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トンネルの出口は何処だ? 映画『トンネル 闇に鎖された男』

昨年韓国で公開し、年間興行成績第4位の成績をおさめた
『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』が現在日本でも公開されている。

"崩落事故でトンネルに閉じ込められた男を救出する映画"
と簡単に説明することもできるが
これは単なるパニック映画ではない。
パニックに遭遇した時の人間の本質とそれに関わる人々の様々な思いが見える作品だ。

あらすじ

ジョンスは車のディーラーに勤めるサラリーマン。
大口の契約を取って家に帰る途中、トンネルの崩落事故に巻き込まれる。
気がつくと周りは土砂と崩れた瓦礫の中でジョンスは孤立していた。
手元にあるのはペットボトルの水2本と娘の誕生日のために買ったケーキ、
そしてバッテリー残量が78%の携帯電話。

救助要請後、すぐ助けに来てくれるはずの救急隊はなかなかやってこない。
事故の起こったトンネルの外ではあまりの崩落のひどさに
レスキュー隊を率いるキム達もどこから救助するか悩んでいた。
ジョンスの妻・セヒョンも現場近くでジョンスの救出を信じるしかない。

「必ず助ける。」
キムの言葉を信じてジョンスは暗闇で待ち続ける。

これは誰にでも起こり得るアクシデント

普通に暮らしていた人が災害に巻き込まれる。
それはあまりにも突然で誰にでも起こりうるアクシデントだ。

閉じ込められたジョンスや
ジョンスを待つセヒョンの立場に自分がなるかもしれない。
何十日も諦めずに暗闇で生きられるか。
生きているかがわからない夫を信じて待ち続けられるか。
それを感じながら見ることになるだろう。

監督は前作『最後まで行く』で韓国映画界に新風を吹き込んだキム・ソンフン。
冒頭の崩落シーンやキム隊長が必死に逃げる
第2の崩落シーンは圧巻で恐ろしい。
この映画を作るためにいくつものトンネルを見に行き、
使用されなくなったトンネルを見つけて
作りたてのトンネルに見せるべく新しい道を作り、
トンネルの中に送風機も設置して撮影に挑んだ。

パニック映画は重くなりがちだが
重くなる時ほど笑えることもあるという事象を
監督は脚本に盛り込んだ。
閉ざされたトンネルの中のシーンは息苦しい。
だがジョンスの人柄もあって狭い空間の中で起こる出来事には
笑わずにはいられないこともあるので
見るのが辛くて途中でやめるという人はいないだろう。

 

韓国ならではの風刺もきいた映画「こんな人間にはなるな」

この映画にはこんな人間になってはダメだという事例がたくさん描かれている。

閉じ込められたジョンスに電話をかけ生放送の視聴率を取ろうとするマスコミ。

手抜き工事で開通から1週間で崩落した全長1900メートルのトンネル。
工期を間に合わせるのに手抜きしないとやってられないと
悪びれずに話す工事現場の作業員たち。

その手抜き工事の責任を感じることなく次のトンネル工事が進まないから
救出を中止させようとする開発企業と政府関係者。

現場にやって来て救出するために努力しているようなフリをする女性大臣。
大変な時でも外交の会見のように妻のセヒョンと記念撮影をする姿が滑稽。
(前大統領にそっくりな風貌で辛辣にその行動を監督が批判してるようにも見える。)

事故が起こっても他人事と思っているから出来る行為ばかりだ。
最後にキム隊長がいい放つジョンスの言葉を聞くと
私たちは激しく同意でき、スカッとした気分になる。

適材適所のキャスティング

一人諦めないキム隊長がいる。
ジョンスとの約束を守るために。
たかがひとり。されどひとり。
現場と会議室との温度差が激しくなってもひたすら救助を目指す。

ジョンスを励まし、必ず助けると誓う。
どこかコミカルなところもあってかっこいいキム隊長を演じるのはオ・ダルス。
この作品のもう一人の主役と言ってもおかしくない。
彼が出てくると絶対に一筋縄ではいかないと思えてしまうのは
過去の出演作が原因だと思うが今回も期待を裏切らない。

ジョンスの帰りをひたすら信じる妻セヒョンは
海外での活躍も目覚ましいペ・ドゥナ。
ちょっと変わった役が多かったと感じていたが
今回は夫を待つ妻の役。
憔悴しきった姿がリアル過ぎる。
ノーメイクなのは間違いないが日本の作品でのノーメイクとは
わけが違う。これぞ本当のノーメイク。
重大な決断をし、ラジオを通して夫に語った後のスタジオから出る時の姿に涙が出る。

トンネルの中で奮闘する主人公ジョンスはハ・ジョンウ。
作品によって全く違う顔を見せてくれる彼は
今回は弱いところもあるとても人間らしい男を演じている。
暗闇のシーンが多いがその中でも様々な感情の変化を見せてくれる。
キム・ソンフン監督はハ・ジョンウがトンネルの中でリアルな
芝居が出来るようにカメラをなるべく見つからない場所に設置して撮影した。

こんな映画は今日本では絶対に作れないと思う作品だった。
トンネルの中に一人閉じ込められた男を
救出するべく動き出した人々の描き方が
非常に風刺的で今の韓国を物語る。

たかがひとりの命、されどひとりの命。
パニック映画でもありながら人ひとりの命の重さを様々な角度から
考えさせられる作品だ。

『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』http://tunnel-movie.net/
シネマート新宿、シネマート心斎橋他で現在上映中。
中部地区では6月10日(土)より名演小劇場、
6月17日(土)よりイオンシネマ名古屋茶屋で公開。

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