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映画『あのまちの夫婦』津田寛治監督インタビュー&舞台挨拶レポート

映画『あのまちの夫婦』の上映が名古屋・シネマスコーレで19日まで行われている。

監督は様々な作品に出演し、役者として多彩な顔を持つ津田寛治。

元々は映画監督になりたかったという津田さん。
今回、シネマスコーレでの公開に合わせて津田寛治さんにお話を伺った。
また制作に携わった知多半島映画祭のプロデューサー鈴木啓介さんも登壇した舞台挨拶の様子もお届けする。

津田寛治監督インタビュー

Q.この企画のきっかけは何だったのでしょうか?

津田監督
「きっかけは知多半島映画祭のプロデューサーの鈴木さんからです。知多半島映画祭の短編上映で、僕が以前撮った『カタラズのまちで』というこれも渡辺哲さんが主演されている作品を上映していただいた時に「実は知多半島ではメイドイン知多半島の映画がないので短編という形で撮りませんか?」とお声を掛けていただいて。じゃあやろうとなって。「どういう作品がいいとかありますか?」と鈴木さんに聞いたら、「知多半島が舞台ならどんな形でも」と言ってくださって。「でも知多半島の役者さんに出ていただいた方が、スタッフも知多半島の人だし喜ばれる、渡辺哲さんとか出ていただけるとすごく嬉しい」と言われて。知多半島には僕は縁がそんなになかったので、知多半島で映画撮影となった時に核になる画はなんだろうと調べたら、野間灯台がボーンと出てきまして。そこに寄り添う老夫婦が一番最初に見えたんですね。哲さんと、その時はまだどなたになるかわかっていなかった奥さん役の方二人が灯台の下に寄り添っている画の中で、哲さんは普段やくざとか刑事とかいかつい役が多いですが、その哲さんに敢えて繊細な男を演じてもらいたいなと思って、その時にババババババっとセリフを書いて「こんな感じにしたいんですが、どうですか?」と鈴木さんに会話部分を送ったら、「ああ、いいですね。昔の映画っぽくって」と返事が返ってきたのでそれを核とした形で広げていった感じです」

Q.尺も短いので生みの苦しみとかもあったのではないでしょうか?

津田監督
「すごく楽しかったんです。短編になると上映時間に合わせてギューッと切るところを切るというのはわが子の手や足を切っているようでしたが…。短編の撮影後の編集については今までは編集の方にお願いしながら進めていたんですが、これに関しては無料の映像編集ソフトをダウンロードしてきて僕が空いている時間に喫茶店とか電車の中とか色々な場所で編集したのでいろんなことを試すことが出来たんですね。編集の方と一緒にやっていると、「いっぺんやってみよう」となかなか言えなくて。細かい部分まで納得いくまでやったので楽しく編集できました」

Q.上映されるまで全部見届けたという感じですね

津田監督
「そうですね。ストーリーも0から。脚本家の方に頼むような予算もないので自分で書くんです。始めるまでは白いキャンバスの前でどうしようって思っていたんですが、書き始めるとババババっと出てきたのは知多半島という土地柄だからだと思います。そこに情緒があったし、僕は名古屋を経由して行ったので、名古屋の街を経て入っていったこういう半島の中に灯台がぽつんとあるという情景から入り込めたのがストレスなく話を作れた理由です。それに取材して知多半島の皆さんにたくさん出ていただきたいなと思って。いろんな方にお話を伺ったら、皆さんいい人で、映画出演に関してもご快諾いただけて。かといって何か言うわけでもなく、一歩も二歩も引きながら「どうぞよろしくお願いいたします」ってこちらが言わないといけないのに「うちなんかでよかったら使ってください、お願いします」という方ばかりだったのもストレスなく出来た理由だと思います」

Q.昔から映画を撮りたいと思っていたんですか。

津田監督
「子どものころから映画が好きで、大人になったら映画関係の仕事がしたいと思っていました。その中でも花形と言えば監督なので監督になりたいと思っていました。途中で役者から入っていった方がいいと思って、役者を始めました。昔から俳優として現場にいる時も控室にいるのではなくて現場にずっといたんですね。撮影が止まっていると、「なぜこれは撮影が止まっているんだろう?」って考えたりとか、照明さんが言った言葉って専門的だけど、どういう意味なんだろうとか考えながら現場にいると飽きないんですよね。そんな感じで現場にいて色々教えていただいて、それで短編を作るようになったので最初からスムーズには映画作りが出来ていると思います。自分が見ていた現場が実際に映画になるとどんな感じに映るのかとかを比べるのもすごく楽しかったですし、楽しいことはいっぱいありました。なので「津田さんは俳優さんというより、スタッフさんですね」と言われていました」

Q.役者として現場にいて見てきたからこそこういう監督になりたい、こうしたいという自分の中で守りたいものはありますか。

津田監督
「監督をしているとスタッフさんにはあまり気を遣わなくなるんですよね。仲間だと思っちゃうから。対俳優になった時にやっぱりいいものを出してほしいと思うからとにかくいいところがあったらほめる。「今すごく良かったのでここを生かしてこういう感じでやってもらっていいですか?」というようにその人が本当にリラックスしていいものを出して行ける状況を作っていくということと俳優が自主的にやったことは否定せずに全部撮る。それを否定し始めるといいものにならないというのが経験上あったので、とにかく俳優が出してきたものはそれがエキストラさんが出したものであっても、エキストラさんが冷やかし半分でやったものであっても、「やらないでくれる?真剣にやっているから」とは言わずにそれを撮る。「面白いことやりましたよね、それ撮らしてもらっていいですか?」ってそういう風に作っていった方が面白いものが出来るというのはありますね。その人がやるんだったら、こう撮った方が面白いかなという感じで撮影を変えます。その分、スタッフさんに気を遣わなくなるのでスタッフさんが大変になるっていう所はありますけどね…(笑)」

Q.今後愛知で映画を撮ろうという構想はありますか?地方で撮る魅力とは?

津田監督
「構想はどんどん出てくるまちだとは思います。ただここを舞台にした短編の良作が沢山あるんですけど、いいところを切り取っているんですね。メイドイン愛知をあまり意識せずに作った方がまちの良さが出る気がしますね。僕にとって映画は土地との科学反応だと思うんです。セットよりはロケでやりたい。ロケでやることによって机上で書いた本が科学反応を起こしてくれる。それが楽しかったりするので、愛知だけでなくいろんな土地でやる楽しみとかはありますね。そこに住む人を撮りたいので今回も知多半島の美しい風景を沢山入れ込むよりは知多半島の人を沢山撮りました。今回主演の渡辺哲さんも常滑市出身で、焼き物を主人公が取材するロケーションがあって、「俺の実家はあの辺」と言いながらお父さんが焼き物の仕事をされていたので「息子です!」と焼き物さんに入って行かれていて。主演の人が自分の出身地で芝居をするというのを見られるというのがこんなにぞくぞくするものなんだと思いました」

シネマスコーレ舞台挨拶レポート

客席は超満員。実はシネマスコーレ初登場の津田寛治監督。

津田監督
「うわあ。もう想定外です。今日は立ち見のお客様がいらっしゃると聞いていたんですが、今ここに入ってきて見た光景は一生忘れないと思います。シネマスコーレには僕は初めて来まして。出演した作品は沢山上映していただいているんですが。来たいとは思っていたんですが、来られたのが自身の監督作品というのがまた嬉しいですね」

津田寛治監督

津田寛治監督

 

Q.若松孝二監督も天から見ているんじゃないかと…。

津田監督
「若松監督は僕がアルバイトをしていた喫茶店によくいらしていたんですが、出演したことはないんですよ。すごくこわいという噂は聞いていたんですが、喫茶店の従業員には優しくて。本当に素敵だったですけど、やっぱりいつも長靴は履いてましたね(笑)。晴れていようが長靴で来られていましたから。憧れでした。出られなくて悔しかったですけど。今日のご縁に感謝です」

Q.そのご縁を作ったのが知多半島映画祭の鈴木プロデューサーですね。出演も今回されていますが、役者ではないですよね?

津田監督
「あれは鈴木さんがどうしても出たいって(笑)。なのに途中からやっぱり出ない方がいいですかね?って言ってきたり」

鈴木プロデューサー
「一番僕、津田さんにNG出されたんですよ」

津田監督
「一番やっぱり出来てない(笑)。びっくりしました。「榊原君!!」ってすごく二枚目芝居をやっていて、そのあと殴らないといけないのに遠慮してしまって叩けないので「そんなに痛いものではないので叩いちゃってください」って言ったんです。叩かれる俳優さんも「叩いてください」と言っているのにダメだから僕がもうイライラしちゃって。「鈴木さん!痛くないでしょ?」と言ってパーンと叩いたら「痛いです・・・」って返ってきて(笑)」

鈴木プロデューサー
「もう出ません(笑)」

Q.鈴木さんは知多半島映画祭のプロデューサーでもう年も続いているんですが、なぜ知多半島映画祭を始めようとしたんですか?

鈴木プロデューサー
「会社員の傍らやっておりまして。知多半島で映画監督になろうとか映画関係に進もうと高校時代から描いていたんですが、だけどそういう環境がなくて、東京に出るしかない。しかもそういう人ってなんだか異質に見られてしまう。そういう人たちのためにその道を作ってあげたいと思って始めました。ゆくゆくはフィルムコミッションを知多半島で立ち上げたいんです」

左 鈴木啓介知多半島映画祭プロデューサー

左 鈴木啓介知多半島映画祭プロデューサー

 

津田監督
「そうなんですよ。今回の作品でも鈴木さんにお店を紹介してくださいとお願いしたら、鈴木さんのお知り合いの方を割と紹介してくださって」

鈴木プロデューサー
「全部ですね(笑)」

津田監督
「しかもそのほとんどがお菓子屋さんなんですよ(笑)。なぜかお菓子だらけになってお土産までお菓子だったという(笑)」

Q.映画祭を始めたころは結構みんなから怒られてましたよね、鈴木さん。

鈴木プロデューサー
「映画業界のことをあまり知らなかったんです」

津田監督
「怒られキャラなんですね。この映画でもカメラマンに「この予算で映画撮れると思ってるのか!?」って居酒屋で予算書を書き直させられてましたから」

Q.そんな怖いカメラマンさんだったんですか?

津田監督
「そうなんです。僕が連続ドラマでやっている『特捜9』とかの東映の現場でバリバリやられている腕っぷしの強い方で「津田さんが監督するなら僕が撮りたいよ」と言っていただいて。ロケハンに来てもらったら「ロケハンチームに飯を食わせなくてどういうことだ!スタッフ舐めてるのか!」と。「俺は誰も置いていかない、みんなを連れて行くぞ!」と引っ張ってくれる感じだったんです。記録係が地元の弁護士事務所で働いている女性の方だったんですが、「記録なんて言うのはな、10年修行しないとできないんだよ!明日からやるって覚悟できてるのか?」って。その女性の方も泣きそうになっちゃって。僕も一緒に怒られていて。「監督が決めなくてどうするんですか!」って(笑)。」

鈴木プロデューサー
「知多半島でがっつり撮ろうということになって、予算が最初は100万円ぐらいだったんです」

津田監督
「僕も最初はそれで行けるかなと思ったんです。でもそのカメラマンが「最低で300万ぐらいだったらしょうがないかと思っていたけど、なんだこれは!」となって(笑)」

Q.監督が描いていたのはもっと自主映画っぽい作品だったということですね?

津田監督
「そうなんです。デジタルだから照明機材もそんなにいらないだろうと思って、少人数でやった方が機動力もあるのでいいなと思っていたところに、そのカメラマンが「照明機材だってこれくらいかかるし」と言って。実際に撮影が始まったらすごい照明機材が入っていて、これなくても撮れるんだけどな…と思いながら(笑)」

Q.長編映画をバリバリ撮るぞ!というようなものが来てしまったんですね。

津田監督
「はい。ボランティアの方もいらしていて、だからスタッフさんがとてもたくさんいたんですね。その人たちが見ている場所でカメラマンが怒鳴っているという構図が現場の感じでしたね(笑)」

Q.プロデューサーから見た津田さんの監督ぶりはどうだったですか?

鈴木プロデューサー
「役者としてはいろんな役をやられているんですよね。怖い役とかも。でも現場では本当に優しい感じでやっていただけて良かったです」

津田監督
「そうですね。出ていただく方も一般の方だったので、委縮されてしまうとその人が本来持っている素敵なところが出ないですし、リラックスしてもらえるような環境を作りました。もちろん素晴らしくないものは素晴らしいとは言わないんですけど、出てくださる方の良さを伸ばすようにします。でも、一般の方ってお芝居うまいと思いますよ。大蔵餅の社長は台詞を僕が書いたものでなく、自分のものにしていらっしゃる。度胸があるんですよ。だから渡辺哲さんも「この人は凄いねぇ」ってすごい褒められていましたね」

公開記念として花束贈呈も行われた。

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映画『あのまちの夫婦』は
今週金曜まで名駅シネマスコーレで18時30分から公開中。

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