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星能さん、ちょっと聞いてもいいですか?(映画『土手と夫婦と幽霊』星能豊さんインタビュー)

 

インディーズで作品を作り続けてきた渡邉高章監督の中編『土手と夫婦と幽霊』が国内外の様々な映画祭で賞を獲り、ついに全国の映画館での公開が決定。東京での上映を経ていよいよ9月11日から名古屋シネマスコーレで公開される。

主演で渡邉監督作品出演は常連の星能豊さんに映画『センターライン』の現場で出会って以降交流のある涼夏がインタビューした。

映画に出てくる小説を読むことがスタート

涼夏
「『別れるということ』は星能さんの脚本で監督は渡邉さんという形の映画で、お二人の関係の長さを感じました。『土手と夫婦と幽霊』は少し前の作品ですね。この時は渡邉監督からオファーがあった感じですか?」

星能さん
「そうです。もう東京からは離れて金沢に住んでいるときです」

涼夏
「『センターライン』より全然前なんですね。なんか若いなとは思いました(笑)」

星能さん
「2016年に撮影しています。『センターライン』は2017年撮影でした」

涼夏
「どんな風にオファーは来たんですか?」

星能さん
「2015年だったと思うのですが、渡邉監督から「小説『土手と夫婦と幽霊』読んでみてね」
とメールが来まして。「それから、この小説を書いた小説家を演じてね」と」

涼夏
「これ映画の中に出てくる小説が先だったんですか!?まず小説を読んでどう思われました?」

星能さん
「もともと渡邉監督の映画には文学的だなぁと思うところがあったんです。例えば『多摩川サンセット』とかがそうです。なので映画を撮るときははじめにこういうふうに実際に小説(脚本)として書いている方なのかなぁと思いながら読んでいました」

涼夏
「小説を読んで、この小説を書いた小説家を星能さん的にどんな人だと思いましたか?」

星能さん
「やさしい人。小説自体は時折クスっと笑ってしまうところもあるんです。でも、全体的には緊張感もあって、次のページ、次のページと気がつくと急いで読んでいた記憶があります。
で、ふと「あ、これを書いた本人を自分が演じるのか」と気がつきまして(笑)。正直、難しいなというイメージが先行していましたが、役作りには小説を読むことはとても必要なことでした」

涼夏
「脚本が出来てきて、そこにいた小説家の“私”は星能さんが考えていたイメージの人間でしたか?」

星能さん
「事前に読んでいる小説が元ネタになっている脚本なので小説家を演じるのは初めてでしたけど、それなりに渡邉監督とイメージは共有できていたのではないかなと思います。演じているのを見て監督がどう思ったかはわかりませんが(笑)」
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涼夏
「渡邉監督とは役作りについて撮影前に話したりしましたか?「この小説家を演じてね」とオファーが来たと言われていましたが、小説家をこう演じてほしいとか」

星能さん
「基本的には渡邉監督って僕の経験によるイメージですけど、役者を信用していらっしゃるのか、そんなに演出つけないんですよね。「こうしてください」とか指示は特別なかったと思います。テイクもあんまり重ねるイメージはないです。「今のシーン、演技よかったのかなぁ」と僕が思っているときには監督は次のシーンの準備をすでに始めていました(笑)」

涼夏
「では、星能さんがイメージした“私”がそのまま映像の中にはいるんですね。今回台詞はなく、表情だけをカメラで抜かれていて、そこにナレーションで“私”の気持ちが入るという形になっているシーンも多くありますが、ここは撮影が先ですか?」

星能さん
「ナレーションは後でしたね。その日の撮影後に撮影したシーンのナレーションを録ったりしていました」

涼夏
「そのあたりの尺は監督が考えてカットをかけていたということですね」

星能さん
「渡邉監督はそういうところは計算されているとは思います。カット割りとか計算されていて素晴らしいセンスで、編集がお好きな方ですし、演者としてはいい瞬間を捉えてくださいます」

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涼夏
「カイマミさんとも特には撮影前に役についてのお話はしなかった感じですか?」

星能さん
「はい。あまりしなかった感じです。カイマミさんは大阪在住で、僕は金沢で、お話する機会が撮影前はあまりなかったような。ちょっと間違えていたらすみません(笑)。撮影前だったかな撮影後だったかな。能登に行ったんですよね。「夫婦ってなんだろう」みたいな会話とかしたのかな?あんまりおぼえてないな(笑)。役作りに関しては現場で話したりしていたと思います」
(カイマミさんに確認したところ能登に行ったのは撮影前でした。)

涼夏
「撮影は監督のホームグラウンドな土地だと思われますが、前も違う作品で監督の家に泊まったという話をされていた気がします。この作品もそうですか?」

星能さん
「たしか2016年に監督の家で合宿スタイルでの撮影でした。合宿スタイルと言っても、ひとりひとりに部屋はあって、とても快適でしたよ」

涼夏
「合宿スタイルの撮影は楽しそうですね。ではその時にカイマミさんともお話されたんですね。カイマミさんの佇まいに真似出来ないアンニュイさと脆さが共存している感じがします。カイマミさんのお芝居を受けている役割が“私”にはあると思いますが、現場で変わっていったことはありますか?」

星能さん
「カイマミさんは真摯に役に入り込むのが印象的でした。カイマミさんにしか出せない表情などを目の前にして、うまく言えないんですけど、演じている自分とカイマミさんの世界に入り込んでいく自分がいました。現場は毎日刺激的でしたね。「うまく言えない」っていうのが実はたいせつだと思っていて。その言葉を演じながら探すみたいな。結果、劇中のモノクロームに彷徨う夫婦としてその場にいられたんだと思いました」

涼夏
「その星能さんが演じながら探る感じは劇中の“私”に見事にリンクしていると感じます。二人の距離感が次第に近づいていく、いや違うな、“私”が寄り添う感じになっていく気がして。これはカイマミさんと星能さんの芝居の相乗効果ですね。夫婦を話のテーマに入れたのは渡邉監督ですが、この作品を通して夫婦やパートナーについて考えたりしましたか?」

星能さん
「僕は劇団研修生を経て今に至るのですが、舞台や演じる場所というのはとてもこわいところだとも、ずっと考えるところだとも教えられてきました。そのことに俳優は演じる度に襲われる。この撮影時にそんな時があったと思うんです。その瞬間を監督は(撮影兼任で)カメラを回して記録し、時には不安の中を彷徨いながら演じる僕たちを見守り、映画という方法で表現しました。夫婦として演じることで、考えるというよりは再度セリフを発するときやひとつの動作にしても、「夫婦とは」「夫婦なら」と想像することが多くなりました」

涼夏
「その「夫婦とは」「夫婦なら」と想像する時、イメージする夫婦とは誰かモデルがいますか?」

星能さん
「イメージする夫婦やモデルというのは正直いないです。僕は結婚していないし、離婚歴もないのですが、目の前で一緒に演じているカイマミさんもそうだし、知り合いや友人と話していて「この人と結婚して夫婦になったらどういう言動を自分はするのか」みたいなことは考えたり想像したことはありますね。これは少し失礼かもしれませんが。そして、結婚や離婚経験がないけど、作品でそれを演じるためには想像したり考えたりすることが必要で、演者として楽しみでもあり同時に悩むところなんですよね。それが飽きることなく出来るから俳優を続けていけるんでしょうけど」

土手と川と星能さん

涼夏
「星能さんって出演作の中で土手や川沿いにいること、多くないですか?『別れるということ』もそうでしたよね?」

星能さん
「渡邉監督の作品に出るとそうなりますね(笑)。渡邉監督は当時、二子新地に住んでいて、すぐに多摩川でしたから。渡邉監督は世田谷線に住んでいた時は『高井戸ラバー』という映画を撮ってましたよ。その映画を観て、「次回作のオーディションを受けよう!」と思ったんです。見事に落ちましたけど(笑)。でも、僕の実家(金沢)もちょっと歩けばすぐ川沿いに出ます。プライベートでも散歩したりしますね。セリフをおぼえるためにぶつぶつ言いながら歩いたり」

涼夏
「岐阜のMKE映画祭に打ち上げから駆けつけた作品なんでしたっけ?」

星能さん
「『ジェントリー土手』ですね。あれも多摩川で、僕は一瞬しか出演しない草野球の男(笑)。」

涼夏
「あの一瞬も土手でしたね。あのカットをなんか覚えていて。渡邉監督作品ではないですけど、『センターライン』は土手はなかったでしたっけ?なんかあったような」

星能さん
「最後のシーン川沿いでしたね(笑)。」

涼夏
「記憶間違ってなかったですね(笑)」

涼夏
「渡邉監督の家の近所なのに妙な別世界感があるのはモノクロだからですかね?撮影される側は総天然色でしょうけど」

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星能さん
「海とか川沿いって「自主映画あるある」でよく使われますよね。でもそれって今の日本の映画製作の環境が生んだところもあると思うんですよね。予算がもともと自主映画はないということもありますが、商業映画とか、有名な俳優が出る、とかだと堂々と有名な建物や観光地使ってますよね(もちろん好意的かつ厚意的なロケ地などもありますけど)。自主映画にももっと理解を持って、ご協力、ご支援いただけたらと思っています。もともとはカラーで撮っていましたが、実は周りの草とか思いっきり青々としていたりして、カラフルで情報が多いと感じて監督がモノクロに変えたそうです」

涼夏
「後から編集で変えたんですか!これはモノクロがいい絶対。色はない、味がよくわからない。記憶もはっきりしない。渡邉監督の死生観も見えて興味深いです。タイトルに幽霊も出てきますが、星能さんは幽霊ってなんだと思いますか?」

星能さん
「他のインタビューでも話しましたが、幽霊=こわいとか怨念とか成仏できなかったことで現れるとかはもちろんあるとは思いますが、現世にいる人たちを見守っている幽霊もいるんじゃないかなと。それって幽霊じゃなくて守護霊かな」

涼夏
「いや、見守っている浮遊霊とか、地縛霊もいるかも(笑)」

星能さん
「幽体離脱って言葉もありますけど、演じている時だって演じている自分を俯瞰している自分みたいなのがいたりしませんか?」

涼夏
「星能さんは俯瞰出来る役者さんなんですな。さすがです」

星能さん
「いやいや、俯瞰できるというか、演じていて「やばい、セリフ出てこないな、自分」とか素になってるだけかもです(笑)」

人と人とを繋げていると自分にもいい出会いがある

涼夏
「コロナ感染予防時期ではありますが、上映の後、お客様からの感想は聞かれましたか?」

星能さん
「舞台挨拶の回が終了後に直接感想をお伝えいただいたりしました。「もっとお話したいですが、コロナ禍ですから」とサササっと感想をお伝えして帰られるお客様の心遣いもうれしかったです」

涼夏
「SNSでも感想たくさん見かけました。撮影から大分経っていますが、改めて今、渡邉監督と何か話したりしましたか?」

星能さん
「舞台挨拶の移動の際に「こんな感想いただいたよ」とかはしました。あとは新作の話とか、今後の上映のこととか、世間話もしてましたね」

涼夏
「お二人が会うと思い出話より、これからの話をされているのがいいですね。何かまた生まれそう。ロードショーをきっかけに渡邉監督がどんどんメジャーになっていくかもしれません。先日も新作のオーディションをされていたそうですが、『別れるということ』のような星能さん×渡邉監督のタッグは今後も期待していいですか?」

星能さん
「渡邉監督は有名になりたいとかメジャーになりたいとかそういう気持ちがない方(たぶん)ですけど、インディペンデントのシーンでもっと評価されるべきだと思うし、企画などにも柔軟に対応できる方なので、いいプロデューサーがいたらと思います。
例えば岡田深さんは『川を見に来た』は僕と渡邉さんの企画で、僕が岡田さんたちをキャスティングして、そのあとは岡田さんがご自身で渡邉さんに企画を持っていって『そんな別れ。』で映画祭でグランプリを受賞しました。俳優だけじゃなくて、社会であってもそうやって人と人を繋げたりするきっかけがあると結果、いいものが生まれると思っています。積極的に惜しまず、人と人を繋げていると、やっぱり自分にも素晴らしい出会いに恵まれたりする。そうして渡邉さんは出会った俳優に光があたるように尽力されてる監督だと思います。
みんな渡邉さんに撮ってもらったらいいのに(笑)」

涼夏
「いよいよ9/10日から名古屋シネマスコーレで上映が始まります。前回の星能豊特集上映のきっかけがこの作品ですが、名古屋の方に星能さんから作品を紹介してください」

湖畔の映画祭にて 右:渡邉監督 左:星能さん

湖畔の映画祭にて
右:渡邉監督 左:星能さん

星能さん
「名古屋シネマスコーレでロードショーということですが、『土手と夫婦と幽霊』は湖畔の映画祭で主演俳優賞をいただきました。自分の演技って作品に出れば出るほど、そのときはもちろんベストを尽くしていますが、上手いと思うことはほぼないし、次こそは次こそはと続けています。そのときの審査員にシネマスコーレの坪井さんがいて、特集上映のお話があり、まさか実現すると思いませんでした。「金沢在住の俳優・ホシノ」って誰だよ?って感じなんですけど(笑)

そんな無名の役者にも光やチャンスを与えてくださいました。もう、感謝しかないですよね。少し時間がかかりましたが、こうしてシネマスコーレに再び帰ってきました!あ、作品のこと全然紹介してないですね(汗)

小説家が自身が書いた小説の世界に迷いこむパラレルストーリー。渡邉監督の屋号であるザンパノシアターではおなじみのキャストさんたちも素晴らしい演技合戦を繰り広げます。
ぜひ僕の思い出のミニシアター・シネマスコーレにお越しください。お待ちしております!」

 

彼を通して知る“私”が書いた私小説の世界。
今生きている世界は虚構か現実か。
この世界に彷徨う私たちに不思議な感覚を与えてくれる。

映画『土手と夫婦と幽霊』https://www.dotefufu.com/  は9月11日~17日シネマスコーレで公開(15:10~16:10で上映)。
11日、12日は星能豊さん、カイマミさんの舞台挨拶がある。

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