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第36回CINEX映画塾『ひとよ』白石和彌監督トークレポート

2020/01/30

あの日がなければ人生が変わっていたかもしれない、あの日があったから今がある。
そんな経験は誰にでもあるだろう。

映画『ひとよ』はある家族の一夜から15年経った今を描く。
変わるためにあの一夜はあった。夫の暴力から子どもを救うために夫を殺したこはるは、15年後に約束通り家に戻ってくる。

白石和彌監督がCINEXに満を持して初登壇。
第36回CINEX映画塾『ひとよ』白石和彌監督のトークレポートをお届けする。

白石監督
「素敵な映画館ですね。岐阜に着いてロイヤル劇場を見たいと行って見させていただいて、中にも入らせていただきました。フィルムで未だに上映していて500円で観られるなんて東京にはもうないですから(注:2月22日から600円に変更)。贅沢な空間がまだまだあるんだなと思いました。そしてフィルムがいかに美しいか」

後藤さん
「森繁久彌さんの『駅前競馬』が上映中で監督にも観て頂きました。フィルムの状態がいいですよね」

白石監督
「いいですね。『ひとよ』は4Kで撮影しましたし、『凪待ち』は6K、7Kぐらいで撮影したりしているんですが、世界の映画人みんなが目指すところはフィルムなんですよ。フィルムに如何に近づけるかなんですが、それが出来なくてここ数年やっと違うアプローチを始めています。でもやっぱりフィルムを観ると違うなと思います。是非ロイヤル劇場さんでフィルムの上映を観ていただきたいですね」

後藤さん
「ロイヤル劇場は岐阜市の宝だと思っています。監督は岐阜市に来られることは今までにあったんですか?」

白石監督
「小学1、2年生の頃、親の都合で名古屋に住んでいたんです。その後、北海道に戻るんですが、その時に叔母が一時的に岐阜に住んでいて。どこかまでは覚えていないんですが、団地でした。そこに遊びに行った時に見た風景を何となく覚えているぐらいで来たことがないに等しいです」

後藤さん
「柳ヶ瀬の商店街のイメージもなく」

白石監督
「初めて歩きました」

後藤さん
「白石監督は2010年に『ロスト・パラダイス・イン・トーキョー』で長編デビューされて、その後2013年に『凶悪』で映画賞を総なめにし、綾野剛さん主演の『日本で一番悪い奴ら』、『牝猫たち』、蒼井優さんが日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞した『彼女がその名を知らない鳥たち』も大評判で、2018年には『サニー/32』、大傑作『孤狼の血』、『止められるか、俺たちを』の3本、昨年は『麻雀放浪記2020』、『凪待ち』そして『ひとよ』と年間3本ずつ、しかもとてもクオリティの高い映画を撮られているということで我々映画ファンはとにかく監督のお話が聞きたくて。やっと実現しました」

白石監督
「なんか改めて自分の撮ってきたものを聞くと恥ずかしいですね。そのほとんどの作品に友人のピエール瀧さんが出ていますね(笑)。今は色々あって休職中ですけど」

家族の話を描く

後藤さん
「今日観ていただいた『ひとよ』は映画賞のノミネートもされまして、今後も注目される作品だと思っています。『ひとよ』の企画はどんな感じで始まったのでしょうか」

白石監督
「今まで家族の話はやっていなかったんですが2018年に『凪待ち』、2019年に『ひとよ』を撮りました。『ひとよ』の方が企画は先にありまして、『日本で一番悪い奴ら』を撮影する前くらいの時期に舞台を観たプロデューサーから声を掛けられて。観たら面白くて。これだったら家族を描けるんじゃないかと思いました」

後藤さん
「もともと桑原裕子さんの劇団の舞台なんですよね?実際舞台もご覧になったんですか?」

白石監督
「劇団KAKUTAというんですが、他の作品は観ているのに、これだけは観に行けなくて。後から映像を観たり、戯曲を読んで行間とか舞台そのものに込められている思いに打たれまして、映画化するならぜひやりたいと思いました」

後藤さん
「この映画は真の家族を真っ正面から監督が捉えられていて、ちょっと戸惑いもあったりして。情報量の多い映画だなと東京国際映画祭で初めて観た時に思いました。役者さん達の演技の圧が凄すぎてそれを咀嚼出来ないまま映画祭のトークショーを聞きました。一昨日ここ岐阜CINEXでもう一回観たら倍以上のきめ細かい人の描写が見えてきてしっかり作られているなと改めて思いました」

白石監督
「そんなに褒められると照れるのでやめてください(笑)。あのトークショーの時の質問で覚えているのが「なぜ『でらべっぴん』なんですか?」という質問です。エロ本は『でらべっぴん』じゃないといけないんです。その時に話したのは今年オリンピックがあってコンビニからエロ本がなくなっていく。それは健全な世の中なんだろうか、と。エロ本があることによって救われる家族もあるかもしれないのに、なんて不健全な世の中になるのかと冗談半分に話していました」

後藤さん
「田中裕子さんはじめ、出演者陣が素晴らしくて。キャスティングは監督の思い通りだったんでしょうか?」

白石監督
「戯曲と映画の大きな違いはもう少し母親が主役に近い描き方をされていて、帰ってきた母親の視点からタクシー会社のその後と子どもたちを描いているんですが、映画は次男というか子どもたちをフィーチャーしていて、母親が割と何を考えているかわからないという風にしているんです。でも母親は話の中心なので、母親を誰に演ってもらおうと考えた時に、かねてから出ていただきたかった田中裕子さんに何としてもお願いしたいというのが第一条件で、裕子さんが決まってから子どもたちを考えました。お願いしたら「当分空いてないのでお断りします」と言われました。「空くまで待ちます」とお話して結局1年半ぐらい待ったんですかね。「そこまで待ってくださるならやらせていただきます」と言っていただいて企画が進みました」

後藤さん
「いきなりタクシーで夫を轢き殺すというショッキングなシーンから始まりますが、あの冒頭のシーンも舞台にはあるんですか?」

白石監督
「舞台はタクシー会社の事務所と中庭、家があるセットなので、殺す瞬間というのはないです。お母さんが「今殺してきた」と言うところから始まります。だから事務所の中のシーンからは舞台にもあるんです」

後藤さん
「それから佐藤健さん、鈴木亮平さん、松岡茉優さんと決まったわけですね」

白石監督
「田中裕子さんが決まった後に、次男を健くんにお願いしたいと思いました。健くんが次男なら誰が兄弟にいいかなと考えて鈴木亮平くん、あの兄弟を兄弟にしてくれる妹は誰なんだろうと考えて松岡茉優さんとキャスティングを考えていきました。鈴木亮平くんに至っては『西郷どん』をやって原田眞人監督の『燃えよ剣』に出演していて、丸2年現代劇をやっていなかったんです。だから現場でも「このドアが気持ち悪い」と。時代劇にドアノブとかないですからね。佐藤健くんもこの映画の直前まで『るろうに剣心』の新作をやっていて。鈴木亮平くんは『燃えよ剣』では近藤勇なので、二人とも人斬りじゃないですか(笑)。どんな家族になるのかなと思いましたが、そこは皆さん役者なのでちゃんと切り替えてくれました」

後藤さん
「松岡茉優さんは昨年も『蜜蜂と遠雷』、一昨年は『万引き家族』と本当に素晴らしい演技で」

白石監督
「松岡さんは現場で見ているお芝居と出来上がった時の印象が演出していても変わっていくんですよ。編集していても、ダビングという音入れ作業をしていても変わっていくんです。映画をその都度生き生きと監督に観させてくれる女優さんだと僕は思っています。そういうところがいろんな演出家に引っ張りだこになる理由なんだろうなと」

後藤さん
「お墓参りに行って父親の墓に「さらに死ね」と言っているのとか凄いなと思いました。至るところの間合いが見事で」

白石監督
「あのシーンが鈴木亮平さんと松岡茉優さんの兄妹の最初の撮影シーンなんですね。兄妹になるだろうと想像してキャスティングしていても、実際に現場で並んで動くまで本当の兄妹に見えるか演出家には不安があるんです。そんな不安をあのシーンで松岡さんは埋めてくれました。そのシーンだけでなく、他のシーンでも台本にないちょっとしたしぐさが良くて。肘で相手に合図したり、朝食の時にタブレットを見ているお兄ちゃんにほらほらって言ったりとか。そういうところで家族を作ってくれているんです。計算をしなくてもああいうことが出来るって凄い稀有な人ですよね」

後藤さん
「監督は今までも疑似家族的な形の人間ドラマを作ってきましたが、今回は真の家族を描いておられます。最初観た時に、カーチェイスのシーンはドラマチックに行き過ぎて、なんかまとめた感があるなとちょっと批判的だったんです。でもよく観ると一人一人の感情が表に出てくる。佐藤健さんの跳び蹴りに至るまでのからみは凄いと思いました」

白石監督
「そうですね。映画を作るとき大体クライマックスは最後の方に撮るじゃないですか。ということは極端なことを言うと、クライマックスを撮るまでに大体演出は終わらせておかないといけないんです。そこまでに俳優との関係性で作り上げていたもので、クライマックスが自動的にクライマックスになるのが理想で、これだけの俳優が揃っていると、その苦労がないんです。最後はこういう風にしたいと言えば、自動的に健くんもドロップキックしてくれたし。あのシーンの撮影前に、「どういうキックがいいですか?」と聞いてきてくれて。健くんはアクション俳優でもあるから「こういう風に見せたい」と話したら、「それは蔵之介さんが痛い思いをするパターンですね」と(笑)」

後藤さん
「蔵之介さんは了解済みなんですか?」

白石監督
「蔵之介さんと健くんが、「どうやら監督がこういう風に見せたいみたいなので、当てちゃってもいいですか?」と話していて、僕の意図を誰かが汲んでくれて演出を始めてくれるんです。そこに至るまでの過程で僕が引き込まなくてよかったので楽だったなと思います」

後藤さん
「蔵之介さんの役は、タクシー会社で家族のように接する擬似家族的な立場で、その人の家族のエピソードも入れられて、ちょっと最後どうなるのかなと思いましたが、クライマックスシーンで真の家族と擬似家族が融合して、「息子が本当の息子ではないのに、親が本当の親ではないのに」という演出をやられていて、ボーダレスなやり方をやられたなと思いました」

白石監督
「たしかあそこは桑原さんの戯曲からあったものです。戯曲を映画化する時、言葉というかセリフの量が6割ぐらいになってしまうんですよ。説明する分量もエピソードも。いろんな手で補完はしていくんですけど、補完しきれているのかなという疑問もあって。あのシーンは一つの面白いところでもあるので、俳優を信じてやってしまおうと。初見では苦しくても、2回目を観てすっと入っていただけたなら半分くらい成功ですかね」

後藤さん
「何回も観ればもっと細かく入って来て、無駄なセリフが削ぎ取られていることもわかります。白石監督って細かいんだなあって思います」

白石監督
「…。そうですよ(笑)。大雑把に作っているように見えるかもしれませんが」

後藤さん
「撮影は早い方ですか?」

白石監督
「どちらかと言えば早い方です」

後藤さん
「それは脚本の段階で詰めるんですか?」

白石監督
「脚本の段階で詰められるものは詰めます。現場に期待して敢えて放っておくものもありますが」

後藤さん
「音尾琢真さんが白石監督の作品に続けて出演されていますが、同郷なんですよね?」

白石監督
「旭川西高校の1年下なんです。当時は知らなくて、僕が監督デビューする前からTEAM NACSとして北海道だけでなく全国的に有名になっていたんです。『凶悪』の時に誰かからあの監督が同郷らしいということを聞いて、彼から会いたいと行って来てくれました。上から来るのかなと思ったら初めから焼酎を作ってくれて、なんて便利な後輩がいたんだと(笑)。ああいう人がどういう形でも出てくれるというのは演出家としては心強いです。ピエール瀧さんも今は休職中ですけど、僕にとっては飛車角のような存在なのでいつかまたご一緒できたらと思っています」

後藤さん
「女優では筒井真理子さんとか韓英恵さんとか」

白石監督
「裕子さんが決まって、あの兄弟の布陣になった時に、これは脇にも上手な人を入れていこうという一念でキャスティングしていきました。擬似家族と本当の家族という話で言えば、タクシー会社の仲間は擬似家族だけれども、そっちの方が本当の家族のように楽しそうに見えるように、本当の家族との対比として見えるといいなと考えたキャスティングです」

後藤さん
「白石監督に使われたいという役者さんが多くいるというのは嘘じゃないですね。MEGUMIさんもよかったですね」

白石監督
「そう言って頂けるのは嬉しいですけど、映画は一緒に作るものですから。MEGUMIさんすごくなかったですか?MEGUMIさんは『孤狼の血』でワンシーンだけ出て頂いたんです。そのシーンの撮影が撮影初日か2日目で、役所さん相手にこんな芝居するんだ!ってびっくりしたんですよ。いい役があったらまたお願いしようと。今回お願いしたら見事に芝居で応えてくれて素晴らしい女優さんだと思います」

 

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最後に見つかったロケ場所

後藤さん
「監督のキャスティングも素晴らしいですが、さっき一緒に柳ヶ瀬の商店街を歩いて思ったんですが、本当にまちをよく見ていらっしゃるなと。地方でロケされることが多いですよね?タクシー会社の雰囲気が良かったですが、あれは本当のタクシー会社ですか?」

白石監督
「タクシー会社は半年探しました。通常営業しているところは当たり前ですがお借り出来ないので、なんとかタクシー会社に見えて雰囲気がある所を探したんですが、理想とするタクシー会社を見つけることができました。中庭があって、母屋があるところなんてないんですよ。あれは舞台の設定だから。これは田中裕子さんも子ども達も決まっているのにロケ場所がないから中止かもって思いましたが、撮影三週間前くらいにロケ地が見つからずに諦めて帰る道すがらに見つけることができました。もう一度原点に帰って、見てみようと行ったのがここだったんです。茨城で。社長は朝四時半に来ると聞いて、僕とロケ場所担当のスタッフが朝4時から毎日待って口説きました」

後藤さん
「そういう許可を得るって大変なことなんですね」

白石監督
「そうですね。僕はまちを見るのが大好きで、ロケ場所を知らず知らず探してしまいます。映画を観る時は、どの映画もロケ場所がどこなのか観るんですよ。いろんな映画を観る一つのコツじゃないですけど、例えば衣装とか何かこだわって見続けていると、衣装だけではないいろんなことが見えてくるんです。ロケ場所を最初に観続けていると、そこにあるものと、美術スタッフが行って飾ったものとがなんとなくわかるんです。その映画を作る意図がそこからわかる。何かにこだわって観るというのはお勧めです。一応映画塾ということなのでお勧めしました」

後藤さん
「スナックも実際にあるところですか?」

白石監督
「はい。『凪待ち』の時もそうだったんですけど、地方は特にフィリピンからの出稼ぎの方の店が多くて。茨城の現地の方にスナックを紹介してもらい、そこのフィリピンの女の子にエキストラで出てもらいました。地元に行った時は地元の方の生活を覗きながらやった方が地に足がつく映画になるんです」

後藤さん
「それは確かに感じます。わたしはタクシー会社の手形のサインが気になりました」

白石監督
「例えば、あのタクシー会社でいうと、何でもないところにCGを使っています。タクシーが出ていくところを引きで撮ると、結構煙突とか電柱がありますが、あれはCGなんです。タクシー会社の脇に大きい新しめの家があったんですが、それを消して煙突を立てています。茨城のまちを見た時に感じた匂いのようなものを入れたいと思って最近はCGもそういう使い方をしています」

後藤さん
「タクシー会社から見える風景にはファミレスも入っていて、いつも見かけるどこにでもある地方という感じがしました」

白石監督
「普段はそういうところを避けよう、避けようとしているんです。さっき見せていただいたような商店街とかをもう少し豊かに描きたいなと思っているんですが、『ひとよ』に関しては茨城は方言も入ってくるんですが、方言もなくしてどこにでもある地方感を出したかったんです。見つかったタクシー会社もああいう道路上にあったので、ファミレスを入れた方がいいかなと思い、敢えて残しました」

観客から
「千鳥の大悟さんが出ていらっしゃいます。役者をメインで活動していない方を起用するアンテナはどういう時に働きますか?」

白石監督
「普段音楽を聴いたり、どこかのフェスに行ったり、飲んでいるときに周りにどんな芸人が好きか聞いてみたり、娘もテレビを観るので「最近学校でどんな人が流行っているの?」と聞いたり。僕の仕事は被写体を探す仕事でもあります。日本の映画やテレビのキャスティングってどの作品を観ても同じキャストに感じてしまうことがあります。メインの人は仕方なくても、もう少し遊べるキャスティングというのがあると思います。『凶悪』のリリー・フランキーさんとピエール瀧さんは、予算が少ない作品だからこそ勝負したキャスティングをしたかったという狙いあってのキャスティングでした。予算が大きくなればなるほど、プロデューサーは「ここも有名な人を出せ」としか言わないんですよ。それは業界全体が疲弊してしまいます。芝居を演じる本人の興味がないとだめですけど、敢えて遊べるワンシーンだけ出てもらったりということをよくやります。それには顔のつくりとか僕の好みもあります。イケメンが嫌いとか(笑)」

観客から
「冒頭、子ども達が母に追いつこうと後ろからタクシーで追いかけるシーンや、クライマックスで子供たちが母を追いかけるシーンで、あんなの追いつけるはずがないと友人から言われました。映画のダイナミズムに比べればどうってことないんですが、監督としてはリアリズムとそうじゃないところのバランスをどのようにとっておられますか?」

白石監督
「映画の質やジャンルにもよると思うんです。割とこの映画はリアリズムの方向性にあるので、出来るだけそこは普通の人が思うリアリズムの中に収めたいという思いがあるのと同時にだからこそ最後に跳び越えたいという欲望が出て来ました。跳び越えたいと思う瞬間というのはいろんな意味での倫理観とか世間一般にあるルールとかそういうものを跳び越えた瞬間に人間ってきっと感動するので、敢えてやっているところがあります。だから「なんで佐藤健運転うまいねん」とか思いますよね?(笑)。僕も思いながら撮っていましたから。台本にはタクシーがクラッシュするとは書いていなかったんですが、最終的にぶつからないと、ぶつかり合わないと、心の一端を見ることが出来ないという映画であればぶつけなければと気付きました。自分の中に欲望が生まれた瞬間、バランスは崩してもいいやって思ってしまっていますね」

観客から
「実は映画のカット数を数えていまして。『ひとよ』は745カットで、『凪待ち』が699、『止められるか、俺たちを』が746です。120分ならこのくらいなど編集の際にこだわりとかテンポを決めるものはありますか?」

白石監督
「ジャンルによってテンポ感は変わってくるので、一つの映画の中でじっくり見せるシーンとテンポ良く見せるシーンというのは意識しています。一番気にしているのは体感です。2時間半あるから長いとかじゃなくて2時間半もあっという間に観られればいいわけじゃないですか。辛いか辛くないかの境目までは許容していく感じです。「長く感じた?どうだった?」と聞いてこの映画におけるベストの体感時間がどれぐらいかは考えてやっています。カット数の分析はしたことがないです」

観客から
「監督が映画の中で一番好きなシーンはどこでしょうか」

白石監督
「中庭でタバコを三人で吸いながら、なんでこのタイミングで『でらぺっぴん』やねんと言っているシーンですね。母親が何を考えているのかずっとわからない中、兄弟に共感が生まれるからでしょうね。撮っているときから僕も含めてみんながこの人物像で正しいのか、このアプローチで正しいのかずっと不安がありました。でもこの瞬間だけは間違いなく『何でやねん』という感じで心が一つになって。そういう気持ちが見える瞬間は何かしらの気持ちよさがあって、久々に映画を撮っていてその気持ちよさを感じられました。単純に楽しかったですね。健くんも「監督、今の気持ち良かった!こういうことですよね?」と言ってくれて亮平くんも「そ、それ、お、俺も感じてた」と言ってくれて、「いや、今もう本番中じゃないから(笑)」と盛り上がりました。「そんな気持ちだからこのまま飲みに行っちゃうか!」とか言いながら誰も飲みに行かないんですけど(笑)」

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上映後、CINEXロビーにて

 

ラストシーンのこはるの表情にこの役は田中裕子さんで本当によかったと思った。
他人にはわからない一夜の自分の想い。
観終わってからもあの表情が脳裏から離れずにいる。

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