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映画『SINGULA』名古屋公開記念舞台挨拶レポート
2024/05/21
映画『SINGULA』公開記念舞台挨拶が名古屋ミッドランドスクエアシネマで開催された。
映画『SINGULA』は2019に舞台で上演されたAIたちによる討論劇「SINGULA」を原案・原作に15体のAIアンドロイド同士が繰り広げるディベートバトルを描いた作品。堤幸彦監督、15体のAIを全て一人で演じたspiさん、原作者の一ノ瀬京介さんが登壇したトークの様子を一部お届けする。
spiさん
「spiです。本日は駆けつけていただいてありがとうございます。名古屋だからちょけちゃおうかなと思って、シャツの柄をスイカにしました(笑)。よろしくお願いします」

spiさん
堤幸彦監督(以後 堤監督)
「本当にだいぶわがままな映画ですが、 最後までお付き合いください。ありがとうございます。さっきまで、朝からロケハンをずっとしていました。暑くて、倒れそうになっちゃいました。真夏日みたいですよね。カツカレーが美味しかったです」
一ノ瀬京介さん(以後 一ノ瀬さん)
「皆さん、本日は暑い中お越しいただきまして誠にありがとうございます。6年前に書いた台本が素晴らしい出会いがあり、こうやって全国の皆さんにお届けできることを本当に嬉しく思っております。本日は楽しんでいってください。よろしくお願いします」
Q.東京で公開されてから一週間を迎えまして、周りの反響はいかがでしょうか。
堤監督
「本当に予想以上の反響でして。もちろん映画ですから、賛否両論あるんですが、今回は本当にすごくウケているというか、予想していなかったけど面白かったという、ちょっといいんだか悪いんだかわからない反応をいただいています。台本を作って撮影したのは2年前で、本当にコツコツ編集をしました。観てもらえばわかりますが、かなり不思議な映画で、皆さんの心に届くかどうか大変不安でしたが、観ていただいた方に喜んでもらっていてよかったなと思っています。ちょっと癖になる作品だと思います」

堤幸彦監督
一ノ瀬さん
「想像以上のいろんなご感想を頂いていて、驚いたのが「号泣しました」というお声が結構僕の周りでありまして。「いや、そんなシーンあったっけ?」と思ったんですが、「ああ、そこで泣いたんだ、なるほどね」という感じで、皆さん同じところで泣かれていまして」
堤監督
「ネタバレはダメなんですよね?犯人とか言わない方がいいんですよね」
spiさん
「ダメです、ダメです」
堤監督
「犯人っていうかね。まあ、うん(笑)」
Q.spiさんはどうですか?最初に一人で15役を演じると聞いた時びっくりしましたよね?
spiさん
「言われた時は一ノ瀬さんから夜中に電話が来て15人を1人でできる?って聞かれて」
堤監督
「それは私が寝入りの夢を見て、15人は1人でいいんじゃないかと思い立った日の夜ですか?」
一ノ瀬さん
「そうですそうです。同じ日です。監督とその話をして、電話は切って、もう5分後とかにかけてました」

一ノ瀬京介さん
spiさん
「それに「滾りますね」って言ったんです」
堤監督
「書けない漢字の「たぎる」ですね」
spiさん
「それで、次の次の日ぐらいにはもう3人で会って」
堤監督
「そうそう。青山の行ったことのないおしゃれなカフェを一ノ瀬さんが予約して」
spiさん
「半袖半パンで行って、こんなところで打ち合わせするのかと思いながらコーラ頼みました(笑)」
堤監督
「コーヒー1200円ぐらいしたんです」
一ノ瀬さん
「そういうのよく覚えてらっしゃいますね(笑)」
spiさん
「俺、堤監督作品をたくさん見て育っている世代なんです。それでこの人がその堤監督なの?という感じだったんです」
堤監督
「違う人だと思った?」
spiさん
「脳内のシナプスが繋がらなくて、この人がその人?みたいな。「できる?」と聞かれて「多分できると思います」みたいなことを言ったら、監督が「じゃ、君に決定。いつ空いてる?」「この日空いてます」「こういうの勢いだから」って」
堤監督
「そう、その時にもうスケジュール表が出てきたもんね」
spiさん
「そうです。「この日から7日間空いてます」「じゃあここ。勢いが大事だから抑えといて」と」
堤監督
「軽っ(笑)」
spiさん
「軽かったですよ(笑)。自分がイメージしていた「spiくん、よろしく」という感じではなくて。「うん、君に決定!」って(笑)」
Q.それは一ノ瀬さんと二人でもう決めていらしたんですよね?
堤監督
「やっぱりルックスが大事。今回設定は人間ではなく、人間型ロボットみたいなことだし。それから何よりもやっぱり英語ですよね。英語喋れると言っても、発音がネイティブの方ってなかなかいないので、そういう意味では彼は全身英語でできていて。だって英語で夢見るよね?」
spiさん
「英語で夢は…出演者によります。夢の中の会話の相手がアメリカ人とかイギリス人とかオーストラリア人だったら英語で喋ります。日本人が英語を喋ることはないです」
堤監督
「夢の中で佐藤流司くんとは日本語で話すの?」
spiさん
「佐藤流司くんがもし夢に出てきたら絶対に日本語です」
堤監督
「モーガン・フリーマンだったら英語?」
spiさん
「モーガン・フリーマンだったら確実に英語です」
Q.なぜ全編英語にしたのかは気になるところなんですが。
一ノ瀬さん
「とにかく海外に映画を持っていきたいというのがありました。その意向を汲んでくださって」
堤監督
「そうなんです。最初はアイスランドで撮ろうかなと思っていたんです。元々舞台で一ノ瀬さんが演出したものがあって、それが面白くて、これ絶対映画にするといいですよとなって、やりましょうかとなった時に、15人分キャスティングをしなければいけなくて。日本人を15人キャスティングするのはなかなか大変なんですね。それで、これは僕が好きなアイスランドでやったらいいんじゃないか。とっても無機質でちょっとレベルの高そうなものに見えるかなと思って計画していましたが、コロナ禍になっていけなくなってしまったんです。日本で撮ることになりましたが、やっぱり英語で撮りたくて。よくよく考えたら全部ロボットなので、英語を話せる俳優1人で15人やればいいんじゃない。という話になりまして」
Q.その15役を演じ分けるってすごいですよね。どのようにセリフを覚えたり、キャラクターを作って行ったんですか?
spiさん
「まず覚えられないので一ノ瀬さんに15色に色分けしてくださいとお願いしました。色が足りなくなったら形にしてくださいと。例えば、青とか緑とか、ピンクの丸とか、ピンクの三角とか。15色のペンをもらって台本の名前のところに色をつけて、最初に誰を一番最初に覚えた方がいいかをなんとなく見える化しました。ちょっとこの人の分量が多いから、一番最初に覚えようと決めて、そこからの作業が15周あって、死ぬかと思ったんですけど(笑)。しかも英語もめちゃくちゃだったんです。全然違う地方、種類の英語で15種類ありました。後からイメージする俳優さんとか声色とかが書かれている表が出来てきて、15種類の器を作りまして、そのイメージでしぐさを考えていきました。踵とつま先の向き、膝の向き、腰の位置、腕の場所、顎の位置。例えば、踵が全部外向きになると外張りになって、顎が出るとすごく男性っぼくなるんです。全部内側に入れると女性になっていくんですよ。キャラクターとを照らし合わせて、ガムを噛んでいる癖があるとか、いつも耳を触っているとか、首をいつも気にしているとか、そういう一癖もつけて全員を作っていきました」
Q.撮影する時に「次はどれ?」とあたふたするところもあったんですか。
堤監督
「誰を撮っているかわからないということにはならなかったですね。一番苦労するかなと思ったのは照明です。 あとから合成するわけですよ。たとえば今、私の影は3つここに出ているんですね。この劇場の光源が3列あるので、3つ出るんです。これだと合成できないんです。合成ラインを作る時に一番右と私の一番左の影が被る。これがあると合成できないんです。だから必ず真ん中1個だけにするんです。それを撮影当日の朝に思いつきました。必ずそうすると影が全部重ならず外向きに出るので、それを思いついた時は勝ったと思いましたね。1人15役が降ってきた時が勝利その1。照明一点釣りが勝利その2。あとはもう本人の努力ですよ」
Q.spiさんという主演を迎えたことも勝利の一つですよね
堤監督
「……」
spiさん
「そこはそうですねって言ってくださいよ(笑)」
堤監督
「ちょっと違うこと考えていて(笑)。spiが味噌煮込み食べたいって言うから、 どうやって連れていこうかなって。今考えていて(笑)」
Q.15体のAIの中で推しの番号はいますか?
一ノ瀬さん
「僕はなんだか14番が好きになってきましたね。なんかけだるい女。あのけだるさを表現したspiくんは素晴らしいですけど、なんかあの役がいい意味で鼻についてくる感じが好きです。spiくんはいかがですか?」
spiさん
「やっている時は12かな。シェークスピアの。一番動いている変なやつなんですが、それはやっぱり愛着がありました。一番自由度が高くて。くるくる回ったりしてやっている時が一番こいつは良かったなと」
堤監督
「最初に15体の設定を何風か決めた時に、1人シェークスピアを置きたいと考えて。それはもう僕ら日本人のシェークスピアに対する単なる思い込みなんですが、もう常に朗々と芝居をしている人は1人欲しいなと思って。僕は歌を歌う人かな。この人はよかったね。もう本当に好き。spiさんしかできない。spiさんの声が良かった。舞台化したらいいんじゃないかな(笑)」
spiさん
「いや、元々舞台です(笑)」
一ノ瀬さん
「今脚本を書いたら全然違うものになっていたかもしれませんね」
堤監督
「時間差というか、そもそも舞台は5年ぐらい前で映画は2年前。 でも現在のAI、チャットGPTの進化は半端ないことになっていて、ちょっと我々が最初に想像したものとは違う方向へどんどん行っています。その辺はどうですか?」
一ノ瀬さん
「先日Googleが発表したGeminiはチャットGPTを はるかに上回る性能のAIで、人間とのやり取りを30分ぐらい見たんですが、めちゃめちゃ高性能で人間と変わらないです。そこには意思とか感情も見え隠れするような感じで、もうここまで来たのかと」
堤監督
「ハリウッドの労働者の皆さんには怒られるかもしれないですが、結構AI技術を最近日本では利用させてもらっています。単に便利だからというのはもちろんありますし、クオリティがどんどん良くなって、学習能力が高まっているので使用しています。ただそれが倫理的にいいかどうかはちょっと別ですね。予算と時間のない日本映画には意外と便利な道具ではあります。ですが、道具に過ぎないです」
Q.spiさんは俳優としてどう思いますか?
spiさん
「もうちょっとそのチャットGPTが早く出ていたら、俺以外の14体全部喋らせましたね(笑)。今から4番を読むので、あなたは全部それ以外を読んでください。「わかりました」ですよね」
堤監督
「そっかそっか。全部設定を入力しておけばいいのか。刑務所に何年かいてみたいな状況を全部入れる、あるいはイギリスのオックスフォード大学出ていてみたいなことやっときゃいいんだ。いやあ気づかなかったなあ(笑)」
spiさん
「いやいや。でも、なかったですよね(笑)」
Q.そろそろお時間になりました。これから映画をご覧いただく皆様にメッセージをいただきたいと思います。
一ノ瀬さん
「この作品はAIを通して人間の尊さを感じられるようなそんな作品になっているんじゃないかと思います。本当にAIが日常に入ってきている現代だからこそ、何が人間に残されていて何が美しいのか、是非皆さんで考えるきっかけにしていただけると嬉しいなと思います。是非楽しんでご覧ください。ありがとうございます」
堤監督
「素直にご覧いただいて、ある種の映画技術、テクノロジーの到達点ではあると思いますが、そんなことも忘れていただいて、1人15役だということもあまり気にせず、そこに発せられている言葉の音楽のような聞こえ方とか意味みたいなものを感じてもらえると幸いです。もし何か気になったら、どこかのSNSで書いていただけたら嬉しいなと思います。今日はありがとうございました」
spiさん
「楽しんでいただきたいなという気持ちでいっぱいでございます。感謝の気持ちもたくさんあります。皆様には本当に感謝しております。75分ぜひ楽しんでください。本日はありがとうございました」
映画『SINGULA』https://singula-movie.com/ は現在ミッドランドスクエアシネマで公開中。
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