークレポート

第76回CINEX映画塾『波紋』が7月22日に岐阜CINEXで開催された。上映後のトークには主演の筒井真理子さんが登場。その様子をお届けする。(聞き手:岐阜新聞社 後藤さん)

筒井真理子さん(以下 筒井さん)
「今日はお暑い中、数ある映画の中から『波紋』をご覧いただきありがとうございます。短い時間ですが、ぜひ楽しんでいってください。よろしくお願いします」

後藤さん
「岐阜に来られるのは2度目ということで、ありがとうございます。あのときは『よこがお』の上映時で深田晃司監督もお越しいただいたんですが、岐阜の印象はどうでしょうか」

筒井さん
「先程岐阜に着きましたが、駅がとても綺麗ですね。金の信長像が目立ちます」

後藤さん
「筒井さんは山梨県出身なんですよね」

筒井さん
「はい。盆地で海がないので、何となく岐阜には親近感を感じています。またすごく岐阜は文化的に円熟しているイメージがありまして。私がお会いしたことがある岐阜の方でイメージするのが日比野克彦さんです」

後藤さん
「日比野さんとは昔舞台で共演されていましたね。今は岐阜県美術館の館長でもあり、東京芸術大学の学長でもあります。今回『波紋』の上映期間中に来ていただけたらということで7月8日の初日か次の日にどうでしょうかと最初お話をしたんですが、どうしてもお仕事撮影があって。今回はもう駄目かなと諦めていたんですが、最終日である今日なら行けますというご連絡をいただいて、本当に嬉しいです。CINEXでの上映は今日この回が最後の上映なんです」

筒井さん
「ぜひアンコール上映をお願いします!」

後藤さん
「私は二度観ましたが、実は最初に観たときは、信仰宗教の第2世代の問題とか、そういう社会的な映画だろうと思って観始めました。割と女性から見た映画、筒井さん演じる依子さんの心象丸出しの映画で、2度目はそこに没頭してみたら震え上がり度も違いましたし、映画の素晴らしさもよくわかりました」

筒井さん
「荻上直子監督が脚本を書かれたときは、まだニュースで話題になった宗教問題もない時期で。撮影したのも結構前だったので、たまたまタイミングが合ってしまったといいますか。私たちはブラックコメディだと作っている時は思っていました」

後藤さん
「これは荻上監督からオファーが直接筒井さんにあったんですか?」

筒井さん
「はい。企画案と脚本をいただいたような気がします」

後藤さん
「この映画を観ていると本当に筒井さんのためにあるような、当て書きのような気がします。だってこの役は筒井さん以外にやれる役者さんいないですよ。筒井さんの怖さってあるじゃないすか。日常的に嫁からたまに受けるような感じの「はい、水!」みたいな感じとか、「服、臭っ!」みたいな反応。その態度がシャープだし、キレッキレでズキンと来ることをするのは天下一品です(笑)」

筒井さん
「(笑)。ありがとうございます。でもかわいらしい役も時々はやりますよ」

後藤さん
「僕は『淵に立つ』もそうですが、筒井さんは狂気を背負った感じを演じられるすごい役者さんだなと思っています」

筒井さん
「ありがとうございます。大人計画さんの舞台のときも、ついこの間もネットのコメディドラマも、私が出る部分はすごくシリアスで重たくて、1人だけ皆さんと和気あいあいとしていられないという状況があります。なぜでしょうね(笑)」

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後藤さん
「歯ブラシで洗面所を磨くシーンは怖いなあと思って、僕は家に帰ってから自分のは大丈夫かなと確認しました」

筒井さん
「(笑)。チェックされた方がいいですよ。荻上監督がネットで「夫 復讐」みたいな検索ワードだけで検索したそうなんですが、最初に出てくるのがそれらしいです」

後藤さん
「友人が夫婦で観に行ったら、友人は震え上がるんですが、奥さんがクスクスと我が意を得たりみたいな感じで観ていたという話を聞いたんです。心当たりがある人は多いんですかね」

筒井さん
「男性は一緒に爽快な気分になったという方と「怖いね、怖いね。女は怖いね」となる方といまして」

後藤さん
「僕は後者ですね。映画として観て女性が主婦として女として、母親としていろんな社会的逆境、身体的な逆境がある中でストレス社会の中に踏ん張って立っている。今回ラストのフラメンコに繋がるお庭があって、そこで最後踊って自由になる、あのカタルシスは応援しようという感じになりました。フラメンコは最初からあった設定なんでしょうか」

筒井さん
「フラメンコは最初から台本にあったんですが、息子役の磯村勇斗くんに「フラメンコやってみたら?」と言われて「オーレ!」と言うだけで依子はやったことがなかった人だったんです。それが本番の2ヶ月ぐらい前になって「お母さん、昔やってたじゃない」というセリフに代わりまして。ということは踊れないと駄目なのかしら?ということでそこから猛練習しました」

後藤さん
「ではエンディングはフラメンコ以外の想定だった」

筒井さん
「いや、「オーレ!」とやったことがない人がなんとなくやるという感じだと思ったんです。でも昔やってたでしょということになったので、全然知らないわけにはいかなくなりまして」

後藤さん
「映画の中でフラメンコの手拍子が何回か入ってきますよね。最後まで観るとなるほどと思いますし、効果的だなと」

筒井さん
「あの拍子はパルマというんですが、フラメンコ独特な二拍子、三拍子を刻むすごく変わったリズムです。あれがフラメンコの中では一番ダンスよりも難しいらしいです。何年も練習と経験を重ねないと、きちっとしたリズムを刻めないそうです」

後藤さん
「ではしっかり習われたわけですね」

筒井さん
「大学の先輩にフラメンコをやっている先輩がいたので、教えていただいたらすごく難しくて。足と手の動きが違って連動していないので、足の動きを覚えてからでないと、手の動きは教えられないと言われましたが、「それでは間に合わないです。助けて」と頼みまして、必死でした」

後藤さん
「いや、すごくよかったです。あのシーンはワンカットで撮られていますよね?あれは踊っている時は現場では曲が流れているんですか?」

筒井さん
「はい。ギターを弾いてもらっていました。ちょっとだけ言い訳すると、本番の前にリハーサルで1回踊ったんですが、その時はワーッて拍手がいただけて、もうちょっと上手だったんです。本番は雨で濡れたので、にわかに作った柔らかい砂の上で足もぬかるんで沈んでいって。しかも服が濡れて足が開かなくなってしまい、不自由になってしまったんです」

後藤さん
「『よこがお』では深田晃司監督との『淵に立つ』に続く2本目で成果を出されているなと思いました。今回は荻上監督とは女性同士というところで、我々男性とはちょっと違う感性で描写されていましたが、現場はいかがでしたか?」

筒井さん
「監督はモニターを見て、映像を見ながらチェックして、 OKを出す方が多いですが、荻上監督はカメラの横で肉眼でお芝居を観てくださっているので、安心というか、自分でお芝居がちょっと足りないなと思っているときに、必ず「もう1回行きましょうか」と言ってくださって。例えば光石研さん演じる修が倒れてしまうシーンで、倒れている姿を見つけた瞬間の芝居に1回目はちょっと自分でも違ったなと思ったんです。 OKになったテイクは光石さんを見た瞬間に、心臓がバクバクして。ちゃんと身体に影響があるときはOKになるんです。その辺りをちゃんとジャッジしてくださるので、ありがたいです」

後藤さん
「荻上監督は脚本から相当しっかりお書きになっているように感じます。修が点滴するシーンで「はい20万、25万。でどこに行ってたの?」と今までのことを聞くところはすごい怖いんですが、それも脚本からあるんですか?」

筒井さん
「そうですね。ほとんど脚本通りですね。脚本を読ませていただいたときに、今の社会で起こっていることがうっすら入っていて見事だなと思いました。依子としては、30万とか点滴の値段を数えながら、でも一番聞きたいところをそこに混ぜたんですよね」

後藤さん
「その辺りの女性の心理の挟み方が絶妙だなと。男性の感覚では、あそこでそれを出そうという感じにならないんじゃないかと思います」

筒井さん
「そうですね。なかなかストレートには出さない。そういう女性も多いと思います」

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後藤さん
「家庭って家の庭と書きますよね。花のたくさんあった庭がみるみる変わって水を使わない様式の庭ができて、そこにいる依子の精神描写が、映画的には出来上がっていますが、ちょっと異様な家ですよね。ロケは関東近郊でされているんですか?」

筒井さん
「相当異様だと思いますよ。近所に評判のお家になるんじゃないでしょうか。撮影は千葉で行っています。クレーンで撮影したり、夜撮影していたりいているんですが、近所の方がすごく協力してくださったのはありがたかったですね。誰もうるさいとか言わなくて。本当だったらギターの音もすごくうるさいじゃないですか。だからもう本当に感謝感謝です」

後藤さん
「依子の日常を演じているわけですが、突然家に夫が帰ってきたり、息子が恋人を連れて帰ってきたり、自分も体調が不安定で、感情の動きが目まぐるしいですが、役作りはどのようにされていくのでしょうか」

筒井さん
「いかに依子さんとしての気持ちがわかるかということで落とし込むだけです。セリフを覚えるのではなくて依子さんになってそういうマインドになっていったら自然にセリフと同じことを言っちゃったというところにいけたらいいなと思っています」

後藤さん
「今回泣くシーンもありましたが、一番泣いていたのは木野花さん演じる水木さんの家に行った時ですかね」

筒井さん
「この映画の中で一番素敵だなと思うのが、宗教に救われるのではなくて一緒に働いていて楽しそうに話している水木さんに救われるというところです。「仕返ししていいんですか?」「いいんだよ」と。依子は生まれたときから育てられ方もあると思うんですが、こうしなければいけない、こう生きなければいけないみたいな感じがだったのが、水木さんの言葉で自由になります。木野花さんのことを私は本当に師匠と呼んでいます。第三舞台にいた初期の頃に行き詰まっている時に、木野花さんが女優だけまとめて演出してくださったんですが、「どうしてこんな自信のない目をしているんだろう?」と思って私に私が一番苦手なずっと怒っている役を振ってくださったんです。キャバレーの支配人の役でなかなか怒れなくて稽古中も頑張ったんですが、木野花さんは本番中にも稽古してくださって。木野花さんは役者としても出ていらっしゃったので、本番に出て役者として立っていると喉って大事じゃないですか。でも稽古してくださって、「命かけて!」と檄を飛ばしてくれるんです。その姿とか、相手役をやっている山下裕子さんの姿を見ていたら怒れないとか言っている場合じゃないんだと思って。木野さんの声も枯れちゃうし、「早く怒らないと!」と思ったら怒れたんです。そこから木野花さんも「変わったね」と言ってくださって。それからちゃんと役者をやっていこうと思うようになったので、日常でも本当に救ってくれた方だったんです」

後藤さん
「今回は舞台出身の役者さんがそれぞれすばらしい存在感で。」

筒井さん
「柄本さんと掛け合いが出来て嬉しかったです。それに江口のりこさん、平岩紙ちゃんのビー玉のような目を見て「素晴らしい!」と思って(笑)。「切磋琢磨いたしましょう!」ってあの目で言われますから。撮影中は本当に楽しかったです」

後藤さん
「ムロツヨシさんも出られていましたよね。気が付かなかった方もいらっしゃると思いますが。光石研さんに前世はカマキリと言ってくる食事をもらいに来る方です」

筒井さん
「私も掛け合いがなかったので控え室でご挨拶しただけだったんですが、ありがたいですよね」

後藤さん
「カマキリだけではなくて、カメが出てきたり、庭に隣から入って来る猫がいるとかも映画的だなと感じました」

筒井さん
「猫ちゃんがあの場所から逃げていってくれなくて。居心地がよかったのかあそこにずっといるんです。映画の中で実はこれが一番何テイクも重ねたんです。追い払う時につい足が出そうになって。荻上監督は猫が大好きらしく、「猫に足はやめて!」と言われました」

観客から
「先ほどのトークでも出てきた、水木さんの部屋で泣く依子を演じた時の筒井さんの感情はどんなものだったのでしょうか?」

筒井さん
「最初に台本いただいたときにもう泣けてしまって。練習をしてしまうと、部屋を見てしまうので、ぶっつけ本番でぜひカメラを回していただきたいということを撮影するときに提案させていただきました。いつもの水木さんから想像したかった。台本も1回忘れて、水木さんの部屋を掃除しに行こうと思って、こんな部屋かなと思って想像して部屋を開けたら全然違う。それをもう本当に新鮮に受けたいなと思って提案して、荻上監督も「それで行きましょう」と言ってくださいました。息子の写真を見たときはちょっとさすがに。普段はそんなところを水木さんはこれっぽっちも見せないので。今もちょっと思い出して泣けてきてしまいました。そんな気持ちでした」

観客から
「冒頭のシーンでご主人がいなくなりますよね。あのシーンで普通だったら経済的にどうしようかとかいろんなことを考えてしまうと思うんですがあのときはどういう心境、心構えで演じられているのでしょうか」

筒井さん
「割とどこか予感があったという感じですかね。もしかしたらこの人いつかふらっといなくなるのではないかと時々思ったりしていて。あのときに庭にいないことに気づいて、普段日常であればどこへ行ったか探すと思うんですが。出て行ったんだなと。いろんなそれまでの生活の中で日々積み重なったと依子さんは思っていたという感じです」

観客から
「女優として多くの役をやられると役から切り替えることはすごく難しいのではないかと思うんですが、どのような工夫をされているのでしょうか?」

筒井さん
「割と昔はなかなか抜けないこともあったんですが、最近は着替えたりしているうちに自然にすっと抜けていると思います。全部撮影が終わるまでは自分のどこかにあると思うんですが自然に抜けている感じです」

後藤さん
「今日からCINEXでは『小説家の映画』というホン・サンス監督の韓国映画を上映しています。なぜかというと今「フィルムメーカーズ」という筒井さんが責任編集された本が出ております。加瀬亮さん、深田晃司監督のインタビューもありますね」

筒井さん
「日常を切り取っているわけですが、それがあまりにも日常で素敵だなと思って。加瀬亮さんのインタビューを聞いたときに、本当に3日間ぐらい打ち合わせをして、飲んだりもして、本当にその人のこと、役者さんのタイプもいろいろわかってくれるらしく、本当に信頼して自分をどんなに出してもいいんだという空気を作ってくれる場所らしいんです。そういう感じがいっぱいあふれている作品です。いい映画ですのでご覧ください」

後藤さん
「ではお時間になってしまいました。最後にひと言お願いいたします」

筒井さん
「2回も3回も観てくださった方がいらっしゃったようで本当にありがとうございます。ぜひアンコール上映もお願いしたいです。ずっと我慢していた女性の方、特にいろんな会社で苦労して我慢している男性の方にもぜひぜひご覧いただけたらと思います」

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