
我らのブルーオーシャンを開拓せよ!(映画『前田建設ファンタジー営業部』)
永井豪氏原作のアニメ「マジンガーZ」の出撃シーンで登場する地下格納庫兼プールを、会社の持つ技術と材料で建設するとしたらどうなるか?それに真剣に取り組んだ会社がある。前田建設工業株式会社だ。普通では考えられないそのプロジェクトは設計をし、そこから工期を立てて、見積書まで完成させる。実物を作るのと全く同じように取り組むが、“実際には作らない”というもの。
アニメ世界のあいまいで辻褄の合わない設定に翻弄されながらも、彼らは日本の技術の底力を駆使して無謀なプロジェクトに立ち向かった。
そのエピソードを映画化したのが『前田建設ファンタジー営業部』だ。
あらすじ
2003年のある日、前田建設工業の広報グループ長・アサガワは若手社員のドイに向かって話しかける。アニメ「マジンガーZ」に登場する地下格納庫兼プールの発注を受けたという設定で建設を検証するウェブ連載をしようというのだ。ドイや同僚達は上司の無茶ぶりに当初は乗り気ではなかったが、彼らを支えようとする技術者たちの熱意を目の当たりにし、無意味だと思っていたプロジェクトに次第に没頭していく。
積算がなければ始まらない
企業で建物を建てるというプロジェクトを進めるときはまず実施する前に、設計したり、どれぐらい材料や人件費が必要で工数がかかるのかという見積もりを顧客に提示する。
その見積もりをすることを積算と呼ぶ。(建設業界だけでなく、様々な業界でこの用語は使用されている)
積算はするが、製作はしないというルールで2004年からWeb上に様々なアニメの建物の設計や見積もりをアップしている前田建設ファンタジー営業部。
調査、設計を行い、積算しても実際には作らないので利益にはならない。それでも前田建設工業の仕事として忠実に積算する。新しい市場(ブルーオーシャン)開拓の一つのプロジェクトとして空想の世界からの発注(マジンガーZ編では光子力研究所の弓教授から)を受けて提示した見積書はWeb上でも大きな反響を呼び、その後も様々なものの積算にチャレンジしている。
演劇から映画へ
前田建設ファンタジー営業部の取組を描いた「前田建設ファンタジー営業部 マジンガーZ地下格納庫編」を偶然手にしていたヨーロッパ企画の代表・上田誠は2013年にその作品を舞台化した。その時にも前田建設ファンタジー営業部が作り上げた見事な設計図や見積書が使用された。
その舞台を見ていた佐治プロデューサーが映画にしたら面白いと考え、上田氏に映画用の脚本を依頼。その内容を存分に映像表現してくれる監督として指名されたのは『ハンサム★スーツ』、『トリガール』の英勉だ。
映画ならではの演出が観る者をわくわくさせてくれる。積算に必要な掘削工事現場や、ダム工事現場の撮影には前田建設工業が全面協力。演劇では描き切れないダイナミックな表現と、役者達が作るコミカルで、歯切れのいい芝居が楽しい。
上司の思い付きに巻き込まれ、積算を作ることになる広報グループのドイには13歳で俳優デビュー後、様々な作品で印象を残している高杉真宙。同じグループの同僚・ベッショ、エモト、チカダに、上地雄輔、岸井ゆきの、ヨーロッパ企画の本多力、突拍子もない発言をする上司・アサガワにおぎやはぎの小木博明(冒頭の熱弁シーンは妙にキマっている)、この空想世界からの発注に巻き込まれる土質担当のヤマダに劇団EXILEの町田啓太、クセの強いベテラン機械グループ担当部長フワに六角精児と演技派、個性派が随所に揃うキャスティングとなっている。
アニメという空想世界の建物を作るために自分達の知識と技術をフルに提供してくれる社内外の仲間達の姿がとにかく熱く感じられる。
ブルーオーシャンは空想世界にあり。
新たな顧客を求めてユーモアある企画を実行した企業のリアルストーリー。
前田建設工業ファンタジー営業部の活動をぜひ、仕事を頑張るあなたに観て欲しい。
そして映画を観終わったら前田建設工業ファンタジー営業部の公式HPも訪問しよう。
『前田建設ファンタジー営業部』https://maeda-f-movie.com/は1月31日 (金)より全国公開。東海地区では1月31日より愛知・イオンシネマ(大高、名古屋茶屋、ワンダー、岡崎、豊川、豊田KiTARA、長久手、常滑)、センチュリーシネマ、ミッドランドシネマ名古屋空港、 岐阜・イオンシネマ各務原、 三重・イオンシネマ(津、津南、桑名、鈴鹿、東員)で公開。
出演:高杉真宙 上地雄輔 岸井ゆきの 本多力 町田啓太 六角精児 小木博明(おぎやはぎ)
監督:英勉/脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
/原作:前田建設工業株式会社『前田建設ファンタジー営業部1「マジンガーZ」地下格納庫編』(幻冬舎文庫) 永井豪『マジンガーZ』/音楽:坂本英城
配給:バンダイナムコアーツ 東京テアトル 上映時間:115分
おすすめの記事はこれ!
-
1
-
映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』三重先行上映舞台挨拶レポート
映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』の三重先行上映、舞台挨拶が9月22日三重県 ...
-
2
-
映画『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは…』名古屋凱旋上映決定!
映画『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは…』が ...
-
3
-
ロイヤル劇場存続をかけてクラウドファンディング開始! 【ロイヤル劇場】思いやるプロジェクト~ロイヤル、オモイヤル~
岐阜市・柳ケ瀬商店街にあるロイヤル劇場は35ミリフィルム専門映画館として常設上映 ...
-
4
-
第76回 CINEX映画塾 映画『波紋』 筒井真理子さんトークレポート
第76回CINEX映画塾『波紋』が7月22日に岐阜CINEXで開催された。上映後 ...
-
5
-
岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』トークレポート
岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクシ ...
-
6
-
女性監督4人が撮る女性をとりまく今『人形たち~Dear Dolls』×短編『Bird Woman』シアターカフェで上映
名古屋清水口のシアターカフェで9月23日(土)~29日(金)に長編オムニバス映画 ...
-
7
-
映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』公開記念 アルノー・デプレシャン監督舞台挨拶付き上映 伏見ミリオン座で開催決定!
世界の映画ファンを熱狂させる名匠アルノー・デプレシャンが新作『私の大嫌いな弟へ ...
-
8
-
自分の生きる道を探して(映画『バカ塗りの娘』)
「バカ塗りの娘」というタイトルはインパクトがある。気になってバカ塗りの意味を調べ ...
-
9
-
「シントウカイシネマ聖地化計画」始動!第一弾「BISHU〜世界でいちばん優しい服〜」(仮)愛知県⼀宮市にて撮影決定‼
株式会社フォワードがプロデュースし、東海地方を舞台にした全国公開映画を毎年1本ず ...
-
10
-
エリザベート40歳。これからどう生きる?(映画『エリザベート1878』)
クレオパトラ、楊貴妃と並んで世界の三大美女として名高いエリザベート皇妃。 彼女の ...
-
11
-
ポップな映像と音楽の中に見る現代の人の心の闇(映画『#ミトヤマネ』)
ネット社会ならではの職業「インフルエンサー」を生業にする女性を主人公に、ネット社 ...
-
12
-
豆腐店を営む父娘にやってきた新たな出会い(映画『高野豆腐店の春』)
尾道で小さな豆腐店を営む父と娘を描いた映画『高野(たかの)豆腐店の春』が8月18 ...
-
13
-
映画『フィリピンパブ嬢の社会学』11/10(金)より名古屋先行公開が決定!海外展開に向けたクラウドファンディングもスタート!
映画『フィリピンパブ嬢の社会学』が 11月10日(金)より、ミッドランドスクエア ...
-
14
-
『Yokosuka1953』名演小劇場上映会イベントレポート
ドキュメンタリー映画『Yokosuka1953』の上映会が7月29日(土)、30 ...
-
15
-
海外から届いたメッセージ。66年前の日本をたどる『Yokosuka1953』名古屋上映会開催!
同じ苗字だからといって親戚だとは限らないのは世界中どこでも一緒だ。 「木川洋子を ...
-
16
-
彼女を外に連れ出したい。そう思いました(映画『658km、陽子の旅』 熊切和嘉監督インタビュー)
42才、東京で一人暮らし。青森県出身の陽子はいとこから24年も関係を断絶していた ...
-
17
-
第75回CINEX映画塾 『エゴイスト』松永大司監督が登場。7月29日からリバイバル上映決定!
第75回CINEX映画塾 映画『エゴイスト』が開催された。ゲストには松永大司監督 ...
-
18
-
映画を撮りたい。夢を追う二人を通して伝えたいのは(映画『愛のこむらがえり』髙橋正弥監督、吉橋航也さんインタビュー)
7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...
-
19
-
あいち国際女性映画祭2023 開催決定!今年は37作品上映
あいち国際女性映画祭2023の記者発表が7月12日ウィルあいちで行われ、映画祭の ...
-
20
-
映画『愛のこむらがえり』名古屋舞台挨拶レポート 磯山さやかさん、吉橋航也さん、髙橋正弥監督登壇!
7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...
-
21
-
彼女たちを知ってほしい。その思いを脚本に込めて(映画『遠いところ』名古屋舞台挨拶レポート)
映画『遠いところ』の公開記念舞台挨拶が7月8日伏見ミリオン座で開催された。 あら ...
-
22
-
観てくれたっていいじゃない! 第10回MKE映画祭レポート
第10回MKE映画祭が7月8日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は13 ...
-
23
-
京都はファンタジーが受け入れられる場所(映画『1秒先の彼』山下敦弘監督インタビュー)
台湾発の大ヒット映画『1秒先の彼女』が日本の京都でリメイク。しかも男女の設定が反 ...
-
24
-
映画『老ナルキソス』シネマテーク舞台挨拶レポート
映画『老ナルキソス』の公開記念舞台挨拶が名古屋今池のシネマテークで行われた。 あ ...
-
25
-
「ジキル&ハイド」。観た後しばらく世界から抜けられない虜になるミュージカル
ミュージカルソングという世界を知り、大好きになった「ジキル&ハイド」とい ...
-
26
-
『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシク久しぶりの映画はワケあり数学者役(映画『不思議の国の数学者』)
映画館でポスターを観て気になった2本の韓国映画。『不思議の国の数学者』と『高速道 ...
-
27
-
全編IMAX®️認証デジタルカメラで撮影。再現率98% あの火災の裏側(映画『ノートルダム 炎の大聖堂』)
2019年4月15日、ノートルダム大聖堂で、大規模火災が発生した。世界を駆け巡っ ...
-
28
-
松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』 阪元裕吾監督トークレポート
松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が4月1 ...
-
29
-
映画『サイド バイ サイド』坂口健太郎さん、伊藤ちひろ監督登壇 舞台挨拶付先行上映レポート
映画『サイド バイ サイド』舞台挨拶付先行上映が4月1日名古屋ミッドランドスクエ ...
-
30
-
第72回CINEX映画塾 映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』足立紳監督トークレポート
第72回CINEX映画塾が3月25日岐阜CINEXで開催された。上映作品は岐阜県 ...
-
31
-
片桐はいりさん来場。センチュリーシネマでもぎり(映画『「もぎりさん」「もぎりさんsession2」上映+もぎり&アフタートークイベント』)
センチュリーシネマ22周年記念企画 『「もぎりさん」「もぎりさんsession2 ...
-
32
-
カンヌ国際映画祭75周年記念大賞を受賞したダルデンヌ兄弟 新作インタビュー(映画(『トリとロキタ』)
パルムドール大賞と主演女優賞をW受賞した『ロゼッタ』以降、全作品がカンヌのコンペ ...
-
33
-
アカデミー賞、オスカーは誰に?(松岡ひとみのシネマコレクション『フェイブルマンズ』 ゲストトーク 伊藤さとりさん))
松岡ひとみのシネマコレクション vol.35 『フェイブルマンズ』が3月12日ミ ...
-
34
-
親子とは。近いからこそ難しい(映画『The Son/息子)』
ヒュー・ジャックマンの新作は3月17日から日本公開される『The Son/息子』 ...
-
35
-
先の見えない日々を生きる中で寂しさ、孤独を感じる人々。やすらぎはどこにあるのか(映画『茶飲友達』外山文治監督インタビュー)
東京で公開された途端、3週間の間に上映館が42館にまで広がっている映画『茶飲友達 ...
-
36
-
映画『茶飲友達』名古屋 名演小劇場 公開記念舞台挨拶レポート
映画『茶飲友達』公開記念舞台挨拶が2月25日、名演小劇場で開催された。 外山文治 ...
-
37
-
第71回 CINEX映画塾 映画『銀平町シネマブルース』小出恵介さん、宇野祥平さんトークレポート
第71回CINEX映画塾『銀平町シネマブルース』が2月17日、岐阜CINEXで開 ...
-
38
-
名古屋シアターカフェ 映画『極道系Vチューバー達磨』舞台挨拶レポート
映画『極道系Vチューバー達磨』が名古屋清水口のシアターカフェで公開中だ。 映画『 ...
-
39
-
パク・チャヌク監督の新作は今までとは一味も二味も違う大人の恋慕を描く(映画『別れる決心』)
2月17日から公開の映画『別れる決心』はパク・チャヌク監督の新作だ。今までのイメ ...