Cafemirage

Cafe Mirage--岐阜発 映画・エンタメ情報サイト

カテゴリリンク

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

EntaMirage! Movie 岐阜推し!

CINEX映画塾第16回『一陽来復 Life Goes On』トークショーレポート

第16回CINEX映画塾『一陽来復 Life Goes On』上映と尹美亜(ユンミア)監督×益田祐美子プロデューサーのトークショーが4月14日(土)に岐阜CINEXで開催された。

『一陽来復 Life Goes On』は東日本大震災から6年が経った東北で生きる人たちを追ったドキュメンタリー。

トークショーの様子をお届けする。

女川だけで終わりたくない

尹監督
「『サンマとカタール 女川つながる人々』という作品を2013年にプロデューサーとして制作開始しましてその頃から東北に通っています。『サンマとカタール』は宮城県女川町で撮影しました。女川町というところは皆さんが一丸となって復興に取り組んでいる場所です。東北の皆さんはなんて優しくて暖かくて我慢強いんだろう。そう感じながら一本の映画が出来たわけなんですが、伝えられることはまだ沢山ある。一本だけでは終われない、女川だけでは終わりたくないと思っていました。そんなとき益田プロデューサーが復興庁の補助金に応募しようかなと言われたので是非とお願いしました」

益田P
「忖度なしに無事認められまして(笑)補助金がおりました」

尹監督
「ただ復興庁から今度は岩手、福島、宮城を舞台に10カ月で映画を作ってほしいと言われたんです。『サンマとカタール』は足掛け3年で1つの町で作ったんですが、今度は10ヶ月で三県です。それを達成するには自らが監督になって製作するのが手っ取り早いということになり、監督として制作し始めました」

益田P
「尹監督にお願いしたのは女性目線で目線を下げて自然に生活に寄り添って撮影してくれると思ったからです。本当に尹監督に監督してもらえてよかったです」

尹美亜監督

尹美亜監督

自分達が一緒に過ごして理解してもらう

尹監督
「撮影クルーは私と撮影監督と音声さんの3人で東京から車に乗って向かいました。10ヶ月というのは短いようで長くて。テレビだと構成を決めてそれに沿って撮影していきますが、今回は構成は考えずに東北に向かいました。しかし特に岩手には知人がいるわけでもないので、市役所で『被災された方で前へ進もうとしている方、頑張っている方はいらっしゃいませんか?』と聞いて色々な人にお会いして話を伺うことにしました。三県のバランスを見てこの人だと思える人にカメラを回していったんですが、まずは何も撮れなくてもいいやという思いで、暮らしている空間に入っていってご飯を作ったり、行事をお手伝いしたりして話を伺い、時にカメラを回すという手法を取りました。希望を伝える映画にしたいという私たちの企画に賛同した方に、映画に出演していただきました。カメラを向けられるって普通の感覚からいうと嫌ですよね。自分のプライベートな場所に入ってこられるのは嫌だなと思われるので、負担に思われないように配慮して楽しい時間を一緒に過ごして撮影しました。皆さんの自然な姿を伝える作品になったと私は思っています」

津波や震災の映像は入れず、今を描く

尹監督
「今東北に行っても震災の爪痕は見ることが出来ません。見渡す限り工事現場か、新しい道路や建物になっています。私たちは忘れる生き物ですが、思い出すことも想像することも出来る。見えないからこそ心の目で見て想像できるという部分もあります。今回はそれを重視しました。またこの映画を被災した地域の人に見ていただきたいんです。津波の映像がどれだけトラウマになっているか。『サンマとカタール』で津波の写真を冒頭で4枚使ったんですが、女川での先行試写で悲鳴が上がりました。皆さんに笑顔で見てもらいたかったので使いませんでした。この映画には笑顔しかないですがその笑顔が切なく見えると思います。目に見えないところも推し量って感じていただけるのではないかと思います」

益田P
「私は始めに津波の映像をドーンと持ってきてほしかったんですが、尹監督の思いに共鳴しまして入れないことに賛成しました。被災した方の言葉は一言一句心に響きますね」

尹監督
「生きることに皆さん真剣で生かされたことに意味を感じて一日一日を生きていらっしゃいます。生きるって何だろう?なぜ自分は生き延びたんだろう?と考えているので彼らにとっては普通の言葉でも、私たちにとってはびっくりするような言葉になっています。この映画は完成形を80分ぐらいにしようとしていたのですが、一番最初に全部繋いだら6時間ありました。自分で絞るだけ絞っても2時間ぐらい、そこから編集者ががんばってくれました。沢山素敵な言葉があったんですが編集された結果、意味のある言葉が残りました」

尹監督
「何と言っても主役は出てくださった方々。出てくださった方々が素晴らしい。特別な方達ではなく、このような方々が無数にいて、涙なしには聞けなくて私もカメラマンも音声さんも撮影しながら泣いていました。遠藤綾子さんのインタビューは最後の最後に撮りました。あの日から今日までを2時間にわたって語ってくださいました。夫の伸一さんからは先に話を聞いていてその時も涙をぼろぼろ流して聞いたんですが、綾子さんから話を聞いて更に泣きました。

益田P
「テレビや他のメディアでは伝えられていない言葉が沢山あります。劇場公開前には秋篠宮殿下、妃殿下、眞子内親王殿下にも御覧いただく機会があったんですが大変感動されて、沢山の質問もいただきました。そしてこの映画は各地で上映されまして先日児童福祉文化賞を頂きました」

尹監督
「この賞は厚生労働省が後援している児童福祉文化財団が1年に1本映画を選んで表彰してくださるんです。昨年は『この世界の片隅に』、その前は『あん』。ドキュメンタリーが受賞するのは初めてのことなのでどなたかが強く推してくださったんだろうなと思っています」

益田P
「受賞すると大ヒットするとのことですので期待しています(笑)」

生きるとはどういうことかを伝えたい

益田P
「私はプロデューサーとして震災復興ではなく生きるとはどういうことかを世界の人に知ってほしいと思っています」

尹監督
「被災者の中には震災で沢山の借金を抱えた方もいらっしゃいます。でもこう話してくださったんです。『大丈夫。10年後なんて心配ない。今日の連続だから。今日が繋がっていくだけだから何も怖いことはない。』って。その心の強さはどこから来るんでしょうか。私はここに出てくる方を尊敬しています。この作品は人が生きるということを描いたヒューマンドキュメンタリーです。震災を描くのではなく、人が生きるということを描きました。程度の差はあれ辛いことは皆さんにもありますよね。その究極を潜り抜けた東北の人たちが笑顔で生きている。それが私達にとって大きな希望になると思います。生きていくのは楽じゃないですが、それでも生きていかなければいけない。この作品のタイトル『一陽来復』にもあるように、冬の後には春が来る、悪いことの後にはきっといいことがある。人生色々ありますが前向きに生きていかないといけないと、私自身東北の方に教えられました」

左:益田祐美子プロデューサー 右:尹美亜監督

左:益田祐美子プロデューサー 右:尹美亜監督

 

益田プロデューサーは次はロシアとの合作映画が6月にクランクインするとのこと。来年春公開予定で題材は日露戦争時代のロミオとジュリエット。戦争に翻弄されながら強く生きる庶民を描くという。
尹監督にもドキュメンタリーの依頼が来ているとのこと。一陽来復から繋がるドキュメンタリーがまた生まれることを楽しみに待ちたい。

『一陽来復 Life Goes On』は現在岐阜CINEX、大垣コロナシネマワールドで公開中

-EntaMirage!, Movie, 岐阜推し!
-

おすすめの記事はこれ!

houtei1 1
映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』三重先行上映舞台挨拶レポート

映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』の三重先行上映、舞台挨拶が9月22日三重県 ...

Screenshot_20230922_200759_Drive 2
映画『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは…』名古屋凱旋上映決定!

映画『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは…』が ...

20230902_141200 3
ロイヤル劇場存続をかけてクラウドファンディング開始! 【ロイヤル劇場】思いやるプロジェクト~ロイヤル、オモイヤル~

岐阜市・柳ケ瀬商店街にあるロイヤル劇場は35ミリフィルム専門映画館として常設上映 ...

hamon12 4
第76回 CINEX映画塾 映画『波紋』 筒井真理子さんトークレポート

第76回CINEX映画塾『波紋』が7月22日に岐阜CINEXで開催された。上映後 ...

seiyou1 5
岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』トークレポート

岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクシ ...

doll5 6
女性監督4人が撮る女性をとりまく今『人形たち~Dear Dolls』×短編『Bird Woman』シアターカフェで上映

名古屋清水口のシアターカフェで9月23日(土)~29日(金)に長編オムニバス映画 ...

sister 7
映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』公開記念 アルノー・デプレシャン監督舞台挨拶付き上映 伏見ミリオン座で開催決定!

世界の映画ファンを熱狂させる名匠アルノー・デプレシャンが新作『私の大嫌いな弟へ  ...

bakanuri1 8
自分の生きる道を探して(映画『バカ塗りの娘』)

「バカ塗りの娘」というタイトルはインパクトがある。気になってバカ塗りの意味を調べ ...

bishu1 9
「シントウカイシネマ聖地化計画」始動!第一弾「BISHU〜世界でいちばん優しい服〜」(仮)愛知県⼀宮市にて撮影決定‼

株式会社フォワードがプロデュースし、東海地方を舞台にした全国公開映画を毎年1本ず ...

erithabeth1 10
エリザベート40歳。これからどう生きる?(映画『エリザベート1878』)

クレオパトラ、楊貴妃と並んで世界の三大美女として名高いエリザベート皇妃。 彼女の ...

mitoyamane4 11
ポップな映像と音楽の中に見る現代の人の心の闇(映画『#ミトヤマネ』)

ネット社会ならではの職業「インフルエンサー」を生業にする女性を主人公に、ネット社 ...

高野豆腐店の春_場面写真 12
豆腐店を営む父娘にやってきた新たな出会い(映画『高野豆腐店の春』)

尾道で小さな豆腐店を営む父と娘を描いた映画『高野(たかの)豆腐店の春』が8月18 ...

pabjyo5 13
映画『フィリピンパブ嬢の社会学』11/10(金)より名古屋先行公開が決定!海外展開に向けたクラウドファンディングもスタート!

映画『フィリピンパブ嬢の社会学』が 11月10日(金)より、ミッドランドスクエア ...

Yokosuka10 14
『Yokosuka1953』名演小劇場上映会イベントレポート

ドキュメンタリー映画『Yokosuka1953』の上映会が7月29日(土)、30 ...

Yokosuka1 15
海外から届いたメッセージ。66年前の日本をたどる『Yokosuka1953』名古屋上映会開催!

同じ苗字だからといって親戚だとは限らないのは世界中どこでも一緒だ。 「木川洋子を ...

youko4 16
彼女を外に連れ出したい。そう思いました(映画『658km、陽子の旅』 熊切和嘉監督インタビュー)

42才、東京で一人暮らし。青森県出身の陽子はいとこから24年も関係を断絶していた ...

egoist_5 17
第75回CINEX映画塾 『エゴイスト』松永大司監督が登場。7月29日からリバイバル上映決定!

第75回CINEX映画塾 映画『エゴイスト』が開催された。ゲストには松永大司監督 ...

komuragaeri14 18
映画を撮りたい。夢を追う二人を通して伝えたいのは(映画『愛のこむらがえり』髙橋正弥監督、吉橋航也さんインタビュー)

7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...

PSX_20230713_212926 19
あいち国際女性映画祭2023 開催決定!今年は37作品上映

あいち国際女性映画祭2023の記者発表が7月12日ウィルあいちで行われ、映画祭の ...

komuragaeri5 20
映画『愛のこむらがえり』名古屋舞台挨拶レポート 磯山さやかさん、吉橋航也さん、髙橋正弥監督登壇!

7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...

tooi3 21
彼女たちを知ってほしい。その思いを脚本に込めて(映画『遠いところ』名古屋舞台挨拶レポート)

映画『遠いところ』の公開記念舞台挨拶が7月8日伏見ミリオン座で開催された。 あら ...

MKE10-3 22
観てくれたっていいじゃない! 第10回MKE映画祭レポート

第10回MKE映画祭が7月8日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は13 ...

1minutes_5 23
京都はファンタジーが受け入れられる場所(映画『1秒先の彼』山下敦弘監督インタビュー)

台湾発の大ヒット映画『1秒先の彼女』が日本の京都でリメイク。しかも男女の設定が反 ...

received_259295013361207 24
映画『老ナルキソス』シネマテーク舞台挨拶レポート

映画『老ナルキソス』の公開記念舞台挨拶が名古屋今池のシネマテークで行われた。 あ ...

PSX_20230429_093447 25
「ジキル&ハイド」。観た後しばらく世界から抜けられない虜になるミュージカル

ミュージカルソングという世界を知り、大好きになった「ジキル&ハイド」とい ...

math 26
『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシク久しぶりの映画はワケあり数学者役(映画『不思議の国の数学者』)

映画館でポスターを観て気になった2本の韓国映画。『不思議の国の数学者』と『高速道 ...

nortoredame 27
全編IMAX®️認証デジタルカメラで撮影。再現率98% あの火災の裏側(映画『ノートルダム 炎の大聖堂』)

2019年4月15日、ノートルダム大聖堂で、大規模火災が発生した。世界を駆け巡っ ...

baby14 28
松岡ひとみのシネマコレクション  映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』 阪元裕吾監督トークレポート

松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が4月1 ...

sidebyside1 29
映画『サイド バイ サイド』坂口健太郎さん、伊藤ちひろ監督登壇 舞台挨拶付先行上映レポート 

映画『サイド バイ サイド』舞台挨拶付先行上映が4月1日名古屋ミッドランドスクエ ...

zakodomo1 30
第72回CINEX映画塾 映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』足立紳監督トークレポート

第72回CINEX映画塾が3月25日岐阜CINEXで開催された。上映作品は岐阜県 ...

mogiri1 31
片桐はいりさん来場。センチュリーシネマでもぎり(映画『「もぎりさん」「もぎりさんsession2」上映+もぎり&アフタートークイベント』)

センチュリーシネマ22周年記念企画 『「もぎりさん」「もぎりさんsession2 ...

PSX_20230319_165037 32
カンヌ国際映画祭75周年記念大賞を受賞したダルデンヌ兄弟 新作インタビュー(映画(『トリとロキタ』)

パルムドール大賞と主演女優賞をW受賞した『ロゼッタ』以降、全作品がカンヌのコンペ ...

feibru 33
アカデミー賞、オスカーは誰に?(松岡ひとみのシネマコレクション『フェイブルマンズ』 ゲストトーク 伊藤さとりさん))

松岡ひとみのシネマコレクション vol.35 『フェイブルマンズ』が3月12日ミ ...

son 34
親子とは。近いからこそ難しい(映画『The Son/息子)』

ヒュー・ジャックマンの新作は3月17日から日本公開される『The Son/息子』 ...

tyanomi1 35
先の見えない日々を生きる中で寂しさ、孤独を感じる人々。やすらぎはどこにあるのか(映画『茶飲友達』外山文治監督インタビュー)

東京で公開された途端、3週間の間に上映館が42館にまで広がっている映画『茶飲友達 ...

tyanomi5 36
映画『茶飲友達』名古屋 名演小劇場 公開記念舞台挨拶レポート

映画『茶飲友達』公開記念舞台挨拶が2月25日、名演小劇場で開催された。 外山文治 ...

ginpei8 37
第71回 CINEX映画塾 映画『銀平町シネマブルース』小出恵介さん、宇野祥平さんトークレポート

第71回CINEX映画塾『銀平町シネマブルース』が2月17日、岐阜CINEXで開 ...

gokudaru7 38
名古屋シアターカフェ 映画『極道系Vチューバー達磨』舞台挨拶レポート

映画『極道系Vチューバー達磨』が名古屋清水口のシアターカフェで公開中だ。 映画『 ...

wakareru 39
パク・チャヌク監督の新作は今までとは一味も二味も違う大人の恋慕を描く(映画『別れる決心』)

2月17日から公開の映画『別れる決心』はパク・チャヌク監督の新作だ。今までのイメ ...