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映画を撮りたい。夢を追う二人を通して伝えたいのは(映画『愛のこむらがえり』髙橋正弥監督、吉橋航也さんインタビュー)

2023/07/18

7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨拶レポートを先行してお送りした(レポートはこちら)。同日、髙橋正弥監督、主演の吉橋航也さんにインタビュー。映画制作の裏側を伺いました。

Q.『愛のこむらがえり』は今の映画界の事情がよく描かれた作品だと思います。どんな企画の流れで、どんな意気込みで皆さん集まったのでしょうか。

髙橋正弥監督(以下 髙橋監督)
「脚本の安倍照雄さんが、最初のアイディアを持っていて、そこに加藤正人さんが入って安倍さんとは共同脚本という形で作っていき、最後に三嶋さんが入りました。三嶋さんはまだ若いんですが、世代的にも今の30代前後の感覚もちょっと取り入れたいということで、3人で1回脚本を完成させて、そこからこれはどのように映画にするかというところを模索していくところで僕が入っていったという形です」

Q.監督が入った時点と入ってからで脚本は変わっていますか?

髙橋監督
「脚本自体の構成はほとんど変わっていないです。もうほとんどこれに近い状況で、あとは磯山さん、吉橋さんがキャストとして決まった後にもう1回脚本家チームと手直しをしたぐらいです」

Q.監督は脚本をどのように映画にしていこうと考えられたのでしょうか。

髙橋監督
「キャストのお2人が決まってからということでいうと、エンターテイメント性を持った、割とちょっとコメディっぽい感じで伝えていきたいなと考えました。磯山さんはテレビバラエティーや舞台をやられていて、吉橋さんも東京乾電池でずっと舞台をされてきた方なので、周りの方々も舞台俳優としてステージに立っている方をキャスティングしながら、コメディっぽくいきたいなと考えて進めていきました」

髙橋正弥監督

髙橋正弥監督

Q.吉橋さん演じる浩平は助監督をしていますが、役作りはどのようにされたのでしょうか。

吉橋航也さん(以下 吉橋さん)
「映像作品には小さい役というか、エキストラに毛が生えたような役で現場に行っていた経験はあるので、助監督さんの働きぶりとか、例えば僕が映像作品に出始めたときには、今だとちょっとコンプライアンスに引っかかるぐらいのしごきというものも見てきたので、怒られている姿みたいなものは想像しやすかったです」

Q.助監督として長年働く浩平と重なる部分もあるのでしょうか?

吉橋さん
「職業こそ違えど、僕も俳優としてふつふつとわいてくる焦りだったり、なかなか出ていけないふがいなさとか悔しさとかそういうものを感じていたので、すごく浩平というキャラクターが感じているであろうことと、重なる部分が多く、そういう意味では非常に楽しくやれそうな部分もありつつ、胸をえぐられるような感覚も一緒に味わえたかなという感じですね。共感は強くありました」

Q.映像の現場は舞台とは違いますか?

吉橋さん
「連日現場に入らせていただくということは、初めてに近いことだったので、すごく楽しかったです。それまでは朝来てその日にもうお疲れ様でしたとなってその現場を離れていたので、スタッフさんや共演者の方とも仲良くなる暇もなかったですが、短い期間とはいえ毎日のように顔を合わせて一緒に物を作っていくというのは演劇と通じる部分があってすごく楽しい現場でした」

Q.共演者の方々はすごい方々ですよね?

吉橋さん
「もちろん皆さん映画とかテレビドラマの世界で活躍されている方が多いですが、髙橋監督がおっしゃったことで改めて舞台の大先輩が多いなということに気づかされました。吉行和子さんもそうですし、品川徹さん、柄本明さん、篠井英介さん、菅原大吉さんもそうですし、そういった意味では大先輩方と舞台ではない同じフィールドで一緒に演らせていただけたということはすごく貴重な体験でした」

Q.柄本明さんは東京乾電池でも長年ご一緒されていますが、今回映画での共演はいかがでしたか?

吉橋さん
「柄本さんは役柄的にちょうど浩平が憧れていつつも、畏怖しているというか、恐れをなしていてそうそう気軽に近寄れない感じの役柄だったので、そこは普段の自分の感覚と似ているのかなと感じました。劇団に入ってから15年経っているので、柄本さんになれなれしくはできないですが、そこまで緊張はしないんです。現場では僕に緊張感を持たせるように、挨拶しても全然目も合わせてくれなかったりとか、影の演出というか、そういうことをやってくださったので演じやすかったですね。怖かったですけど(笑)」

吉橋航也さん

吉橋航也さん

Q.品川徹さん演じる蒲田監督が、人生の選択によっては浩平の未来を物語っているかもしれない。そんな気もしました。蒲田監督の生き様はある種、映画が生んだ罪なのかもしれませんね。あのシーンはどのように演じられましたか?

吉橋さん
「映画を作ろうとか、映画に出ている役者もそうですが、本来的にはあまり人に堂々と言えることではないというか、そういった種類のものに取り憑かれてしまった人たちという感じがしています。その意味ではこの映画もそういう部分があるなと思っていて。それが出ているシーンではないかと思います。品川さんの芝居が素晴らしくて、一言一言パンチ力がすごくて、ズシンズシンと来るのを僕はただそれをそらさず、ちゃんと受け止めて痛がっていればよかった感じでした。あのシーンを始めとして、映画だけではないですが、取り憑かれたことによる業や罪が映っていたのではないかと思います」

Q.浩平は蒲田監督と出会って踏ん切りがついた気がしますね。

吉橋さん
「この映画を観てくれたある方に、「浩平は品川徹さん演じる蒲田監督から言われた言葉をそのまま西園寺さんを口説くときに流用して、しれっと利用しているところからすると結構悪いやつなんじゃないか」と言ってくれた人がいて。そうかもしれないなと。結局覚悟が決まったときには「8年3ヶ月働けばいいんだろ」とか言っていますし、結構人生棒に振っても別にいいやという思い切りはどこかである人なのかなと思っています」

Q.こうして映画を撮り続けていると、夢だけではなく罪を生み出していることになるかもしれませんが髙橋監督はどう思われますか?

髙橋監督
「映画ファンとして観始めたので、そこまで思っていませんでしたが、映画業界にいるようになって、さらに新たな映画や過去の名作を観直していくうちに、どんどん取り憑かれてしまうというか、そういう思いはありました。かつ、自分が年を重ねていく中でも、他者に対して、家族に対して非常に迷惑をかけているというか、罪深いことをいろいろしているんだろうなということは自覚はしているので、あの蒲田監督のセリフ自体は非常に突き刺さるところはもちろんあって、だからと言ってその後、善人になれるか、罪を償って生きていけるかというとそうでもないだろうなと。どこか達観しなければいけないのか、諦めなければいけないのかみたいなこともあるんですが、多分映画を好きだと思っている人たちは、観客もスタッフも俳優もそういうものは抱えて生きていくんだろうなと思います。それがもうずっと前から連綿と繋がっていっているので、多分これからの世代もみんなそうなんじゃないかという気はしています」

Q.そんな感じの生きざまを体現しているキャラクターが実は浩平というより、磯山さん演じる香織ではないかと感じながら観ました。磯山さんのシーンで印象に残っているシーンはありますか?

髙橋監督
「もちろん浩平に映画を撮り続けてほしい、撮ってほしいという思いの中で、熱く語れて、設定上すぐ泣いてしまうキャラクターなんですが、そういう感情表現、喜怒哀楽の表現ということについて磯山さんはすごく長けているなと思いますし、そういうキャラクターを求めて磯山さんをキャスティングをしています」

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吉橋さん
「とにかくためらいがないというか、思い切りがいいので、引っ張ってもらえるというか、変に感情が上がればいいわけではなく、パンッと振れ幅よく上がってくれる方なので、そういう意味では芝居の感情のスピードが速くて、一緒にやっていてとても楽しい。やりやすかったです」

Q.映画のまち調布を撮影場所にした理由を教えてください。

髙橋監督
「元々調布は撮影所や映画ドラマの制作会社、美術会社、衣装会社が結構集まっているところで、僕らも最初に映画業界に入った頃は、日活撮影所や大映撮影所という調布市内にある撮影所で育ったので、すごく馴染みがあります。かつ今の調布市の取り組みが、映画のまちということをアピールしていこうということで、撮影にも協力的です。市民映画祭もやっていらっしゃいます。前々から撮影でお付き合いする中で、そういった情報はいろいろ聞いていました。この2人のキャラクターが住んでいる街をどうしようかというところで、調布市でやりたいなと。二人で暮らす部屋とパン屋さんの二つがそこにあったということが一番大きい理由かもしれないですね。パン屋さんはなかなか撮影できるところがなくて。登場人物に合わせて広さを考えなければいけないんですが、ちょうど手頃な大きさのお店があり、やりやすかったです。それ以外にも中華料理屋さん、居酒屋さんもお借りしましたし、住んでいる設定の街の風景は調布です。映画全体の70~80%は調布で撮影しています」

Q.吉橋さんも小さい頃からの拠点がこの辺りと伺いました。

吉橋さん
「実家のすぐそばで、よく行っていた場所なのでそこで撮影して、カメラを向けられていることがなんか不思議な感じでした。2駅隣が実家の駅なので、初めて行ったラーメン屋も調布にあったり、映画に出てきた居酒屋も何度も行ったことがあります。そういった意味では場所に戸惑うみたいなことはなかったですね。ホームタウンに帰ってきた感覚で撮影できました」

Q.映画後半でスクラップだらけの山が出てきますが、あれは実際にそういう場所を探されたんでしょうか。

髙橋監督
「あれは実は二つの場所を組み合わせていまして、山は本当にただ山です。粗大ゴミの方はいわゆる町の粗大ゴミセンターで撮影をして、それをうまく組み合わせて一つの空間にしてみたんですね。それは映画映像経験者のテクニックというか、一つの技なんです」

Q.吉橋さんは初主演ですが、ここが名刺代わりだ!というシーンを教えてください。

吉橋さん
「あんまり言われないんですが、僕的に気に入っているのはやるだけのことはやって吹っ切れた浩平です。香織と一緒に帰ってきて喋っているところ。あそこは生まれ変わったではないですが、この話を浩平の一つの成長譚として観るとすると、あのときに生まれ変わるのかなと。自分の力で人に頼らずにやっていこうと決めた瞬間に、何か運命が回るという意味ではあそこのシーンは演じていても楽しかったですし、名刺代わりかはわからないですが、自分の気に入っているシーンです」

Q.これから映画を観る方に向けて、伝えたいメッセージは何ですか?

髙橋監督
「映画、テレビドラマ業界の話ではあります。ただそうは言っても、最近映画業界裏話は『カメラを止めるな!』もありましたし、大分一般の方も状況はわかってくださっていると思います。そんなに何か特殊なものとは思っていませんが、やはりお伝えしたいメッセージとしては、映画ということだけではなくて、いろんな夢とか、自分のやりたいこと、それをする人と応援される人がいる中で、一瞬諦めそうになっても、まだまだやれるぞ、これからまだ先はあるぞみたいなことを観客の皆さんに観て取って頂くのが一番嬉しいなと。この脚本を作っている時がコロナ禍で、起業してお店を持っても、何か仕事をやりたくて、新たにやっても金銭的な理由、健康的な理由で夢を諦めてしまった人たちが結構いたので、そういうことを共有して、思いを抱いてくれるような方に観ていただいてまだまだやれるぞと思ってもらえればありがたいです。応援する人、応援される人がちゃんと一緒に目標を持ってくれればいいなと思います」

Q.映画を作る夢を追い掛けながら今も頑張っている方がたくさんいらっしゃいます。これから頑張ろうと思っている人たちに向けて何かメッセージをお願いできませんか。

髙橋監督
「夢というかやりたいことを追いかけるということを忘れちゃいけないということですかね。どうしても諦めがちというか、現実には金銭的なこともあり、区切りをつけようとすることもあります。それは大事なことだと思うんですね。ただ今夢がないと言われている時代なので、何か別に映画を作るということだけでもなく、やりたいこと、自分の思いを諦めずにコツコツと続けていくことは人生において深い楽しみでもあるでしょうし、きっと一生自分の糧になります。諦めず、趣味の一つとするのもいいと思います。追いかけるということは大事なことです」

吉橋さん
「こんな言い方をしたら夢もへったくれもなくなってしまうかもしれませんが、どこか惰性みたいになっているところもあって抜けられないというか、辞めるきっかけがないから続けているというところもあるのかもしれないです。この映画を観て頑張ってみようと思ってほしいと思っていますが、それもまた映画の罪なのかもしれないし、それで続けることが先に延びていくことがいいかどうかもわからないし、僕はたまたま続けていてこういう機会に恵まれましたが、この先どうなるかもわからないですし、そういう意味で言うと、あんまり無責任なことは言えないなと思います。やりたかったら放っておいてもやるだろうという感じですかね。あんまり止めもしないし、勧めもしないよと。やめられなかった人たちが最後まで続けて、それで一緒に楽しく、それがお金になるかならないかは別として楽しくやっていく時間というのが来るだろうと思っています。そうなったらもし機会があったら一緒に楽しくやりたいですね」

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映画『愛のこむらがえり』https://aikomu-movie.com/ は現在ミッドランドスクエアシネマ、刈谷日劇他で全国順次公開中。

ミッドランドスクエアシネマでの舞台挨拶レポートはこちら

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