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待ち続けることは信じること(映画『千夜、一夜』)
今の時代の人たちは待ちぼうけをどのくらいまでしているのだろう。スマホで気軽に連絡が取れ、何かあれば遅れる、行けなくなったとすぐ伝わる。待ち合わせ場所で何時間も待つということはもうないのではないか。
いつまでなら相手を信じて待つことが出来るだろうか。何年も帰らない愛しい人を待ち続けることができるのだろうか。
映画『千夜、一夜』は30年前に忽然といなくなった夫をひたすら待つ女と2年前に出掛けた夫は消えたと決着をつけようとする女を通して人間の言葉では説明できない感情、人間の性を描く。
あらすじ
北の離島の美しい港町。登美子の夫が突然姿を消してから30年の時が経った。彼はなぜいなくなったのか。生きているのかどうか、それすらわからない。漁師の春男が登美子に想いを寄せ続けるも、彼女は愛する人とのささやかな思い出を抱きしめながら、その帰りをずっと待っている。そんな登美子のもとに、2年前に失踪した夫を探す奈美が現れる。彼女は自分のなかで折り合いをつけ、前に進むために、夫が「いなくなった理由」を探していた。ある日、登美子は街中で偶然、失踪した奈美の夫・洋司を見かける。
ある日突然、最愛の人がいなくなる。どうしてなのか、事故なのか、事件なのか、それとも自分が嫌で逃げたのか。残された者はいなくなった人を思い、繰り返し、繰り返し自分といなくなった人に問いかける。強い思いを寄せる春男の思いを知りながら、登美子はひたすら夫を待っている。彼の声が残ったカセットテープを聞いている時にはあの頃に戻ったかのような優しい顔を見せるが、普段はそんな顔を見せず、諦めない春男を拒絶する。

©2022映画『千夜、一夜』製作委員会
登美子の前に現れる奈美は新たな出会いもあり、2年前にいなくなった夫に決別しようとしていた。変わらないことを選択した登美子、変わることを決めた奈美。そこにはそれぞれの複雑な感情がある。
日本全国の警察に届けられる行方不明者の数は年間約8万人もいるという。ドキュメンタリー出身でギャラクシー大賞をはじめ数々の受賞歴を持ち、劇映画デビュー作の『家路』がベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品の快挙を成し遂げた久保田直監督が「失踪者リスト」から着想を得て、8年もの歳月をかけて佐渡を舞台に作り上げた。
ひたすら待ち続ける女・登美子は田中裕子。30年経っても消えない夫への思い、揺らぐ心。登美子という女性の感情は複雑だ。その登美子を繊細にかつ激しく演じている。
夫を諦めようとする奈美には尾野真千子。登美子とはまた違ったベクトルの感情の動きを観客に突きつけてくる。
奈美の夫・洋司には安藤政信、奈美の恋人に山中崇、登美子を思う春男にベンガル、春男の母に白石加代子と実力派俳優が脇を固め、待つ女性2人の人生を捉える。
待つということは相手と自分を信じることだ。必ず来る、戻ってくる。そう信じて。
映画『千夜、一夜』https://bitters.co.jp/senyaichiya/ は10/7(金)よりテアトル新宿、シネスイッチ銀座他で全国順次公開。
東海3県では10/7(金)より伏見ミリオン座、MOVIX三好、ユナイテッド・シネマ豊橋18、ミッドランドシネマ名古屋空港、10/28(金)より大垣コロナシネマワールド、11/11(金)より伊勢 進富座で公開。
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