Cafemirage

Cafe Mirage--岐阜発 映画・エンタメ情報サイト

カテゴリリンク

EntaMirage! Movie

映画『八重子のハミング』名古屋舞台挨拶 レポート

映画『八重子のハミング』の舞台挨拶が公開2日目の5月7日に
名古屋・名演小劇場で行われた。
舞台挨拶は2回行われたが2回とも満員御礼。
名演小劇場は入口のある1階から劇場のある3階まで長い行列ができるほどだった。

1回目の舞台挨拶の様子をお届けする。
登壇したのは佐々部清監督と主演の升毅さん。

美味しいお酒を飲みました

佐々部監督
「苦節八年かかってやっと全国公開となりました。
実は昨日、1月1日から封印していたお酒を飲んでしまいまして。
歌は歌っていないんですけど声の調子がよくないんですがよろしくお願いします。」

無事公開するまではと願掛けのように大好きな酒を飲まずにいた佐々部監督。
前日の東京、横浜の初日舞台挨拶を終えて美味しいお酒を飲んだそうだ。

升さん
「大変好きな名古屋で、こうして皆さんの前でご挨拶が出来て本当にうれしく思います。
今日は短い時間ですがよろしくお願いします。」

司会
「今日はドラゴンズの話は封印していただきます(笑)。
監督、お手元にあるのは今日のニッカンスポーツですね。」

(注:知らない方のために。升さんは名古屋圏出身ではないのに大のドラゴンズファン。
その話はせず作品の話へ。)

佐々部監督
「野球の結果を持ってきたわけではありません。(笑)
ニッカンスポーツに全国版でこんなに大きく取り上げていただきました。
『追憶』296スクリーンに対して『八重子のハミング』は8スクリーン。
上映館は少ないですが紙面の位置、大きさは勝っちゃいました。
師匠の降旗さんの作品なので申し訳ないなと思いつつ嬉しかったので
持ってきてしまいました。」

お二人の簡単な挨拶が終わったところで観客からの質問に答える形で進行。

升さんの芝居のスタンスが変わった現場

Q.苦労したのはどこのシーンですか?
升さん
「全シーン苦労しました(笑)。
いつも役に対して自分なりのプランを持って作品に臨むんですが
この作品の場合は事前に脚本もいただいていましたし、原作も読んで
どう取り組んでいいのかというのが自分の中で全くイメージが浮かばず、
撮影が始まる2カ月ぐらい前からずっと悩んでいました。
最終的にこうしよう、ああしようというのが見つからないままに撮影に入りました。
撮影初日にすうっと楽になって特に何も考えず撮影に入れました。
13日間の撮影だったんですが不思議な自然体で最後まで撮影出来ました。
今までに一度もない経験でした。撮影に入る前にすごく色々考えたという意味で
苦労はあったんですが撮影に入ってからは楽になった作品でした。」

司会
「八重子さんを愛していたんですね。」
升さん
「ええ、愛してました(笑)」
にっこりと笑う升さんが素敵だ。

佐々部監督
「今回、本当にゼロからでした。
いつもは映画会社からこういう作品やらないかとオファーが来たり、
自分の企画を映画会社に持っていくとお金集めは自分でしなくていいんですが、
今回大変だったのはお金集めからスタートしたことです。
ホームページで協賛金募集もしました。
そこに1万円、5万円、10万円と協賛してくださった方がいらっしゃいます。
今日来ていただいている方の中にも協賛してくださった方がいます。
大事なお金なので無駄に使いたくなかったんです。
升さんにも大スターですし、立派なホテルを用意して
泊まってもらわないといけないんですけど
『1泊3000円で泊めてください。』と自分の足で探して交渉しました。」

この辺りの話は以前掲載した佐々部監督のインタビューにも書いているので
そちらも是非読んでいただきたい。

あなたが私を覚えていてくれるー夫婦の絆ー映画『八重子のハミング』佐々部清監督インタビュー

 

佐々部監督
「升さんのホテルは暴露すると実は2000円だったんです(笑)。
学生の頃、10万円くらいで自主映画を作っていたのが今回は5000万円規模での自主映画。
自主映画を作っていると言ったらスタッフが
『自主映画とは言ってほしくない。』と言ったので
‟自主的映画”とずっと言っています。
お昼ご飯代も少ないと言ったら
『大丈夫よ、うちからお米持ってくるから。』とか『野菜持ってくるから。』
と地元の方が毎日炊き出しをやってくださって。
13日間の撮影だったんですがカメラマンは4キロ太りました。
とってもおいしいお昼ご飯を毎日いただいておりました。
婦人会の方が家の庭でご飯を作りながら升さんの芝居を外で声だけ聴いてみんな泣いていて。
こちらも涙をこぼして。とても暖かい現場でした。」

夫婦愛から自然に生まれる介護

Q.介護映画ではなく究極のラブストーリーと監督は言われていますが
演じた升さんはどう捉えていましたか?

升さん
「僕は一生懸命介護をする役だとは思ってなかったんですね。
実際何をしていたかというと大好きな奥さんが何を求めているかを感じたい。
求めていることに応えたい。どちらかというと自分がこうしたい、ああしたいと思う。
常に妻に寄り添っていたい。結局残された時間が限られていて
いつ終わるかわからないんですけど
そばにいたい。その思いだけでそばにいました。
なので介護したという感覚はなかったです。結果的にはかなり介護した感じですが。
トイレに連れて行くことも、食事をさせることも
やらなければいけないではなくやりたいと思ってやっているので
僕としては凝縮された12年間。八重子さんとの幸せな時間だった気がします。」

佐々部監督
「クランクイン前に僕から升さんにお願いしたのはたった一つ。
『撮影期間中だけでいいので、高橋洋子さん演じる八重子さんを好きでいてください。』
ということ。それだけで特に演技指導はしていません。
洋子さんには『ずっとかわいらしい八重子を演じてほしい。』とそれだけお願いしました。
それがうまく溶け合えばラブストーリーになるなと思っていました。」

 

佐々部監督を支える高倉健さんの言葉

Q.監督はいつもどんな風にテーマを選びますか?
佐々部監督
「テレビドラマでやれないことを選びます。映画でしかやれないことをやりたい。
助監督時代最後の作品が『鉄道員(ぽっぽや)』や『ホタル』で
高倉健さんから『何を撮ったかじゃなくて何のために映画を撮るんだ?』と言われて。
それが僕の中でずっと宿題でした。
この映画は究極の夫婦のラブストーリーを撮りたいと思ったんですが
その背景に介護があります。
この国は必ず10年、20年経っていくと更に介護の時代になっていく。
この作品で介護で闘っている人、疲弊した人たちのちょっと背中が押せればいいなと思って。
そのために撮ったと言えば『ツレがうつになりまして。』の時もそうです。
自分の周りでうつ病で命を絶った人が2人もいて。
自分の周りだけでこんなに苦しんでいる人がいる。
たくさんの人にエールを送りたい。そのために映画を作りたい。そう思っています。

あとはラブホテルのシーンとか排泄のシーンとかとてもリアルなんですが、
今だとテレビドラマではやらせてもらえないんです。
子供が見たらどうするんだとか、食事の時間にぶつかったらどうするんだとか
制約がありますし…。
映画ならドラマでは出来ないことも出来ると思ったんです。
高倉健さんの宿題を監督をやり続ける限りは続けていくんだと思っています。」

フォトセッションでは観客も撮影OKに。
観客から手渡された花束を持っての撮影。

佐々部監督
「SNSで感想を入れてぜひ広めてください!」

上映後には名演小劇場のテラスでサイン会も開催された。
観客一人一人の感想を聞きながら丁寧にサインに応じていく。

「僕たちツービートではないですが"きよしとたけし"でずっとコンビでやってきたんです。」
佐々部監督と升さんの地道なプロモーションが更なる上映館の拡大に繋がるに違いない。
まだまだ二人の舞台挨拶は続いていく。
シニア向けに作った映画だというがいろいろな世代の方に見ていただきたいと思う。

5月6日に封切りされた8館以外にも順次全国で上映される。
http://yaeko-humming.jp/theater.html で確認を。

名演小劇場での上映スケジュールはこちらで確認を。

-EntaMirage!, Movie

おすすめの記事はこれ!

houtei1 1
映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』三重先行上映舞台挨拶レポート

映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』の三重先行上映、舞台挨拶が9月22日三重県 ...

Screenshot_20230922_200759_Drive 2
映画『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは…』名古屋凱旋上映決定!

映画『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは…』が ...

20230902_141200 3
ロイヤル劇場存続をかけてクラウドファンディング開始! 【ロイヤル劇場】思いやるプロジェクト~ロイヤル、オモイヤル~

岐阜市・柳ケ瀬商店街にあるロイヤル劇場は35ミリフィルム専門映画館として常設上映 ...

hamon12 4
第76回 CINEX映画塾 映画『波紋』 筒井真理子さんトークレポート

第76回CINEX映画塾『波紋』が7月22日に岐阜CINEXで開催された。上映後 ...

seiyou1 5
岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』トークレポート

岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクシ ...

doll5 6
女性監督4人が撮る女性をとりまく今『人形たち~Dear Dolls』×短編『Bird Woman』シアターカフェで上映

名古屋清水口のシアターカフェで9月23日(土)~29日(金)に長編オムニバス映画 ...

sister 7
映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』公開記念 アルノー・デプレシャン監督舞台挨拶付き上映 伏見ミリオン座で開催決定!

世界の映画ファンを熱狂させる名匠アルノー・デプレシャンが新作『私の大嫌いな弟へ  ...

bakanuri1 8
自分の生きる道を探して(映画『バカ塗りの娘』)

「バカ塗りの娘」というタイトルはインパクトがある。気になってバカ塗りの意味を調べ ...

bishu1 9
「シントウカイシネマ聖地化計画」始動!第一弾「BISHU〜世界でいちばん優しい服〜」(仮)愛知県⼀宮市にて撮影決定‼

株式会社フォワードがプロデュースし、東海地方を舞台にした全国公開映画を毎年1本ず ...

erithabeth1 10
エリザベート40歳。これからどう生きる?(映画『エリザベート1878』)

クレオパトラ、楊貴妃と並んで世界の三大美女として名高いエリザベート皇妃。 彼女の ...

mitoyamane4 11
ポップな映像と音楽の中に見る現代の人の心の闇(映画『#ミトヤマネ』)

ネット社会ならではの職業「インフルエンサー」を生業にする女性を主人公に、ネット社 ...

高野豆腐店の春_場面写真 12
豆腐店を営む父娘にやってきた新たな出会い(映画『高野豆腐店の春』)

尾道で小さな豆腐店を営む父と娘を描いた映画『高野(たかの)豆腐店の春』が8月18 ...

pabjyo5 13
映画『フィリピンパブ嬢の社会学』11/10(金)より名古屋先行公開が決定!海外展開に向けたクラウドファンディングもスタート!

映画『フィリピンパブ嬢の社会学』が 11月10日(金)より、ミッドランドスクエア ...

Yokosuka10 14
『Yokosuka1953』名演小劇場上映会イベントレポート

ドキュメンタリー映画『Yokosuka1953』の上映会が7月29日(土)、30 ...

Yokosuka1 15
海外から届いたメッセージ。66年前の日本をたどる『Yokosuka1953』名古屋上映会開催!

同じ苗字だからといって親戚だとは限らないのは世界中どこでも一緒だ。 「木川洋子を ...

youko4 16
彼女を外に連れ出したい。そう思いました(映画『658km、陽子の旅』 熊切和嘉監督インタビュー)

42才、東京で一人暮らし。青森県出身の陽子はいとこから24年も関係を断絶していた ...

egoist_5 17
第75回CINEX映画塾 『エゴイスト』松永大司監督が登場。7月29日からリバイバル上映決定!

第75回CINEX映画塾 映画『エゴイスト』が開催された。ゲストには松永大司監督 ...

komuragaeri14 18
映画を撮りたい。夢を追う二人を通して伝えたいのは(映画『愛のこむらがえり』髙橋正弥監督、吉橋航也さんインタビュー)

7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...

PSX_20230713_212926 19
あいち国際女性映画祭2023 開催決定!今年は37作品上映

あいち国際女性映画祭2023の記者発表が7月12日ウィルあいちで行われ、映画祭の ...

komuragaeri5 20
映画『愛のこむらがえり』名古屋舞台挨拶レポート 磯山さやかさん、吉橋航也さん、髙橋正弥監督登壇!

7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...

tooi3 21
彼女たちを知ってほしい。その思いを脚本に込めて(映画『遠いところ』名古屋舞台挨拶レポート)

映画『遠いところ』の公開記念舞台挨拶が7月8日伏見ミリオン座で開催された。 あら ...

MKE10-3 22
観てくれたっていいじゃない! 第10回MKE映画祭レポート

第10回MKE映画祭が7月8日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は13 ...

1minutes_5 23
京都はファンタジーが受け入れられる場所(映画『1秒先の彼』山下敦弘監督インタビュー)

台湾発の大ヒット映画『1秒先の彼女』が日本の京都でリメイク。しかも男女の設定が反 ...

received_259295013361207 24
映画『老ナルキソス』シネマテーク舞台挨拶レポート

映画『老ナルキソス』の公開記念舞台挨拶が名古屋今池のシネマテークで行われた。 あ ...

PSX_20230429_093447 25
「ジキル&ハイド」。観た後しばらく世界から抜けられない虜になるミュージカル

ミュージカルソングという世界を知り、大好きになった「ジキル&ハイド」とい ...

math 26
『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシク久しぶりの映画はワケあり数学者役(映画『不思議の国の数学者』)

映画館でポスターを観て気になった2本の韓国映画。『不思議の国の数学者』と『高速道 ...

nortoredame 27
全編IMAX®️認証デジタルカメラで撮影。再現率98% あの火災の裏側(映画『ノートルダム 炎の大聖堂』)

2019年4月15日、ノートルダム大聖堂で、大規模火災が発生した。世界を駆け巡っ ...

baby14 28
松岡ひとみのシネマコレクション  映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』 阪元裕吾監督トークレポート

松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が4月1 ...

sidebyside1 29
映画『サイド バイ サイド』坂口健太郎さん、伊藤ちひろ監督登壇 舞台挨拶付先行上映レポート 

映画『サイド バイ サイド』舞台挨拶付先行上映が4月1日名古屋ミッドランドスクエ ...

zakodomo1 30
第72回CINEX映画塾 映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』足立紳監督トークレポート

第72回CINEX映画塾が3月25日岐阜CINEXで開催された。上映作品は岐阜県 ...

mogiri1 31
片桐はいりさん来場。センチュリーシネマでもぎり(映画『「もぎりさん」「もぎりさんsession2」上映+もぎり&アフタートークイベント』)

センチュリーシネマ22周年記念企画 『「もぎりさん」「もぎりさんsession2 ...

PSX_20230319_165037 32
カンヌ国際映画祭75周年記念大賞を受賞したダルデンヌ兄弟 新作インタビュー(映画(『トリとロキタ』)

パルムドール大賞と主演女優賞をW受賞した『ロゼッタ』以降、全作品がカンヌのコンペ ...

feibru 33
アカデミー賞、オスカーは誰に?(松岡ひとみのシネマコレクション『フェイブルマンズ』 ゲストトーク 伊藤さとりさん))

松岡ひとみのシネマコレクション vol.35 『フェイブルマンズ』が3月12日ミ ...

son 34
親子とは。近いからこそ難しい(映画『The Son/息子)』

ヒュー・ジャックマンの新作は3月17日から日本公開される『The Son/息子』 ...

tyanomi1 35
先の見えない日々を生きる中で寂しさ、孤独を感じる人々。やすらぎはどこにあるのか(映画『茶飲友達』外山文治監督インタビュー)

東京で公開された途端、3週間の間に上映館が42館にまで広がっている映画『茶飲友達 ...

tyanomi5 36
映画『茶飲友達』名古屋 名演小劇場 公開記念舞台挨拶レポート

映画『茶飲友達』公開記念舞台挨拶が2月25日、名演小劇場で開催された。 外山文治 ...

ginpei8 37
第71回 CINEX映画塾 映画『銀平町シネマブルース』小出恵介さん、宇野祥平さんトークレポート

第71回CINEX映画塾『銀平町シネマブルース』が2月17日、岐阜CINEXで開 ...

gokudaru7 38
名古屋シアターカフェ 映画『極道系Vチューバー達磨』舞台挨拶レポート

映画『極道系Vチューバー達磨』が名古屋清水口のシアターカフェで公開中だ。 映画『 ...

wakareru 39
パク・チャヌク監督の新作は今までとは一味も二味も違う大人の恋慕を描く(映画『別れる決心』)

2月17日から公開の映画『別れる決心』はパク・チャヌク監督の新作だ。今までのイメ ...