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こころに剣士を

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剣士の心で誇り高く生きる(映画『こころに剣士を』)

2017/03/04

エストニアはロシアに隣接する国だ。
ゆえに過去にはロシア、ソビエト連邦(ソ連)に併合されたり独立したり。
またナチス・ドイツの政権下に置かれたこともあった。

第二次世界大戦中にドイツ対ソ連の戦いの場となったエストニアは
1950年初頭、スターリン指揮下のソ連に併合されている。
『こころに剣士を』はその時代に実際にあった話を基に作られた。
逃げることをやめ、自分にふさわしい生き方を求めた一人の男と
男の生き方を変えた子供たちの姿が描かれている。

あらすじ

1950年初頭、エストニア。
ソ連の秘密警察に追われる元フェンシング選手のエンデルは、
小学校の体育教師として田舎町ハープサルに身を隠す。
ハープサルでは、子供たちの多くがソ連の圧政によって親を奪われていた。
エンデルは課外授業として子供達にフェンシングを教えることになるが、
実は子供が苦手だった。そんなエンデルを変えたのは、
学ぶことの喜びにキラキラと輝く子供たちの瞳だった。
中でも幼い妹たちの面倒を見るマルタと、
祖父と二人暮らしのヤーンは、エンデルを父親のように慕うようになる。
エンデルに不審を抱いた校長は、エンデルの身辺調査を始めていた。
そんな時、レニングラードで開かれる全国大会に出たいと
子供たちからせがまれたエンデルは、
捕まることになるかも知れないことは承知の上で
子供たちの夢を叶えようと
レニングラードに向かうことを決意する。
こころに剣士を

戦争は戦犯を作る

1940年代、ドイツ領からソ連領になったエストニアでは
急激なソ連からの弾圧があり民衆は貧窮していた。

第二次世界大戦終盤にはエストニアがドイツとソ連の戦いの場所になった。
ソ連統治下の暮らしよりはドイツの統治下がいいと
ドイツの隊に入った人、ソ連に求められてソ連の隊に入った人が
エストニア国民にはいる。
エストニアで生きていくにはどちらかを選ぶしかなかった。
主人公エンデルは家族や友人たちとドイツ側につく。
しかしドイツは負けた。
再びソ連統治下となったエストニアでは
ドイツ軍にいた者は秘密警察に追われる身になる。

家族と生きるためにした決断がある日突然罪になる。
戦争の勝ち負けは残酷だ。戦争は戦犯を生み出す。
名前を隠し、目立たないように生きること。
常に追われているという感覚から逃れられない生活。
逃げるしか生きる術はないのか。
友人たちの助けを借りてレニングラードから遠く離れた
ハープサルという町で教師という職を求めたエンデルは
ここで逃げることよりも大事なことを見つける。

この映画の原題は『The Fencer』。剣士。
彼は剣士としてフェンシングを子供たちに伝えた。
どんなときにもあきらめない強い心を持ってもらうために。

フェンシングは誇り高きもの

日本では太田雄貴さんがオリンピックで銀メダルを取ったことで
一気にメジャーになったフェンシング。
日本で剣士といえば剣道を連想させる。
剣道は剣の技術だけではなく武士の心を伝えるが
フェンシングも剣の技術だけではなく騎士の心を伝える。
「我が身を守る、名誉を守る」
自分という存在を守り、主張する誇り高いスポーツだ。

こころに剣士を

自己主張することが許されない

レニングラードから離れた町ハープサルでも
ソビエト連邦政府の目が光っている。

ヤーンの祖父がエンデルに多大なる影響を与えているが
課外授業でのフェンシング継続を問う父兄会のシーンの異様な光景に
政治統制の恐ろしさを感じる。
自己主張することは政府に逆らうことととられてしまう。
戦争は終わっても本当の自由などないのだ。

エストニアの俳優の競演

エンデルを演じているのはエストニアでは知らない人はいないという
マルト・アヴァンディ。
クラウス・ハロ監督は彼が騎士のような雰囲気を持っていたことで選んだという。
エストニアで有名だということを知らなかった。
コメディやミュージカルとエンターテインメント性のある作品に出ている彼だが
今回は抑えた演技が光る。
フェンシングの稽古を2ヶ月行って臨んだ。
ヤーンの祖父を演じたのはエストニアで最も有名な俳優
レンビット・ウルフサク。
自らも騎士の心を持ち、孫を思うヤーンの祖父を
しっかりと演じている。
台詞の奥にある未来へ託す強い思いが
静かな演技の中から湧き上がっている。

教えるということは教えられること

人になにかを教えるということは自分にたくさんのことを気づかせてくれる。
教えることで自分が間違っていたこと、わかっていなかったことを知る。
エンデルは自分が見失っていた剣士の心を
子供たちにフェンシングを教えることで取り戻していく。
後ろに下がらず、まっすぐに立ち向かっていく。

子供たちは敏感だ。大人の不安や警戒心を感じとる。
エンデルの変化に対する子供達の接し方の変化もしっかりと描いている。

レニングラードのフェンシング大会の結果がどうなるのかは皆さんの目でご確認を。

『こころに剣士を』http://kokoronikenshi.jp/
12月24日からヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開
名古屋地区では12月24日より名演小劇場で公開

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