
未来につながる映画を(映画『センターライン』下向拓生監督インタビュー・後編)
2018/03/14
映画『センターライン』
下向拓生監督へのインタビュー後編をお送りする。
前編はこちらから。
あらすじ
自動運転AI(Motorcar Autonomous Control Operator)の発展により、交通事故が激減した平成39年。新人検察官の米子天々音は、閑職部署である愛知地検交通部に配属される。処遇に不満な米子は腹いせに、誤作動により中央線を越えて事故を起こした自動運転AIを起訴しようと画策する・・・。
Q.映画はいつごろから撮られているんでしょうか。
下向監督
「映画制作は大学生の頃からやっていましたが、当時は脚本が書けなくて、撮影・編集・アートワーク制作をしていました。社会人になってから脚本の勉強をし始めたので、オリジナル脚本での映画制作歴は浅いですね。」

下向拓生監督
Q.新作『センターライン』を愛知で撮影しようと思ったのはなぜですか?
下向監督
「愛知県の、都会的な風景とのどかな風景が混ざり合ったような雰囲気が好きなんですよね。ストーリー上でいえば、自動運転の実地検証ができるのに十分な土地があり自動車産業が発展していることから、《自動運転AIを作る会社が愛知にある》という設定や、西日本と東日本の中間的な地域であるため《交通事故処理の部署が愛知に集約されている》という設定にも納得してもらいやすいと考えたからですかね。」
Q.行政やフィルムコミッションも協力してくださったとか。
下向監督
「撮影のために調整していたロケ地がクランクイン3ヶ月前に使えなくなり、絶望していたところ、近隣のフィルムコミッションさんに助けていただきました。
いちのみやフィルムコミッションさん、小牧市役所シティプロモーション課さん、桑名フィルムコミッションさんからロケ地のご提案をいただきまして、結果的にはいちのみやフィルムコミッションさんでお世話になりました。まだまだ実績のない私に救いの手を差し伸べていただいて大変ありがたかったです。次回作は、小牧市や桑名市でも撮影したいですね。」
Q.撮影監督や音楽などスタッフも魅力的な方が集まりました。どんな感じでオファーされるんですか?
下向監督
「撮影監督のJUNPEI SUZUKIさんは、Facebookで仕事募集の投稿を見たことがきっかけで知りまして、プロモーション用の映像がとてもクールだったので、
オファーさせていただきました。JUNPEIさんは、「〇〇の映画っぽく撮りましょう」という風に提案してくださったりして、すごくカッコいい画を作っていただきました。劇伴のISAo.さんについては、ネットで彼の音楽に出会いまして、その後すぐにコンタクトをとりました。好きな劇伴作曲家さんが一緒ということで、私のイメージをすぐに理解してくださり、お試しで作っていただいた仮音源がイメージに近かったのでオファーさせていただきました。完成した曲はクオリティが高く、iPodに入れて映画サントラとして個人的にも楽しんでいます。 」
自分の想像を超えてくる
Q.撮影監督、音楽担当、主題歌アーティストとのコラボによる化学反応はどんなところにありますか?印象的なシーンがあれば教えてください。
下向監督
「僕の予想を超えてきたところでしたね。JUNPEIさんとISAo.さんのお二人のエピソードでは、主人公米子の(人間側の)相棒役である検察事務官が捜査のために出かけるシーン、通称「捜査は足で」というシーンが印象に残ってます。そのシーンは、刑事ドラマの”あるある”シーンなんですが(ぜひ本編で!)、撮影の際もJUNPEIさんはすぐに映像イメージを理解してくださり、僕では思いつかなかったカッコいいカットを撮ってくださいました。ISAo.さんには編集上がりの映像を基に劇伴を作っていただいたんですが、このシーンにぴったりな情熱的だけど少しのミステリーが混ざった刑事ドラマ曲をつけていただきました。
主題歌の小野さんに関しては、彼の書く詩の世界観が好きで主題歌書き下ろしをお願いしました。『センターライン』の要素を基に、だけど内容そのままには寄せすぎないで欲しいと伝えました。結果、エンディングテーマとしてだけではなく、歌だけで聞いても音楽作品として楽しめる曲を作っていただくことができました。役者さん、スタッフさんも含めですが、限られた製作期間の間にそれぞれの分野のプロフェッショナルな人たちが一斉に集まって、その能力を最大限に発揮して、僕の頭の中にしかなかったものを具現化してくださったことが、奇跡的というか、なんかすごいことが起こってるなあと(笑) 」
Q.名古屋で完成披露上映を行って観客からの感想はいかがですか?初の長編、手応えはありましたか?
下向監督
「関係者や身内ではない、一般のお客様に見てもらうのは、とても不安でした。でも、終演後のSNS投稿では、普段インディペンデント映画を好んで観ないお客様からも「楽しめた」という感想を頂きまして、安心したと同時にとても嬉しかったですね。
初長編ということで、いろんなハードルがありましたが、協力していただいた、キャスト・スタッフ・クリエイターの皆さんのおかげで完成させることができました。やり切ったという感じです(笑)」
Q.今後の上映も控えているとか。予定を教えてください。
下向監督
「初の東京上映が3月3日にあります。3月中旬か、4月後半には関西での公開も企画中です。また、名古屋での再上映を望む声が大きいので、それにお応えできるように準備しています。」
Q.今後も長編を撮り続けたいですか?
下向監督
「難しい質問ですね(笑)短編に比べ、長編はよりスケールの大きな話を展開できるので、面白いアイディアがどんどん浮かぶんですが、長編を受け付けてもらえる映画祭が少なく、公開の場が限られてしまうのが目下の悩みです。自主上映会でたくさんのお客様にご来場いただけるほどレベルアップしましたら、また長編にチャレンジしたいと思います。」
時代を切り取り、先を見る能力。
映画監督に必要な能力だ。
下向監督の作品には軽やかさがありながらしっかりと観ている人に考えさせる部分も持ち合わせている。
下向監督が信頼したキャスト・スタッフと共に作り上げた長編映画『センターライン』
便利な世の中。理想が実現する世の中。
その中で新たに生まれる問題があることも忘れてはならないと教えてくれる。
東京での上映は3月3日馬喰町ART+EAT、
名古屋での再上映は4月13-15日大須シアターカフェ。
詳しくは公式ホームページへ。
映画『センターライン』
https://centerline2027.wixsite.com/centerline
出演:吉見茉莉奈、星能豊、倉橋健、望月めいり、上山輝、
中嶋政彦、一色秀貴、近藤淳、青木謙樹、松本高士、もりとみ舞、
一髙由佳、青木泰代、いば正人、藤原未砂希
撮影監督:JUNPEI SUZUKI
セカンドカメラ:山川智輝、村瀬裕志
音楽:ISAo. 主題歌:小野優樹
モーションアクター:木村翔
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