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受け継がれる唄と共に生きる(映画『盆唄』)

2011年の東日本大震災からまもなく8年。震災後の人々を描く新たなドキュメンタリーが公開される。中江裕司監督の『盆唄』だ。

お盆に故郷に帰ってくる先祖の霊の供養や人々と踊りを楽しむ盆踊りで歌われる日本各所に残る唄、それが盆唄だ。盆唄は地域毎で微妙に違う故郷の唄で、民謡として全国的に有名なものもある。

東日本大震災による影響を受けた東北の市、町や村の人々の離散はその場所にあった先祖代々受け継がれてきた伝統文化をも失わせている。盆唄もその一つだ。だが、先人達からの心を失うことなく、自分たちの心が帰ることが出来る唄や祭りを途絶えさせることなく繋げたいと考える人々の光は意外にも故郷とは遙か離れた場所・ハワイにあった。

震災から4年が経過した福島県双葉町。震災による福島原発の事故の影響で町を出てバラバラに暮らさなければならなくなった帰宅困難地域の町のひとつだ。今までのように生活出来そうな双葉町だが、放射能の値は高く、一日数時間しか滞在を許されない。未だいつ帰れるかがわからない。帰る家を失い、そこにあった先祖から受け継がれた祭りも続けることが出来なくなった。

福島の心が生きるハワイ

双葉町の祭りを盆唄や笛、太鼓で盛り上げてきた横山さんのグループ。久しぶりに仲間と集まり演奏してみるが、新しい土地では思うように練習も出来ず、前ほどうまく演奏出来ない。双葉町の唄を後世に繋げたいという横山さんたちの思いを知った写真家・岩崎さんは福島で伝わる唄が遠くハワイで「フクシマオンド」として唄われていることを横山さんたちに知らせる。故郷を離れた人たちが故郷を懐かしんで歌い継ぎ、新たな場所で伝統を繋げた姿は双葉町を離れた人たちが新たな場所で故郷を思い生きている姿に重なる。

遙か遠い地で双葉盆唄を繋げる希望が見つかった横山さんたちはハワイを訪れ「フクシマオンド」を聞いて驚く。日本の盆唄が海を越えてハワイへ渡り、ハワイでの盆唄「フクシマオンド」へとアレンジされ日系人たちに愛され続けていたのだ。横山さんたちはハワイの人々と練習を始め、コラボレーションが実現する。ハワイの人々と双葉町の人々が歌う望郷の唄と踊りに涙が出る。

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移民の歴史を描く

福島から移住した人たちの今を描くだけでなく、ハワイに移住した日本の人たちの歴史が語られ、そして富山から福島へ移住した人たちの歴史もアニメーションで描かれる。生きるために故郷を離れた人たちの望郷の思いはどんな時代であっても変わらない。いつか帰れる日を夢見て、新たな地で懸命に生きていく。そんな移民たちの思いが伝わってくる。

監督は『ナビィの恋』の中江裕司監督。3年をかけて人々に密着し、その変化をとらえた。監督がこだわったのは故郷への思いを忘れず、新たな場所で強く生きる人たちの姿を描くこと。ドキュメンタリーだがとにかく映像が美しい。富山から福島への移住のエピソードをアニメーションで表現していることや、ゼンマイ回転式パノラマ写真撮影を取り入れていることも従来のドキュメンタリーにない斬新さだ。ハワイで盆唄に乗って踊る人々を捉えた祭りのシーンやクライマックスの祭りのシーンは懐古的で自分が昔行った盆踊りを思い出させる。

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故郷は遠くにあって思うものと言われる。
故郷とは場所でもあり、人でもある。
離れることで分かる故郷の大切さ。故郷が姿をなくしたとしても故郷の唄は人々と共に寄り添い、共に生きていく。どこにいても故郷の唄を唄えば心は繋がっていく。

亡くなった人や日本の各地に移住した双葉の人たちへ届けと唄われたクライマックスの双葉盆唄がしばらく耳から離れなかった。

映画『盆唄』http://www.bitters.co.jp/bon-uta/ は現在公開中。

東海地区では2月23日(土)より愛知・名演小劇場、5月11日より三重・伊勢進富座で公開。

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