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35ミリフィルムで鑑賞後の楽しいトーク(松岡ひとみのシネマコネクション vol.26 映画『しあわせのパン』)
松岡ひとみのシネマコネクション vol.26 映画『しあわせのパン』上映&トークが9月24日(土)にミッドランドスクエアシネマで開催された。今回は貴重な35ミリフィルム上映。上映後に三島有紀子監督、森谷雄プロデューサーを迎えてのトークが行われた。その様子をお届けする。
松岡ひとみさん(以外 松岡さん)
「今日は台風が原因で、新幹線が大幅に遅れておりましたので、ゲストのお二人は先ほどついたばかりです」
森谷雄プロデューサー(以下 森谷さん)
「僕らも今、入口のところで観ていたんですよ」
三島有紀子監督(以下 三島監督)
「最後のところだけ見れましたね」
松岡さん
「本当に心温まる作品で。ミッドランドスクエアには地下1階に2店舗、パン屋さんがございますので、よかったら皆さん、お帰りの際にカンパーニュをお買い上げいただければ」
森谷さん
「パン食べたくなりましたでしょ。この後間違いなく食べちゃうんですよ」
松岡さん
「本当に今日は大変な中、名古屋にお越しいただいて。35ミリの上映ということで、三島監督もこれを楽しみに来てくださったんですよね」
三島監督
「そうですね。もう今やDCPばっかりでフィルム上映していただける映画館がなかなかない中で、本当にフィルムの色にこだわって作った作品だったので、今日は本当は頭から全部観たかったんですけど、こうしてかけていただいて、このフィルムで観ていただけたというのはすごい幸せだなって思います。それも公開から10年以上経っての上映で、すごい嬉しいです。ありがとうございます」

三島有紀子監督
松岡さん
「全然やっぱり違うんですね。今なら配信で、たくさん『しあわせのパン』は観ることが出来るんですけど。色みも何もかも違います」
森谷さん
「色みは監督がものすごくこだわっているんですよ。フィルムって現像液につける時間で色の定着時間が変わるんです。どれだけつけて出すか、それをタイミングっていうんですけど、そのタイミング作業というものをフィルム時代は僕らもやりました。これのときもやって、もう三島さんはどれだけタイミング作業をやったか」
三島監督
「どうしてもやっぱりこの洞爺湖の美しさだったり、『しあわせのパン』の世界のあの柔らかい光の中で繰り広げられるドラマをこういう色で表現したいと。どうしてもDCPデジタルだとはっきりとしたグリーンも本当に何かパキッとしたグリーンになってしまうんですけど、フィルムだったら柔らかい包まれるようなグリーンになるというので、それを目指して作っていました」
森谷さん
「グリーンの出方が違うというので、何回もタイミングをやって作っています」
松岡さん
「タイミングって今では使わない言葉ですか?」
森谷さん
「今はグレーディングというんですかね」
松岡さん
「それこそ、この映画の頃、12年前、10年ぐらい前からですか?」
三島監督
「そうですね。『しあわせのパン』は2012年公開で、その頃はまだフィルムで作っていただけたんですけど、その後私は『幼さ子我らに生まれて』を16ミリフィルムで撮影してるんですけど、どうしても公開はDCPになってしまって」
森谷さん
「どうしてもそうなっちゃうね。だからここは本当に貴重な映画館ですよ。35ミリを上映してくださるシネコンが今どこにあるんですか。やっぱりさっき35ミリで観たら全然違いましたね」
三島監督
「全然色が違います。黄色の色の出方と緑色が違うんです。すいませんマニアックな話で」
松岡さん
「三島監督はその後にまたシリーズと言っていいのか森谷さん的には北海道三部作と言われているものをおやりになって」
森谷さん
「2本目の『ぶどうのなみだ』までは、三島さん。3本目は、深川栄洋さんが監督で」
松岡さん
「では『ぶどうのなみだ』のときはもうフィルムではないわけですか」
森谷さん
「はい、デジタル撮影、デジタル上映ですね」
三島監督
「わざとフィルムっぽくグレーディングというか色みを出したりなんかして。フィルムになるべく近づけることをしていたんですけど、でも今日見たら、もう全く別物でしたね」
森谷さん
「やっぱりすごい質感でしたね」

森谷雄プロデューサー
三島監督
「そうですね。肌感も全然違うし、柔らかい。本当に柔らかくなるんですよね」
松岡さん
「フィルムのときの撮影というとなかなかフィルム代の関係で本番が何回も出来ないので、デジタルよりもゆっくりとリハーサルをしたりするいうことを聞いたんですが、やっぱり撮影方法も違う、現場もちょっと違う。どんな風に違うんですか」
森谷さん
「今の撮影方法って「はい、もう回しちゃおう」みたいな感じなんですよ。要はもうリハーサルぐらいから、テストぐらいから回しちゃおうみたいな感じで撮っちゃう。データにどんどん、長い時間蓄積できるからです。フィルムですとフィルムマガジンで十何分ぐらいしか撮れないですよね。だからフィルムで撮るときはものすごく計算して。あと照明も今よりしっかり照明を当てないと、フィルムには映らないんです。今はもうデジタルで、皆さんがお持ちのスマホとかでも普通に撮れるんです。夜でも普通に映るじゃないすか。それがフィルム撮影だとものすごく照明を当てないと映らない時代。そこの準備とかもすごくかかるんですね」
三島監督
「逆に言うと、だから明暗を出しやすいということです。映るところと映らないところというのは作りやすいし、はっきりしてくる。そういう良さがあります」
松岡さん
「この作品は元々はどんな経緯で始めたんですか。三島監督が小説も初めて書かれて、そして長編としては2作目。森谷さんがお声をかけたんですか?」
三島監督
「元々一緒にテレビドラマを作らせていただいて、私の目線でとりあえず語らせていただくと、元々北海道に行ったときに、上空から見た北海道のあの景色、赤い屋根がたくさんあって、いつかファンタジーを撮るなら北海道で撮りたいなと。黒い瓦屋根の世界が全くなく、本当に外国のようというか、ヨーロッパの国みたいな印象だったので、日本でファンタジーをとるなら北海道で撮りたいなという思いがまず一つあって、一方で私は神戸の震災(阪神大震災)を経験していたので、避難所で思ったことがこのテーマにも繋がるんですけれども、食べ物もスペースもみんなでシェアして生きているというのを見ていて、いつかシェアというテーマで作りたいなと思っていたところを森谷さんからこの企画の話をしていただいたというのが私の中の流れです」
森谷さん
「僕目線からすると、それこそ大泉洋さんの事務所であるOFFICE CUEの伊藤亜由美社長から僕に「北海道で映画を作りたいんです」と相談があって。それでどんな映画ですかと聞いたら「ついては森谷さん、いつお時間できますか?」と言われて、2泊3日ぐらいの日程で札幌へ行ったんです。札幌から2人で車を交代交代で運転してありとあらゆる北海道中の、パンカフェを回ったんですよ」
松岡さん
「はじめからパンがテーマは決まっていたんですか?」
森谷さん
「これがですね、ファーマーズレストランも見て回ったんですよ」
三島監督
「私も行きました。その後」
森谷さん
「ファーマーズレストランとかを回っている時にちょっと何かに集約させませんか?ということになり。「ではパンにしませんか、北海道の小麦で。ブームがちょっと来ているんです」という話が出て、「パンですね、いいですね」みたいな話になって。いろんなパンカフェに行ったんですけど、一番最終日にご覧なっていただきました月浦のパン屋さんに出会うんですよ。あそこバスが来る坂があるじゃないですか。あれをちょっと上がっていって右にハンドルを切って、パッと見た瞬間にここだと」
三島監督
「車を降りたら坂の上から見える景色がね」
森谷さん
「その後すぐ三島さんにこういう映画作りたいんですけど、どうです?という風に相談したというのが僕の目線ですよ」
三島監督
「私はその後なんでしょうね。一緒に行かせてもらったときは月浦だけじゃなくて、やっぱりファーマーズレストランとかいろんなところを見て。最後に月浦にたどり着いて、同じですね。車に乗って坂を上がって降りたときに、ここだと思って、私はそのときに映画の最後に流れている「ひとつだけ」という曲が景色の中で流れてきたので、ここは映画で撮りたいなと思ったという流れです」
松岡さん
「今もそこにこのお店はあるんですか?」
森谷さん
「ありますあります。だって三島さんは洞爺湖観光大使ですし、僕よりもはるかに洞爺に行っているんですよ」
三島監督
「毎年私は何かあるとあそこに行って、自分がこれから何をしたいのかなっていうことを見つめるんです」
森谷さん
「小説もあそこのパン屋さんに泊まり込んでお書きになって」
三島監督
「はい。1ヶ月居候させていただいて書いていました」
松岡さん
「ではほぼ実体験ですね。本当にご夫婦でやられているんですね」
三島監督
「そうですね。当時北海道に移住されるご夫婦がすごく多かったんですよ」
森谷さん
「初めてあそこに行った時なんですけど、コーヒーをいただいていると、奥でご夫婦なのに、「何々さん」「何々くん、これなんとかかな」、「何々さん。そうだよ」みたいな会話をしていて。これがものすごく僕には印象的に残っていて、こんな感じでしたというのを三島さんと話しているうちに結果、水島くんとりえさんが生まれたんですよ」
三島監督
「何とかくんって上の苗字で呼ぶ。映画でもそうです。夫婦でも一つにされたくないじゃないですか。1人1人って個人なのでちゃんとここが守られている感じもすごくいいなって私はあのご夫婦を見て思ったんですね」
松岡さん
「ではご夫婦のお店を撮影期間はちょっとお借りしたわけですよね」
森谷さん
「完全に借りましたね。映画用に全部装飾もするので、住めないです」
三島監督
「その期間は近くのキッチンのある旅館に泊まっていただいて」
森谷さん
「1ヶ月ぐらいでしょ?」
三島監督
「1ヶ月ぐらいですね。しかも冬編もありましたから」
森谷さん
「なかなかなことをやっちゃっていたんですよ」
三島監督
「今でも親友でいてくれてありがたいなと思います」
松岡さん
「大泉さんと森谷さんはカーリング映画をきっかけにたくさんお仕事一を緒にされていますよね」
森谷さん
「『シムソンズ』ってご存知ですか。加藤ローサちゃんも出てるし藤井美菜ちゃんも出ているし、田中圭くんも出ていましたね、しかも松重豊さんが出ているんです。確かに『シムソンズ』が僕と大泉さんはきっかけなんですよ。『シムソンズ』で大泉さんと出会って、そうこうしているうちに、TEAM NACSのフィルムプロジェクトみたいなものもお手伝いして、その流れで『しあわせのパン』に繋がってくるんです」
松岡さん
「三島監督は初の大泉さん。いろんな作品を見ていると、大泉さんは普段はずっと喋っていらっしゃるじゃないですか」
三島監督
「初めてでした。そうですね。いつも映画を作るときにどうしてもその方の違う面を何か引き出せたらいいなと思いながら作っているので、大泉さんの場合は、喋らせないこと(笑)」
森谷さん
「いやでも本当に監督はそれを封印させて。水島くんはあんなに口数少ないんですよ」
三島監督
「そうですね。封印していました。「本当にこんなに喋らなくていいんですか?」ってずっとおっしゃっていました(笑)」
森谷さん
「喋らないと不安になってくるんですよ、大泉さんは(笑)。この映画の中で、大泉さんを三島監督がものすごい一生懸命封印してるんですけど、1ヶ所だけ、大泉が出てるところがあると思うんですよ」
三島監督
「どこですか?」
森谷さん
「「ズッキーニ」ですよ。その言い方は大泉でしょ、水島くんじゃない、それはという瞬間がありました(笑)」
三島監督
「洋さんのね、明るさも出て良かったんじゃないですかね」
松岡さん
「みんなで一緒にご飯食べるところとか良かったですよね」
三島監督
「本当はもっといっぱい洋さんの役の水島くんのセリフがあったんですけれども、それは森カンナさんのお芝居を引き出すためだけのセリフとして使ってしまい、編集では全部落としてしまって(笑)」
森谷さん
「「いやあ監督、なくなってましたね」と(笑)」
三島監督
「いつも言われるのは「監督は食べ物が美味しく撮れたらいいんですよね」って」
森谷さん
「あなたこそ、食べ物大好きでしょってね(笑)」
三島監督
「そんなことないんですよ。お芝居というか良い表情を撮るためにね、撮っていたんですけどね」
松岡さん
「パンとかも本当に食べたくなっちゃうんです。あれは元々そのご夫婦が監修されたりしたんですか」
三島監督
「はい。実際作ってもらっていましたね」
森谷さん
「映画撮影ってこんなに大変なんだって多分思われたと思いますよ」
三島監督
「そうですね。パン1個を撮るのに何個作るんだっていう。タイトルが出ますしね、と言いながら」
松岡さん
「シンプルライフをされている方ですからびっくりされると思います。その焼きたてのパンは皆さん、召し上がって」
三島監督
「パンって本当に素敵だなと思ったのは、小麦と水と塩だけであんなにいろんな形ができて、いろんな味ができる。もちろんそばとか入ったり、いろいろ種類はあるんですけど、その三つのシンプルな食べ物で、あんなに美味しいものが出来て、それをみんなが分け合うという、確認ができるんだなというのはすごい感じましたよね。書いているときも思いましたけど、撮っていて、パンを分けるというカットを執拗に撮っていたんですけど、あれを見たときに、自分はやっぱりいろんな感情だったり、いろんな出来事を分け合える人たちと一緒にいたいし、仲間でいたいんだなって思ったんです」
森谷さん
「本当にパンにいろんなことが込められている。そういった意味では、三島さんってやっぱりものに対するこだわりがすごい監督です。僕が一緒にやったドラマのときに金魚を撮っていたんです。すごい何回も撮られるんですけど、綺麗に美しく撮られていて僕はそれがきっかけなんですよ」
三島監督
「金魚きっかけだったんですか。褒めてます?」
森谷さん
「褒めてる、褒めてる。その物とか出てくるものに対しての執着というか、ここまで綺麗に撮ってくれるなら、パンも間違いなく綺麗に撮ってくれると思ったので相談したという。今思い出しました」
三島監督
「でもね、パンを美味しく感じさせるのは実はパンの型じゃないんです。パンを切ったりする音や、食べている人の顔なんですよね」
森谷さん
「カンパーニュにナイフを入れたときの音にも当時ものすごいこだわりがあったんですよ」
三島監督
「パンだけじゃないですよ」
観客から
「主役の2人を選んだ理由を教えてください」
三島監督
「実は大泉さんの事務所の方がプロデューサーの企画なんですけど、最初大泉さんとは決まっていなかったんですよ。それでこういう夫婦を描くときに誰がいいかという話になったときに、それはもう大泉さんしかいないんじゃないかと森谷さんが。ここはもう大泉さんでしょ。って感じですよね」
森谷さん
「はい。じゃありえさんどうしますかという話になって」
三島監督
「原田知世さんにはお互いにそれぞれ思い出があります」
森谷さん
「私は『時をかける少女』という映画をスクリーンで18回見ています。それぐらい原田知世ファンなんですよ」
松岡さん
「ファンなので、プロデューサーになったから、ああ、そういうことなんですね」
森谷さん
「違うんですよ!本当に」
三島監督
「そうなんですよ。後で「かわいい、かわいい」って言ってましたから(笑)」
森谷さん
「最後のシーンでりえさんが走ってくるシーンを撮っていたときに、足元を撮っているときのモニターを見ながら、「かわいい」って言ったんです。そうしたら大泉さんに、「森谷さん、足元を撮っているんですよ。何がかわいいんですか」って言われたんですよ。話を戻します。きっかけはキャスティングを悩んでいたときに、伊藤亜由美社長から僕に電話がかかってきて。「(りえ役に)原田知世さんというのはありますか」って言うんですよ。なるほど。僕はもうスクリーンで18回ぐらい見てるわけですから、知世ファンなわけじゃないですか。でもそのときに、「いや最高ですね」って言わなかったんですよ。わかりますこのファン心理。このファン心理はわかると思うんですけど。「いや、ちょっと待ってください。一晩考えていいですか」と言って、電話を切りました。翌朝、テレビをつけたら「はなまるマーケット」のゲストが原田知世さんで。これはもう、知世さんが言っている、神様が言っていると思い、自分の中でファンであるということは取っ払って、プロデューサーとしてちゃんと原田知世さんにオファーしようと決めたというのが僕の中の流れです」
三島監督
「映画少年と映画少女だったので。それぞれに思い入れがありまして。もちろん私も『時をかける少女』から原田知世さんを観ていて、その後『愛情物語』と角川映画の原田知世さん主演の映画を全て見ているわけです。あの年から映画に携わっていて、映画のことを知っていて、小さい頃から映画の国に生きている人という私の中のイメージで、当然原田知世さんと一緒に映画を作りたいという思いがずっとありました。どういうチャンスで巡ってくるのかなっておぼろげながら思っていたところに原田知世さんの名前がプロデューサー陣からポロッと聞こえてきて、「何!?」って。それはもう絶対それでしょと私はむしろ逆に持ち帰ることもなく、即一緒に作りたいですと言いました。プロデューサーはいろんな責任がありますからね」
森谷さん
「それで僕はお手紙を書いたんです。まだ脚本がなかったときで三島監督が書いたプロットのときですよ。脚本がまだないんですけど、こういうお話で、やりたいんです。旦那さん役は大泉さんなんですと書きまして。ただ、原田知世さんだとちゃんと吟味されるので返事に2ヶ月ぐらいかかるって周りから言われたんですよ。そうしたら、2週間後ですよ。ぜひやりたいと。こんなことが起きるんだと。そこからもう僕はもう舞い上がってるわけですよ」
三島監督
「みんなの念願が叶ったキャスティングだったんです」
観客から
「ワンカットワンカット丁寧に撮られたというのが伝わってきました。カフェの空間の使い方とか、カメラ位置とか何かこだわりとかありましたら、お伺いしたいです」
三島監督
「こだわりはいっぱいあるんですが、なるべく佇まいで見せようというのが狙いですね。わかりやすく顔の表情に寄ってしまえば、感情というのは、ある一つの方向に表現するのはたやすいんですけれども、引きと言って、なるべく大映しにしないで、引きの中で、その佇まいの中で彼女だったり、彼だったりが今どういう気持ちでいるのかというのを皆さんに想像していただく形になればいいなあと。だから映画全体でいうと、動く絵本というか、この絵本の中に皆さんが入ってくださればいいなあと思いながら、少女の気持ちになって撮っていたという感じです」
森谷さん
「編集のとき、プロデューサーは寄りが好きなんですよ。伝わりたいっていう気持ちがありますね。だから編集のときも喧嘩したりするんです。カフェのデッキのところでずっと長回しで2人で月を見ながら話すシーンがあって、三島さんはこのままずっとこれでいきたいと。現場でも「ちょっと寄りを撮っておいた方がいいんじゃないですかね」と言っていたんですけど、結果ご覧になった形の空気感で。今監督がおっしゃっていたみたいな狙いであったりとか、映画というのは、ご覧になる方々にいろんなことを想像していただくものなんだと僕はその後で気づくんです。説明はなるべく排除して残ったものがここに映っている方向になるということが勉強になりました」
三島監督
「好みもありますよね、近づいていくとか、どういう位置関係で誰が前に行っていてとかで見えることがたくさんあると思ったので、それで表現してみたいなと思って、確かにすごいいっぱい撮りました」
森谷さん
「あそこのパン屋さんのつくりが素敵だから本当にその空間の中に人がいるのを撮りたいということはすごいわかるんですよ」
三島監督
「冬編の中村嘉葎雄さん、渡辺美佐子さんの夫婦のシーンも同じようなシーンが出てきます。あのときはあれはある意味裏切りなんですけれども、同じようにバックショットというカットを見せておいて、またさっきと同じパターンで寄らないのかなと思ったらちょっと横に入って寄る(笑)。その裏切りも前で振っておかないと強調されないんです」
森谷さん
「未久ちゃんがね、窓辺の席にスープを置かれて。外からそのままワンカットでカメラが寄っていく。そういう空間と人物を本当に意識して捉えていらっしゃいました」
松岡さん
「森谷さんはこのトークライブの最多出場です」
森谷さん
「僕ら、だって一緒に番組をやってるじゃないですか」
松岡さん
「ドラマチックシネマチックっていう配信番組をやっております」
三島監督
「だんだん大泉さんに喋り方が似てきますね(笑)」
森谷さん
「すごいですよね、やっぱり。あの男を見てるとなってきちゃう。影響力はすごいものがあると思います」
松岡さん
「サービス精神とか見習いたいですよね」
三島監督
「いや本当にすごいですよね。朝から笑い声がどこかから聞こえたなと思ったら大泉さんなんですよ」
松岡さん
「また大泉さんとお仕事一緒にしてなごやめしを食べに来てください」
森谷さん
「おいしいものへの嗅覚は本当にすごいですからね」
松岡さん
「おいしいものといえば「おいしい映画祭」を12月の2日~4日でここミッドランドスクエアシネマさんでやります。こちらは森谷さんがアドバイザーですね」
森谷さん
「はい。僕も多分来ると思います」
松岡さん
「今後の予定、新作を教えてください」
森谷さん
「時々監督をしております。『THE 3名様 リモートだけじゃ無理じゃね?』のブルーレイ、DVDが9月30日に発売になります。興味ありましたらよろしくお願いいたします。また絶賛仕上げ中ですが、12月16日公開の『劇場版 Dr.コトー診療所』のプロデュースをしておりますので、そちらもぜひご覧なっていただければと思います」
三島監督
「私は去年自分の生まれた土地とか育った町の大阪堂島で撮った短編映画がありまして、『IMPERIAL大阪堂島出入橋』という映画を佐藤浩市さんと作りました。今は U-NEXT さんとかの配信で見られると思いますので、ぜひご覧ください。来年はコロナ禍の中で撮ったセミドキュメンタリー映画がおそらく公開できるかなと思います。ぜひご覧いただけたらなと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました」

左から三島有紀子監督、松岡ひとみさん、森谷雄プロデューサー
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