
薄墨桜に宿る長年の思いとは(映画『薄墨桜-牙狼-』)
長年根強いファンに支えられ続く『牙狼-GARO-』シリーズ。特撮、アニメ、パチンコ、プロレスと様々なジャンルとのタッグも成功させてきた。放送が始まって13年目の今年は昨年度2017年の金狼感謝祭(毎年11月23日に開催されているファンイベント)で発表された2つの企画が公開される。
1本は道外流牙シリーズで最強のホラーとして立ちはだかったジンガが魔戒騎士・御影神牙だった時代を描くテレビドラマシリーズ『神ノ牙-JINGA-』(10月よりMXTV、BS11、ファミリー劇場でスタート)。
そしてもう1本が2015年に2本目のアニメ企画としてオンエアされた『牙狼-紅蓮の月-』シリーズの世界を映画化した『薄墨桜-牙狼-』だ。
あらすじ
時は平安。藤原道長が権力を奮う頃。黄金騎士の称号を継ぐ魔戒騎士・雷吼は「守りし者」として京の都を魔戒法師で陰陽師の星明と従者の金時とともに魔界からやって来る魔物・火羅から守りながら生きる日々を続けていた。ある日、雷吼は藤原道長に仕えているという陰陽師・明羅と出会う。同じ頃、雷吼達は番犬所で京の山にある薄墨桜を監視せよと命令される。
アニメシリーズのその先
2015年に2クールに渡ってオンエアされた『牙狼-紅蓮の月-』のその後が描かれる。様々な闘いを乗り越えた雷吼達は火羅を倒す日々を続けているが、アニメシリーズを経ての雷吼、星明、金時のさらに強くなった信頼関係が感じられる。今回はアニメではあまり見られなかった権力を振るい陰我を積む藤原道長の姿が描かれ、新たに登場した陰陽師・明羅が雷吼達を闘いへと誘っていく。
アニメシリーズから登場人物は実在した人物の名前が使われており、時代背景も歴史好きにはたまらない。今回は牙狼の世界と歴史があいまった緻密なストーリーを特撮ものからアニメ、アクション映画まで幅広いジャンルで脚本を手掛ける小林靖子が作り上げた。
二人の陰陽師に注目
雷吼と雷吼を支える星明の前に現れた美しき陰陽師・明羅。
同じ陰陽師だがシンメトリーなデザインが印象的。星明が紫系の装束であるのに対し、明羅は白系。髪の毛の分け方も逆と統一感がある部分もありながら対称的な存在として描かれる。今回のキーキャラクターのデザインも『牙狼-紅蓮の月-』に続いて雨宮慶太総監督と旧知の中で漫画『電影少女』、『Is』、アニメ『TIGER&BUNNY』で知られる桂正和が担当。平安時代の時代装束をベースにデザインされた力作でキービジュアルも美しく『薄墨桜-牙狼-』の世界観が表れる。雷吼たちを包む大きな明羅には一体どんな意味があるのか映画を観て感じてほしい。
アニメーションは『うしおととら』のスタジオVOLN と『鬼平犯科帳』のスタジオM2の共同製作で監督は『うしおととら』の西村聡が務める。特撮の牙狼とはまた違う躍動感溢れるアクションが美しい。
豪華声優陣が再集結
『牙狼-紅蓮の月-』に引き続き豪華な声優陣がアニメーションに更なる命を吹き込む。
主人公雷吼には『GARO-魔戒ノ花-』シリーズでも主演の中山麻聖。星明には朴王路美、金時には矢島晶子、藤原道長には堀内賢雄、アニメシリーズから雷吼と共に闘う藤原保輔に浪川大輔と主演級の声優が揃う。今回登場の明羅は田中敦子、京の盗賊時丸は東啓介がキャスティングされた。それ以外にも素敵な声の役者、声優が参加しているのでエンドロールのチェックをお見逃しなく。
勧善懲悪を昔は時代劇で描いていた。今は特撮やアニメがその役割を担う。
その中で闘う人達の思いをしっかり描きながら展開する牙狼シリーズ。
薄墨桜に宿る強い思いを雷吼達と共に受け止めてほしい。
『薄墨桜-牙狼-』http://garo-usuzumizakura.com/は10月6日より新宿バルト9他で全国順次公開。
東海地区では10月6日より愛知・109シネマズ名古屋、ミッドランドシネマ名古屋空港、イオンシネマ岡崎、静岡・藤枝シネ・プレーゴ、11月2日より三重・109シネマズ四日市、11月3日よりコロナシネマワールド(豊川、中川、半田、大垣)で公開。
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