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見返りを求める男と恩を仇で返す女。その先にあるもの(映画『神は見返りを求める』)

2022/06/24

タイトルを聞いたとき「神は見返りをもとめない」ものじゃないの?と思った。ただ、それは本当の神様なら……である。
昨今、何か凄い人を神と呼ぶ。昔から使っていたが、以前より使い方に多様性が出てきている。便利に使える人を形容するにも神という単語は使うわけで。

6/24(金)公開の映画『神は見返りを求める』の神は、田母神という。田母神は人間である。神じゃない。だから欲がないわけがない。ただ、理性で抑えていただけだ。
見返りを求めなかった男が突然見返りを求めていく。
そこには何かきっかけがある。それは一体何なのか。

あらすじ

イベント会社に勤める田母神(ムロツヨシ)は、合コンで底辺YouTuber・ゆりちゃん(岸井ゆきの)に出会う。田母神は、再生回数に悩む彼女を不憫に思い、まるで「神」の様に見返りを求めず、ゆりちゃんのYouTubeチャンネルを手伝うようになる。登録者数がなかなか上がらないながらも、前向きに頑張り、お互い良きパートナーになっていく。そんなある日、ゆりちゃんは、田母神の同僚・梅川(若葉竜也)の紹介で、人気YouTuberチョレイ・カビゴン(吉村界人・淡梨)と知り合い、彼らとの“体当たり系”コラボ動画により、突然バズってしまう。イケメンデザイナ一・村上アレン(栁俊太郎)とも知り合い、瞬く間に人気YouTuberの仲間入りをしたゆりちゃん。一方、田母神は一生懸命手伝ってくれるが、動画の作りがダサい。良い人だけど、センスがない…。
恋が始まる予感が一転、物語は“豹変”する。

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YouTuberって実は大変なお仕事

「観たいものを観る」ということがここ数年の間にさらに広がった気がする。興味がわかないものには人は見向きもしない。様々なニーズに合わせてYouTubeには様々な番組がひしめき合う。
どうにかしてチャンネル登録数と視聴数を稼ぎたい。楽をして稼いでいるように見えて実は地道な努力と準備、動画編集能力がないと続けられない仕事なのだ。

自分ひとりで動画配信を始めたゆりちゃんにとって田母神はまさしく神だった。撮影も手伝ってくれて、編集もしてくれて、配信の収入も好きにしていいという。だが、彼女は別の有名YouTuberとの配信でバズったことで、田母神を切り離しにかかる。田母神は抑えていた感情をあらわにし、見返りを得ようとゆりちゃんに執着していく。

監督は『空白』、『ヒメアノ~ル』、『犬猿』の吉田恵輔監督(吉田監督の吉は土に口)。「見返りを求める男と恩を仇で返す女」をテーマに作品を作りたいと考え、ヒロインを底辺YouTuberにすると決めてから、動画配信のことを調べていくうちにYouTuberのすごさを知ったという。物事の善し悪し両方を捉える吉田監督らしく、底辺YouTuberゆりちゃんと田母神の地道な動画撮影や、デザイナーも入れて大掛かりになるゆりちゃんの配信、チョレイ・カビゴンの体を張ったドッキリ撮影まで、様々なYouTuberの今を切り取る。かと思えば、くだらないと思うような配信が人気の配信だったり、人を非難する配信が普通に横行する、何が起こっても自己責任という怖い面、あまり評価されない部分も描かれている。

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田母神を演じるのはコミカルなキャラクターからシリアスなキャラクターまで、ここ数年振り幅の広い役を演じてきたムロツヨシ。いろんな役を観てきたが、田母神は今まで観たことのない、なかなか突き抜けたキャラクターになった。
突然バズって有名YouTuberになるゆりちゃんには岸井ゆきの。なぜか彼女だと許せてしまう、田母神にとっては無意識系魔性の女を自然すぎる芝居で演じている。

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いい感じに愛が生まれていく展開かと思いきや、そうは行かないのが自分的には待っていた吉田監督脚本の展開。若葉竜也演じる田母神の同僚・梅川の発言が2人の関係をさらに悪化させるところも、ああ、こういう人いるなあと妙にしっくりくる。『犬猿』の時のような歯止めのない田母神とゆりちゃんのネットを通してのバトルは観ているこちらも引いてしまうぐらいのえげつなさ。そこが人間らしくていいのだ。

見返りを求めないで、活動していられるとき。それは無償の愛に隠れた独占欲が満たされている時なのかもしれない。お互いがお互いに依存し、バランスが取れていれば見返りなど必要としない。
だが、そのバランスが崩れた時、それまで言えなかった不満が爆発し、憎しみに変化する。愛憎とはよく言ったものである。愛しいから憎い。憎いから愛しいのだ。

映画『神は見返りを求める』https://kami-mikaeri.com

は6月24日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほかで全国公開。東海3県ではセンチュリーシネマ、ユナイテッド・シネマ豊橋18、TOHOシネマズ(木曽川、東浦、岐阜)で6月24日(金)より公開。

なお、本作の公開を記念して名古屋PARCOにて
ムロツヨシさん、岸井ゆきのさん、ゴッティーの衣装&パネル展示開催が決定した。

日程:2022年6月24日(金)〜センチュリーシネマ上映終了まで
会場:名古屋PARCO 西館8F特設会場
こちらもチェックしてほしい。

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