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ロシア発。忠犬パルマと少年の友情と家族の物語(映画『ハチとパルマの物語』)

映画サイトCafe mirageでは地元岐阜で短編映画を上映するイベントMIRAGE THEATREを定期的に開催している。

上映作品募集の際に日露合作の『ソローキンの見た桜』のプロデューサーで、岐阜県出身の益田祐美子プロデューサーからロシアの短編映画『Matthew 19:14』を紹介いただき、昨年上映した(上映時のタイトルは『Pustite detei』)。
『Matthew 19:14』は劇場でロードショー上映しても遜色ない素晴らしい映像、VFXの使われた本格的なホラーで技術の高さに舌を巻いたのだが、その監督が新作では日露合作のメガホンを執ると聞いて完成を楽しみにしていた。

それが『ハチとパルマの物語』だ。

あらすじ

旧ソ連の空港。飼い主とともにプラハに行く予定だったジャーマンシェパードのパルマは、書類不備で搭乗を拒否される。飼い主は仕方なくこっそりパルマを滑走路に放つ。空港に残されたパルマは毎日滑走路で飛行機を見上げて2年間も飼い主の帰りを待ち続けた。その姿はやがて空港のシンボルとなっていく。

時を同じくして、9歳のコーリャ少年が空港に現れる。彼は母親を亡くし、パイロットである父親・ラザレフに引き取られてきたのだが、母を失った悲しみを抱え、良い印象のない父親と暮らすことを嫌がりすっかり心を閉ざしてしまう。しかしパルマとは孤独なもの同士の友情を育んでいく。

ハチ公のような犬がロシアにもいた

渋谷駅の待ち合わせ場所として有名なハチ公の銅像。主人が亡くなってからも10年以上渋谷駅に通い、主人の帰りを待ち続けたハチ。ハチは忠犬ハチ公と呼ばれ、今でも日本中の人々に親しまれている。そんなハチのようにいつか帰ってくると信じて主人を2年間空港で待ち続けた犬がロシアにもいた。それがジャーマンシェパードのパルマだ。

パルマの躍動感に心が躍る。飛行機に並んで走る精悍な姿、空港で逃げ回る姿。そしてコーリャと過ごす時はかわいらしい面ものぞかせる。何か話しているのではないかという表情豊かなパルマはとても魅力的だ。

新鋭の監督が映し出す犬と家族の物語

パルマの話はロシアで3度ドキュメンタリー製作されるほど有名な話だという。4度目の映像化で初のドラマ作品になった。

監督はアレクサンドル・ドモガロフJr.。1989年生まれの若き監督だ。海外留学を経て、演劇大学で脚本・演出を学んだ後、俳優として活動しながら監督として作品を製作してきた。スティーヴン・キングの小説をもとにした短編映画『Matthew 19:14』(2017年/監督・脚本・出演)は、ロシアのKonik映画祭で最優秀作品賞、アメリカのカタリナ映画祭で最優秀ホラー映画賞、ロシアオレンブルグ国際映画祭で特別賞ほか多数受賞した。「スペードの女王」を原作とした『スペルズ 呪文』(2019年/監督)で長編デビューし、ロシア・ディズニーの配給でヒットを記録。ホラー映画だけでなく、バラエティの製作も得意とし、VFXも自身で担当するオールマイティな実力派だ。監督が製作した短編『Matthew 19:14』でホラーの怖さの中に絶妙な陰影の美しさを感じていたが、今回も飛行場の夕暮れや夜のシーンの美しさが際立つ。

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アレクサンドル・ドモガロフJr.監督は脚本も担当した。犬が飛行場で飼い主を待つという実際にあった話に母と死に別れ、父と暮らすことになった少年コーリャを登場させた。空港に置いていかれてもずっと飼い主を待ち続けるパルマと父親とは打ち解けられず心を閉ざすコーリャ。飼い主を待ち続けた忠犬を描く話に留まらず、パルマとコーリャの交流、コーリャ、ラザレフ父子の葛藤、パルマとコーリャに温かく接してくれる空港の人々を描く展開は様々な世代に共感を呼ぶものとなった。ロシアで人気となった秋田犬発祥の地・秋田県大館市に年老いたコーリャが孫娘を連れて秋田犬を譲り受けにやってくるという現代でのエピソードは日本とロシアの架け橋とも言えるもので、日本のハチとロシアのパルマという2匹の犬がいたからこそ生まれたエピソードだろう。

日本ではロシアの映画作品を見ることは少ない。どんな文化があり、どんな生活をしているのかもあまり知らない。作品の舞台は旧ソ連時代、1970年代。当時の国内の状況や生活の様子が忠実に再現されており、キャビンアテンダントや空港にいる人々のファッションも興味深い。この作品から思想や、上下関係など旧ソ連時代のロシアを垣間見ることが出来る。なぜ文化や思想が違うロシアで秋田犬が人気なのかという疑問の答えが日本での撮影パートで見えてくる。日本での撮影には秋田県と大館市が全面協力。新たな犬と飼い主の出会いが描かれている。

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ロシアでは大人気映画に!

日露合作として製作されたこの作品には日本からは渡辺裕之、藤田朋子、壇蜜、主題歌も担当する堂珍嘉邦が出演。ロシアではオーディションが行われ、コーリャを演じるレオニド・バーソフは200人の中から選ばれた。父に心を開かず、パルマとの時間に安らぎを求める繊細な子どもの心を見事に表現している。年老いたコーリャ役には『ソローキンの見た桜』に出演した名優アレクサンドル・ドモガロフを起用。名前から分かるようにアレクサンドル・ドモガロフは監督の父親だ。監督はこの作品で自身の作品に父親に出演してもらうという夢も叶えた。またフィギュアスケート金メダリストのザギトワも秋田犬である愛犬マサルと共に本人役で出演し、話題となっている。秋田で行われた試写会にもロシアから駆けつけた。

 

ロシアでは3月18日から1676館で拡大公開され、週末4日間の累計では39万9509人を動員。学生、ファミリーを中心に幅広い客層に支持され、ランキング首位を獲得した。先日ロシアのサンクトペテルブルクで開催された第29回ビバロシア映画祭のコンペティション部門で、作品賞にあたるグランプリを受賞した。今後は日本のほか、ヨーロッパ全土での上映を予定している。

パルマとコーリャの絆だけでなく、犬とのふれあいを通して本当の家族になっていくラザレフ、コーリャ親子の関係の変化に心が動かされる。誰といることが幸せなのか。家族とは。犬好きの方はもちろん家族で一緒に見て欲しい映画だ。

映画『ハチとパルマの物語』https://akita-movie.com/は5月28日よりシネスイッチ銀座他で全国順次公開。

東海3県では愛知 ミッドランドスクエアシネマ、ユナイテッド・シネマ豊橋18、MOVIX三好、岐阜 大垣コロナシネマワールド、三重 109シネマズ明和で公開。

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