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名作「クリスマス・キャロル」に隠された作者の過去と葛藤の日々(映画『Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男』)

ハロウィンが終わると日本はクリスマス商戦に向かって様々な業界が一斉に模様替えを行う。クリスマスはサンタクロースがプレゼントを持ってくる日というイメージが日本では強いせいかクリスマスプレゼントを贈ることやクリスマスケーキを食べることに重きを置いてイベントを楽しんでいる気がする。イギリスやドイツのようにクリスマスを家族と過ごす大切な一日として捉えている人はどれだけいるのだろうか。

ヨーロッパのそんな慣習も一つの物語がきっかけだった。
チャールズ・ディケンズが1943年に書いた「クリスマス・キャロル」はクリスマス集の第一集として書かれた作品だ。この作品が人気となりクリスマスはイエス・キリストの生誕を祝うだけでなく家族や大切な人と過ごす日という習慣が定着したとも言われている。

「クリスマス・キャロル」の主人公スクルージは意地が悪く強欲だった。そんなスクルージの前に昔一緒に会社の経営をしていた亡きマーレイの亡霊が現れ、意地の悪い人間が死んだ後どうなるのかを聞かされる。3人の精霊達に過去・現代・未来を見せられたスクルージは翌日から心を入れ替え、今まで冷たくしていた人々に手を差し伸べていく。

この「クリスマス・キャロル」をチャールズ・ディケンズはどんな思いから作ったのだろうか?

「クリスマス・キャロル」の製作過程を描いた『Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男』がクリスマスを前に公開される。

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行き詰まったチャールズを救ったのは

「オリバー・ツイスト」で小説家としての地位を築いたディケンズだったがその後に出した作品は不評。売れるつもりでアメリカへの旅行の費用を出版社から前借りしていたため入ってくる印税も少ない。5人目の子も生まれてくるのに生活は苦しい。そこへ浪費家である父が母を連れてお金を無心にやって来る。次の作品を何としてもヒットさせなければならないとディケンズは借金の工面をしながら作品のヒントになるものを様々な場所や人に求める。

そんなディケンズにヒントを与えたのはディケンズの家に新たにお手伝いとして入ってきたタラ。アイルランド出身の彼女はディケンズの子供たちにクリスマスにはあの世とこの世の境が薄くなって精霊たちがこの世にやってくるという逸話を聞かせていた。その話をヒントにディケンズはクリスマスをテーマにした話を書きはじめようとするが、出版社にクリスマスを題材にしても売れないと出版費用の捻出を拒否されてしまう。6週間後のクリスマスまでに自費でも出版したい。ディケンズはさらに金策をしながらクリスマスの話の創作に没頭する。

登場人物と会話する男・ディケンズ

この作品の面白いところは役名がぴったりと当てはまったときにディケンズの中で形となって作品の登場人物が現れることだ。現実とディケンズが作り出した物語の世界が交差する。形となって現れたスクルージやマーレイたちと会話するうち、ディケンズはコメディとして描こうとしていた「クリスマス・キャロル」とは違う展開を見つけ出す。スクルージが言い放つ言葉、スクルージが見ているもの。それのどこかにディケンズの過去と今、そして未来が重なる。ディケンズの心の奥に押し込まれていた思いが様々な人物となってディケンズの本当の「クリスマス・キャロル」のストーリーを生み出していく。

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チャールズ・ディケンズを演じるのは『ダウントン・アビー』のマシュー役でブレイクし、ディズニー映画『美女と野獣』の野獣役を演じて脚光を浴びたダン・スティーブンス。「クリスマス・キャロル」を描いた31歳の頃、若きエネルギー溢れる小説家を繊細に演じている。時には陽気に、時には激高し、悩む。多面的なディケンズを作り上げた。ディケンズが生み出したスクルージにはクリストファー・プラマー。『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐を演じていたクリストファーは現在79歳。様々な役の経験を活かし、スクルージをお茶目なところもある心を閉ざした意地の悪い男として演じている。ディケンズの父親・ジョンを演じたジョナサン・プライズも物語のキーマンになっているので演技に注目してほしい。

イギリスの役者陣に負けない日本声優陣による超訳吹替版

今回日本では1940年代のイギリスの情勢や「クリスマス・キャロル」の話を知らなくても映画がわかる”超訳吹替版”で上映される。ディケンズの声は小野大輔、ディケンズの妻ケイト・ディケンズの声は坂本真綾、そしてスクルージの声は日本の舞台作品『クリスマス・キャロル』、『スクルージ!』で何度もスクルージを演じ、スクルージ役者と言っても過言ではない市村正親が担当する。またディケンズの父の声は、これまでトム・ハンクスをはじめ、ロビン・ウィリアムズやエディ・マーフィといった大物俳優の声を担当してきたベテラン声優、江原正士が演じる。作品の世界観を壊すことのないすばらしい声優陣による吹替となった。

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ベストセラー作品が生まれた背景にはいくつもの物語がある。
「クリスマス・キャロル」という現代のクリスマスを形式づけた小説が生まれたのはチャールズ・ディケンズが歩んできた人生があったからこそだ。

人は変われる。やり直せる。自分次第。

失敗したらやり直せない風潮がある今の日本で生きる人たちにぜひ観てほしい映画だ。

『Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男』 https://merrychristmas-movie.jp/ は11月30日(金)より新宿バルト9他で全国公開。
東海地区では109シネマズ(名古屋、四日市)、イオンシネマ(名古屋茶屋、ワンダー、岡崎、豊田KiTARA、長久手、各務原、鈴鹿、津南)、ユナイテッド・シネマ(豊橋18、阿久比、稲沢)、MOVIX三好で11月30日(金)より公開。

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