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映画『のさりの島』名古屋上映初日舞台挨拶レポート
映画『のさりの島』名古屋上映初日舞台挨拶が6月19日、名古屋・名演小劇場で行われた。
映画『のさりの島』はオレオレ詐欺の男とシャッター街で楽器店を営むおばあちゃんとの生活を描いていく。
映画のタイトルにある「のさり」とは、熊本県天草地方に古くからある言葉。自分の今ある全ての境遇は、天からの授かりものである、という考え方。目の前にあるものは否定せずに受け入れる。誰かわからない人を家の中に入れて、ご飯も食べさせて、一緒に生活する。
「のさり」の精神をキーワードに天草の商店街で撮影された作品。
山本起也監督が登壇した舞台挨拶様子をお届けする。
山本起也監督のインタビューはこちらから
山本監督
「こんな大変な状況の中、劇場にお越しいただきありがとうございます。今日はスタッフの天木くんも愛知県出身なので来ています。本当は全国津々浦々、藤原季節さんを招いて舞台挨拶を行いたかったのですが、今藤原さんは舞台を出演されていまして、もしコロナウイルスに感染したら舞台も中止になったり、様々なリスクがあるんですね。今日は名古屋にお招きすることは出来なかったので代わりに藤原季節さんのメッセージを預かってきていますのでご覧いただきたいと思います」
ここで藤原季節さんのメッセージが上映された。

熊本県天草での撮影について
山本監督
「『のさりの島』についてお話をさせていただきますと藤原季節さんと一緒にこの映画の撮影をしたのは2019年の2月から3月。天草に我々プロのスタッフが11名と天木君は当時私が所属してる京都芸術大学の映画学科に入りたてのまだ1年生でした。そういった学生がのべ20人。合わせて31人で天草に1ヶ月ほど滞在をして撮影しました。我々にはお金もないし、人脈もないし、何もないということで、とにかくその撮影までに何度も何度も天木たちと天草に通って。映画に登場するみつばちラジオというコミュニティラジオがあるんですけれど、そこに何度も出演させていただきまして、お家でお野菜を取れ過ぎてしまったら少し分けてくださいとお願いしたり、冬の撮影だったのでストーブが余っていたら貸していただけませんかとお願いしたり。そういったお願いを皆様にしておりましたら、天草の方が我々が合宿をしている場所に色々届け出くださいまして。届け物をしてくださった方のお名前を半紙に書いて壁に貼っていこうと言ったらあっという間に壁が埋め尽くされてしまったというエピソードがあります。そんな手作りの映画として天草の皆さんと一緒に作った映画です。男性十数名、女性十数名はそれぞれ男部屋、女部屋で私も含めて布団をひいてみんなで寝るというような今のコロナ禍の状況ではおおよそ考えられないような合宿体制で作った映画でした」
山本監督
「もともとこの映画の着想は2014年ぐらいだったと思います。それぐらいからこんな話ができたらいいなということを考えだしたわけです。僕たちはものすごい多くの量の情報を今日も得ているわけです。特にスマホからいろんな情報をもらって日々色んな判断をしているところがあると思うんですけど、そういう中でその情報によってあることが急に〇になったり、×になったり。×になった瞬間に世の中がよってたかってその×になったものを叩いたり。情報というものが物事の〇と×のエッジをものすごく際立たせているんです。〇だと言っていたのに急に情報として×が発信されるとみんなも×だと言い出すような世の中の雰囲気に僕はちょっとその頃から違和感を感じていまして。世界というのは僕たちが情報で判断するものではなくて自分が感じるものだと思います。
今日も皆さんこうやってここにお越しくださって、映画を観るというこの状況を皆さんそれぞれが感じておられる。これが世界だと思うんですけれど、そこに情報が乗っかって、あたかも自分が〇か×かを分かった気になって右に行ったり、左に行ったりする感じが日増しに強まるような感じを持っておりました。そしてこの映画はもう一つ「嘘」というものがキーワードになっているんですが、嘘というものが非常に良くないものと叩かれる状況の中で、案外嘘も時には必要な時があるんじゃないか。映画の中で「まやかしでも人には必要な時があると」というセリフがあります。「嘘でもよかよ」と言われると少し救われたような気になると言いますか、もっともっといろんな物事の〇と×の間のグラデーション、その階調というのはもっと非常に深く豊かなものなんじゃないかと。そんな映画を作ってみたいと思ってオレオレ詐欺のストーリーを着想しました」

山本監督
「ただオレオレ詐欺の話というだけでぜひここで撮影をしてくださいとおっしゃる方はいらっしゃらない。ということでなかなか映画制作は動かなかったわけですが、そういう中で京都芸術大学の副学長である小山薫堂さんの故郷である天草を訪れる機会が出来まして、この映画の話をしたところ、天草の皆さんは結構ニコニコしながら聞いておられて。終わった後で「監督、その話、天草だったらあるかもしれないな。こういうおばあちゃんが結構ここにはいるよ。オレオレ詐欺の男でも訪ねてきたら、あがっていきなさいよ、お茶でも飲む?といいそう」と、おっしゃられるんです。そういったことが当たり前にあるようなそんな土地柄なんですね。非常に物事を広く受け入れるというか、オレオレ詐欺の男の話ですら「あるよ、あるよ」と盛り上がったその時の天草での印象が残っておりまして、この地でこういった風土、精神性を映画に取り込んで映画を作ることによって僕自身にも「こんな話あるかもしれんね」というような気持にさせてくれるのではないかと思い、天草で撮影させていただきました」

コロナ禍ものさりの心で
山本監督
「コロナウイルスが蔓延し、この映画は去年公開の予定でしたが、公開が一年近く延期になりました。一から公開の準備をやりなおすということで、その時は非常に困ったな、まいったなと思ったんですが、この映画の‟のさり”という言葉は何かいい時にも使いますし、逆に大変なときにも「のさっとるね」と使うんです。物事がツイていてもツイていなくてもいい方のニュアンスを変えるだけで同じ言葉で表現するんですね。コロナウイルスが流行して弱ったことになったなと思いましたが、上映が1年延期になった中で、僕はいろんな方にお会いしてこの映画のことを自分自身で考える時間が出来ました。そういう中で上映の延期も、この映画『のさりの島』にとっても必要な巡り合わせだったんじゃないかなと。自分を基準にしてけしからんとかこれぐらいいいんじゃないのと仕分けするという風潮はコロナウイルスが出てきてさらに進んだと思うんですが、よくよく考えれば僕たちはコロナウイルスが流行する前から人を仕分けたり、判断したりしていました。世界のあちこちで、人が人をジャッジしたり、人の分断を煽ることで自分の支持を伸ばすなど、ここ数年来続いてきたものを顕在化して示してくれたのがコロナウイルスかなという気もするんです。 そういう社会状況の中で、物事を〇とか×とかでジャッジしたり、区別し排除することとは全く逆の感覚と言いますか、いいことでも「のさっとるね」、ついてないことでも「のさっとるばい」という感覚の映画を撮影し、そして延期の果てに皆さんの元にお届けできるということもひとつののさりなのかなと。〇とか×とかではなく、全て自分に起きたことは偶然であると同時に必然である、何か意味があるものとして捉え直すという、そういう感性がのさりという言葉にはあるのではないかと。こういう状況の中でこの映画を皆さんにもご覧いただけるということも、私にとっては大きなのさりなのかなと感じながら、上映活動を続けております」
原知佐子さんも舞台に
山本監督
「もう一人の主演の原知佐子さんが映画の公開を待たずして亡くなられましたが、原さんをここにお呼びしたいと思います。天木くん、ご紹介してください」
天木さん
「これは映画に出てくる自動精算箱です。直筆で「ここからお釣りをお取りください」と書いてあるのですが、原さんに実際に書いていただいたものです。この箱には沢山の人の思いが詰まっています。美術スタッフも原さんもこだわって「ここはこうした方がいいんじゃない」と意見を出して作りました」

山本監督
「「これは自動精算箱」と劇中で原さんが言っていますが、天木くんが原さんに自動精算箱と書いてもらうのを忘れてしまったんです。撮影の途中で気が付きましたが、そのままで行こうということになりました。原さんの代わりにこちらに持ってまいりました。劇場の入り口にあるかかしも天草の宮地岳から天木くん達が運んでくれたものです。両方とも飾っておきますのでお写真を撮っていってください。『のさりの島』は今日から名演小劇場さんでは3週間上映していただけることになっています。この映画からのさりという感覚を感じ取っていただけたとしたら、こんな映画が名演小劇場でやっているよとご紹介いただければと思います。雨の中お越しいただきまして本当にありがとうございました」

映画『のさりの島』https://www.nosarinoshima.com/ は現在全国順次公開。東海3県では愛知 名演小劇場は公開中。7月17日より三重 進富座、7月23日より愛知 刈谷日劇で公開。
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