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ニコラス・ウィントンが救ったたくさんの命(映画『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』)

くまのパディントンのモデルは

くまのパディントンがパディントン駅で見つかったとき
首から札をかけていた。
「このくまをよろしくお願いします。」
そう書かれた札を付けたくまをブラウン夫妻は
イギリスの自宅へ連れ帰る。
そこから「くまのパディントン」の物話は始まる。

パディントンの原作者のマイケル・ボンドは子どもの時に
イギリスに疎開してきた子どもたちが名札を首からぶら下げて、
スーツケースを持ってたたずんでいる姿をニュース映像で見たことがあった。
このシーンを元に創作したと語っている。

ニコラス

この子どもたちは実はチェコからやってきた
ユダヤ人の子どもだった。
【キンダートランスポート】
という名でユダヤ人の子どもをナチスの手の届かない国外へ
逃がそうとした人たちがいた。
ドイツのようにユダヤ人出国組織がなかった
チェコスロヴァキアの難民キャンプを訪れたイギリスのビジネスマン
ニコラス・ウィントンは子どもたちだけでも助けたいと
仲間たちと【キンダートランスポート】を実行。
母国イギリスへ向けて約3ヶ月の間に669人の子どもたちを送った。
そのイギリスでの光景がマイケル・ボンドの「パディントン」に繋がるのだ。

語られなかった事実が明らかになる

この素晴らしい活動は岐阜出身の外交員杉原千畝の活動や、
シンドラーの活動同様長年明るみにならなかった。
それはなぜか。
ニコラスはこの活動を家族にすら話さなかったからだ。

ニコラスには悔やんでも悔やみきれない
最後の【キンダートランスポート】があった。
1939年9月に予定されていた250人の子どものたちの輸送が、
第二次世界大戦勃発のため中止を余儀なくされ、
その時列車に乗るはずだった子どもたちのほぼ全員が
その後、強制収容所などで命を落とした。
作戦の中止に心を痛め、後悔の念に苛まれつつ
戦後もニコラスは様々な慈善活動を続けていた。

約50年が経過する1988年のある日、
ニコラスの妻グレタは屋根裏部屋で
埃まみれのスクラップブックを見つけた。
グレタは夫がした活動を知り、友人に子どもたちの名簿を
託し、探し始めた。それをイギリスの放送局BBCが聞きつける。
BBCはイギリスへ送られた子どもたちを探し、
ニコラスに会わせようとサプライズを計画する。

マテイ・ミナーチュ監督は1999年に母親の戦争体験を映画にしているが
その際に読んだ資料であるヴェラ・ギッシング著
「キンダートランスポートの少女」に感銘を受け、
劇中にニコラス・ウィントンを登場させた。

その後2002年、ニコラスの偉業を追ったテレビドキュメンタリーを発表し、
ニコラスが救った子どもたちからの手紙や情報の整理を行い
集大成として本作が製作された。
1988年のBCCのドキュメンタリー番組も挟みながら
監督が独自に取材したインタビュー、
当時を回想するドラマ仕立てのシーンも入っており、
ニコラスの心や精神、人としての魅力を
じっくりと描き出す。

インタビューでは
生き残った子どもたちの鮮明な記憶で
戦前、戦中のチェコとイギリスへの電車の中の様子を教えてくれる。
ナチス・ドイツがじわじわと侵攻してくる様子、
自分たちではどうすることもできないことを
分かって必死に海外へのビザを求める
ユダヤ人たちの様子も語られている。
またBBCが追った子どもたちの成長、
世界に広がるニコラスが繋げた命も教えてくれる。

本当にすごいことをやる人は
それがすごいことだと思わず
当たり前だと思ってやる。

誰かのためになるから。そんなことは考えない。
今、目の前に起きていること。
何の罪もない子どもたちを救いたい。
国や民族の壁なんかない。

ニコラスの偉業を紹介しながら
生き残った子どもたちが同じ心で活動を続けているところを
ありのまま描いているところが素晴らしい。

ニコラス

この映画は2011年に作られた。
“英国のシンドラー”と呼ばれたニコラスは
2015年に106才で天寿を全うして亡くなったが
ニコラスの心は生き残った子どもたちに今も受け継がれている。

『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』は
11月26日より、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次公開。
名古屋地区では名演小劇場にて11月26日より公開。
公式サイト
http://nicholaswinton.jp/

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