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伏見ミリオン座3周年記念 映画『やがて海へと届く』中川龍太郎監督トークレポート

3月25日、名古屋の伏見ミリオン座移転3周年企画として4月1日公開の映画『やがて海へと届く』中川龍太郎監督のトークが行われた。その様子をお届けする。

『やがて海へと届く』あらすじ

引っ込み思案で自分をうまく出せない真奈(岸井ゆきの)は、自由奔放でミステリアスなすみれ(浜辺美波)と出会い親友になる。しかし、すみれは一人旅に出たまま突然いなくなってしまう。あれから5年―。真奈はすみれの不在をいまだ受け入れられず、彼女を亡き者として扱う周囲に反発を感じていた。ある日、真奈はすみれのかつての恋人・遠野から彼女が大切にしていたビデオカメラを受け取る。そこには、真奈とすみれが過ごした時間と、知らなかった彼女の秘密が残されていた…。真奈はもう一度すみれと向き合うために、彼女が最後に旅した地へと向かう。本当の親友を探す旅の先で、真奈が見つけたものは…。

中川龍太郎監督トークレポート

中川龍太郎監督(以下 中川監督)
「結構プライベートでもこの伏見ミリオン座には来ていて。つい数か月前もそこの席で映画を観ていました。仕事で名古屋に来ていまして。ですので愛知県でこの作品の初めての上映がこちらでできてすごい嬉しいです。ありがとうございます」

・監督の作品だと『四月の永い夢』これが移転前のミリオン座で上映された時にお越しいただいて、『わたしは光をにぎっている』はこちら移転後のミリオン座にお越しいただいていますね。それが2019年ですね。先ほど仕事で来ていたとおっしゃっていましたが、愛知県の観光ムービーを撮られていたんですね。

中川監督
「愛知県の観光動画でジブリパークの観光動画をご覧になったことがある方はいらっしゃいますか?「風になって、遊ぼう」というものなんですが。スタジオジブリの製作でジブリパークの宣伝と愛知県の観光動画というのを作って。その仕事で去年5回ぐらいロケハンをして、3回来て撮影して。愛知に10回近く来て撮ったんです。ぜひ皆さま見てみてください」

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・4分半ぐらいでYouTube でも流れていますね。鈴木敏夫プロデューサーからご指名を受けたと伺いました。

中川監督
「そうなんですよ。ご指名をいただいて、愛知県の動画を撮ってほしいと。ロケハンしていて愛知県ってかなり広いんだなと思って。津々浦々回って撮って。いいところだなと思いつつ、泊まるところは大体いつもこのあたりなのでこのスクリーンで何作か観ましたね」

・中川監督はまだお若くて、平成生まれの監督でこれからも日本映画界をけん引されていく方だと思います。海外でも大変な評価を得ていらっしゃいますが、監督の少年時代をちょっと掘り下げていこうかなと思います。監督が一番最初に映画館にお出かけになったのはいつ頃でどんな映画でしょうか?

中川監督
「家族と行った映画ということだとゴジラですね。平成ゴジラシリーズがたくさんやっていました。ゴジラ対デストロイアとか。そういうのは親に連れられて行ったりはしていたんですけど、ただ自分で意識的に非常に覚えているのは『もののけ姫』です。小学校3年生でそれを見て、ああこんなすごい世界があるんだなと思ってですね。その後小学校6年の時に『千と千尋の神隠し』です。それが人生で初めて映画館に1人で行くという経験だったですね。はまって4回ぐらい1人で観に行ったんですよ。小学生で1人って今思うとすごいなと思うんですけど。それが映画館との出会いですね」

・実写ではどうですか?

中川監督
「実写で映画を観に行ったのは中学になってからですね。すごい覚えているのは『オペラ座の怪人』です。2015年に映画版があって。それを高校受験が終わったその日に観に行ったんですよ。おそらく受験の開放感が相まってだと思いますが、非常に感動して。お金も使うことがなくてお年玉が貯まっていたものですから、高校入学までに14回観に行きました。14回『オペラ座の怪人』を観に行く人はなかなかいないんじゃないかと思いますけど(笑)。高校に入ってからは単館の映画館に行ったりして観ていました」

 

・大学に入られてから映画館ではどんなものを観られたんですか?

中川監督
「僕は映画の学校に通っていただけではないので、大学時代に友人と出会って。この作品でいうと浜辺さん演じる登場人物のモデルとまでは行かないですけど、インスパイアされた友人がいてですね。男性なんですけど。彼がヨーロッパの映画に詳しかったんです。一番よく覚えてるのはちょうど非常に残念なことにこの映画と同じ公開日なんですけど、『アネット』のレオス・カラックス監督の『ポールX』という作品があって。それを友人がDVDで買って面白かったと言ってその後『汚れた血』とか『ポンヌフの恋人』とかを観たんです。ああいう映画を10代の時に観るとものすごい衝撃を受けると言うか。その友人と授業に出ないでよく映画館に行っていましたね」

・4月1日いよいよ『やがて海へと届く』が公開されます。完成おめでとうございます。公開1週間前ですが、どんな感じですか?

中川監督
「ありがとうございます。なんかこう…裁判にかけられているみたいで落ち着かないと言うか、あまりいい気分ではないすね。結局褒められても、ああ優しい人だなって思うし、けなされてももちろんいい気分にはならないし、もちろん自分の作品の粗もわかっていますし」

・この作品のお話はいつ頃あったんでしょうか。

中川監督
「前の作品『静かな雨』という太賀さん主演の作品があってですね、その作品を撮り終わった次の日が、私の誕生日で。その『静かな雨』のプロデューサーが誕生日プレゼントだと言ってこの作品の原作をちょっと読んでみてといって渡してくれたんです。それが2019年の1月で、それからコロナで撮影が延期になったりして。そういうのも経て去年の4月に撮った感じですね。ちょうど1年前になります」

・割と撮影までも早いですね

中川監督
「そうですね。今回脚本を書いてキャスティングがなかなか大変で。お二人ともものすごく忙しくて、それにコロナの延期もあって。1回合わなくなるとまた2人が会うのが難しい。合わせるのが大変でしたね」

・彩瀬まるさんの原作を読まれたときにどう作ろうかとかは浮かんできたんですか?

中川監督
「原作から相当脚色しています。原作には原作の素晴らしさがあるので読んでいただきたいんですけど。原作の精神の根幹の部分はちゃんと受け止めさせて、受け取らせて頂いたと思っているんですけど、結構違うものにはなっていると思っていて。 というのも先ほど言いました自分の大学時代にカラックスとかを教えてくれた友人がその後亡くなってですね。『走れ、絶望に追いつかれない速さで』でも描いたテーマではあるんですけど、自分の友人との関係だったり、大学時代の彼との時間というのもこの作品の中で結構入っているんです。原作を読んで感銘を受けた部分も自分のある青春の一時期に自分の欠けている部分というのを補ってtくれた大切な友人がいるという部分というか。10代から20代前半って他人が他人になる時代じゃないですか。そこから段々と他人との折り合いがつきやすく、大人になっていくと思うんですけど、他人がはっきり他人だった時代に憧れと軽度の依存、そういう感情を抱く相手ってすごい特別でそういう人間がいなくなってしまった時に、人はどうやって大人になっていくんだろうかと。そこの部分が原作でも感銘を受けたところだったので、そこを抽出して描いたという感じですかね」

・中川監督流にアレンジしていったというところで今回、劇中にアニメーションが入っていますね

中川監督
「この映画を観に来られた方がいつまでも終わらない予告編が始まってるんじゃないかと勘違いされるかもしれませんが、冒頭アニメから始まるんです。それはこれまでにない試みとしてやってみました。観ていただくとこれをアニメにした理由はなんとなく感じていただけるのではないかと思うんですけど、元々詩を書いていたというのもあって、映画の物語の中で補完しきれない部分を詩で書いて、その詩をもとにアニメーションを作ってもらったという作り方をしたんです」

・このお二人を起用されたわけは?

中川監督
「アニメーションは久保さんと米谷さんの2人で担当していただいています。『とつくにの少女』というアニメーションをやられている方で、「鬼滅の刃」のようないわゆるセルアニメではなく、アートアニメの分脈で活躍されている方で本当に素晴らしいんですよね。セルアニメと実写は共存し得ないですけど、アートアニメーションであれば共存することは可能かと思ってお願いしました」

・監督の作品には死がテーマになっているものも多かったと思うのですが、今回はちょっと死生観が変わったとかあったりしますか?

中川監督
「今までは喪失のその後というものを描いてこなかったですね。自分自身が喪失というものをどう咀嚼していいのかということがわからない中で20代を過ごしてきたので、もちろん今でもわかってないんですけれども、それに対して今回原作にある死生観、彩瀬さんの考えられている死生観をお借りして、その援護ももらって自分なりに人間は誰かを失った時にどう生きていくのか、生きている人間と死んだ人間の関係はどういうものなのかということを改めてもう一歩踏み込んで考えてみるという作品になっています」

・岸井ゆきのさんが演じている真奈と監督が思いを重ねたのかなとちょっと思ったりしました。主演にキャスティングされたお2人のことを伺ってもいいですか?

中川監督
「とても忙しいお2人でよく共演出来たなと。岸井さんはいつかご一緒したいと思っていた俳優さんで、歳も近いですし、ずっと意識している方だったんです。でも浜辺さんは驚きですね。『賭ケグルイ』とかのイメージもあって自分とは縁のある俳優さんじゃないと思っていたので。でもそういう化学反応があった方がいいと思ったんですよね。本来交わらなかった人間が交わるということが人生のある意味醍醐味でもあると思うんですよ。なんかそういう意味ではキャスティングでもちょっとサプライズ感があった方がいいかなと思ってお願いしたんです。

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・びっくりしましたね。『賭ケグルイ』だとエンタメ系の作品で感情を露わにして演技されていますので。監督の作品だとそんなに観客にも感情を露わにさせないじゃないですか。余韻を残すというか。浜辺さんに対しては演出的なことはお話されましたか?

中川監督
「これは推測ですけど、ずっと忙しくされていたはずなので、あんまり学生生活という実感はないのではと思ったので、普通の女子大生さんに来てもらって、浜辺さんとおしゃべりしてもらう時間を作ったりとか、すみれの母校の設定になっている学校に浜辺さんと一緒に行って、学校の先生と校舎を見て歩いて、すみれはこういうところで学生生活を送ってきたんじゃないかなという話をしたりとかして。そういう時間の中で徐々に浜辺さんの中でリアリティがある人間像を感じてもらうとか、すみれはビデオカメラで撮影する設定があるので、ビデオカメラをお渡ししてご自身の身の回りのものを撮ってもらって。それを見て話し合ったりとかそういうことをすることでそのすみれというキャラクターを浜辺さんの中に入れてもらうという作業をしました」

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・岸井さんについてはいかがですか?

中川監督
「『愛がなんだ』の舞台挨拶をこちらでやられたりされたんですよね?あの方はすごい人でして、本番前はスタッフと楽しく話しているんですよ。元気なんです。それが本番になったら深刻な表情で的確なお芝居をされるからすごいなと思って。それが別に技術としてやっている感じもしなくて真摯にやっているのが伝わってくる。その切り替えがすごいなと思ってですね。本当に映画への愛が強い人なんですよね。とにかく誠実な人でした。現場で結構議論しましたね。これは違うんじゃないかとか。このポスターにあるシーンは作品の中で重要な場面で出てくるんですけど、このシーンについても登場人物のある行動に対してこうした方がいいんじゃないか、ああした方がいいんじゃないかとか、ここは自分としては感覚が違うとか議論しました。大体、岸井さんが合っていました。僕が言ったようにしない方がよかったですね(笑)」

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・真奈の部屋がすごく居心地の良い場所になっていますね。

中川監督
「安心できる空間というのが今回テーマなんですよ。安心できる居場所を年齢や性別問わずあまり持てていない時代なんじゃないかという気がしていて。そこについてはこだわりました」

・監督にとって居心地のいい場所はどこですか?

中川監督
「映画館ですね。携帯電話が良くないですよ。人間の精神に悪いものを与えているというか。と言っている僕も中毒なんですけど(笑)。それを手放せる空間というのは映画館と銭湯とか温泉ぐらいですよね。すごく意味があります。人間がデジタルから離れられるってすごくいいです」

・最後に監督、これから観られる皆様にひと言お願いいたします

中川監督
「今は配信とか色々な形での映画の届け方がある中で映画館でこうやって直接お会いしてお話出来る。こちらからもお一人ずつのお顔も見えますし、何かを作ったという手応えを作り手としてものすごく感じます。配信も素晴らしいんです。僕もやってみたんでけどただ会えない味気なさがあるんですね。お客さんとのコミュニケーションがない。そういう意味ではこうやって実際お会いできるこの場所自体に凄い意味があると思うし、改めてこの場で皆さんとお会いできてすごく嬉しく思っております。最初のお客さんに皆さんになっていただくということに本当に感謝しております。ぜひお楽しみ頂けたらと思います。ありがとうございました」

中川龍太郎監督

中川龍太郎監督

映画『やがて海へと届く』 https://bitters.co.jp/yagate/ は4月1日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかで全国ロードショー。東海三県では伏見ミリオン座、イオンシネマ(ワンダー、東員)、ユナイテッド・シネマ(豊橋18、岡崎)、TOHOシネマズ(木曽川、赤池、モレラ岐阜)で4月1日(金)より、伊勢進富座で6月4日(土)より公開。UDCast対応。

 

出演:岸井ゆきの 浜辺美波/杉野遥亮 中崎敏/鶴田真由 中嶋朋子 新谷ゆづみ/光石研監督・脚本:中川龍太郎
原作:彩瀬まる「やがて海へと届く」(講談社文庫)
脚本:梅原英司 音楽:小瀬村晶 アニメーション挿入曲/エンディング曲:加藤久貴
エグゼクティブ・プロデューサー:和田丈嗣 小林智 プロデューサー:小川真司 伊藤整
製作:「やがて海へと届く」製作委員会 製作幹事:ひかりTV WIT STUDIO
制作プロダクション:Tokyo New Cinema
配給:ビターズ・エンド ©2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

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