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涼夏のここが今ツボ⑥ 星能豊がつなげる映画の縁ー特集上映『星能豊 retrospective』ー

私は星能豊のことを今回のイベントチラシにこう書いた。

現場で会った時とスクリーンに映る彼を同じ人だと気がつかなかった経験が私にはある。作品毎に彼は発する色が違う。彼を通して役の人物の色を感じることが出来るだろう。あなたはどの色の星能豊が好きになるのか。
涼夏(Cafe Mirage 映画ライター)

しかし、渡邉高章監督は「彼は何を演っても「星能豊」」だという。

見る人によって印象が変わるというのは俳優にとって本望ではないか。うらやましい。

普段はとても気さくで、とにかく知り合いが多い。愛されている人だなあと思う。

この人とやってみたいと思わせる何か、この人のためにやってあげたいと思わせる何か。
それは本人の努力だけでは生み出されない。今までの人生から自然と醸し出されるものなので、本人が求めても得られるものではない魅力。

星能豊という人はこの魅力もありつつ、努力も決して忘れない。自らが出演する作品の告知は決して忘れないし、自らが主催する映画上映イベントも毎年金沢で行っている。

役の大小に限らず映画に出演しているが、どんな役でも私たちの心に何かを残す彼は、自分のやりたいことにまっすぐに生きる人。
芯にあるのは、映画が好きだということ。
沢山の人に観て欲しいと思っていること。

昨年湖畔の映画祭で主演俳優賞を受賞した石川県在住の俳優・星能豊が出演する作品の特集上映『星能豊 retrospective』
2月11日、名古屋シネマスコーレで行われた。

上映前、若干緊張気味の星能さん

上映前、若干緊張気味の星能さん

 

故郷金沢ではなく、名古屋から始まったのは
湖畔の映画祭の審査員であるシネマスコーレ副支配人坪井さんからの提案からだった。
上映作品は星能豊自身がチョイスし、2つのプログラムで上映された。

Aプログラムはこだかさり監督の『ウィンターランド』から始まる。
二人の男が詩を読み上げる姿と声が時に重なり、時に別れる。詩を読むと頭の中にふっと現れる断片的イメージのような感覚を感じながら映画の世界に次第に入って行けるオープニングにふさわしい作品だった。

2作目は長谷川汐海監督『repeat in the room』
部屋の中という一人の空間で過去と現在が交差しているのか、これが主人公の心の中そのものなのかなどいろいろ設定を考える。わかりやすくはないストーリーを星能豊演じる男があまり感情を出さないために、一層わかりづらくする。ダンボールやカーテンの使い方、演劇に通じる作風が個人的に好きだ。

3作目は撮り下ろし新作渡邉高章監督『別れるということ』
オーディションで出会い、一緒に何本もの作品を作っている渡邉監督に自らが書いた脚本を委ねた。
大切な人に生きている間に伝えられなかったこと。弔いの後の静かな食事のシーンが非常にリアル。自主映画製作への思いも、別れたあの人への思いも詰まっている作品。

Bプログラム1作目は登り山智志監督『ちかくて、とおい』
ホラーなのかと思ったが、途中から出てきた女を捜す星能豊演じる謎の男の声のトーンで違うのかなと思い始める。
夫婦とは『ちかくて、とおい』でも『いとおしい』そんな関係なのかもしれない。

2作目は東海林毅監督『ピンぼけシティライツ』
夢を追いかけることを諦め、写真を撮ることをやめようとしていたカメラマンの前に水着の女の幽霊が現れ、話しかけてくる。
東海林毅監督の作品の中でかなり好きな作品。自分のやりたいこと、夢への思いを見失いそうになるタイミングでこの作品に再会している気がしてならない。

Aプログラム、Bプログラム後のトークも充実していた。

Aプログラムゲスト(敬称略)
第1パート

辻卓馬(おおぶ映画祭ディレクター)

(映画『センターライン』チーム)
下向拓生監督 倉橋健 涼夏

(映画『repeat in the room』チーム)
長谷川汐海監督、録音・音響効果 三浦紘彰

(映画『別れるということ』)
渡邉高章監督

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第2パート
坪井篤史(シネマスコーレ副支配人)

長谷川汐海監督、渡邉高章監督

長谷川監督が星能さんに身体を使った芝居をさせたいと言っていたのが印象的。

長谷川監督が星能さんに身体を使った芝居をさせたいと言っていたのが印象的。

 

Bプログラムゲスト(敬称略)
第1パート

辻卓馬(おおぶ映画祭ディレクター)

(映画『センターライン』)
もりとみ舞

(映画『ちかくて、とおい』チーム)
登り山智志監督、柳谷一成

(映画『ピンぼけシティライツ』チーム)
東海林毅監督、平井夏貴

(岐阜バスCMナレーション)
辻村健二監督

活舌が悪いのは悪いことではない、むしろ感情がのりやすいと辻村監督は話していた。ふむふむ。

活舌が悪いのは悪いことではない、むしろ感情がのりやすいと辻村監督は話していた。ふむふむ。

 

第2パート

坪井篤史(シネマスコーレ副支配人)

下向拓生監督、東海林毅監督、登り山智志監督、長谷川汐海監督、渡邉高章監督(五十音順)

こんなに監督が並ぶとなんだか壮観。

こんなに監督が並ぶとなんだか壮観。

 

ひとつのイベントで、こんなに監督や関係者が集まったイベントがあっただろうかという数の参加人数で星能豊を語ると、様々なことが明らかになる。

ゲストとして出ていたため、正確にはレビュー出来ないので、トークについてはゴチソー尾張さんのレビューを観て頂ければ。完全採録がすばらしい。

星能さんはすごいというトークを展開したAプログラムと星能さんは実はこんな人という若干ディスり気味のような気もするBプログラム。
監督からの作品へのこだわり、星能豊をなぜ起用したのかということを聞くことが出来た。

誰かが撮った作品を観た誰かがまた彼を使ってみたいと思い、また新たな役が動きだす。

何より星能豊は愛されているんだなとトークを聞いて改めて思った。

とにかくフットワークの軽い彼は作品の上映があれば出来るだけ上映場所に向かい、交流する。
出会いが出会いを生み、今回のイベントは成立した。

映画は決して一人では出来ない。
誰かと協力して初めて出来るものだ。
映画を作っていく中で彼の魅力と努力が強い信頼関係を生んだ。
これからも役者・星能豊と仕事をしたいという人は増えていくことだろう。

私自身、『センターライン』で星能さんと出会わなければ出会わなかった人が沢山いる。
彼が人と人を繋げ、新たな作品を生み出していく。

イベントの最後には坪井さんから「また来年もやりますか?」と提案があったのに対し、はっきりとは明言しないあたりも星能さんらしい。

だが、今年も監督からのオファーは絶えないに違いないのだから出来るはずだと私は思っている。

地方にいては何も出来ないとずっと言われてきた。
上京しなければ、活躍出来ないと言われてきた。
しかし、彼はUターンし、今は金沢から全国をフィールドに活動する。
地方で活動している私たちの星のような存在であり、目標であり、そして大事な仲間。

星能豊という役者、映画関係者の皆さん、使って損はないですよ!

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