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篠原哲雄監督、文音さん登壇 映画『ばぁちゃんロード』名古屋舞台挨拶レポート

映画『ばぁちゃんロード』の舞台挨拶が4月21日名古屋名演小劇場で開催された。
篠原哲雄監督、主演の文音さんが登壇。

ぴあ満足度調査で4月13日、14日公開作品の中で実写映画としては実質1位となったこの作品の舞台挨拶の様子をお届けする。

Q.作品で思い入れのある部分はどこですか

文音さん
「どのシーンも強いんです。バージンロードのシーンは撮影の最終日に撮っています。田中夏海という役を2週間近く生きてきて最後のシーンだったので、おばあちゃんへの思いがありました。おばあちゃんが立ち上がる瞬間にお父さんお母さんがあそこにいて、リハビリチームがここにいてそして向こう側に大和がいる。本当にグッと来ました。このシーンでは監督も最初のカットは全部カットはかけずに撮ってくださって、おばあちゃんとバージンロードを二人で歩いていったんですよ。長回しだったことも記憶に残っていますし、この映画の集大成だったのかなと感じました」

芝居をしないことを心がける

Q.草笛さんや文音さんに自由にお芝居をしていただいていたようですが

篠原監督
「お二人には撮影に入る前に実際に起きている出来事のように出来たらいいですねってお話をしていて。二人は前から共演されているし、本当におばあちゃんと孫の関係性になり易いですし、しかもおじいちゃんと孫の関係性とは違うもう少し密度の濃い、励まし合える関係に出来るかなと思ったんですね。
会話のあり方もできるだけ台詞っぽくならないように、草笛さんの言葉だとお芝居をしないようにということになるんですが、そういうところをみんなが心がけてやってくれていたと思います。大和と夏海の芝居もそういう風に演じていくようにだんだんなっていってワンカットで撮っていくことが多かったですね。自然の成り行きに任せるというか。バージンロードのシーンも本当はカットをかける予定でいたんですが、ずっと回したくなってしまう。草笛さんとそれを気遣う文音ちゃんの様子を見ていると一瞬一瞬が面白くて」

©2018「ばぁちゃんロード」製作委員会

©2018「ばぁちゃんロード」製作委員会

草笛さんは加圧仲間

Q.文音さんは草笛さんとはプライベートでも仲がいいとお伺いしました

文音さん
「草笛さんとは3年前にドラマで共演しまして、その時の草笛さんがおばあちゃん役だったんです。以来、家が近いこともあり親しくさせていただいています。草笛さんは84歳なんですが加圧トレーニングをされるんです。私も体を動かすのが好きなので話が盛り上がって草笛さんから『加圧一緒にやらない?』とご自宅に誘っていただいて一緒にやったんですが、私より加圧トレーニングがすごくて。それがきっかけでプライベートで仲良くさせていただいて。今回また草笛さんがおばあちゃん役と聞いて私たちにしかできないものがこの作品ではあるなと感じました。草笛さんは体が動く分、今回は体が動けないお芝居だったので撮影中悩みながらリアリティを追及されていました。」

Q.介護の研修のシーンのお芝居はすごく自然体に見えましたが

文音さん
「自然です。ずっとカメラが回っていてドキュメンタリーみたいな感じでした。20分ぐらいありましたよね。本当に始めは全然できなくて。教えてもらってからやると出来るようになるんです」

篠原監督
「あれはニチイさんというところで撮影したんですが介護士の方に始めに話をしてもらって聞いているところを普通に撮って。実地に入ったときにこういうことで悩んでいる設定なんですよって話したら『じゃあこうしたらいいんじゃないの』って周りが教えてくれて。それができる姿になっていく姿を複数台のカメラで同時に撮影していました。何回か撮影しているように見えますが実はずっと回していたものを編集でカット割りしています」

実は出演していた篠原監督

Q.撮影場所は富山県氷見市だったんですよね。美味しいものも食べられましたか?

篠原監督
「冬なら寒ブリも食べられたんですが、夏だったので白エビを食べました。でも海があるところは何でも美味しいですよ」

文音さん
「映画の中でも出て来ているんです。大和に作っているご飯も、居酒屋で酔っぱらって話すシーンとかでも。白えびの素揚げや他の料理も氷見の料理です。実は居酒屋であの料理を渡してくれている大将の手は監督の手なんですよ。監督は台詞が終わってもカットをかけずにカメラが回り続けるので、映画には入っていないですがあの後も芝居を続けていて『このお魚何?』とかアドリブで聞いているんです。監督も『かますだよ。』と返してくれていて。(笑)すごくいい現場でした」

カットをかけなかったことで得られた奇跡

Q.夏海と大和。二人のケンカのシーンは恋人あるあるだなと思ってみていました

文音さん
「あそこも気持ちの流れが続くように監督がカット割りをしてくださって」

篠原監督
「あのシーンは2LDKの部屋で二つのカメラを一緒に回して長回ししています。仲直りのシーンも遠くから引き絵で二人を撮っていたんですが二人がカメラからそのうちフレームアウトしてしまって。『切れちゃったよ…もう終わりかな』と思っていた時に5時を知らせる時報が鳴ったんです。これは音声さんは最後まで録って使ってほしいだろうなあと思ってそのまま回していたら、また二人がいちゃいちゃしてカメラの中に戻ってきて家の中に入っていくという絵が撮れました。自然な環境を活かしていくとそれが次の芝居に繋がるというのは過去経験上よくあることでだからカットをかけるまで長くなっちゃうんですけど。(笑)
そういう点では草笛さんにも場所と設定の説明をしていただけで台詞が終わってもアドリブで場所の説明をして、ついには『この道』を歌ってくださって。僕は一言も言ってないんですよ。それが主題歌に繋がりました。撮影の幸運を活かせる撮影だったなと思います。二人が僕が計算している以上のことをやってくれたので作品が盛り上がったと僕は思っています。」

左:篠原哲雄監督 右:文音さん

左:篠原哲雄監督 右:文音さん

観てくださった皆さんへ一言

文音さん
「こういう作品はきっとテレビの中で観るものではなくて映画館の暗闇の中でじわっと観るものだと思います。この作品は愛に溢れていると現場でも感じていて。愛っていうのは目に見えないし形もないし、感じることしかできない。そういうものが溢れている作品であればいいなと思います。今日観ていただいてそういうものを少しでも感じていただけたなら自分の大切な恋人や、家族に話していただいてまた映画館で見ていただければと思います。多くの方に広がったら嬉しいです」

篠原監督
「日本映画も派手で過激な映画が多くなってきていて、最近はとりたてて悪い人が出ない映画というのが少なくなってしまいました。ある種日本の映画の伝統というのは日本人が基本的に持っている人を労ることや苦境を頑張って乗り越えることを描いてきたものだと思うんですよ。現代はこういう時代でいろんな情報が溢れている。おばあちゃんと孫という関係が希薄になっていると言われがちではあるんですが、実際はこういう家族もいます。そういうことを正々堂々と描くことができた作品なので僕たちも自信を持って世に広めに行きたいと思っています。皆さんにも広げていただければ嬉しいです」

映画『ばぁちゃんロード』は名演小劇場で公開中。

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