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たくさんの登場人物がリアルを作る。百鬼三兄弟の物語始動!(映画『ぴっぱらん‼』崔哲浩監督インタビュー)

映画『北風アウトサイダー』で映画監督デビューを飾った崔哲浩が『日本統一』シリーズの山口祥行、『ある用務員』の福士誠治とトリプル主演で贈るヒューマンバイオレンス映画『ぴっぱらん!!』。

監督、脚本、プロデューサーに加え、主題歌までも手掛けた崔監督が名古屋・ミッドランドスクエアシネマを訪問。11月1日全国公開となる最新作『ぴっぱらん‼』についてお話を伺った。

Q.前作の『北風アウトサイダー』はアクションバイオレンスでもあるけれど人情劇。今回『ぴっぱらん‼』今回は人情劇もありつつアクションバイオレンスだと感じます。崔監督の中で『北風アウトサイダー』から『ぴっぱらん‼』の間でどんな変化があったのか教えてください。

崔哲浩監督(以後 崔監督)
「『北風アウトサイダー』(2022年)は処女作だったので自分のテーマとか、ルーツを大事にして、どちらかというと社会的メッセージを込めて作ったつもりです。一方『ぴっぱらん‼』は僕の中ではポップに作っているんです。音楽もですし、男性が観ても女性が観ても、何も考えずに観てもいいという感じになるように作りました。面白いところと全体のバランスは脚本の段階からすごく意識しました。ヒューマンバイオレンスであっても、ちょっと「クスッ」と笑えたり、 老若男女が観て、爽やかになる感じにしたかったんです」

Q.ポップな映画とは言いつつも本質は人情劇です。脚本でのこだわりを教えてください。

崔監督
「ポップにするためにはリアルな部分も必要なので、そのための取材も重ねましたし、人情劇、ヒューマニズムが、僕が映画で捉えたいところとして根本に有るので、こだわりはそれを感じてもらうためのポップさとギャグです。「クスッ」としたと思ったら「キュッ」と締めるという感じの、エンタメ性に特化した作品にしました」

Q.タイトルの『ぴっぱらん‼』はとても耳に残ります。タイトルに込めた思いを教えてください。

崔監督
「百鬼(なぎり)家だけでなく、みんなそれぞれいろんな家庭環境があり、ご先祖様がいて、今があって……。人生っていいこともあるし、辛いこともあるし、山あり谷ありですよね。その人生を生きる中で、ぴっ(血と雨)、ぱらん(風)とは、いい風もあれば追い風も向かい風もある。そういう人生という縮図を造語にしたということもあります。兄弟の中で要は雨の日に生まれたとかそんな要素を込めましたが、観にきてくれたお客さんが、『ぴっぱらん‼』というタイトルを、なんだろうと思って、観終わったあとに想像したり、自分の中で、辻褄合わせをしてもらえるようなタイトルがいいんじゃないのかなと思って決めました。ひらがなだと「ぱらん」が「はらん」にも見えて、いろんな「波乱」という言葉に思いを馳せるという要素もあって、これに決めました」

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Q.今回バイオレンスな描写があっても、年齢制限はかかっていないのは、幅広い年齢層に観てもらいたいという監督のこだわりがあるのでしょうか。

崔監督
「はい。めちゃくちゃありました。例えば暴力描写、腕を切るシーンも綺麗に見えるということを意識したんです。バイオレンスは生々しい、グロいというイメージがある中で、僕はこの映画では美しく見せたかったんです。例えば父・百鬼剛(金守珍)が殺される時の雰囲気をどこか綺麗で美しい静の場にしたくて……。ちょっと哲学的なことになりますが死生観。人は生きて、なぜ死ぬか。すごく考えるのが人間だと思いますし、その生と死を美しく描きたかったんです。百鬼剛が殺されるシーンは撮影3日前ぐらいに夢に出てきて、光であふれるような演出にしました。百鬼剛が殺されたのを見つけた百鬼組の側近・金があとから腕を斬られるシーンも腕ではなく、金役の遠藤綱幸さんのリアクションを撮っているんですよ。女性が見ても「怖っ!」とならないように意識しています。自分の中でアングルとか全体の節々で意識した部分です」

崔哲浩監督

崔哲浩監督

Q.映画の公式サイトにある人物相関図にたくさんの役者さんを入れていますが、それは何故でしょうか。

崔監督
「『ぴっぱらん‼』を観ていろんな評論家の人たちから出演している人が多すぎてわかりづらいと言われました。僕はわかりづらくていいと本気で思っています。偉そうなことを言うと、今は先が読めてしまう、わかりやすい映画が多すぎます。もちろんお客様さに目線を合わせて作ることも大事ですが、人生は予測がつかないことだらけじゃないですか。僕にとってのリアルは、明日が見えないこと、人が何を考えているのかがわからないことです。ワン・シーン、ツー・シーンしか出てないけど、その人の存在を考えてしまうような映画の方が僕は好きです。例えば『仁義なき戦い』は名優がスクリーンの端から端までぐっちゃぐちゃに出ていますが、1人1人が生き生きしている。これが僕の理想の映画なんです。なので、この映画も観ると確かにちょっと登場人物が多くて複雑に見えるかもしれませんが、僕の中で三部構成で考えているので、なぜこの時こうだったのかが後から紐解かれてわかる部分もあるようにしています」

Q.アクションだとバディものが多い中であえて三兄弟という設定にしたのはなぜですか?

崔監督
「1対1だと水谷豊さんの「相棒」でコンビです。それが3人になると人間関係は複雑に絡むんです。2人だとシンプルですが、僕の中で3人男が揃った方がかっこいいんじゃないか、3人の食い違いがあるところや、要が峻に思っていること、峻が湊に思っていることの違いや、同じ遺伝子の兄弟3人の関係性を描きたかったんです。今回は要の物語。これから3人を描いていきたいですね。妹もいるので本当は四人兄弟ですが(笑)」

Q.長男・峻(山口祥行)が赤、次男・要(崔哲浩)が青、三男・湊(福士誠治)が黄という色で表現されていますが、この色はどのように決められたのでしょうか。

崔監督
「キャラクターです。自分で「鬼の伝記」とかを全部読んで調べました。ポップにするためにも分かりやすいものがいいと思いました。赤青黄の青は柔らかいイメージとともに、バランスを取るイメージなので、それは次男の要に。炎のように燃えるのがやっぱり峻で赤、一番飛んでいる白鬼と書いて、黄色の鬼なんですが、それは福士さんに向いているなという思いをキャストに照らし合わせたところもあります」

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Q.今のお話からすると、キャスティングは脚本より先に決まっていたのでしょうか?

崔監督
「僕の中では決まっていました。ただ、出てくれるかどうかは、皆さんのスケジュール次第で……。脚本は基本的にほぼ全員当て書きです」

Q.山口祥行さん、福士誠治さんのアクションも凄かったです。中でも山口さんの階段落ちシーンには驚きましたが、アクションシーンのこだわりについて教えてください。

崔監督
「これはアクション担当の二家本辰己さん、ガンエフェクト担当の浅生マサヒロさんの考えが当然ありますが、 山口さんはアクションの部分は自分の意見を言ってくれました。だから一緒に作ったイメージです。 僕がアクションとしてこだわるのは空気感で、そのシーンの空気感はディレクションしますが、アクションはアクション監督がつけていきます。だから階段落ちの撮影時は二家本さんが前日僕に電話をしてこられて。「祥行さん、明日落ちるから」と。その前に二家本さんは僕と何回もアクションの打ち合わせをしているんですが、そういうものは、現場で思いつきでいっぱい出てくるんです。この俳優だったらこういうことをやらせたら面白いなというのが映画作りの面白いところで、プロデューサーの立場から山口さんのマネージャーさんに階段落ちのシーンは大丈夫かと聞いたら「本人がやると言ってます」と(笑)。本当にアクションは山口さん先行でした」

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Q.今回は百鬼三兄弟で主題歌を歌われています。監督が作詞も手掛けられていますが、その経緯を教えてください。

崔監督
「台本と同じ段階に主題歌の歌詞も書いていました。僕にとって歌詞も台本の一部なんです。 要の幼少期の心の声を書いています。エンドロールの歌も込みで『ぴっぱらん‼』です。劇中の曲も考えながらカメラのカット割りもやっていきます。そういう意味では、 劇中音楽と主題歌と歌詞は脚本と同じぐらい力を入れましたし、初めてのチャレンジで大変でした。脚本、プロデューサー、監督、役者をやっている人は何人か日本にいますが、歌まで歌っちゃったのは僕だけじゃないですかね(笑)。 まず一言、「お前どんだけ自分のこと好きやねん」と皆さんが突っ込める要素を作りたくて、やった部分もあるんですよ。自分のことが大好きですから、わがままさは前面に出さないとダメだなと思いましたし、自分が歌うかどうかギリギリまで悩みました。何十回もスタジオに入って、客観的にプロデューサーとして自分の歌が成立するか考えました。福士誠治さんは歌が上手いのは知っていますから福士さんに歌ってもらおうかと思っていた時に福士さんが「3人で歌おう」と言ってくれたので、歌のレッスンもして挑みました」

Q.若い頃の三兄弟の方たちがすごくいい芝居をされていたと思うのですが、オーディションで選ばれたのでしょうか?

崔監督
「オーディションです。オーディションでは何百人も子役さんに会いました。子役にはこだわりましたね。オーディションをやった後、リハーサルも何回も重ねました。アクションも練習しないとできないですから、怖いですし。 3人が仲良くなるためにそれとは別に時間を取って関係性を作ってもらいました。関係性を作るという時間の大切さは、佐々部清監督から学んだことです。 3人は違う事務所の所属ですし、兄弟役といいながら似てないんですが、幼少期から時間を経たらこうなって見えるのかなとか、こういう人生でこういう風になったのかなと見えるようなキャスティングを意識しました」

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Q.金守珍さん、津田寛治さん、渡辺哲さん、三浦浩一さん。豪華キャスティングです。キャスティングの理由と、現場での裏話をぜひ教えてください。

崔監督
「僕がこの4人の俳優さんの芝居が好きなのは当たり前なんですが、人への気遣い、優しさ、あり方が好きなんです。ご一緒できて最高でした。キャスティングの理由は人としての人間力です。僕が21歳の頃に高倉健さんに「フィルムにはその人の生き様が全部出るから、一流のものと触れなさい。年1回ホテルに行きなさい」と言われたんです。外から順番に取るナイフやフォークを持つこと、俳優は一流のものに触れる必要があると言われたことが強烈に残っています。そんな記憶がある上で、三浦浩一さんのエピソードを一つ。楽しい現場には役者さんは遅くまで残りたがるんですがある日、1日だけさっと帰ったんですよ。 「珍しいな」と思っていたら、その時にいたサブキャストの若い俳優20人ぐらいを連れて木更津でご馳走していたんです。後からいろんな事務所のマネージャーさんや社長さんから、「うちの役者が辞めようと思っていたんですけど、浩一さんとこんな場を作ってもらって、あと10年頑張りますと泣きながら言ってきました」と聞いて驚きました。ワンシーンのアクション要員で来た若手俳優たちも浩一さんの気配りで一生やれると思うんです。これはお金に変えられないことですよね。浩一さんは僕に一言もそれを言わなかったのですが、さすがだなと思いました。この20人に与えた影響が映画を変えるんです。俳優の現実は厳しいけれど、ただその一個の思い出で役者を続けられたりするんです」

Q.最後にこれから『ぴっぱらん‼』を観る方に一言お願いします。

崔監督
「映画館で男性が観ても女性が観ても、 何も考えずにジュースとポップコーンと一緒に楽しめる映画になっています。観終わったらいろんなことをスクリーンに言いたくなるような映画になっていますので、ぜひ劇場で大迫力で観てほしいなと思います。よろしくお願いします!」

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映画『ぴっぱらん!!』https://bibalam.com/ は11月1日(金)よりテアトル新宿、アップリンク吉祥寺他で全国順次公開。東海三県ではイオンシネマ津で11月1日、ミッドランドスクエアシネマで11月15日(金)公開、刈谷日劇で順次公開予定。

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