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私たちはここで生きたい(映画『ヒトラーを欺いた黄色い星』)

ヒトラーが第二次世界大戦中に行ったホロコーストでも知られる虐殺はあまりにも有名で多くのユダヤ人が命を落としたことは私たちも知っている。

ヨーロッパのユダヤ人600万人が命を失っているが、その中でドイツの国籍を持つドイツ系ユダヤ人は16万人。国外移住は許されず、逃亡も難しかった。1943年、ヒトラーの宣伝相ゲッペルスは首都ベルリンからユダヤ人を一掃したと宣言していたが実際はそうではなかった。7000人もの人がベルリンの様々な場所に潜伏し、1500人は終戦後も生き延びた。彼らはどのようにその時間を生きたのか。第二次世界大戦中のユダヤ人を描いた実録もの映画『ヒトラーを欺いた黄色い星』が新たに到着した。

 

ドキュメンタリー監督が選んだ4人の物語

クラウス・レーフレ監督はドキュメンタリーを長年撮り続けて来た。別のドキュメンタリーの取材時に身分証を偽って潜伏していたユダヤ人がいたことを知り、他にもいるのではと調査を始めたのが製作のきっかけだったという。

潜伏していた沢山のユダヤ人の中から監督が選んだのは当時16歳から20歳だった男性2人、女性2人。彼らの体験をドラマと彼ら自身のインタビューで繋げていく編集でより観ている私たちに彼らが経験した体験を感じさせてくれる。不安と緊張の中、それでもベルリンで生きることを選び、生き抜いた彼らだからこそわかる思いがある。決してこの話は作り物ではない。

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隠れながら暗躍する

ツィオマ・シェーンハウスは家族と一緒に移送される際、「工場に戻れと言われている」と咄嗟に嘘をつき自分だけベルリンに残ることに成功する。手先が器用な所を生かして自分の身分証を偽造。出征前のドイツ兵と偽ってベルリンの空室を転々とする。ユダヤ人を支援するカウフマンからも身分証偽造を依頼されるようになり、日々ユダヤ人を救う裏家業に没頭し、報酬を得ていく。

黄色い星をつけたくない

タイトルにもある黄色い星とは6才以上のユダヤ人の子供に目印として着用を義務付けられた紋章だ。1941年に発令された。オイゲン・フリーデの母の再婚相手はドイツ人。母はユダヤ人でも夫がドイツ人のためニュルンベルク法により、移送は免れていたが、オイゲンは黄色い星をつける義務があった。黄色い星をつけずに外に出たことで警察に名前を聞かれ、それが元で捕まるのはまずいと思った義理の父と母の薦めで共産主義の一家に匿われたオイゲンには新たな恋が生まれるが、その恋も長くは続かず、今度は共産主義の活動家の家に匿われる。

未亡人に成りすます

ルート・アルントは医師の父のいる裕福な家庭に育ったが弾圧がひどくなり一家で隠れることを考える。匿ってくれたのは父を娘の恩人と思っているキリスト教徒のゲール夫人だった。家の中で隠れているのが辛くなっていたルートは友人のエレンと共に戦争未亡人になりすまし、映画館に行く。知人の紹介でドイツ軍のヴェーレン大佐の家で掃除や子守りの職を得た二人はやっとまともな食事を食べられるようになる。ヴェーレン大佐は二人がユダヤ人だということを知っていたが周りにもそれは告げず働かせてくれた。

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別人として生きる

ハンニ・レヴィは両親を亡くし知り合いのユダヤ人一家と過ごしていたが、一人収容所行きを免れ家を出る。母の友人であるキリスト教徒のベルガー夫人を頼ったハンニは髪の毛の色を3日3晩かかってブロンドに染め、名を変えてベルリンで生きる。通っていた映画館でこれから戦地に行くという自分に好意を寄せていた男性から自分の母親を訪ねて話し相手になってあげてほしいと頼まれる。ユダヤ人だと明かしても一緒に暮らそうと言ってくれた男性の母親と共にソ連の爆撃がひどくなってきたベルリンの中を逃げていく。

全てを奪われていくユダヤ人

ヒトラー政権下でユダヤ人は財産を奪われ、様々な権利を奪われ、最終的には生きることも許されなくなってしまった。逆らえば死が待っている。いや、逆らわなくても死が待っている。それが現実であることを知った時、ベルリンに住むユダヤ人はあらゆる方法を使って自分の存在を隠しナチスの追っ手から逃れていく。

この映画の中ではしっかりと当時のユダヤ人への納得できない迫害を描いている。
4人の物語を描く中で随所にそれは挟み込まれているが、それは彼らが実際に経験してきたことでもある。
ツィオマ一家には家財道具、特に貴金属や硬貨は没収の上、施設へ送られるという通達が届いていた。ツィオマとオイゲンは名乗る際に"イスラエル"を言わず、相手から付け加えられていた。名前に必ず"イスラエル"もしくは"サラ"をつけること。これもユダヤ人に義務付けられていたことだ。それ以外にも遠くの通勤先へしかバスに乗ることが認められていなかったことや配給のチケットが打ち切られてしまうことなど生きていくのは非常に困難な環境だった。

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インタビューから見えてくる戦争中のベルリン

彼らがドイツ人になりすまして街の中をさまようエピソードはなかなか興味深い。映画館に行ったりカフェに行ったり。そしてユダヤ人だが親を救うために密告者となった女性の姿。ユダヤ人とわかっていながら報告せずにずっと働かせてくれたドイツ軍大佐。ドイツの中で反ナチスの人間が多くいたことがわかる。ユダヤ人は戦争が始まる前にドイツで作った絆で匿われ、助けられ生き抜いた。ドイツ国民に支持されて首相となったヒトラーだったが第二次世界大戦で次第に勢力を弱めていく。この作品の中でもはじめはナチスの勢いが強く、捕らえられる危険を多く感じるが後半はソ連の攻撃がベルリンに打撃を与え、ナチス自体の動きが弱まっていくようにも感じられる。

映画館で流れる戦勝ばかりを告げるニュース映画。情勢を知らないドイツ国民たちの姿を見るとやはり同じ敗戦国である日本と似たような状況が国民にはあったことも見えてくる。
ユダヤ人だから不要という考え方はドイツ国民全体には受け入れられなかったことがわかるだろう。

この実録には生きたいと強く望む思いを感じとることができる。
第二次世界大戦終戦から73年。今私たちは戦争を知っている人の生の声を聞けるチャンスの最終コーナーに入っている。民族を越えて。人は人だ。また同じ過ちを繰り返さないために。

『ヒトラーを欺いた黄色い星』は現在ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館で公開中。
http://hittler-kiiroihoshi.com

8月11日より名古屋 名演小劇場、8月25日より岐阜 CINEXで公開。三重 進富座でも順次公開予定。

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