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映画『嵐電』鈴木卓爾監督&キャストインタビュー

先日舞台挨拶レポートをお届けした映画『嵐電』。
鈴木卓爾監督と川本明輝尾役の福本純里さん、菊乃真紗代役の藤井愛稀さん、有村子午線役の石田健太さんへのインタビューをお届けする。
教授と生徒という関係もあり、座談会のような和やかな雰囲気で行われた。

→この日に行われた舞台挨拶レポートはこちら

役名に込められた様々な思い

Q.登場人物の名前が変わった名前です。星を感じさせるような名前にも感じます。この映画に繋がる何か意図があるんでしょうか?

鈴木監督
「ご縁がなくて京都で映画を撮るということが私はなかったんです。中学の修学旅行で訪れたぐらいで。どういうわけか京都で映画を撮るとなった時にちょっと怖かったので願掛けをしようと思いまして。京都の街というのは空や宇宙をそのまま移し直しているような風水的にデザインされた街だなと思ったので、登場人物もそこから星にちなんだ名前にしたかったんです。映画にちょっと星巡りを感じさせるような気持ちで名前を星にちなんでつけられたらなと思って設定しました。人の衛星軌道というのは人それぞれなので会っている時間は束の間、私たちは時間があるようでないんだよっていうセリフも映画の中に入れてあるんですが、願掛けの気持ちで名付けています。今回恋愛映画を撮るという企画で考え始めて、うちの大学(京都造形芸術大学)の北白川派と繋げたんです。

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左:石田健太さん 右:鈴木卓爾監督

京都の恋愛映画となった時に文学的ではない映画に出来ないかなと思って。京都を舞台にしたそういう作品が多い気がしたんです。映画らしい恋愛映画にやっぱりしたいなと考えて。人の時間と人の時間を上回るもっと大きな何かの時間をちょっと人よりも長い時間の尺度で走っている電車を繋げるというような。ストーリーをそういうものにするというわけでは全くないんですが、人と人が出会うということは一瞬のことかもしれないと。昨日もテアトル新宿の舞台挨拶でようやく3組の恋愛が一堂に会したんです。撮影中に3組の出番が一緒になるタイミングが一度もなかったので。群像劇の部分があるので全員が集まるシーンは元々ないから構わないことなんですが、6人で舞台挨拶に立った時、まだ映画は出来てなかった、開口が起きたんだ、映画が完成するのは映画を見せる時だと実感しました」

Q.役名が変わった名前ですが、演じる上でその役名に引っぱられたことはありますか?

福本さん
「撮影担当の鈴木一博さんと南天の名前の由来を話していたら「明輝尾の名前の由来知ってる?」と聞かれまして。そういえばまだ聞いてなかったなと。卓爾さんに聞きに言ったら「あ、隕石。meteorite」と。「meteorite」の音が好きって言われまして」

鈴木監督
「ジョアンナ・ニューサムというグランドハープと弾き語りというスタイルの女性歌手の最初のアルバムに『Emily』という長い曲があるんです。サビに「meteorite」という歌詞が出てくるんです。聞いていると掻き立てられるものがあったので、『嵐電』の界隈で出会ったり別れたりするカップルとは別に、映画の中盤以降に突如として上空から飛来する予想外の何かによって物語をまるっきり変えていくということが出来ないかなあという壮大な野望が、助監督・川口によってもたらされるというそんな妄想からこの名前になりました」

福本さん
「その話をしてから色々meteoriteの語源を調べたりしてなんとなくイメージを作って行きました。隕石なのでどこかに交わるというよりは一方的に「トーン!」と来るような」

鈴木監督
「申し合わせない。「トーン!」という凄いインパクトをもたらします。別の何か新しいものをもたらすみたいなそんなイメージ。地震とか隕石とかって災害ですけど、新しい次の大地を作るという部分もあるので、それを含めての名前なんです」

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Q.助監督さんが何も言わなければ嘉子さんはランチを撮影所に届けて終わるだけだったですよね。方言指導することなんてないでしょうし。

鈴木監督
「そうですね。実はきっかけを作っているんです。その気やすさというのは東京ではないんです。京都だと、「あ、いいよ」って言えてしまう感じがする。空いていたスタジオで読み合わせをするんですけど、時代劇の屋台骨がそのまま残っている、片付けも完璧に終わっていない地面が土の状態だからこそ気やすく頼めてしまうというのは東京では成立しづらいかもしれないですね」

Q.劇中劇というのは役作りがすごく難しいと思うんです。しかもラブストーリーの中にゾンビ映画。ゾンビ花嫁はどのように誕生したんですか?

藤井さん
「クランクイン前に何度か卓爾さんと読み合わせをしたんです。劇中劇でも劇中劇っぽさを出すわけではなくやってほしいということだったんですが、元々はゾンビ映画じゃなくて普通の恋愛映画でした」

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左:福本純里さん 右:藤井愛稀さん


鈴木監督

「婚姻届と離婚届がワンカットで入れ替わる話を撮影所で撮影している話だったんですが、つまらなかったんですよね。京都の東映撮影所だし、本当は時代劇がいい。姫が「きゃーっ!」というのが正統だよなと。ただ予算がなかったので…。じゃあゾンビはどこから来たかというとうちの学校ではメイクの授業があるんですよ。映画のスタイリストとメイクをやってもらったこやまあやこさんが先生なんですね。最後にみんなでゾンビメイクをして動画を撮って終わるという授業なんです。その経験が学生たちにもこやまさんにもあったので、いきなりゾンビとなったらみんな「ええっ?」て思うけど、やったことあるから「出来る!」となりまして。授業を映画撮影に取り入れました」

藤井さん
「それが理由だったんですか?私は『嵐電』の一本前の卒業制作にも出演したんです。『アンシャンレジスタンス』というゾンビ映画で。その作品も卓爾さんが担当されていたので、ゾンビに思い入れがあるのかなって思っていました」

鈴木監督
「藤井さんが割とB級ホラー的な映画に親和性があるんですよ。『嵐電』の前にも主演で何か出てますよね?」

藤井さん
「『血を吸う粘土』というホラー映画の続編で主演していまして、今年中に公開になるかなと」

鈴木監督
「藤井さんはB級ホラーの中で輝けるのかなあと」

(全員爆笑)

藤井さん
「唐突にゾンビなったことにもそれが関与してたんですか?」

鈴木監督
「最初はワークショップの形でやっていて書き上がりつつあった場面を何度もかわりばんこで学生たちに演じてもらっている中で、子午線の役を女の子がやっていたこともあったんです。藤井さんも福本さんも子午線役をやってもらったのが面白かったというのが起用の理由でもあるんです」

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Q.6人のラブストーリーの中では石田さんが演じた子午線と南天の恋は等身大の恋だったと思います。子午線がちょっとずれていたりする部分もありましたが石田さんはどう思われていたんですか?

石田さん
「南天がカメラで急に自分を撮ってきたりとか、何が起きてるんだろうと時々思ったりしました。これは一体何だろうと。自分の理解を超越したことが映画では起きているなと。だから楽しいなと感じたんですけど」

鈴木監督
「何が理解出来なかったの?」

石田さん
「急に話しかけてきて、何回も追い掛けられるみたいなこと。その後好きになっていくことというのは恋愛としてあるとは思うんですが、8ミリカメラと、電車と南天と…なんて言うんですかね、三角関係?みたいな感じでなんかすごいことに関わっているなあと」

鈴木監督
「三角?四角じゃない?いや、五角なんですよ」

石田さん
「あ、そうか、そうですね(笑)」

鈴木監督
「子午線と南天が出会ったことによって元々南天の周りにあった三角関係が五角関係になったんですよ。嵐電は子午線にとっては宗教みたいなものだから。多神教の。八百万の。嵐電を抜いて五角」

石田さん
「そういえば大学に入る時に友達に言ってました。「映画を恋人にするって」(笑)。やばいこと言ってましたね」

鈴木監督
「今は違うの?」

石田さん
「映画は恋人という考え方ってやばいじゃないですか?何が起きるんだって」

鈴木監督
「女の子と付き合うのにお金や時間を使うんじゃなくて、ひとつひとつの時間の中でしっかり映画のことを考えたいってことでしょ?やばくはないでしょ。ただそれを人に言うのはやばいかもしれない(笑)」

石田さん
「俳優として恋人役とかがわからないんですよ。恋愛に限らず色々な経験をしていきたいなと思っています」

偶然が美しいシーンを生んだ

福本さん
「南天と子午線が、京都タワーに走りだすシーンがあるじゃないですか?もしかしたらこの先二人は一緒にいないかもしれないけど、あのシーンが凄く好きで。始めはあれ、京都タワーではなかったですよね?」

鈴木監督
「嵐電の終点の四条大宮で降りてくる二人が、キョロキョロ周りを見てから走りだす」

福本さん
「この先二人は一緒にいないかもしれないけど、手を取り合って走りだすというのが、勢いではないですけど。若い二人の恋愛をすごく表しているというか」

鈴木監督
「映画『シド&ナンシー』。十代にはパンクでいてほしいなと。今の十代を見ていると保守化しているものですから。みんな利口で真面目で。学校なので僕らは就職とか進路を指導しないといけないんですが、本当は後先のこと考えず、パンクでいてほしいんです。今愛しているか、愛してないか。「愛してないならあなたの前から飛び降りるわ」というナンシーのセリフみたいにはちゃめちゃだけど破壊力のある十代の恋。そこまでやれるかと言えば出来ないですけど、こういうものが何か生み出すような気がしませんか?これが僕が十代の人に託したかったことです」

Q.スパークですね。京都タワーもきれいな色で。

鈴木監督
「京都タワーの色がいつもと違う色だったんです。あれはイベントの企画だったらしいんですけど、本当に嵐電の京紫色になっていて」

石田さん
「お金を払って色を変えるかという話もあったじゃないですか。でも高いから出来ないよねという話になって。そしたらたまたま京紫色になって。ちょうどああいう色にしたいって言ってたんです。演出部の狙い通りになりました」

鈴木監督
「願いが叶ったんだね」

隣にいる人が明日いるかわからない

鈴木監督
「石田くんは、井浦新さんの芝居はどう感じたの?」

石田さん
「井浦新さんの演技は元々尊敬していたんですが、現場で更に深まったんです。撮影が1回生の時だったので演技ということが全くわからなかったんですよ。何をやるかわからなくて。自分の根本を作ってくださったのが新さんで。何が普通か。何をしていいのか悪いのか。自分で果敢にチャレンジしてもよかったんですけど、当時勇気が出なくて。ある程度知識があるとそれは出来ると思うんですが。新さんが演技の楽しみ方を教えてくれました。撮影中に言ってくださった言葉があって。「映画は夢の世界なんだよ。現実の関係性も、自分でもなくなって何をしてもいい、自由な世界なんだ。だから楽しんで」と言ってくださったんですが、それを聞いてから何事も楽しみ方がきっとあるからそれを見つけて楽しまないとその時間がもったいないなと思って。そのことを昨日舞台挨拶でお会いした新さんにお伝えしました。新さんは本当に気遣いがすごくて優しくてなんでこんなに出来るんだろう?って驚かされるんですけど、それを新さんに伝えると、「そんなことないよ、やめてやめて」っておっしゃるんです。「僕はこの隣にいる人が明日いるかわからないから映画の中のセリフでもあったけどこの時間を大切にしてほしいんだよ」とおっしゃってくださいました。新さんからは人間性の部分でも自分が目指したい憧れの存在です」

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Q.ところどころに演劇的な演出があり、演劇好きとしては嬉しかったです。

鈴木監督
「辻演劇みたいなものがすごいなと思っていて。映像になってしまうとそこには実際いないんですけど、辻演劇って場所はどこかを借りていて劇場ではないけどお客さんと何かを共有してその世界を作るじゃないですか。映画って完全に再現した上で撮るというものに思われているんですけど、何か辻演劇的なところもありますよね。主題歌担当のあがた森魚さんに編集して最初に見せた時に仮象の世界っていいねって。美の価値観、仮象の価値観、イミテーションがその分野にもたらす新しい知恵が映画未来的なものとしていつか花開くといいなという気がしています。どこかで映画は嘘だということをみんな隠そうとしていると思うんです。嘘だということをもっと肯定出来たりした方が、よりそのフィクションとしては強まっていくことが今後あるのかなあと考えています」

Q.とても学生の役者さんの熱を感じました。大学発で映画を作ることの意義は何かありますか?

鈴木監督
「『嵐電』を作る時に意識したのは授業の時間だけじゃなくて学校の中の時間で、みんなの中に自然と身についているものを生き生きと出すこと。学生のみんなが生き生きしているのはまさしくこれを撮りたかったから、この映画を作っているというのがあります。みんながみんなプロの俳優で、それぞれのスケジュールに合わせて集まって作っているものではないんです。何かがこの映画の中にちゃんと映っていなければ、やはりそこはやる意味がないことになってしまうし、学校から生まれてくる劇場用映画みたいなものが何か新しいものを提案出来るんだとしたら、それは決してプロの映画の何かを縮小再生産するようなものではないし、多分学校での日々のやりとりの中でしか生まれて来ないような日々の僕たち、学生同士の関係性みたいなものから生まれてくる…信用ですかね。手の差し伸べ方しかり。僕は現場では出来るだけ怒っていなくて、どっちかというとこんな現場はないんだからゲラゲラ笑っていたいと思っていました。こんな作りのこんな組の映画はその後みんながどこへ出て行ってもない。この1回こっきりでちゃんと持って帰ってねという思いでやっていました。私の作る映画だし、生き生きしたものにしたくて作っています」

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鈴木卓爾監督の話をずっと聞いていたいと思うほど面白い映画論、演技論。そして撮影の裏話。

大学で映画を学ぶことが出来る学生はそれだけで素敵な時間を過ごしている。かなり羨ましさを感じながら話を聞いた。

『嵐電』のセリフひとつひとつを聞くとハッとする。三つの話が終わったのか終わっていないのか。それぞれのある一瞬が嵐電と共に切り取られた作品だ。観た人がその先を作る。京都に行ったらまた嵐電に乗って、あの場所に行ってみよう。
映画『嵐電』http://www.randen-movie.com は現在全国順次上映中。

東海地区では名演小劇場で公開中。三重・進富座では8月17日より公開。

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