
じわじわきているインディーズ映画2本が名古屋で同時上映中!『センターライン』『さらば大戦士トゥギャザーV』初日イベントレポート
映画『さらば大戦士トゥギャザーV』、『センターライン』の名古屋上映が名駅のシネマスコーレで4月6日始まった。
この2作は映画祭で話題になったインディーズの作品だ。
初日のイベントをレポートする。
『さらば大戦士トゥギャザーV』シネマスコーレ上映初日イベントレポート
まず先に公開されたのは『さらば大戦士トゥギャザーV』。上映後の舞台挨拶は、松本純弥監督とシネマスコーレ副支配人・坪井さんとのトークから。
構想から10年、撮影にも5年かかった本作。「10年もかかってまでなぜ『トゥギャザーV』を作ろうと思ったんですか?」という坪井さんの質問に一瞬「えっ?」と反応した松本監督は製作の理由を語った。
「シンプルにこれを作りたかったからです。それ以上の込み入った事情はないんです。ヒーローものを作りたかったというより、自分の経験から出てきたもので、2009年にはこの作品のプロトタイプが出来上がっていてこれを作りたかったから作ったということなんです」

松本純弥監督
昨年、湖畔の映画祭企画での上映時はトゥギャザーVのスーツを着ての登場だった松本監督。今回は高速バスの荷物制限でやむなく断念。その代わりにファンの方から贈られたという劇中キャラクター・職業怪人カメレオールがデザインされたTシャツを着て作品をアピール。
その後、おやっさんこと白石清彦役の畠山智行さん、ジャーナリスト住吉和也役の原田達也さんが登場。
畠山さん
「僕らは5年間の間に何度も撮影が止まって。キャストでもいなくなった人もいる中で本当にこれがいい作品なのかどうかという不安視のままでいたので実際にシネマ・ロサさんで550人強の人に見てもらって本当に面白かった、よかったと言われたときになんかすごくうれしくて毎日出来るだけお客さんの声を聴きたいなと足を運んで劇場からの送り出しをさせて頂いたんですけど、最終日の翌日に疲れて動けなくなってしまって家で倒れていたんですよ。今回役者活動とは別に僕は音楽活動もしているんですが、それのライブとちょうど名古屋上映日程が重なって。同じタイミングで上映があるんだから来ないわけがないですよね(笑)。ライブがある日も終わってから間に合うなら来ようと思ってますのでよろしくお願いします」

畠山智行さん
松本監督
「撮影時の思い出ってありますか?」
原田さん
「僕は忘れたころに連絡が来るっていう(笑)。クランクインしたっていう連絡が来て、自分もそろそろだなって思っていたら撮影が止まって。最初に撮影したのはそれから半年後だったかなと。なのでつなぎ合わせないと記憶が辿れない状態ではあるんですが、やっぱり河原のシーンですね。河原のシーンは重要なシーンでもあるし、現場に行けばしっかりセットの墓標もたてられているし、いろんな思い出がありますね。今回の上映バージョンだとカットされてしまっているんですが、落ち込んでいる正がガバッと起きてドアをカン!っとするシーンはうまく行ったなあと思って。あれも結構好きなシーンですね」

原田達彦さん
松本監督
「あのシーンのセットの墓標は埼玉のダムかなんかで流木を拾ってきて、スタッフがいないので僕が車中泊して流木を積んで帰ってきて早朝からシャベルで穴を掘って木を1本1本後から来たスタッフとたてた感じでしたね」
原田さん
「僕ら役者は行って撮ってという感じだけなので本当にスタッフの皆さんの準備の状況がありがたかったですね」
畠山さん
「東京で上映した1週間で思い出すことが沢山あって。どれも思い出深いんですが、最初に撮った時に3.11ですぐに中止になって。1年かけてまた冬の時期しかとれないということで冬に撮ったけど事故が起きてまた1年。すごいスパンで3回ぐらい分かれているのでどれも思い出があるんですけど。一番初めに撮った喫茶店のシーンで。今は『カメラを止めるな!』で有名な上田監督もスタッフでいらして。撮影の1日目は晴れていたのに翌日は雨で、それではシーンがつながらないということで窓を黒い布で塞いだんですが、あれは靴がびしょびしょになりながら上田監督が塞いでいたんです。僕はそれを見ながら芝居していました。映画の好きな人が集まって作って。この作品にはほかにもいろんな監督もいらして、こないだ上映の時にお会いしたら「ここでカチンコ鳴らしていた者です」って挨拶してくださるんですが、いやいや僕よりあなた有名になっていらっしゃいますよっていう状況で(笑)。そういう仲間であの作品の出だしを作れたというのが、本当に映画好きが集まった愛がこの映画にも反映しているのかなと最近思っています」
松本監督
「この戦いはまだ始まったばかりです。まだ6日あります。やっぱりまだまだ他の作品も含めて知名度が少ないインディーズなので皆さんの声が大事なんです。「こういうヒーローものは見なくていいです」という声も今まで沢山聞いてきましたが、そういう方たちの心の扉を開けるには皆さんの声が必要なので友達に勧めていただくとか、SNSでつぶやいていただいたり、レビューサイトに書いていただくとかそういうところで声をあげていただいて、まだ観たことのない方に観ていただきたいです。今日はありがとうございます。最終日はカメレオールも来ますのでまた観に来てください。皆さま本当によろしくお願いいたします」

上映後サイン会でトゥギャザーVポーズで
『センターライン』シネマスコーレ上映初日イベントレポート
続いての上映は『センターライン』。上映後に主題歌を担当した小野優樹さんの弾き語りライブ、下向拓生監督とのトークが行われた。下向監督が憧れていたインディーズバンドのボーカルが小野さん。

小野優樹さん
小野さんに今回の映画の主題歌を書き下ろしで、必ず作品をイメージする色を入れて歌詞を作ってほしいとお願いしたという下向監督。それを小野さんは聞いた覚えがなかったそうだが、歌詞にはしっかりとその色が取り込まれている。小野さんが「なかなか難産だった」と制作の感想を述べた主題歌「シンギュラリティ・ブルース」は音楽配信サイトで配信中。

左:小野優樹さん、右:下向拓生監督
その後、弁護士・白鷺役の倉橋健さん、裁判長役の中嶋政彦さんが登場。撮影期間が1週間と短かったことから会っていないキャストもいたそう。そんな中、撮影秘話を明かしてくれた。
下向監督
「倉橋さんは他のキャストさんと会ってましたっけ?」

左:倉橋健さん
倉橋さん
「僕は結構会ってますよ。おかげさまで」
下向監督
「検察事務官の大鳥役の星能豊さんは撮影期間8日間の間の途中でクランクアップして。一番大変な法廷シーンが後半にあったんですけど出ていなくて。金沢に住んでいるので金沢に帰ってしまいました。予算も時間もない中、効率的にスケジュールを組んだのでこうなったんですが」
倉橋さん
「撮影はちょうど2年前のゴールデンウィークを中心に撮ったので実質1週間ぐらいで本当にテンポよく順調に進んだのであまり覚えていないんです(笑)。むしろその後のこの上映ロードの方が長くて。現場と言えばやっぱり裁判長じゃないでしょうかね」
下向監督
「現場で一番NGが多かったのは裁判長でしたね。どうでしたか?法廷シーンは」
中嶋さん
「いいわけになってしまうんですが、私は役者ではなくて自主映画の監督をしておりまして。撮影の人手不足の時に脇役とかエキストラのお手伝いをしているんですね。今回も脇役で裁判長役だというのでいいですよと簡単に返事したんですが、台本をもらったらセリフは多いし、長いし。これはヤバいと思って本番まで必死でセリフを覚えました」

中嶋政彦さん
下向監督
「法廷のシーンでは書類を読み上げるので小道具の書類自体がカンペになっていてそのまま読めばいいんですが、読んでいるのに噛むっていう(笑)」
倉橋さん
「法廷の場所を借りている時間の限界が迫っていてもう帰らなきゃいけないというのに、最後のシーンが裁判長のシーンで。噛まないでくれ!って僕らは帰り支度をしながら見守っていたという(笑)」
舞台挨拶も締めが近づいたところでロケ地一宮の方に向けての倉橋さんからの感謝の言葉。着ていたパーカーを開けると一宮市を通る国道22号の標識をあしらったロゴが。
倉橋さん
「本当にこの映画というのは様々な場所の方にご協力いただきました。決して一宮に限ったことではございません。私の個人的な主観なんですが本当に一宮市様には感謝しております。ありがとうございます」
と深々とお辞儀して感謝。
下向監督
「一番初めにこの作品を評価してくださったのが一宮市様で、宣伝してもいいですよって言ってくださったんです。足を向けて寝られません。なので僕はすぐにベッドの位置を確認しました。4月20日から東京のシネマ・ロサというところで2週間上映します。そちらの上映にも沢山足を運んでいただきたいのでぜひ東京のお友達に前売りを買って行ってほしいと勧めてください。東京の方にも楽しんでいただけるといいなと思っています」
映画『センターライン』、『さらば大戦士トゥギャザーV』は名古屋名駅シネマスコーレで4月12日(金)まで夜18時、20時の回で交互に上映。
詳しい上映スケジュールはシネマスコーレのHP参照。
どちらか1作品を観るともう1作品が200円割引になる特典あり。
映画『センターライン』は4月20日(土)からは東京池袋シネマ・ロサで2週間上映される。
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