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役者も観客もしびれるとがった作品をー『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』三上博史&宅間孝行監督インタビュー

2019/01/25

1月18日から公開中の『LOVEHOELに於ける情事とPLANの涯て』。

昔のレコードやCDでいう所のジャケ買い(ジャケット買い)をしたくなるようなチラシに魅かれる。

監督はタクフェスを率いて自ら役者・脚本家・監督と多彩な活動をしている宅間孝行さんだと聞いてまず驚いた。演劇にしてもドラマにしても映画にしても宅間さんが書いた作品にこんな雰囲気を醸し出す作品はなかったからだ。『映画館で[一時停止]や[巻き戻し]はできません』というキャッチコピーもあり、鑑賞したところ宅間さんならではの巧妙な伏線の数々、それを伏線なのかどうか悩ませてくれる役者陣の絶妙な演技に観ているこっちもワクワクさせられた。40分のワンシーンを1つのカメラで1カットで撮影したというこの作品。役者たちの緊張感さえもがこの作品に面白さの一つのスパイスとなっているとわかる臨場感。舞台を見ているようなそんな感じも受ける。伏線だらけで、ネタバレしては面白くない作品なのだが、この作品の面白さはどうしても伝えたい。1月20日名古屋センチュリーシネマで行われた舞台挨拶前に宅間孝行監督と映画の主演は14年ぶりという三上博史さんにお話を聞くことが出来た。ネタバレは出来ないけれど宅間監督のアイデアから生まれたこの作品。制作秘話をお話いただいた。お二人の信頼関係がとてもよくわかるインタビューとなった。

Q.今までの監督の作風とはガラッと違った作品になっていますがこういった作品に取り組んだ意義を教えてください。

宅間監督
「ローバジェット(低予算)を前提に何かいいテーマはないかとプロデューサーと話をしていまして。僕の中にワンシチュエーションで、こういうアイデアがあるというのを話していたんですが、どうせそういうことをやるんだったらいろいろな制約というかやる側にとっても観る側にとっても観たことのないことが一つ二つ三つ四つとあった方が差別化されるからそこをこだわってやりたいなと。まあそれがうまく行くか失敗するかわかんないですけど、観たことがある何かよりも観たことのない何か、要はとんがったものを作りたいなと。内容としてはどっかでやっているような。タランティーノの匂いがしたりとか。僕は48歳なんですけど僕らが20代の頃に出てきたセンセーショナルな作品に割と影響を受けていたりするので、そういう匂いのある作品を作ってみたいなと若いころからずっと思っていて、やるならタランティーノが観たら喜びそうな作品を作りたいなと思いました。ハンバーガーも『パルプ・フィクション』などのタランティーノ作品をオマージュしたわけではないですけどハンバーガーをネタにというかそこから話を広げていった感じなんです」

役者を知らなければ役者を撮れない

Q.三上さんは役者としてどういうところに魅力を感じてこの作品に出てみようと思われたんですか。

三上さん
「今までとは違うことではあると思うんですが、ここまで役者を信用してくれる作品、監督ってないと思うんです。一蓮托生以上に俺たちがこけたらみんなコケちゃう(笑)。あの手この手でこの人の悲しみってこういうことなのねって現場でずっと稽古を若い新人につけるようなことは今はできないじゃないですか。だから横から撮ろうとか斜めから撮ろうとか背中を移動して撮ってあげようとか落としどころを作ってもらっているわけです。でも今回はカメラをパーンと置いたまま僕らが下手したら作品を台無しにしますからね。それぐらい信用してもらってやる。だからこそ出来た時にはそういうものを見てもらえるという部分では役者としてしびれる撮影ですよね」

宅間監督
「もしかしたら一番最初こういう風にやりたいっていって稽古を見てめちゃくちゃで終わってたかもしれないしね(笑)」

三上さん
「それはもうものすごく愕然としてたでしょうね。あ・・・ダメだったのねって(笑)」

Q.芝居はリハーサルをしながら磨いていく感じなんですか?

三上さん
「芝居を固めるってことでいうとあらゆる角度から宅間さんと悪だくみしながら。「じゃ、この伏線はこれぐらい打っておきましょう」とか「それは伏線の伏線の裏の裏ぐらいにしておきましょう」とか。カメラはここに置くのでこの範囲でお芝居をしてくださいとか。でもその中だけだとリアリティがないと思ったらじゃあまた外へ出て外からやってとか。そういうのも含めて稽古で。一生懸命それを再現しようと本番に臨もうとするんだけどとんでもないことになっちゃったりとかするし。それを良しとするか否とするかは宅間監督にかかっているので。楽しかったですね」

宅間監督
「要は普通の映像製作だと素材を集めるんですよ。それを編集でどういう風につなげていくかというのが映画なんですね。芝居をしている僕らからすると現場でやっているのは芝居をしているのではなくて素材を撮られているという感覚が今は特に大きいんです。僕は自分でやっている側の人間でもあるので役者の芝居がきちんと見られるんであればそれを撮ってくれないと意味がないと思うんです」

三上さん
「そうなんです!」

宅間監督
「なので逆に言うと現場にポンって来て芝居をやって撮ってはいOKってなると「大丈夫ですか?」とこっちが思うときもあるし、監督がOKなら大丈夫なのかなとも思いますけど、そもそもの映画の考え方って演じている人達が一つの作品を自分たちなりに解釈、咀嚼して演じた時に生まれた何かを撮る。もちろん結果的に素材として切り取るという作業もありますが、そこのベースがないまま俳優たちが駒のようにというのがなんかもったいないなと思うし、そこに耐えうるべき俳優さんでないときついので現実的な問題としてカットを割ってどうにか編集してごまかしているということもあるんです。ちゃんと俳優と向き合って、俳優の持っている力で物語を進めていく撮影だったんです。木村大作監督も言ってるじゃないですか。「カメラはあるだけでいい、置けばいい」って」

三上さん
「岩井監督も昔同じことを言ってらして。こんな話面白いだろうなという話をしたら僕に映画を撮れ撮れっていうわけですよ。なぜかという話をした時に映画の歴史ってそんなにないじゃないですか。小さな劇団というか演劇の一団の中から役者同士がやりあっているものをどうやって記録するかと考えた時に監督という職業はなかったわけで、こう撮ろうと役者同士が決めていたのが独立して職業になったわけで元々は役者を見せるためのもの。役者をやっていないとわからない職業だったわけです。僕が以前ニューヨークのプレハウスというところで芝居の勉強をしていた時に一週間に一回発表会があったんですけど、プレハウスに参加している人の内、役者志望は半分ぐらいしかいなくて。残りの半分が監督、半分は脚本家なんです。別に監督から役者になりたいわけではなくて役者の生理を知りたいらしいんですよ。そのためにワークショップに参加していると。お客さんはそんなに役者の生態には興味ないんですかね?」

宅間監督
「何をすべきが本当で嘘か。これは子供だましでやっているものなのかちゃんと見るべきものなのかを日本ではちゃんと見る側が選ばないといけないんです。今回の作品はいろんな伏線があるんですけどそれって違和感なんですよ。違和感を感じていたところが、最後に「あ、だからああやってたんだ」というのでわかるんですけど、観ている方たちが違和感を感じないんです。というのは割とそういう無茶な設定のドラマとか映画が当たり前になってしまっているからなんです。僕らも現場で「ちょっと整合性おかしくないですか?」と聞くことがあるんですが「大丈夫」と返ってくるので「あ、わかりました…」と返すしかないんですけど、でも結構そういうことが多くて話を見ていてもなんか緩いなと思うんですけどお客さんはそういうものだと思って見ているので、そもそもそこに「おかしいじゃないか!このドラマ」と感じないわけです。60分ワンカットで生放送なんてやるテレビってありえないでしょって思わないですから。あ、これは『カメラを止めるな!』のことですけど(笑)。大前提としてそんな生放送をドラマでやるわけないでしょっていう疑問は感じずにそう言われたらそういうものなんだと思って受け入れてしまう。ギャグをやるために無茶苦茶SFな設定を入れているものを別になんとも思わず観てしまう。この作品の冒頭、三上さん演じる間宮が子供から電話をもらって奥さんとも話すんですね、その後に奥さんが制服を来て乗りこんできても全く違和感として捉えていないと「この映画おかしくない?すぐ奥さん来ちゃうの?作り甘くない?」って思ってもらえるように伏線を仕込んで作ってるんですけど、「別に来てもいいんじゃない?」って思われるとなると…」

三上さん
「あてがわれたものに対して疑問を持たないというか、観る方も想像力がいらないようにして見ているんですよね。そういう作品が多いからなんでしょうけどまさにもったいないですよね」

伏線を張っても気が付いてもらえなければ意味がない

Q.説明過多になっていることに慣れてしまっているというか、疑いがないというか…

宅間監督
「こちらからいうとおかしなところを突っ込んでほしくて作っている伏線なんですけどみんながそれを素直に受け入れてくれるから、「あれ?なんで?」って観終わって言われる。いや伏線いっぱいあったでしょ?って(笑)。違和感を持って、ダサいドラマが展開されているなと思って見てくれている方がこの映画に関してはひっくり返り感があると思うんですよ」

三上さん
「キャスティングとかもそうですよね。アイコンのように今ってキャスティングするじゃないですか。「この人が出てきたらこうなのね」みたいな。観る前からわかっちゃうみたいな。自分の身は自分で守らないといけないのでそういうイメージがつかないように僕は「この人が出てきたらどっち?」という役者でいたいですね」

大変なのはスタッフでした

Q.ラブホテルでのワンシーン、ワンカット撮影ということでロケハンを入念にされたりとか、スタッフさんとの段取りも相当入念にされたんでしょうか?

宅間監督
「あれはセットなんですよ。倉庫にセットを立てて。この映画をワンセットで1カメでワンカットで行くと決めた段階で美術さんと色々相談して美術さんが素敵なセットを作ってくれました。方向が変わると全部色が変わるシステムになっているんです。こっちだと赤が目立つ、こっちに行くと白い壁が映えるみたいな感じで。ベッドから見ると緑に見える。一応部屋の中の見え方が変わるような計算がされています。見栄えが飽きない。リハーサルは役者のリハーサルが前提ですけど、大変なのはスタッフの方なんですよ。特に録音部はラブホテルの設定で裸になる役者もいてマイクを体に仕込めないのでみんながマイクを持って追いかけるので長回しで映った時点でNGですが実はかなり映っているんです。消したりもしているんですけど、40分カメラを回したときはいろんなところで映りこんでいて、普通の映画ではありえないくらいのことが起こっているんですけど、僕は芝居だけしか観ていなかったので僕としてはOKだったんですよ。後からチェックしたらOKどころじゃないと。じゃあ途中で止めてくれって話なんですけど、誰も長回しは止められないんですよ。どうする。これはやばい、撮り直さないととなったんですけど、三上さんがやらないって(笑)。全部1カットでやると。僕はプロデューサーにお金はかかってもいいから消すところは消そうと。どうしても無理なら撮り直そうと言ったんですけど、三上さんが「ヤダ。」っていうから(笑)。でも実はそこから面白いアイデアが沢山出てきてトラブルがあることでそれを乗り越えることに人間は頭を使うのでよりこの作品に深みが出たという所もあります。それも面白かったですしね。裏話としてDVDにするときの副音声とかで話したらめちゃくちゃ面白いところがいっぱいあります。「あ、ここにサドルバックがあったの消してます!」とか(笑)」

Q.ネタバレ厳禁という作品だとは思いますが宅間監督が紹介するとしたらどのように紹介されますか?

宅間監督
「これは難しいところで。宣伝も前にやった『あいあい傘』という映画もどんな映画かわからないからといってクライマックスの一番いいシーンも予告に入れてるんですけど、「あ、予告に入れちゃうんだ」って思って。ただ興味としては持ってもらわないと1800円払うきっかけにならないので宣伝とクリエイティブは別物だと思っているので任せてしまっているんですけど何の情報もないまま1800円をかけるってリスクがあるので今回はこちらとしてはタイトルとその雰囲気ではなんかあやしい映画だなということを伝えてます。タイトルが長すぎるから宣伝的にはよろしくないとか”ラブホテル”というタイトルがついているとテレビでは宣伝できないとかはありましたけど、そういうことは取っ払って『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』を最初、間違いなく覚えられなかったように、あれでガイ・リッチーに撃ち抜かれた人が沢山いてそういう匂いがする映画かなと映画好きな人から感じてもらうしかないなと思っています。だからネタバレ厳禁は…今回の映画はいろんなお客さんの感想を見ると「エンドロールが終わるまで立つな」と言っていて観てる人は大事なところはネタバレしないようにしてくれているかなと。ただ言ってしまうとどの映画も楽しく見るためにはネタバレは厳禁なわけで…」

三上さん
「でもなんて言ったらいいですかね?」

宅間監督
「何も言わなかったらお客さん来てくれないですもんね(笑)」

センチュリーシネマにて

センチュリーシネマにて

 

ネタバレはしたくない、だけど誰かに話したくなる。1度ではわからないところをもう1度観たくなる。
間違いなくそんな作品だが、この後行われた舞台挨拶では上映後ということもあり、観客からの質問に答える形での舞台挨拶となった。
その内容はまた少し時間をおいて公開したいと思うのでぜひこの映画を一度観ていただきたい。

『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』 https://love-hate-movie.jp/ は現在公開中。
東海地区ではセンチュリーシネマ、ユナイテッド・シネマ豊橋18で公開中。

→この日に行われたネタバレ満載の舞台挨拶レポートはこちら

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