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新選組と関わった女性達の恋と覚悟(映画『輪違屋糸里』)

時代劇で新選組を取り扱った作品は沢山あるが、女性の目から見る新選組の騒動を描いた作品はあまりない。

女性の視点から新選組の芹澤鴨暗殺騒動を描いた『輪違屋糸里』は新選組で生き抜いた男・吉村貫一郎を描いた『壬生義士伝』も書いた浅田次郎の作品だ。
『壬生義士伝』は2004年に映画化されているが、新選組を描いた浅田作品第2弾として『輪違屋糸里』も今回映画化された。

あらすじ

新選組がまだ壬生浪士組と名乗っていた時代。近藤勇と芹澤鴨という二人の局長が存在し、両派が対立を深めていた。花街・京都島原輪違屋に暮らす天神・糸里が慕う音羽太夫を芹澤鴨が無礼打ちする事件が起こる。その騒動を収めたのは糸里が思いを寄せる新選組副長・土方歳三だった。糸里、芹澤派の平山五郎との愛に翻弄される桔梗屋天神・吉栄、芹澤鴨の恋人お梅。幕末の京の色街に生きる3人の女性たちが愛したのは、奇しくも新選組の志士たち。近藤派と芹澤派の対立は日々激しくなっていき、男たちの対立に糸里たちも翻弄されることになる。そして、芹澤鴨の暗殺が起こった…。

愛した男は新選組だった。
舞台は京都・島原。囲いの中の女達は愛する男に夢と現実を見る。男達は女達に何を求めるのか…。

新選組の男たちが女達に見せる様々な顔は歴史の教科書には書かれていないものだ。歴史の中にある、名など記されていない人々だってそこには生きていた。ちゃんと歴史を作っていた。新選組の男達が庶民とどう関わり生きたのか。愛した人が新選組でなかったのならまた違う生き方もあっただろう人々が描かれている。一夜の夢を売る世界の女たちの淡き夢は男達の壮大な夢に巻き込まれ、幕末という動乱の時代の歴史を作っていくことになる。

島原で生きる女性達

自分がどんな境遇だったか、どんな身分だったか。花街に売られて来た女達は自分の名前と過去を捨て花街で生き直す。小唄に三味線、踊りに和歌と小さな頃から芸事の鍛練をし、どんな身分の客が来ても怯むことなく対等に接するだけの覚悟を持つ。太夫になれば最高の女性として、貴族や大名の相手になる。小さな頃から厳しい修行を経て成長していくが、誰しもが太夫になれるわけではない。太夫になるにはその器量と大金を出してくれる旦那が必要なのだ。

『輪違屋糸里』は糸里という一人の女性の成長物語でもある。憧れていた音羽太夫が芹沢鴨に斬り殺され、切り札を失った輪違屋は糸里にも太夫上がりを打診する。打診されたらすぐなれるわけではない。作中では500両かかると言っているが、この資金を出してくれる旦那がいなければ出来ない。旦那がつくということは女になるということなのだ。いつまでも団子を食べて喜んでいるだけの少女ではいられない。好きな人に抱かれたいと思うのは当然と吉栄に言われたこともあり、土方へのほのかな思いは糸里の中で大きくなっていく。吉栄は愛する人を取るか、自分の夢を取るかという究極の選択を迫られる。この吉栄の迷いが糸里に様々な決断を与える。

新選組から現れる3人の男

吉栄に黙っていられず新選組での秘密も打ち明けてしまう平山五郎。新選組局長という自分の立場への戸惑いをお梅に悟られる芹澤鴨。糸里には親しみを感じて自身の故郷や兄弟の話をする土方歳三。鬼のように倒幕志士達を取り締まった新選組の隊士達も一人の人間だったことを描いている。百姓ではなく武士として認められたいという土方の強い意思も人間だからこその欲で、だからこそどんな手を使っても近藤勇局長の下、強い新選組という武士の一団を作ろうとしたのだろう。様々な人々の強い思いが絡まって芹澤鴨暗殺騒動は起こる。

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主人公糸里には『ソロモンの偽証』で鮮烈にデビューした藤野涼子。あどけない少女から女性へと成長していく姿が美しい。
土方歳三役には現在NHKBSプレミアム『立花登青春手控え3』での好演が光る溝端淳平。ソフトな面持ちで土方歳三とは少しイメージが違うような気がしていたが、作品を観て本作の土方にはぴったりだと思った。時に厳しく、時に爽やかに、時に寂しく。様々な顔を糸里に見せる土方がいる。平山五郎には佐藤隆太。隻眼ながら剣の使い手で鍛練にも余念がない。まっすぐで吉栄にも優しい平山を作り出した。だからこそ吉栄は言うべきことを言えずにいる説得感がある。恋と自らの夢の間で迷う吉栄にはSKE48卒業後、様々な役を演じ、女優としての幅を広げる松井玲奈。糸里に女としての恋を伝えるキーマンとしての役割をしっかりと果たす。芹澤鴨には塚本高史。横暴な態度は新選組の力を誇示するための行動で行きすぎであることは本人もわかっており、自分の立場に悩む繊細な気持ちを持つという今までにない芹澤を演じている。その思いを見抜いてしまうお梅はどこか達観していて物憂げな大人の女性。田畑智子の絶妙な視線の動かし方に色気を感じずにはいられない。

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京都の撮影スタッフが集結した現場

京都には2つの撮影所がある。東映京都撮影所と松竹京都撮影所。この2つの撮影所に所属している撮影スタッフが集結し、長年受け継がれてきた時代劇撮影の技を繰り出す。真っ黒ではない夜の闇の色を作り出すのも、鮮やかな夜の花街を映し出すのも照明や撮影、京都が誇る美術スタッフの手による。太秦撮影所だけではなく随心院をはじめとした旧跡、神社も撮影に使用された。

一人の女性の心に刀では切れない一本の太い糸が通る。
浅田作品の主人公には雷に撃たれても這い上がってくるような強い心を感じる。鬼気迫る『壬生義士伝』の吉村貫一郎に負けない凄みを輪違屋糸里に感じられるようになるにはどんな出来事があったのか。その過程に藤野涼子が自らを重ねて糸里を演じ切る。成長する姿をしっかりと観ていただきたい。

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『輪違屋糸里 京女たちの幕末』http://wachigaiya.com は12月15日(土)より新宿スバル座他で公開。
東海地区では12月22日(土)より愛知・名演小劇場、1月11日(金)より三重・イオンシネマ津、1月12日(土)より岐阜・岐阜CINEXで公開。

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