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仕事も家もお金もない。でも助けてとは言えない(映画『夜明けまでバス停で』)
深夜のバス停。もう明日の朝までバスは来ない。バス停のベンチで旅行に行くかのような大きなトランクを横に置き、眠る一人の女性がいる。
高橋伴明監督の新作『夜明けまでバス停で』はコロナ禍で孤立し、困窮する人々を映し出す。
あらすじ
2020年11月、深夜。大道路沿いにあるバス停の細いベンチに、うつむくように腰をかけた北林三知子(45)が仮眠をとっている。三知子は以前まで、焼き鳥屋で住み込みアルバイトとして働いていたが、突然のコロナ禍により仕事と家を同時に失ってしまった。新しい仕事もなく、ファミレスや漫画喫茶も閉まっている。途方に暮れる三知子の目の前には、暗闇の中そこだけ少し明るくポツリと佇むバス停があった…。
心は悲鳴を上げていても助けを求められない人もいる
仕事がない、住む家もない、貯金もほとんどない。
それが明日突然やってきたら、あなたはどうするだろうか。
日本で非正規雇用として働く人は平成、令和になり増加した。その割合は女性の方が男性の3倍にあたるという。
女性にはライフステージも絡んだ複雑な理由がある。就職難で就職出来ないままアルバイト、派遣社員として生きてきた人、子育てしながらでは正社員としては採用してもらえなかった人、改めて働きたくても年齢制限で正社員になれない人。夢を追うために正社員にならなかった人。
作品の中では居酒屋で働く女性達の暮らしが会話の中から見えてくる。
主人公・三知子は別れた夫が自分のカードで借りた借金を返し続ける。相談すれば道が開けるかもしれないのだが、三知子の自尊心から人に頼ること、相談することができない。
また、海外からジャパニーズドリームを夢見て来日したマリアは娘が育児放棄してしまった3人の孫を少ない給料で育てている。彼女には年齢と外国人という日本での偏見が正社員への道を閉ざしてしまっていた。
そこに降りかかるコロナ禍は彼女達をさらに困窮させる。
家をなくし、空腹でも素直に炊き出しに並べない三知子に声をかけるホームレス達は人生の大先輩ばかりだ。様々な過去を抱えながらどこか悠々自適に生きているように見えるが、彼らも社会から疎外されて都会の片隅で生きる人々だ。

『痛くない死に方』から2年。高橋伴明監督の「今、これを世の中に発信しなければ!」という溢れる思いに、実力あるスタッフ、キャストが集結。
家をなくし、バス停で寝泊まりする主人公・三知子役には板谷由夏。次第にボロボロになり、体も心も疲れていく三知子を体当たりで演じた。三知子と共に働く中年アルバイトスタッフのマリア役のルビーモレノ、純子役の片岡礼子、古参のホームレスを演じる下元史朗、根岸季衣、柄本明、三知子の働く居酒屋の店長に大西礼芳、マネージャーに三浦貴大。石を振り上げる男役に松浦祐也、ユーチューバー役の柄本佑、三知子のアトリエのオーナー役の筒井真理子、介護職員役のあめくみちことどこを切り取っても演技派揃いで、沢山の出演時間ではないというのに存在感を放っており、観る人を引き込む。これだけのキャストが揃うのは高橋伴明監督作品だからこそだろう。

三知子は「自分が悪い」と言う。人生がうまく行かないと自分が全部悪いのだと思いがちだ。だが、本当に自分が悪いだけなのだろうか。
日本人は我慢してしまう人が多い。声をあげたいのにあげられない人がいることを踏まえ、周りの人々から声をかけることができる社会にならなければならない。なかなか難しいのはわかっているが、なりますようにと願う。
居酒屋の店長・千春の行動がこの映画の中では救いになっているように思えた。しかし現実ではまだここまで出来る人は多くない。
映画『夜明けまでバス停で』https://yoakemademovie.com/
は10/8よりK`s cinema他で全国順次公開。東海3県では10/8よりイオンシネマ(岡崎、東員)、10/14より伏見ミリオン座、大垣コロナシネマワールド、11/18より伊勢進富座で公開。刈谷日劇でも公開予定。
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