
人と人とが協力する在宅医療の現場を描く(映画『ピア まちをつなぐもの』)
様々な場所で劇場公開され、上映会としても800カ所以上で上映されている介護従事者の姿を描いた映画『ケアニン』のスピンオフ作品が登場した。映画『ピア』だ。『ケアニン』では介護、看護、医療、リハビリなど、人の「ケア」に関わる人を描いたが、今回は在宅医療の現場を舞台に心を合わせてある物事を一緒にする間柄となっていく人々を描いていく。
あらすじ
病気で倒れた父親の医院を継ぐために、大学病院を辞めざるを得なくなった若手医師の高橋雅人は父の要望で渋々訪問診療も始めることになる。しかし大学で先端医療の研究を志していた雅人にとって、地域の患者やその家族たちの医療には、なかなか関心を持てない。医師としてのプライドもありケアマネジャーや介護福祉士など他の職種との連携も積極的にとることができないため、地域医療の中で孤立していくようになる。そんな中、訪問診療に行ったある患者家族との出会いによって、雅人の医師としての考え方が大きく変わっていく。
『ケアニン』を作ったチームが再結集して作るスピンオフストーリー
『ピア』では『ケアニン』の世界とつながる別の現場が描かれる。今回は在宅医療の現場が舞台。『ケアニン』はグループホームを舞台に認知症の老人と新人介護福祉士の成長物語が描かれていたが、今回は父の代わりに病院を継ぎ、地域医療に従事することになった医師が主人公だ。大学病院で研究に没頭していた主人公・雅人が実家の病院で臨床に携わることになり、地域の人々、地域医療では必要不可欠となるケアマネジャー、介護福祉士とのかかわりの中で変わっていく様子を描く。主人公・雅人を演じるのは『3年A組-今から皆さんは、人質です-』の刑事役の記憶も新しい様々な映画・ドラマに出演している細田善彦。武蔵役を演じる映画『武蔵』も東海地区では同時期の公開となる。始めは地域医療を理解していない雅人とぶつかってしまうケアマネジャー・夏海役には『チア☆ダン』、『僕らは奇跡でできている』で存在感を見せる松本若菜。『ケアニン』に引き続き、主人公に影響を与える役を担う。『ケアニン』公開時の舞台挨拶でも「続編が作りたい!続編にも出たい!」と話していた『ケアニン』主演で現在ドラマ『スパイラル』で好演中の戸塚純貴も前作と同じ介護福祉士・大森圭役で出演している。監督は『ケアニン』で助監督を務めていた綾部真弥。雅人が関わる在宅医療を受ける患者役に水野真紀が新たに参加し、命が尽きる最後まで患者の思いを受け止める人々を描く。前作から繋がっているため、『ケアニン』を観た人には『ケアニン』劇中で出てきたセリフが出てきて嬉しくなる。
在宅医療に関わる人の思い
様々な医師会や、在宅医療に関するエキスパートから監修も受け、現在の高齢化社会での在宅治療の現場、終末期医療の現場が描かれていく。『ケアニン』でも一般の人があまり知らない介護従事者の思いを感じることが出来たが、今回は在宅医療には様々な部門の人々が関わり、協力してケアが行われていることが見えてくる。主人公・雅人は将来の医療のための研究をしていたところから現在の医療の最前線に来たことで様々な戸惑い、葛藤の中、医者として新たな経験値を得ていく。
家族と一緒にいたい、最後は自分の家で過ごしたい。その思いを受け止める在宅医療の現場の今、そこに携わる人々の思いをこの映画で感じ取ってほしい。
映画『ピア』http://www.peer-movie.com/ は現在全国順次公開中。東海地区では5月17日から愛知・中川コロナシネマワールド、岐阜・大垣コロナシネマワールド、5月25日から愛知・シネマスコーレ、7月6日より三重・伊勢進富座で公開。
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