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岐阜・可児市で滞在して製作する舞台(アーラコレクション Vol.11『移動』製作発表レポート)

2018/09/29

可児市文化創造センターalaで稽古し、開幕する舞台「アーラコレクション」が今年も開催される。
東京から離れた岐阜県可児市で稽古し、舞台初日の幕が上がる。役者は1ヶ月間可児に滞在して芝居に没頭するというこの企画は今年で11回目。主演に竹下景子を迎え、初めて別役実の戯曲に挑戦する。

別役実は不条理劇を得意とする劇作家。今回製作される『移動』は戯曲の中でもあまり上演されていない作品。なぜこの作品を選んだのか。製作発表で聞くことができた。製作発表の様子をレポートする。

11回目のアーラコレクションで別役作品に挑む

衛紀生館長 兼 プロデューサー

「今年でアーラコレクションは11回目になります。昨年までで5回賞も受賞しています。今回ようやく別役実さんの作品をやることになって私は非常に感慨深いものがあります。別役さんは私の先輩なんですが、同じ先輩の鈴木忠志さんと分かれて早稲田小劇場から抜けて常田富士男さんと企画66(演劇企画集団66)を始めたときに『今までは油彩の絵を描いてきたがこれからはイラストを描くんだ』と言われたんですね。その後企画66以外に戯曲を書くときにこれは私の私見ですが、別役さんは不条理劇の代表選手と言われていた立場から逃走しようと思っていたのではないかと思うんです。サミュエル・ベケットは不条理劇の金字塔と言われる『ゴドーを待ちながら』をマルクス兄弟という喜劇役者を想定して書いていたと言われています。

衛紀生館長

衛紀生館長

不条理というのは考えてみると笑いの要素があるんですよね。それからの別役さんの仕事は会話のずれや人間がどうしようもなく思っているものを不条理と言う形で出しながら、笑いということを考えていたんじゃないかと思います。それからも私たちの世代には別役さんの作品は不条理劇だと固定観念がありましてなかなか笑いにならなかったんですが、ある時東京の紀伊国屋ホールで『会議』というお芝居を観たときに全く笑わない観客のエリアと大笑いしているエリアとはっきり分かれたんです。若い人達が大笑いしてたんですね。別役さんは若い人達に不条理という笑いを届けようとしているんだとほぼ確信しました。今回西川さんは初めて別役さんの戯曲を演出します。別役さんを西川さんが手掛けると全く別役実作品でも違うものが出来るのではないかと期待しています。長いこと一緒に仕事していますから西川さんにほぼ全て委ねて大丈夫だと思っています。文学座との共同製作でもあり、キャストも恵まれました。やった甲斐があろうかと思いますし、新しい別役実作品が提供できれば演劇界の一つのエポックを作ることが出来るのではないかと思います」

西川信廣さん(演出)

「さっきまでプレッシャーがなかったのに今急にプレッシャーが出てきました(笑)。別役さんのこの作品を選ぶまでに竹下さんが出るということは決まっていて、竹下さんとどんな作品をやろうかと考えていた当初は別役さんは入っていませんでした。ストーリーがあってお笑いがあって文学性があった作品と考えていたんですが、なかなかピタッと来るものがなかったんです。ヒントになったのは新国立劇場で竹下さんが別役さんの新作をやられていたことで、竹下さんに別役作品はありだと思ったんです。なぜ僕があまり別役作品に行かなかったかというと僕は文学座の別役実を演じるアトリエ公演で10年ぐらい演出助手をしていたんですね。その時が強烈で、その世界を自分が越えられるか自信が何もなかった。別役さんは観るのは好きだけどやるのは恐ろしいと思って距離を保って来たんですが、別役さんと竹下景子を掛けて僕も初めてでアーラでも初めてだから面白いかなと思ったんです。

演出 西川信廣さん

演出 西川信廣さん

では何をやるか。それを考えたときに1971年に別役さんが書いた戯曲で『新潮書き下ろし劇場』の名がついた本があることを思い出して。文学座で上演して高評価だった『にしむくさむらい』という小市民の不安が書かれた作品の原型だと思ったんです。これを削り落としていって、小市民のかすかな不安というところにたどり着いた気がして。"留まることを選べない"というのがこの作品のテーマだと思うんです。この作品には四つの移動があります。どこに向かっているのかをみんな不安に思いながら進んでいる。50年近く前に書かれた作品であるのにすごく今の不安と近いと思うんです。なんとか前に進まないと行けない。経済発展しかない。この先いったい何が起こるんだろうと。国は借金するし、老後は心配だし、今の時代にピッタリはまる話なんです。お芝居って新作を書くときは時代の鏡なので今の時代にある問題を演劇に投影する役目があるんですが、もう一つは時代が古い作品を呼ぶということがあると思います。『移動』は時代に呼ばれた作品だと思うんです。2018年アーラ発の『移動』をキャスト、スタッフと作ろうかなと思っています」

キャストにとっての別役作品とは、そして可児とは?

竹下景子さん(女 役)

「別役作品とは西川さんがお話されていたように新国立劇場で初めて縁がありました。とても手強かったです。そして私が初めて経験した別役作品とこの『移動』はスタイルとしては違っているように見えて根底に流れているものはおそらく変わっていないだろうと思います。人間はどういうものだろうということを別役さんはいろんな語り口で語っていらっしゃいます。最初に西川さんからこのお話をいただいたときは膨大な台詞量で長くて長くてよくわからなかったんですけれども、今回台本として渡されたものはとてもメリハリが効いていて不条理というよりは読んでいるとクスッと笑えるようなところがたくさんあります。私が演じるのは「女」。たかおさん演じる「男」と一緒に旅をする小さい子供を持つ母親なんですけれども、とにかく前へ行くことしか考えていないんです。家族の中のやり取りでもおかしいところがあります。その中でいつもみんなを引っ張っていくのがこの「女」ですがその元気さから私はサザエさんだなと思っています。アニメのサザエさんもずっと時代を超えて愛されています。それは生きていく中でみんなが変わらず持っているちょっとしたおかしいことがサザエさんの話の中にはあるからではないかと。それが演劇になった時にビビットにあるいは奥深いところで人の気持ちを揺るがすようなものになる一つの大きなチャレンジになると思います。

竹下景子さん

竹下景子さん

笑っていただいてそのあとに思いもよらない結末が待っているという、これ以上ドラマチックな作品はないように思います。ここにいらっしゃる緒先輩の胸を借りて私にとってどういう形を迎えるのか。今日はまだスタートラインですのでまだはっきりした形は結べていないんですが、演劇に適しているアーラでどれだけのびのびと出来るのかと思うと期待で胸が膨らんでいるところです」

たかお鷹さん(男 役)

「稽古の日数を見たらものすごく少なくいんですね。文学座の研究生の頃、別役さんの作品の芝居を観て何度も笑いました。何て面白いんだろうと。僕はよく文学座で別役作品に出ているといわれるんですが、1回しか出ていないんです。これで実は2回目です。この作品は観ているのは楽しいですけれどやると辛いです(笑)。ただ竹下さんとご一緒できるのは嬉しいです。よろしくお願いいたします」

たかお鷹さん

たかお鷹さん

嵐圭史さん(その父 役)

「私は昨年4月に60年ほど尽くしに尽くした劇団・前進座を離座いたしました。辞めるまでの30年ほど近くを劇団のトップリーダーとしてとにかく休みのない生活をしておりました。一人になってみてこれからの人生どうしようかなと考えたんですが、やはり芝居からは離れられないなということで今も携わっております。一人でやるというのがいかに大変かがわかりまして、劇団はありがたかったなと改めて感じております。

嵐圭史さん

嵐圭史さん

昨年文学座に客演したときの演出が西川さんでした。実は前進座時代に私は年寄り役をほとんどやったことがなくて、どちらかというと偉人ばかりをやっておりました。やめた途端、文学座さんでの客演で2本続けておじいさん役を頂いてそれから髭をたくわえております。今回も西川さんからお話を頂いて別役作品ということ以外は何も知らずに引き受けました。配役を見たら「その父」。竹下さん達の父親っていくつの設定なんだろうとわからなかったわけですよ。どうやら過去2回のおじいさん役よりも年をとっていなければいけないのではないのかと思っておりますがとても楽しみです」

本山可久子さん(その母 役)

「可児に参りましたのは3回目です。1回目は『おーい幾多郎』という西田幾多郎の若い頃のお芝居でした。次は平田オリザさんの『風の冷たき桜かな』という作品でした。さっき伺ったらそれが10年も前だそうで。年を取ったということですね(笑)。私は1950年に17才で文学座に入りましていつのまにか最長老になってしまいました。今回もこんな若い主人を持ちまして(笑)。どんなお芝居が出来るか楽しみにしております」

本山可久子さん

本山可久子さん

山本道子さん(貼り屋の妻 役)

「私は可児にはこまつ座の『闇に咲く花』で来たことがあります。ただここで生活するのはどうしたらいいのだろうと思いながら昨日ウィークリーマンションに伺いました。それはそれなりに1ヶ月過ごせそうです。お芝居に関しては演出家を始め皆さんに教えて頂きながら、まず隣にいる田村が私の2期下で今回は夫婦役なので良かったなと。色々教えてもらいながら頑張りたいと思います」

山本道子さん

山本道子さん

田村勝彦さん(貼り屋の夫 役)

「私は別役さん大好きで作品も何本かやらせて頂いてきたんですが、今回別役作品をやるのは6年ぶりです。『移動』の戯曲をあまりよく知らなくて読んだらすごく長くて。誰が「女」を演じられるのかなと思ったら竹下さんでそれを頭に入れながら読んだらこれはぴったりだなと思いました。先日本読みをやりまして竹下さんとたかおさんの夫婦、これは絶対に面白いという確信に変わりました。

田村勝彦さん

田村勝彦さん

それと西川さんの演出意図が私が考えていることと共通している感じがしましてこれから芝居を作っていくのがとても楽しみです。私の役は移動する4組の中の1組でビラ貼り屋の夫です。ビラ貼り屋ってどういう移動なのかと考えましたが職人の部類に入るのかなと思っています。職人も今と昔であり方が違ってくるんですが時代の中でサラリーマンの方とは違った過ごし方をしているんじゃないか、そこを探れないかなと思っています」

横山祥二さん(男二 役)

「私は別役作品には『数字が書かれた物語』の再演と青年座スタジオで『ジョバンニの父への旅』に出させていただいて今回が三回目です。滞在して諸先輩方のお芝居を観ながら勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします」

横山祥二さん

横山祥二さん

鬼頭典子さん(女二 役)

「私は数年前に『あの子はだあれ、だれでしょね』で初めて別役作品に出演してそれ以来2回目なんですが、別役作品はすごく難しくて。たかおさんも言ってらっしゃいましたが、演じるのは本当に難しいなと思ったので今回また挑戦できることを嬉しく思います。ただ出番としては少ないので今すごく緊張しています。なぜかみんなが一方向に移動しているのに私たちは逆から来るという。これはなんだろうとすごく考えています。諸先輩方と共演できるのがとても楽しみです。よろしくお願いいたします」

鬼頭典子さん

鬼頭典子さん

星智也さん(若い男 役)

「別役さんの作品に出るのは初めてです。若い男という役ですが僕自身41才で全然若くないですけれどもどのように演じようかと考えています。台本を読んでこの台詞は何発信なのかというのがわからないところから始まっているので、この若い男がたかおさん夫婦となんとなく同じように進んでいっているというその辺りの不安は自分とリンクさせていきたいです。

星智也さん

星智也さん

現代の若者と一括りしてしまうのは失礼だと思うんですけど、今の日本はどこに向かっているのか、それに対して若者は何を思っているのかというのを上手くリンク出来るような形で表現できたらいいなと思っています」

 

4組の移動を観ながら観ている私たちも時の流れの中を移動する。留まることを許されないのは私たちも同じ。別役実が書く移動とは何か。考えながら観るのも面白いかもしれない。すでに舞台美術も完成。劇場に来てその美術も楽しんでいただきたい。

 

アーラコレクション Vol.11『移動』

公演日程
10月15日~21日    可児市文化創造センターala
10月25日      宇都宮市文化会館
10月27日            長岡リリックホール
11月3日             四日市地域総合会館あさけプラザ
11月7日~14日      吉祥寺シアター

公演のプレイベントとして9月30日には稽古場探検ツアー、10月18日、19日には舞台探検ツアーもある。
詳しくはアーラ公式ホームページ(http://www.kpac.or.jp/collection11/)へ。

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