「世界が愛した料理人」に会いに行こう(映画『世界が愛した料理人』)
スペイン・バスク地方のミシュランガイド三ツ星の店の料理人がスペイン、フランス、日本で気になる料理人に会いに行く映画『世界が愛した料理人』が9月22日から公開される。
三ツ星を取っても終わらない追求
「エネコシステム」(環境に配慮した独自の循環型システム)に取り組みながら2012年に最年少でミシュランの三ツ星を獲得した「アスルメンディ」を経営する料理人エネコ・アチャ。妥協を許さず真の美味しさを追求し、料理に込める魂とその源流を探す旅に出る。スペイン、フランスと渡り、様々な料理人と話すうちミシュラン三ツ星店が一番多い日本へたどり着く。世界各国の料理人からこぞって注目されている和食の料理人の心=魂。それはどんなものなのか。

© Copyright Festimania Pictures Nasa Producciones, All Rights Reserved.
エネコ自身やエネコが会った料理人が料理する姿、料理について語る姿を通して料理に込める魂を私たちも知ることが出来る。
フランス料理の神様 最後の言葉
エネコはフランス料理の巨匠ジョエル・ロブションにも会って話を聞いている。日本にも店を構えるロブションは食材に愛情と敬意を持ち、料理にもそれを反映していると話す。フランス料理の神様と言われたロブションは今年8月に亡くなった。彼が語った料理に対する思いはこの映画を通して世界中に届くはずだ。
すきやばし次郎 小野二郎が握る伝統の江戸前寿司
アメリカのオバマ前大統領が来日した際に訪れた店としても有名になった「すきやばし次郎」。間もなく93才で今も現役の小野二郎。ミシュランガイド世界最高齢三ツ星シェフだ。ドキュメンタリー映画『二郎は鮨の夢を見る』で海外でも注目されている。修業として始めたが、好きなことだから長くできると話す。職人歴80年以上というキャリアを誇ることなく、長く続けてきた自身の感覚で一貫の寿司を感動の一口に変えていく。小野二郎の一回の絶妙な握りは他の誰にも出来ないまさに心のこもった職人技。

© Copyright Festimania Pictures Nasa Producciones, All Rights Reserved.
毎日同じ仕込みを繰り返す弟子たちをじっと見つめながら過ごす。江戸前寿司の伝統を後進へと繋ぐ役目も果たしながら小野二郎はまだまだ修業の道を進む。親の跡を継ぎ店主として店を守る息子・禎一の話に二郎から受け継がれる心を感じるだろう。
龍吟 山本征治が彩る和の皿
日本で取れた天然素材のみを使い、化学調味料を一切使わないという「龍吟」の料理を作り出すのは山本征治。
たくさんの客が来店するが料理を楽しんでもらうために来店する客に必ず守ってもらっていることがある。目、耳、鼻、口、手。料理を五感で味わうものと捉える山本のこだわりがそこにある。

© Copyright Festimania Pictures Nasa Producciones, All Rights Reserved.
壬生 夫婦が営むわずか8席のおもてなし空間
ある夫婦が営む店がある。わずか8席のその店は会員制で許されたものしか入れない一見さんよりも入るのが難しいお店。銀座にある「壬生」だ。ここで出される料理は夫婦二人が瞑想し、練られたテーマに沿って器や料理が用意される。季節や自然のものを使って一つ一つの料理を夫が作り、その世界観を妻が解説する。壬生という一つのコミュニティが存在しているようだ。この思いは海外の一流料理人も絶賛する。料理は一つの芸術。壬生の料理を作る石田廣義・登美子夫妻のリアルな言葉がここにはある。

© Copyright Festimania Pictures Nasa Producciones, All Rights Reserved.
料理は意識しなければただ生きていくためのツールに過ぎない。だが人間はそれを五感で楽しむものに昇華させた。心も体も喜ぶ料理を食べることは幸せな時間だ。
料理という芸術を私たちは楽しむ。その中で憧れの店、憧れの料理人として存在し続けるのに必要なのは毎日の努力と食べて笑顔になってもらいたい、食べて元気になってほしいという彼らの思いがあってのこと。料理人の魂が一つ一つの料理にあることを私たちは忘れてはならない。

© Copyright Festimania Pictures Nasa Producciones, All Rights Reserved.
日本で和食の心を知ったエネコは昨年東京に自身の名をつけた「エネコ東京」を出店した。バスク料理は魚を米やいもと一緒に組み合わせることもあり、日本人にも親しみやすいという。エネコの魂がこもった料理を味わいたい方はぜひ行ってみてはいかがだろうか。
映画『世界が愛した料理人』http://sekai-ryori.com/ は
9月22日よりYEBISU GARDEN CINEMA他で全国順次公開。東海地区では9月22日より愛知・名演小劇場で公開。
おすすめの記事はこれ!
-
1 -
ANIAFF 開幕!第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル オープニングセレモニーレポート
2025年12月12日(金)、「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメー ...
-
2 -
SF映画の脚本 キャスティング 世界観を彩る特殊効果の秘密 『ブラックホールに願いを!』渡邉聡監督 × 『センターライン』『INTER::FACE 知能機械犯罪公訴部』下向拓生監督 スペシャル座談会(後編)
『ブラックホールに願いを!』公開を記念し、渡邉聡監督と脚本協力を務めた下向拓生監 ...
-
3 -
SF映画の脚本 キャスティング 世界観を彩る特殊効果の秘密 『ブラックホールに願いを!』渡邉聡監督 × 『センターライン』『INTER::FACE 知能機械犯罪公訴部』下向拓生監督 スペシャル座談会(前編)
第一線の特撮現場で活躍している若手スタッフが集結! 新進気鋭の映像制作者集団「S ...
-
4 -
映画『Good Luck』は「ととのう系」!? 自然とサウナと旅先の出会い(『Good Luck』足立紳監督、足立晃子プロデューサーインタビュー)
2025年12月13日からシアター・イメージフォーラム、12月27日から名古屋シ ...
-
5 -
兄のことをひたすら考える終いの4日間(映画『兄を持ち運べるサイズに』)
『湯を沸かすほどの熱い愛』や『浅田家!』で数多くの映画賞を席捲し、一貫して家族の ...
-
6 -
映画『Good Luck』先行上映記念 足立紳監督&足立晃子プロデューサー 舞台挨拶レポート
11月24日「NAGOYA CINEMA Week 2025」の一環として、足立 ...
-
7 -
本物の武道空手アクションがここに!映画『TRAVERSE2 -Next Level-』豊橋で先行公開、完成披露試写会 開催!
武道空手アクション映画の金字塔となる二部作の完結編、映画『TRAVERSE2 - ...
-
8 -
極寒の会津ロケからベルリン映画祭出品へ! 魂の舞と幽玄の世界が描き出す人間の複雑な心境(映画『BONJI INFINITY』初号試写会 舞台挨拶レポート )
2025年11月3日、映画『BONJI INFINITY(ボンジ インフィニティ ...
-
9 -
日本初ARRIが機材提供。美しきふるさとの映像と音に触れ、自身を回顧する(映画『郷』小川夏果プロデューサーインタビュー)
数々の国際映画祭で評価を重ねてきた鹿児島出身の新進気鋭の伊地知拓郎監督が、構想か ...
-
10 -
映画『佐藤さんと佐藤さん』名古屋先行上映会舞台挨拶レポート。岸井ゆきのさん、宮沢氷魚さん、天野千尋監督登壇
映画『ミセス・ノイジィ』の天野千尋監督の最新作は夫婦の変化する15年間を描く、オ ...
-
11 -
運命さえも覆せ!魂が震える慟哭のヒューマン・ミステリー(映画『盤上の向日葵』)
『孤狼の血』などで知られる人気作家・柚月裕子の小説『盤上の向日葵』が映画化。坂口 ...
-
12 -
本から始まるストーリーは無限大に広がる(映画『本を綴る』篠原哲雄監督×千勝一凜プロデューサー インタビュー&舞台挨拶レポート)
映画『本を綴る』が10月25日から名古屋シネマスコーレで公開されている。 映画『 ...
-
13 -
いつでも直球勝負。『おいしい給食』はエンターテイメント!(映画『おいしい給食 炎の修学旅行』市原隼人さん、綾部真弥監督インタビュー)
ドラマ3シーズン、映画3作品と続く人気シリーズ『おいしい給食』の続編が映画で10 ...
-
14 -
もう一人の天才・葛飾応為が北斎と共に生きた人生(映画『おーい、応為』)
世界的な浮世絵師・葛飾北斎と生涯を共にし、右腕として活躍したもう一人の天才絵師が ...
-
15 -
黄金の輝きは、ここから始まる─冴島大河、若き日の物語(映画 劇場版『牙狼<GARO> TAIGA』)
10月17日(金)より新宿バルト9他で全国公開される劇場版『牙狼<GARO> T ...
-
16 -
「空っぽ」から始まる希望の物語-映画『アフター・ザ・クエイク』井上剛監督インタビュー
村上春樹の傑作短編連作「神の子どもたちはみな踊る」を原作に、新たな解釈とオリジナ ...
-
17 -
名古屋発、世界を侵食する「新世代Jホラー」 いよいよ地元で公開 — 映画『NEW RELIGION』KEISHI KONDO監督、瀬戸かほさんインタビュー
KEISHI KONDO監督の長編デビュー作にして、世界中の映画祭を席巻した話題 ...
-
18 -
明日はもしかしたら自分かも?無実の罪で追われることになったら(映画『俺ではない炎上』)
SNSの匿名性と情報拡散の恐ろしさをテーマにしたノンストップ炎上エンターテイメン ...
-
19 -
映画『風のマジム』名古屋ミッドランドスクエアシネマ舞台挨拶レポート
映画『風のマジム』公開記念舞台挨拶が9月14日(日)名古屋ミッドランドスクエアシ ...
-
20 -
あなたはこの世界観をどう受け止める?新時代のJホラー『NEW RELIGION』ミッドランドスクエアシネマで公開決定!
世界20以上の国際映画祭に招待され、注目されている映画監督Keishi Kond ...
-
21 -
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の呉美保監督が黄金タッグで描く今の子どもたち(映画『ふつうの子ども』)
昨年『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が国内外の映画祭で評価された呉美保監督の新作 ...
-
22 -
映画『僕の中に咲く花火』清水友翔監督、安部伊織さん、葵うたのさんインタビュー
Japan Film Festival Los Angeles2022にて20歳 ...
-
23 -
映画『僕の中に咲く花火』岐阜CINEX 舞台挨拶レポート
映画『僕の中に咲く花火』の公開記念舞台挨拶が8月23日岐阜市柳ケ瀬の映画館CIN ...
-
24 -
23歳の清水友翔監督の故郷で撮影したひと夏の静かに激しい青春物語(映画『僕の中に咲く花火』)
20歳で脚本・監督した映画『The Soloist』がロサンゼルスのJapan ...
-
25 -
岐阜出身髙橋監督の作品をシアターカフェで一挙上映!「髙橋栄一ノ世界 in シアターカフェ」開催
長編映画『ホゾを咬む』において自身の独自の視点で「愛すること」を描いた岐阜県出身 ...
-
26 -
観てくれたっていいじゃない! 第12回MKE映画祭レポート
第12回MKE映画祭が6月28日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は1 ...