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生きづらいけど…今を生きる『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』

自分の不器用な生き方を見ているかのようだった。
どうしてこんなにうまく生きていけないんだろう。
気持ちの切り替えがすぐにできたら
こんなに毎日逡巡したり躊躇したりしないのに。
これから先がもやもやしていて見えない自分のことを
石井監督は見ていたのではないかと
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』を見て思った。

この作品を見てそう思う人は沢山いるに違いない。

私たちはいつも何かを不安がっている。
平和だと思っているがもしかしたら明日は生きていないかもしれない。
この言葉には出来ない息苦しさは誰がわかってくれるのだろう。
誰かそばに本当はいてほしい。
でもそれが誰なのか自分ではわからない。

あらすじ

工事現場で働きながらギリギリの生活を送っている慎二は
看護師をしながら夜はガールズバーで働く美香と出会う。

死を日常として受け止めなければいけない美香は
死を受け止めて忘れなければいけない憂鬱と
その思いをわかってもらえない孤独に日々とらわれている。

目が片方見えないこともあり正社員にはなれず日雇いで働く慎二。
仲間との沈黙に耐えきれず饒舌に話すことで
時間を埋めようとしては空回りする。

再会しては離れ、離れては再会する美香と慎二。
二人の間に希望が芽生え始めていく。

 

詩から生まれたストーリー

原作は最果タヒの詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」。
2008年当時、女性としては最年少の21歳で第13回中原中也賞を受賞した。
現代の詩としては非常に分かりやすく読者からの支持も厚い。
そんな詩集からインスピレーションを受け生まれたのが本作。
脚本・監督は石井裕也さん。原作者と同年代の監督が2週間で脚本を書き上げた。
詩から監督が生み出したものはなんだか心に刺さる。
原作に特定の人物はいないはずなのに
映画ではこの原作の世界観がしっかりと表現されている。
都会に生きる若者達の今が映し出されているのだ。

 

ときめくだけが恋愛ではない

ガールズバーで見かけた美香に声をかけた慎二は
何度となく美香に遭遇する。
この偶然が二人に会話をする時間を与える。

今の日本映画はときめく恋愛映画が多い。
胸をときめかせてみても実際に自分には起こらない。
それが現実だ。恋い焦がれることも年を重ねるごとになくなってしまう。

ただ話していて楽になれる相手。
話していなくても一緒に時間を過ごせる相手。

沢山の人が暮らす東京で
静かに始まる美香と慎二の恋愛はドキドキはしないが
月明かりに照らされる水面のようにキラキラと穏やかに輝いて見える。

死を受け止めきれずに看護師の仕事をしている美香には
幸せを求めるべきかがわからない。
そんな美香に慎二は幸せを無理には求めない。
ただ一緒にいてくれる誰か。
繋がっている何かがあればいい。

自分の居場所がわからない。自分自身がわからない。
何かを求めているが答えは出ない。
孤独を感じた時、そばにいてくれる安心感。
そんな恋愛の形がいい。

 

石井監督が全幅の信頼を置く俳優・池松壮亮

慎二を演じるのは池松壮亮さん。
『ぼくたちの家族』、『バンクーバーの朝日』に続いて
石井監督作品には3作目の出演となる。
この作品を作るにあたり、石井監督は慎二を
池松さんが演じる前提で書いたという。
いわゆるあてがきというものだが
それは池松さんそのものということではなく、
池松壮亮が演じたら魅力的に演じてくれるだろうという
石井監督の信頼があってのもの。
慎二として東京を楽しみ、東京を憂う。
そして美香の側にいる。優しい男がそこにいる。

色のついていない新人女優を起用したい

美香役は石橋静河さん。
舞台出演はあるが映画は初出演で初主演。
石井監督は色のついていない新人女優を主人公に起用した。
石井監督と池松さんと石橋さん。3人で作り上げられた美香。
どんなことにも動じないように見えるがふとしたときに
彼女が醸し出す雰囲気はナイーブでアンニュイだ。

今しかない。今を生きるしか

慎二の周りにいる先輩たち。
腰を痛めて仕事がままならない岩下(田中哲司)、
慎二の兄貴的存在の智之(松田龍平)、
隣に住む老人(大西力)。
未来が見えない慎二の前に自分の未来を物語る男達がいる。
いつかは動けなくなってしまうのか。
そんな不安もあるけれどだからどうすることもできないのも現実。

低所得層が若者に増えている。
必死で働いても必要経費を払うことで精一杯。
余裕など生まれない。
将来のことなんて考えられない。今しかない。
現実の東京がこの映画で見えてくる。

そんな時代だけど自分達は生きている。
一人では不安だけど二人なら生きて行ける。
弱さも強さも持ちながら今を生きるこの作品の人物達。
全然格好よくないからとても共感できる。

作品内に何度も出てくるストリートミュージシャン。
彼女の歌を聞いて自分もまだ頑張れる気がした。
小さな希望が私たちに勇気をくれる。

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』http://www.yozora-movie.com/
5月13日より新宿ピカデリー、ユーロスペースで先行公開。
5月27日より全国ロードショー。
東海地区ではミッドランドスクエアシネマ、MOVIX三好、
TOHOシネマズ岐阜、伊勢進富座で公開。
(伊勢進富座のみ8月12日より公開。)

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