
未来につながる映画を(映画『センターライン』下向拓生監督インタビュー・前編 Mirageなお客様その⑤)
2018/02/11
自動車技術は日々進化している。
自動運転はまだまだ先のことと思っていたがCMでも見かけるようになり、そう遠くない未来に自動運転で運転が出来るようになるかもしれない。
昔私たちがアニメで見た宇宙船のシステムと乗船員会話しているようなあの光景が自動車で実現するかもしれないのだ。
近未来の日本、自動運転が当たり前になっている世の中で起こるはずのない死亡事故が発生。
事故を起こした自動運転用のAI(人工知能)を一人の検事が起訴するという前代未聞の行動を起こす。
捜査を進めるうちに見えてきた真実が裁判を予想外の展開に導いていく。
映画『センターライン』は将来、私たちが直面する出来事だと私は思う。
監督脚本は今回が長編映画初挑戦、前作『N.O.A.』でのアイディア溢れる作品作りが評価され、短編映画祭の様々な賞を受賞した愛知県出身・下向拓生監督。
前作ではSiriと主人公を会話させたが今回の『センターライン』では自動運転の人工知能MACO2が人間と会話する。
今回映画『センターライン』が名古屋完成上映を経て東京でも上映されることを聞き、センターラインの製作について色々とお伺いした。
Q.前作『N.O.A.』がスマートフォンアプリとのやり取りを描いた作品でしたが、今回はAIによる自動運転ですね。AIを題材に書こうとしたきっかけは何だったんでしょう?
下向監督
「人工知能にしか興味がない、ということではなく、単純に制作の都合ですね。もともと、人間と非人間のバディものが好きで、自分も作りたいなと思ってたんです。"じゃあ人間とドラゴンのバディものを!”と言っても、十分なCGも使えない低予算映画では実現できない。そこで、人工知能なら、人工知能が入ってそうな器(パソコンやスマートフォン)さえ用意できれば映像化できる、と判断したのがきっかけでしょうか。」
Q.前作とは一転、裁判ものということですが、制作の動機は何だったんでしょうか。
下向監督
「前作の『N.O.A.』自体も、裁判傍聴の経験がきっかけで制作したものなので、次は純粋に裁判ものを撮ってみたいと思いまして。刑事ドラマも好きですし。
せっかくなので、僕の好みのものを全部詰め込んだ集大成的な作品を作ろうと。」
Q.それで、人間と人工知能のバディものの裁判ドラマを。
下向監督
「はい。かなりぶっとんでるとは思いますが(笑)」
自動運転のAIが罪に問われる未来があるかもしれない
Q.AIが犯罪者として起訴される。将来ない話ではないですね。
下向監督
「世界的にAIが普及してきて、それに伴い法律的にどう扱うかということが本格的に議論されています。実際に日本の大学では、自動運転の事故を扱った模擬裁判が開かれているようです。現状では、メーカー側かユーザー側かどちらの責任になるかという議論ですが、二者のどちらが責任を取る形でも自動運転普及の妨げになります。そこで、人工知能自身の責任を追及するために裁判にかけることはあながちあり得ないとも言い切れないのではと思います。」
Q.法廷劇を作るのは大変だと思いますが何か参考にされたりアドバイスを受けたりされたんでしょうか?
下向監督
「参考にした映画は『それでもボクはやってない』。名古屋地裁、大阪地裁、東京地裁にも傍聴に行きましたし、名古屋地方検察庁では取材がてら施設内見学をさせていただきました。あとは、図書館で本を借りて勉強した上で、ストーリーの大枠を作りました。実際に脚本を書き出す際には、現職の弁護士さんに監修をお願いしました。弁護士さんは、本業ではない作業にも関わらず、真剣に考えてくださいました。」
Q.弁護士さんによる監修はいかがでしたか?
下向監督
「監修で指摘されたリアルの部分とフィクションのバランスを取るのが難しかったですね。できるだけ実務に忠実に、正確に再現しようと心がけてはいたのですが、完全に実務通りにすると、エンターテイメントとしての面白さが失われてしまう場合もあって。何度も改稿して微調整しました。」
Q.主人公米子役の吉見さん、検察事務官役の星能さん、弁護士役の倉橋さん、被害者役の望月さん、前作から出演されている上山さんと、皆さんとても役作りがしっかりしている役者さんばかりです。キャスティングはどのように決めたんでしょうか?
下向監督
「米子だけはオーディションさせていただきまして、米子以外の方は、映画祭でお知り合いになった方や、倉橋さんからご紹介いただいた方にお願いしてご出演いただきました。私が長野県に住んでいて、すぐに役者さんと顔合わせできる環境ではなかったので、みなさんとSkype越しにお話をしたり、稽古したりして、役を作っていただきました。おかげで撮影時は役者さんの芝居が完璧で、面白いNGが出なかったのが残念でした(笑)」
Q.やはり人工知能のMACO2とのやりとりが印象的でした。どのように撮影されたんですか?

MACO2
下向監督
「『N.O.A.』のときは、人工知能の声はその場でSiriの声を再生して撮影していましたが、今回のMACO2の声はアフレコしました。撮影時は、相手役の芝居のために、MACO2役の声優さんがその場で台詞を小声でしゃべって、編集で置き換えました。 難しかったのは、MACO2の声を遮って話す場合で、仮当て用の声と相手役の声が被ってしまうと置き換えができなくなるので、MACO2の仮当て台詞を(相手役の声に被らないように)途中から喋り始めたりと工夫しました。動きに関しては、僕の右腕的存在のスタッフに担当してもらいまして、「小鳥の首の動きのイメージでやって。」というムチャぶりな指示を見事に演じてくれました。」
製作のきっかけやキャスティング、MACO2についてお伺いした前編。後編ではスタッフ、撮影場所、今後の上映について伺う。
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