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間が愛おしいと感じた北白川派の新作時代劇(映画『CHAIN/チェイン』)

今年は北白川派の作品が2本公開されると聞いて楽しみにしていた。

一本は山本起也監督の『のさりの島』。そして名古屋・名演小劇場でまもなく公開される『CHAIN/チェイン』だ。

北白川派を知らない方にまず、北白川派を説明しておこう。京都芸術大学映画学科の学生とプロが劇場公開映画を作るプロジェクトの名で、京都の嵐電を舞台にして好評だった『嵐電』もこの北白川派の作品だ。『CHAIN/チェイン』は北白川派の第8弾作品になる。そして活動拠点が京都だからこそやって欲しかった時代劇である。新撰組終焉の象徴とも言われる「油小路の変」を通して、激動の時代を生きた人々を描き出す。

あらすじ

幕末・京都。会津を脱藩した浪人・山川桜七郎(上川周作)は、賭場の用心棒として雇われていた。御陵衛士の篠原泰之進(渡辺謙作)、藤堂平助(村井崇記)が資金繰りの相談をしている時、九州の菓子屋の息子・松之助(池内祥人)が賭け金の持ち逃げで引っ立てられてくる。同郷と知った篠原が松之助を救い藤堂らと出ていこうとした時、陰間乞食・惣吉(松本薫)が襲い掛かり、咄嗟に篠原は惣吉の脇腹を斬るが、同時に用心棒の桜七郎が藤堂の前に立ちはだかった。藤堂は刀を交える中で桜七郎に対し侍としての共感を抱き、御陵衛士への合流を誘う。しかし桜七郎は無言で去った。
松之助は屯所の下男として御陵衛士盟主・伊東甲子太郎(高岡蒼佑)や仲間たちから快く迎え入れられる。そんな様子を、斎藤一(塩顕治)がじっと見つめていた。

新撰組と袂を分かつ御陵衛士の姿を描く

攘夷という気持ちは同じだが保守派ではなく勤皇の思いがあった伊東甲子太郎は藤堂平助ら同じ思いの新選組隊士と共に新撰組を抜け、御陵衛士と名乗った。油小路の変は伊東甲子太郎が新撰組隊士に殺害され、伊東の亡骸を引き取りに来た他の御陵衛士達も惨殺された事件だ。

新撰組を語る上でいつもクローズアップされるのは壬生浪士から新撰組に名を改めた頃の芹沢鴨の暗殺で、御陵衛士はいつもフェードアウトしていってしまう。
何が原因で彼らは新撰組と分かれたのか。それすらも知らない人は多い。本作では伊東甲子太郎という人物がしっかり描かれ、藤堂平助ら御陵衛士達が勤皇派の志士達と倒幕に向けて連携する動きも描かれる。

架空の人物達が幕末のやるせなさを伝える

実在の人物と架空の人物のストーリーが混ざり合い映画は進んでいく。新選組や幕末の志士達をかっこよく描いた時代劇は多い。娯楽時代劇と称された時代劇では若き志士達が死ぬことまでも美しく描かれる。それももちろんひとつの歴史の描き方だ。筆者には小さい頃はそれがかっこよく、憧れだった。今を生きる自分達とはどこか別の時代の話だと思って見ていた。大きくなるにつれ、史実を知るようになると主人公側から一方的に描かれた話であることがわかり、相手側の思いはどこにあるのかが見えていないことや自分達のように名もなき人々のことはあまり描かれていないことに気がつく。

幕末は勤皇、攘夷、保守と意見が分かれ、分裂した武士達は己達が正しいと信じて敵対する考えを持つ人々を話し合うこともせず、彼らの真意も知らないまま葬っていった。巻き込まれて死んだ市井の民衆もいたが、あの時代では泣き寝入りしか出来ない。そんな名もなき人々を描いた作品は少ない。

この作品では名もなき人々の思いもしっかり描かれている。藤堂平助が同志として声を掛けた会津藩脱藩浪人の山川桜七郎や、御陵衛士達の下男になった和菓子屋の息子の松之助、御陵衛士を襲う陰間の惣吉、市井で精一杯生きる女達が、表舞台にいる実在の人物と絡んでいく。彼ら、彼女達が抱える思いは私たちが共感出来る、家族を思う気持ち、そして痛みも怒りもやるせなさもある感情だ。

その感情が巡る間が愛しい。
久しぶりに間が愛しい時代劇作品に出会ったと思った。セリフがなくても伝わる思い。
自身の思いをあまり語らない桜七郎、切っ先を合わせる志士達、体を重ねた男女、家族を思い、必死に生きる夜鷹と陰間が見つめ合うその間には語るより語らない方が伝わるものがある。

 Ⓒ北白川派

Ⓒ北白川派

監督は若松プロ出身で『正しく生きる』『愛してよ』で知られる福岡芳穂(京都芸術大学映画学科教授)。脚本は『あゝ、荒野』『宮本から君へ』を手掛けた港岳彦が担当した。

主演は本作が映画初主演となる山川桜七郎役の上川周作。京都芸術大学在学中に『正しく生きる』(福岡芳穂監督)、『赤い玉、』(高橋伴明監督)等北白川派作品に出演して演技力を磨き、卒業後に本格的な活動を開始。映画『止められるか、俺たちを』(白石和彌監督)、『劇場』(行定勲監督)、NHK連続テレビ小説『まんぷく』や大河ドラマ『西郷どん』等で注目され、若手実力派俳優として脚光を浴びている。現在は『ドクターX』に出演中だ。他キャストには京都芸術大学を卒業した役者陣が多数集結した。男優陣がJAEメンバーと作り上げたクライマックスの油小路の変の立ち回りや和田光紗、辻凪子、土居志央梨等女性陣の芝居にも注目してほしい。また「5万回斬られた男」と呼ばれ数多くの時代劇で活躍、今年1月に惜しくも逝去した俳優・福本清三の最後の出演作としてもしっかり観ていただきたい。

冒頭、御陵衛士達の死体が現代の油小路に転がる。それを見つめる現代の人々。なんとも不思議ではあるが、時間が経っただけで確かに彼らはその場所で懸命に戦い、力尽きた。現代の人々が見ているのは残像だろうか。それとも彼らの意思がまだそこに残っているのだろうか。現代と交錯する地続きの世界として過去は「つながっている」ということか。そんなことを考えながら話の中に入り込んでいった。

タイトルの『CHAIN/チェイン』には様々な意味がある。
幕末は私たちの知らない遠い過去ではない。私たちが生きる今とつながっている世界だ。彼らの息遣いが今も京都に行けば聞こえてくる気がする。

『CHAIN/チェイン』https://www.chain-movie.com/ は現在全国順次上映中。
12月17日(金)より名古屋・名演小劇場で公開

 

出演:上川周作 塩顕治 池内祥人 村井崇記 佐々木詩音 延岡圭悟 松本薫 和田光沙 辻凪子 土居志央梨  渡辺謙作 鈴木卓爾 高尾悠希 駒野侃 宮本伊織 東山龍平 山本真莉 鈴川法子 水上竜士 福本清三 大西信満 山本浩司 渋川清彦 高岡蒼佑

監督:福岡芳穂 プロデューサー:椎井友紀子 仙頭武則|脚本:港 岳彦|撮影監督:栢野直樹(J.S.C.)|照明:浅川 周|録音:中山隆匡(J.S.A.)|美術・装飾:嵩村裕司|助監督:飯島将史|製作担当:岡本建志| 殺陣:中村健人(JAE) 東山龍平(JAE)|題字:赤松陽構造|編集:鈴木 歓|VFX:西尾健太郎|劇中胡弓曲「芥子の香」作曲・演奏:木場大輔|音楽・ギター演奏:中城 隆|企画・製作:北白川派| 製作・配給協力:沖潮吉績 沖潮芽生|製作協力:京都芸術大学 ギークピクチュアズ 時代劇専門チャンネル 東映京都撮影所|後援:京都市|協力:京都府|配給:マジックアワー| 2021年/日本/カラー/DCP/7.1ch/1:1.85/113分 Ⓒ北白川派

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