
Go on 人生は続いていく(映画『轟音』)
片山享という人の作品と出会ったのは2018年のはままつ映画祭だった。
彼の故郷福井で撮影された短編『いっちょらい』の離れたくても離れられないもの-家族・地縁-との関係の描写がかなり響いた。誰しもが心の中に故郷へのいろんな思いを抱えて生きている。
故郷とは何か。
故郷という地方には果たして何もないのか。
地方だからこそあるものは何か。
地方に住みながら活動を続ける私には見えないものが彼には見えている。
片山享監督が、故郷・福井を舞台に撮影した映画『轟音』が2月15日から池袋シネマ・ロサで公開される。
ある⽇、誠(安楽涼)の兄が犯罪を犯した。それを苦にした⽗は⾃殺し、誠は⺟親に助けを求めたが、⺟は助けてはくれなかった。誠は家を⾶び出し、⾃分を傷つけてくれるものを探した。そして、⼀⼈の浮浪者に出会う。彼との出会いをきっかけに、誠の生と向き合う音が静かに響き始める。
片山監督は故郷を離れたことで故郷を見つめ直した。脚本には、自身の経験も含まれている。脚本や監督として製作に携わっているが、役者としての活動も長い。主人公に影響を与える浮浪者役で役者として参加し、自らが信頼するキャストをメインキャストとして迎えた。
主人公・誠には片山監督が脚本、役者として出演した『1人のダンス』の主演・監督の安楽涼を起用した。誠は家族の起こした事件がきっかけで普通の生活が一変し、家を飛び出し彷徨う。
ストーリーは誠、ひろみ、まゆこの3人を軸に展開される。
3人の周りに現れる人々の心の中にもそれぞれ様々な思い、叫びがある。しかし、それはセリフには表れない。役者達の表情で伝わってくる。
観ていて痛々しいくらいのシーンもあるだろう。
人知れず、心の中に溜まった思いは他人には分かってもらえない。話したところで、分かってもらえているのかも本当のところはわからない。
モヤモヤしたこの気持ちはどこに向かわせればいいのか?そんな誰かの叫びが作品全編に感じられる。
『轟音』とはGo on。
今この瞬間を 留めておきたくても 時は進む。
助けがなくても どんなに辛くても 人生は続く。
片山監督は希望を描いたという。
あなたはこの映画のどこに希望を見いだすだろうか。
『轟音』https://www.go-on-film.com/ は2月15日から2月28日まで池袋シネマ・ロサで公開。『轟音』上映にあたり、池袋シネマ・ロサでは2月1日から7日まで、片山亨作品集『生きる、理屈』として短編3作品(『名操縦士』、『いっちょらい』、『生きる、理屈』)、2月8日から14日まで中編2本(『つむぐ』、『未来の唄』)が上映される。
Cast
安楽涼 太田美恵
大宮将司 岸茉莉 中山卓也
柳谷一成 あまつりか 田中陽介 天津弥 岡田広
松林慎司 片山享 宮田和夫
Staff
プロデューサー:夏井祐矢・宮田耕輔 / 撮影/照明:深谷祐次 / 録音:マツバラカオリ / 特殊メイク:北風敬子
編集:片山享 / サウンドディレクター:三井慎介 / カラリスト:安楽涼 / 演技事務:岡田美穂 / スーパーバイザー:吉田圭介 / アクション指導:岡田広 / タイトル:広部 志行 / 協力:福井工業大学 デザイン学科/ふくいまちなかムービープロジェクト/まちづくり福井株式会社/新栄商店街 /ハウンドプロジェクト
2019/日本/99分/カラー/ステレオ/DCP
おすすめの記事はこれ!
-
1
-
もう一人の天才・葛飾応為が北斎と共に生きた人生(映画『おーい、応為』)
世界的な浮世絵師・葛飾北斎と生涯を共にし、右腕として活躍したもう一人の天才絵師が ...
-
2
-
黄金の輝きは、ここから始まる─冴島大河、若き日の物語(映画 劇場版『牙狼<GARO> TAIGA』)
10月17日(金)より新宿バルト9他で全国公開される劇場版『牙狼<GARO> T ...
-
3
-
「空っぽ」から始まる希望の物語-映画『アフター・ザ・クエイク』井上剛監督インタビュー
村上春樹の傑作短編連作「神の子どもたちはみな踊る」を原作に、新たな解釈とオリジナ ...
-
4
-
名古屋発、世界を侵食する「新世代Jホラー」 いよいよ地元で公開 — 映画『NEW RELIGION』KEISHI KONDO監督、瀬戸かほさんインタビュー
KEISHI KONDO監督の長編デビュー作にして、世界中の映画祭を席巻した話題 ...
-
5
-
明日はもしかしたら自分かも?無実の罪で追われることになったら(映画『俺ではない炎上』)
SNSの匿名性と情報拡散の恐ろしさをテーマにしたノンストップ炎上エンターテイメン ...
-
6
-
映画『風のマジム』名古屋ミッドランドスクエアシネマ舞台挨拶レポート
映画『風のマジム』公開記念舞台挨拶が9月14日(日)名古屋ミッドランドスクエアシ ...
-
7
-
あなたはこの世界観をどう受け止める?新時代のJホラー『NEW RELIGION』ミッドランドスクエアシネマで公開決定!
世界20以上の国際映画祭に招待され、注目されている映画監督Keishi Kond ...
-
8
-
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の呉美保監督が黄金タッグで描く今の子どもたち(映画『ふつうの子ども』)
昨年『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が国内外の映画祭で評価された呉美保監督の新作 ...
-
9
-
映画『僕の中に咲く花火』清水友翔監督、安部伊織さん、葵うたのさんインタビュー
Japan Film Festival Los Angeles2022にて20歳 ...
-
10
-
映画『僕の中に咲く花火』岐阜CINEX 舞台挨拶レポート
映画『僕の中に咲く花火』の公開記念舞台挨拶が8月23日岐阜市柳ケ瀬の映画館CIN ...
-
11
-
23歳の清水友翔監督の故郷で撮影したひと夏の静かに激しい青春物語(映画『僕の中に咲く花火』)
20歳で脚本・監督した映画『The Soloist』がロサンゼルスのJapan ...
-
12
-
岐阜出身髙橋監督の作品をシアターカフェで一挙上映!「髙橋栄一ノ世界 in シアターカフェ」開催
長編映画『ホゾを咬む』において自身の独自の視点で「愛すること」を描いた岐阜県出身 ...
-
13
-
観てくれたっていいじゃない! 第12回MKE映画祭レポート
第12回MKE映画祭が6月28日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は1 ...