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ロマンポルノに新たな息吹を(映画『牝猫たち』白石和彌監督インタビュー)

ポルノと聞くと「え、エッチな作品なんでしょ?」
と思いがち。
ではロマン+ポルノ=ロマンポルノとは?

『日活ロマンポルノ』は日本で1971年-1988年の間に
製作・公開された成人映画で、製作本数約1100本。
もちろんいくつかの条件はあったが
(10分に1回からみのシーンを作る、70分ぐらいの長さなど)
それ以外は自由に作ることができた上、
数人で製作されるピンク映画と違い、
通常の映画製作と変わらないスタッフ編成で製作された。

この製作現場から沢山の名を残す監督が生まれた。
(『あぶない刑事』シリーズの村川透監督、『デスノート』の金子修介監督、
『ヌードの夜』、『GONIN』の石井隆監督もここが出発点。)
性への欲望の描写はその作品の中で必然となり、意味をなす。

女性の生き様を深く美しく描く。
芸術的と評価される作品が沢山作られた。

日活という映画大手がこのジャンルに参入したことは
あの当時話題となり、3本同時で上映されたこともあって
沢山の男性がロマンポルノを見るために映画館に足を運んだ。

名古屋シネマテークでは新作『ロマンポルノ・リブート・プロジェクト』
公開に合わせて、約1,100本ものタイトルから厳選された
『日活ロマンポルノ』傑作クラシックの上映も行う。

1980年代後半から家庭へのビデオデッキの普及と
レンタルビデオというシステムが広がったことで次第にロマンポルノは姿を消してゆく。
暴力や性を押し出す作品はその後Vシネマに役割を委譲することになった。
(筆者もVシネマで育った年代でロマンポルノは後から知った。)

あのロマンポルノの興奮をもう一度と
日活が新たに企画したのが『ロマンポルノ・リブート・プロジェクト』
今までロマンポルノを撮っていない監督にこの世界を表現してほしいという企画の下
塩田明彦監督、白石和彌監督、園子温監督、中田秀夫監督、行定勲監督(五十音順)
という日本映画界の大作をも製作する監督陣が集結。
ロマンポルノ時代の条件を改訂した状態で作品は製作された。

『ロマンポルノ・リブート・プロジェクト』
撮影条件
・総尺80分前後
・10分に1回の濡れ場
・製作費は、全作品一律
・製作期間は1週間
・完全オリジナル作品
・ロマンポルノ初監督

11月9日、白石和彌監督が来名。
『牝猫たち』について話を聞いた。

ロマンポルノをリブートするとは?

ーまず。ロマンポルノを撮り終わって率直な感想を。

白石監督:
「ロマンポルノが生誕45年ということで『ロマンポルノとは何なんだ』というのは
自問自答したんですが、やっぱり人間をどう切り取っていくかということかなと思いました。
とはいえ全くエロくないのも困るので、そこは考えながら作りました。
女優陣が素晴らしい演技をしてくれたので満足いくものになったと思います。」
牝猫たち

ー製作条件があったと思うんですが、どう組み立てて行ったんですか。

白石監督:
「『牝猫たちの夜』(1972)という田中登監督の映画があり、
外枠だけ借りて舞台を現代で作りました。
風俗嬢を主人公にしたので濡れ場に困ったらお客さんのところに行けばいいかなと(笑)
田中登監督の『牝猫たちの夜』はソープランドの話だから
女の人がお店にいるので、デリヘル嬢にしたら
外に出るシーンがつくれるなと思いました。
ロマンポルノを撮るにあたって日活からぜひ現代社会の様子も入れてほしいという話があり、
長編映画にするにはちょっと何か足りないけど
僕の中に溜まっている様々な事件を形を変えて
オムニバス形式にしたら作ることができるかなと考えました。

一番大変だったのは日数でした。
昔と今は状況が違うんですけど旧作のロマンポルノは
一週間で撮っている作品なんてほとんどないんです。
苦しんだところではあるんですが、濡れ場が10分に1回と決まっているため
本編が70分か80分の長さだと7回か8回になります。
撮影日数が7日なので1日平均1回ちょっと程度絡みのシーンを撮ることになるんです。
濡れ場は撮るのが大変なんです。前貼りなどの準備もしないといけないですし。
はじめの2日間に濡れ場の撮影がなかったので
3日目から怒濤のように撮影することになってしまい、
『7日しかないと1日でこんなに撮るんだ』と驚きましたね。」

 

昔新宿、今池袋

牝猫たち
ーどうして池袋を舞台に選ばれたんですか?

白石監督:
「『牝猫たちの夜』の舞台は新宿でしたが
今回は池袋にしました。
新宿や渋谷は昔と比べて街がきれいになっています。
北海道から上京してバイトをしたり遊んでいたのが池袋で、思い入れの深い街でした。
久しぶりに行ったけどいい意味で雑多感が残っていたことが理由の一つです。」

 

気鋭の女優陣とそれに群がる男優陣

ー女性陣のキャスティング理由を聞かせてください。

白石監督:
「井端珠里さんは彼女が17歳の時に若松孝二監督の
『17歳の風景 少年は何を見たのか』の撮影で会っていました。
ワンシーンだったんですけど雰囲気が印象に残っていて、
その後も折々気になってどうしているのかなと思っていたら
『断食芸人』に出ているのを拝見し、今回お願いしようと思いました。

真上さつきさんはオーディションの時に初めてお会いして、
ハマったときの爆発力が素晴らしい女優だと感じ、ムラはあるけど
型にはまればすごいことが分かったのでそこに賭けてみようと思い選びました。

美知枝さんは安定感が抜群でした。

それと作品をドキュメンタリータッチで撮りたかったという思いがありました。
女優陣にはあまり胸が大きくない人がいいというイメージはありました。
胸が大きいと豊かに見えるというか(笑)。寂しい人たちの話なので」

ー音尾琢真さん起用の理由は?

白石監督:
「音尾さんは北海道の高校で1年後輩だったんです。
『白石さんの映画ならスケジュールが合えば出ます。』と言ってくれて
『ロマンポルノでも出るのかな?』と若干疑問に思いながら(笑)
オファーしたら脚本を読まずに二つ返事をくれました。
彼の存在感とTEAM NACSでやってきた人間力はさすがだと思います。
一役者としていいパートナーであり、尊敬できる存在なので
何かあればまた一緒にやりたいです。」

ー松永拓野さんと吉村界人さんの存在感がいいですね。

白石監督:
「この作品は男性キャストも重要です。
松永拓野君は「火花」の撮影をしている際に発見しました。
作品を見てくれた多くの人が『あれは誰ですか?』っていうくらい
存在感があったんです。
役が合えばいつでもお願いしたい僕の秘蔵っ子です。

吉村界人くんはテレビドラマのオーディションで会ったんですけど
役に合わずにその時は選ばず、でも印象に残っていました。
存在感があって役にはまるとすごい力を発揮するんです。
キャスティング担当に吉村くんはどうかと聞いたらビックリしていました。
『彼は主役じゃないと使い切れないんじゃないですか?』
と言われましたが、一回やってみようと。
二人とも素晴らしい役者なので、彼らのことを言ってもらえると嬉しいですね。」

ー白川和子さんが出てこられて。SMクラブでのご登場。さすがと言いますか。

白石監督:
「はじめは音楽バンドのライブの設定だったんですが
とろサーモンの村田さんが出てくれることになったので
お笑いライブに変更しました。
あと他の作品にSMシーンがないと聞いていたので、
秘密のSMクラブという不思議な空間にしたら面白いかなと思いました。
リブートするならロマンポルノのレジェンドの存在が必要かと思ったので、
『凶悪』に出演頂いた縁もあり、
白川和子さんに出演していただきました。」
牝猫たち

 

白石監督の描く女性像

ー女性の強さが描かれている気がしますが。

白石監督:
「僕は生命力は男性より女性の方が絶対あると思っているし
女性に幸せになってもらいたいという思いがあります。
『凶悪』、『日本で一番悪い奴ら』は男性が主人公だけど
女性を男性の下にいる描き方はしていません。
世の中を生きていく力は女性の方が持っていて
自主映画で撮った『ロストパラダイス・イン・トーキョー』は
女性が主人公でこの映画の姉妹作品みたいな位置づけです。
女性が強く生きている。僕の女性像がそうなんでしょうね。
思い返せば強い女の人と付き合ってきたなあと思います(笑)」

ーどんな方に見ていただきたいですか?

白石監督:
「僕もロマンポルノが大好きで東京だとユーロスペースや新文芸坐で
リバイバル上映しているのを時間があれば観に行っていました。
どこかの時期から客層が変わって女性も増えてきたんです。
若い人が単なるポルノではなくてこれは芸術だと気づいて
映画として認知してくれている印象がありました。
日活としてもリブートする後押しになったと思います。
プロデューサーやメインの宣伝担当も女性です。
昔のロマンポルノは男性向けでしたが今はぜひ女性に見ていただきたいです。
僕も色々な思いを持って作りました。」

池袋の風俗店で働く3人。
本名は知らない。
集えば共通の話題で盛り上がる。
誰かと一緒にいたいときもある。でも束縛は嫌い。
ものが溢れる世の中で簡単には手に入らない何かをつかもうとする。
何があっても生きなくちゃ。
3人の女の表と裏。女を取り巻く男たち。

借金、ネット炎上、育児放棄、不妊、孤独…。
日活ロマンポルノ全盛の時代にはなかった社会問題も扱いながら
今をたくましく生きる女性の美しさを見出だし
白石和彌監督が新たなロマンポルノを作り上げる。

今年大人気のゴジラに対抗(?)して日活らしいキャラクターもひっそり…
いやかなり大きく登場してくるのもご愛嬌。
牝猫たち

『牝猫たち』は2017年1月14日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト(R18+)
行定勲監督『ジムノぺディに乱れる』(公開中)
塩田明彦監督『風に濡れた女』(公開中)
白石和彌監督『牝猫たち』(2017年1月14日公開)
園子温監督『ANTIPORNO』(2017年1月28日公開)
中田秀夫監督『ホワイトリリー』(2017年2月11日公開)
http://www.nikkatsu-romanporno.com/reboot/

名古屋地区では名古屋シネマテークで2017年2月4日より公開。

名古屋シネマテーク公開スケジュール
行定勲監督『ジムノぺディに乱れる』(2017年1月28日公開)
塩田明彦監督『風に濡れた女』(2017年1月28日公開)
白石和彌監督『牝猫たち』(2017年2月4日より公開)
園子温監督『ANTIPORNO』(2017年2月11日公開)
中田秀夫監督『ホワイトリリー』(2017年2月18日公開)
http://cineaste.jp/

 

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