Cafemirage

Cafe Mirage--岐阜発 映画・エンタメ情報サイト

カテゴリリンク

otona5

EntaMirage! Movie

死なないスマホロシアンルーレットが始まる(映画『おとなの事情』)

携帯電話がなかった頃、隠しておきたいことは何処にしまっていたんだろうと
この映画を見て率直に考えた。

昔なら電話は着信履歴なんて残らなかったし(携帯がなかったし)
メールなんてこんなに気軽には出せなかった。(手書きだし)
そう。誰にも言えない秘密は自分の心のうちだけにしまおうと思えば出来た。
昔の方が色々と都合がよかったし、
真実を明らかにすることも難しくて面白かったのかもしれない。

今回紹介するのは今を生きるおとなのとある食事会の一コマを描いたイタリアの作品だ。
友情や夫婦の仲はこんなことがきっかけで大きな変化を見せるものなんだと
皮肉にもつい笑いながら見てしまう。
イタリア映画の最高賞とされるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で監督賞、脚本賞に輝いた
コメディを得意とするパオロ・ジェノヴェーゼ監督が描く96分の会話劇。
すでにスペインでリメイクも決まっている話題作だ。

あらすじ

友人の家に食事会にやって来た7人。
食事会に家を提供したロッコとエヴァ夫妻。エヴァは娘のソフィアともめている最中だ。
母親と子供たちと嫁姑の言い合いはあるが幸せに暮らすレレとカルロッタ夫妻、
最近結婚したカジモとビアンカ夫妻。
そして恋人ルチッラを風邪で連れてこられなかったペッぺ。
いつも通り近況報告をしているはずがそれぞれの携帯にやってくる着信やメールを
包み隠さず公開するというゲームに興じることに。
はじめは隠し事なんて何もないと言っていたはずなのにメールが届く度、
着信がある度にとんでもない事実が明らかになっていく。
otona6

夫婦に秘密はない?

食事会にやってくるまでの夫婦の映像をまず監督は見せてくれる。
後半に向けての伏線がこの時点からいくつも張り巡らされており、
冒頭で見たときは何気ない夫婦の会話であるようにしか見えない。
細かく差し込まれる友人たちの視線のカットも意味深だ。

 

事実が明らかになったときその行為は別の意味を為す。
好きで結婚したはずの夫婦。
でも携帯の中身まで明かすことが出来ているかといえばそうではない。
otona8

スマホの中には秘密がたくさん隠れている。
スマホを見た、見られたが原因で別れるカップルもいる世の中で
エヴァが言い出した携帯のメールや着信を公開するゲームはまさに
『死なないスマホロシアンルーレット』
死ねないのが辛いぐらいの展開が待っているとも知らず
「隠し事なんてない。」という嘘を押し通そうと自分の携帯が鳴らないことを祈って
ドキドキする時間を過ごすことになる7人。
中には嘘を押し通そうと行動したことがさらに悪い方へと向いてしまう人物も出てくる。

イタリアのバイプレイヤーズによる会話劇

96分のうちほとんどがロッコの家での会話劇。
その会話劇をそれぞれのキャラクターを作り上げて臨んでいるのは
イタリアの名俳優たち。主演も脇役もできる実力派が勢揃いしている。
ペッぺ役のジュゼッペ・バッティストンは
ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を過去に3回受賞しており、
カルロッタ役のアンナ・フォッリエッタは本作で同賞にノミネートされた。

映画というよりも一幕ものの舞台を見ているようなそんな感覚にとらわれる。
観劇後によく感じるあの何とも言えない居心地の悪さをこの映画でも感じてしまう。
演劇はハッピーエンドや分かりやすい結末がないものも多いからだ。
居心地は良くないがなんだか笑ってしまう。
悲劇こそ喜劇。まさにこれだ。
otona7

 

姿の見えない登場人物に一喜一憂

メールや電話を掛けてくる相手がどんな人間なのかを想像するのも非常に面白い。
ペッぺの彼女のルチッラ、ビアンカの元カレ、カジモの同僚など
相手はいつも通りの会話をぶつけてくるため、
一つずつ知らないことが暴かれていく。
友人たちが知らない、出来れば知ってほしくないことが明るみになり
感情のたがが外れてさらに真実を自ら溢れさせる人物まで出てきてしまう。

最後には思いもよらない展開も待ち受ける。
夫婦だから仲がよいとは限らない。
夫婦だから全て知っているとは限らない。
自分が相手にとって一番とは限らない。

「知って知らぬふりをするのが長続きするコツなんです。」
と昔ある家庭円満の奥さまが言っていたことを思い出した。

皆既月蝕の夜はターニングポイントになるとも言われている。
この7人にとってどんな転機になってしまうのか。

結婚とは何か。夫婦として生きるとは何かを
改めて考える作品だ。

おとなの事情 http://otonano-jijyou.com/ は
3月18日(土)より新宿シネマ・カリテ他で全国公開。
東海地区では3月18日(土)より名古屋新栄・名演小劇場、
4月29日(土)より岐阜・CINEX、5月に三重・進富座で公開。

-EntaMirage!, Movie

おすすめの記事はこれ!

ikiro3 1
沖縄戦時中の事実を知る (映画『生きろ 島田叡ー戦中最後の沖縄県知事』)

アジア太平洋戦争末期。すでに日本軍の敗色が濃厚だった1945年1月31日、一人の ...

sukutte1 2
金魚も彼女もすくいたい(映画『すくってごらん』)

映画紹介を耳で聴いてみませんか? stand.fmでCafemirage Rad ...

アーラ映画祭-1024x924 3
アーラ映画祭は3月20日から22日に開催!

アーラ映画祭が岐阜県可児市文化創造センターアーラで開催される。 今回は3月20日 ...

main 4
『his』撮影地でドライブインシアター開催!

かつて恋人同士だった男性2人の8年ぶりの再会から物語がスタートする映画、『his ...

IMG_20210117_204050 5
コケシに捧げる愛の歌?(映画『コケシ・セレナーデ』)

2019 年初の長編自主映画となる『みぽりん』がカナザワ映画祭2019「期待の新 ...

minori1 6
第46回CINEX映画塾『実りゆく』田中要次さん×八木順一朗監督トークショーレポート

第46回CINEX映画塾『実りゆく』上映&トークショーが12月6日岐阜C ...

konosekai_chirashi 7
ポストホロコーストで残された人々を描く(映画『この世界に残されて』)

2020年米アカデミー賞国際長編映画賞ショートリストに選出され、ハンガリー映画批 ...

no image 8
明けましておめでとうございます!

Cafe Mirageの記事をご覧いただいている皆様   あけましてお ...

burai 9
昭和から平成。裏社会を生き抜いた男の物語(映画『無頼』)

さまざまなアウトサイダーたちの姿を一貫して描き続けてきた鬼才・井筒和幸監督の新作 ...

©2020『喜劇愛妻物語』製作委員会 10
第45回CINEX映画塾『喜劇 愛妻物語』足立紳監督・代情明彦プロデューサー トークレポート

第45回CINEX映画塾『喜劇 愛妻物語』上映&トークショーが11月28 ...

title1 11
女ってなんでしょうね。(映画『タイトル、拒絶』)

『タイトル、拒絶』というタイトルがまず気になった。 「ワタシの人生に、タイトルな ...

onkyo1 12
そこは奇跡が起きる場所(映画『音響ハウス Melody-Go-Round』)

ビートルズがアビーロードスタジオを愛し、あの横断歩道を渡る写真のアルバムを始め、 ...

honki4 13
第43回CINEX映画塾 『本気のしるし 劇場版』上映&トークショー レポート

第43回CINEX映画塾『本気のしるし 劇場版』の上映が岐阜CINEXで開催され ...

mrsnoisy1 14
隣人はどんな人?(映画『ミセス・ノイズィ』)

集合住宅に住めば必ずいる隣人。 隣人との良好な関係を保つのも、生活をする上で大切 ...

©2019「ばるぼら」製作委員会 15
映画『ばるぼら』は大人のファンタジー(映画『ばるぼら』手塚眞監督インタビュー)

彼女は魔女かそれともミューズか。 都会の片隅で耽美派の小説家・洋介が出会ったばる ...

royal3 16
ホテルローヤルを映像化。武正晴監督のこだわりとは?(映画『ホテルローヤル 武正晴監督インタビュー』)

ラブホテルとは日常から切り離された場所だ。一種の別世界。ここでの二人の時間は他人 ...

goze1 17
瞽女として生きた一人の女性の物語(映画『瞽女GOZE』)

日本には、盲人ながら三味線や胡弓を弾き唄い、巡業を生業とした女旅芸人がいた。「瞽 ...