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映画『歩きはじめる言葉たち~漂流ポスト3.11をたずねて~』名古屋公開記念舞台挨拶レポート
映画『歩きはじめる言葉たち~漂流ポスト3.11をたずねて~』の公開記念舞台挨拶が10月24日名古屋・名演小劇場で開催された。升毅さん、野村展代監督が登壇。そのレポートをお届けする。
升毅さん
「出演者その1、升毅です。4年ぶりにこの名演小劇場の舞台に立たせていただき、感激しております。本日はよろしくお願いいたします」
野村監督
「皆さん、こんにちは。監督とプロデュースをしております野村です。よろしくお願いいたします」
升毅さん
「今ご覧頂いた映画『歩きはじめる言葉たち』ですが、今回のこの形になるまで紆余曲折ございましてそのあたりを簡単にご説明させていただきたいと思います。そもそもはこの映画は」
野村監督
「陸前高田市で東日本大震災の被災地を舞台にして、劇中に登場した佐々部清監督の劇映画として企画をスタートしたんですけれども、ちょっと資金繰りですとか色々な事情で1回企画が頓挫しました。ただ取材内容を活かして、では私が監督でドキュメンタリーを撮ろうということで再出発したのが2020年初頭でした」

野村展代監督
升毅さん
「それで撮影がスタート」
野村監督
「はい。それで撮影がスタートして、佐々部監督は東京から応援してくださっていたんですが、20日後ぐらいに佐々部監督が突然亡くなられてしまったところから漂流ポストにお手紙を出された方々と我々が急に同じ立場に、同じ側になったというところで、ドキュメンタリーなのでその姿をもう正直に描こうということになりまして、升毅さんと撮影の早坂伸さんと私と3人で旅に出てこのような形の作品になりました」
升毅さん
「そもそも劇映画になるときには漂流ポストを守っていらっしゃる赤川さんという方の役を演じる予定だったので、そういう意味では一度参加し、途中で抜け、そして再度参加させていただくという形になりました。その話を頂いたのがまだ監督が亡くなってから1ヶ月ちょっとの時だったので、 非常に複雑な気持ちで即座にやりましょうという気持ちにもなかなかなれなくて。それでももしそういう形のものを作るのであれば是非やらせていただきたいという想いがあって参加をさせていただきました。 実際に陸前高田の方へ最初に行かせて頂いて震災から10年近く経っていたんですが、まだまだ復興半ばといいますか、きれいになっているところはなっているし、まだ全然手がつけられていないところはつけられていない。もちろんそこで被災された方たち、大切な方を亡くした方たちの思いはそう簡単には元には戻れないというお手紙も読ませていただいて、自分に何が出来るのかなぁという思いを抱えながら、ただただ皆さんの話を聞き、一体自分は何を感じるかということだけで役者でありながらセリフもなければ台本もなかったので、そういう形での参加になりました」

升毅さん
野村監督
「升さんにお願いしたのは元々の企画段階でもちろんキャスティングされていたというのはもちろんあるんですけれども、亡くしてしまった大切な人に想いを届けるポストということで我々の亡くしてしまった大事な人というのがまさしく佐々部清監督だったんです。升さんはこの6、7年佐々部組で佐々部監督とご一緒して、職業を超えて本当に親友になられていたんですね。皆さんが知る映画監督・佐々部清もそうなんですけれども、人間・佐々部清と人間・升毅の片方はもうこの世にいないんですが、友情の物語をドキュメンタリーとして追いかけたいということで升さんに一緒にとお願いをしてリアルに3人で撮影に行っていたんですよね」
升毅さん
「そうですね。撮影は3人だけで行かせていただいて。音響のマイクとかを監督が持ち、僕がいて街角に立っているとまるで街頭インタビューのような感じで(笑)」
野村監督
「まさか映画を撮っているとはという感じで。現場で升さんにも車を運転していただいたり、早坂さんに怒られながら私が撮ってきた音は編集でほとんど使えず(笑)、そういった珍道中でしたけれどもその中で亡くなっているんですけれども、佐々部監督を感じることができながら我々も去年旅を出来たというのが、もしかしたらそういう思いがあの漂流ポストに手紙を出された方たちが歩む行程なのかなと。そういったリアルさもあるんじゃないかと。升さんが最後にお手紙を書かれましたけど」
升毅さん
「書かれましたと言いますか、漂流ポストのある森の小屋という所に皆さんが送られた手紙を読める小さい部屋があるんですが、そこに便箋とペンを置いて。「升さん、書いても書けなくてもいいですから座ってください」と言われて座ったら監督と撮影監督が扉を締めて鍵をかけて。軟禁状態ですよね(笑)」
野村監督
「ちょっと閉じ込めたんですね(笑)」
升毅さん
「その中で自分なりになんとか言葉にしようと思ってでもなかなか出てこなくて、最終的に書けたのが、皆さんに観て頂けたのは「連絡待ってます たけし」だったんですけれども、どう見ても手紙じゃないですよね」
野村監督
「普通の会話ですね。ただ漂流ポストに送られてくる手紙は升さんにも全部読んでいただいてるんですけれども、そういうお手紙なんですよね」
升毅さん
「そうですね。最初は何で亡くなってしまったの?会いたい会いたいという手紙からスタートしてだんだんだんだん亡くなってないよ、まだいるよという風に書かれる方の気持ちも変わってこられて。今日はこんなことがあったよ、こんなことがあったよ。そっちどう?みたいな遠くにいるから会えないからという手紙のやりとりに変化していっているのを感じながらだったので、まだ自分の中でけじめがついていないのでああいう風になってしまいましたけど」
野村監督
「でもすごく升さんが本当に普通にまたどこそこにご飯に行きましょうとかまたカラオケ一緒にしたいなみたいなそんなようなことがぼやっとしていた上に書かれていたんです」
升毅さん
「そう、あの上2行にね、まだあるんですよ。野村監督も初監督なので編集作業に初めて携わったんですよね?上の2行を使わなかったのはなぜですか?ふざけてるなと思ったからですか?」
野村監督
「違います(笑)。本当にすごく普通の会話だったんですよ。お手紙ということではなく本当に佐々部さんに語りかけている内容だったので、すごく感動したんですね。なので隠しました(笑)」
升毅さん
「そういうところが随所にあるので、映画をご覧になった方とか取材の方から映画の最後の方に監督の地元である下関で監督がいつも行っていたスナックで監督がいない中でカラオケを歌って、皆で涙してしまったあそこの音楽、音がなかったので、「あの曲は何だったんですか」と質問されるんですけど、なぜですか?」
野村監督
「それもいい演出ですねと言われるんですが、大人の事情です(笑)。曲がちょっと使うだけでも高くて」
升毅さん
「ああいうシーンでちょっと使うだけでもすっごいかかるらしいんです。でもそれが功を奏じて」
野村監督
「隠したり、そういうことをしていたら「いいですね」って言っていただけて良かったなと」
升毅さん
「音響で編集に携わってくれた臼井勝さんも佐々部組の方で『八重子のハミング』も一緒にやらせていただいたんですけど、今回のこの映画の中に『八重子のハミング』で使っていた音を随所に取り入れてくださっているという話を聞いて」
野村監督
「ちょっと厚みを持たせるために少し空気の感じとか鳥の声とかちょっと足してくださっているのがあるんですけど、それを「野村さん、ここはね『八重子のハミング』から使ったよ」とか、編集中にさらっとおっしゃるのに愛を感じました。そんなことを今回発売しているミニリーフレットに入れさせていただきました」
升毅さん
「このリーフレットの中に4年前『八重子のハミング』の時に佐々部清監督と名演小劇場に来させていただいたんですが、その時にサイン会をさせて頂いたんですね。その時の写真が実は載っていまして」
野村監督
「そうなんです。毅と清のツービートって言って(笑)。2人でずっと回られていた時の写真をいろいろ探したんですけど、こちらの名演小劇場さんでサイン会をさせて頂いている写真が本当に2人のいいおじさまぶりが自然に出ていて使わせて頂いておりますのでぜひご覧ください」

舞台挨拶後名演小劇場ロビーにて
升毅さん
「『歩きはじめる言葉たち』は佐々部清が亡くならなければ出来なかった映画です。亡くならなければ出来なかった映画ということで、自分の中では宝物になりつつあります。この映画を一人でも多くの方に観ていただけますようにこれからも全国を行脚して参りますので、一言で結構です、お力をいただければと思います。本日は誠にご鑑賞いただきましてありがとうございました」
映画『歩きはじめる言葉たち~漂流ポスト3.11をたずねて~』は名演小劇場で公開中。全国順次公開予定。
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