涼夏のこれが今ツボ。その② 『暴れん坊将軍コンビが演じる茨城の熱い男』
この作品のチラシを見ると
時代劇ファンなら「おお、この組み合わせ久しぶり!」と
胸が熱くなる。
松平健 with 北島三郎。
徳田新之助 と め組の辰五郎。
とてつもない信頼関係の二人。
そんな二人はなんと14年ぶりの共演とのこと。
『暴れん坊将軍』ってそんなに前に終わってたっけ?
と思いだしてみたら最後の方は組頭を長次郎(山本譲二さん)に
引き継いだから北島さんは出演していなかったのだった。
しかもその後、栄五郎(松村雄基さん)もいたし
最後のスペシャルは辰五郎は堺正章さんだったなあと。
実はこの映画には『暴れん坊将軍』後半で大岡忠相を演じていた
田村亮さんも出演されているので間違いなく
暴れん坊将軍を連想してしまう。
この映画はどう見ても中高年向けの映画だが
『暴れん坊将軍9』第19話「江戸壊滅の危機!すい星激突の恐怖」という
暴れん坊将軍のトンデモ回の再放送を見るということに
ネット上も盛り上がったことがあるわけだし
若者は時代劇離れしていると言われてはいても
見ている人は見ているわけで
このお話も楽しんで見ていただける人がいるに違いないと思い
紹介させていただく。
松平健・北島三郎
二人の久々の共演を叶えたのは
一人の人間の「この人の生きざまを映画にしたい」という思いを
形にした作品だった。
油棚憲一の著書『鉄砲喜久一代記 明治・大正・昭和を駆け抜けた快男子』
という本を読み鉄砲喜久の生きざまに共感して映画化を考えた男がいた。
しかしすでに油棚氏は他界、版権の持ち主も特定できない状態。
映画化が困難となり途方にくれていた時、
仲間の一人が神田神保町の古本屋で偶然
喜久次郎を扱った「快侠山田喜久次郎君」という中央新聞社発行の古書を発見。
この本を基に香取俊介氏に脚本を依頼。
映画制作が動き出した。
あらすじ
つくばで劇団を経営する幸田は劇場の賃料を滞納。
大家の久代に出ていってほしいといわれる。
自分のためだけに芝居を作って見せてくれれば滞納を
帳消しにすると言われたもののどんな内容なら気に入ってもらえるのかがわからない。
そんな時、家で浅草の昔の風景が描かれた絵を見つける。
その絵の中の建物はどこにあったのか。
確かめるために浅草六区に向かった幸田と脚本担当の夢子は
あることがきっかけで喜久次郎のいる時代にタイムスリップ。
幸田は喜久次郎について働くことになる。
鉄砲喜久-山田喜久次郎とは
浅草六区で誰もが一目置く存在だった「鉄砲喜久」
本名は山田喜久次郎。
少年時代、けんかが強かった喜久次郎は、
若くして東京に出る。
様々な人々との出会いの中で浅草六区を共に興すことになる根岸浜吉に出会う。
やがて横綱になる下積み時代の常陸山や、
浪曲師として名声を馳せた桃中軒雲右衛門を支える
芸事の保護者にもなっていった。
「みっともない」ことをするな。これがモットー。
男気溢れる人だったという。
男気溢れる喜久次郎には
「松平健」というキャスティングはピッタリだ。
どっしりと構えた雰囲気。
いくつもの時代劇に出演している大スターの
所作や立ち回り。そしてあの色気のある声。
この喜久次郎になら間違いなく誰だって一目置く。
松平健さんに刀ではなく鉄砲を持たせたところがニクい。
松平健さんによる喜久次郎ならもう一人の男の中の男・根岸浜吉は
北島三郎さんがいいのではないかとスタッフから声が上がり
お願いしたところ快諾していただけたという。
北島三郎さん、32年ぶりの映画出演となった。
浅草六区とは
浅草寺の雷門の左手側(浅草寺の西側)の地区。
つくばエクスプレスに乗ろうと歩いていくとその方向に浅草六区はある。
茨城出身の喜久次郎や浜吉が自分たちがつくった街の
すぐ近くから故郷茨城へ快速で1時間以内に
帰れる鉄道が出来たと知ったら喜ぶに違いない。
かつてこの辺りに観覧車や高層の凌雲閣も存在したという。
明治~昭和にかけての日本最大の興行街として発展した場所。
浅草オペラ、軽演劇、剣劇、コント…
ここから様々な芸人たちが生まれた。
浅香光代さんやコント55号、ツービートといえば
ここ浅草六区の演芸場から。
昔の面影は今はあまりないそうだが
ここは浅草の中でも他の地区とは違う雰囲気を今も醸し出している。
撮影は浅草六区と茨城県つくば市で行われた。
浅草六区の昔やここで生きた人々のことをもっと知りたくなる。
今度浅草に行ったらじっくり六区を歩いてみよう。
現代と明治 時を越えて
現代で生きる若者が過去にタイムスリップして
喜久次郎に会う。
現代で劇団興行を打ってもうまくいかない青年が
興行とは何かを浅草六区を作り上げる一員となって経験する。
その中で描かれる喜久次郎と浜吉の姿は
見ているこっちにも素敵に映る。
かっこいい喜久次郎をみた現代のちょっと頼りなさげな幸田が
どんな作品を作り上げるかは映画を見てのお楽しみ。
今どきのステレオタイプな若者・幸田を長谷川純さんが巧みに演じている。
長谷川さんが松平さん、北島さんを尊敬する姿勢が
そのまま芝居にあらわれている感じがする。
松平さんの喜久次郎のかっこよさがその芝居で更に際立っているし
大家の久代を演じた星由里子さんの思わぬコメディエンヌぶりにはかなり驚かされる。
『浅草・筑波の喜久次郎~浅草六区を創った筑波人~』
http://www.kikujiro-movie.com/index.html
は12月3日よりTOHOシネマズ新宿他で順次公開
名古屋地区ではTOHOシネマズ名古屋ベイシティで12月3日より公開
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