ようこそ岐阜へ。今年も秀作揃い 第6回MKE映画祭 レポート
2018/06/18
第6回MKE映画祭が6月9日岐阜県図書館多目的ホールで行われた。
上映されたのは全国から募集された作品の中から16作品。
上映順に振り返りたい。
ある視点からみえるもの
1.インスタントカメラ(15分)
使い捨てカメラを覗くと友人との楽しかった過去を思い出す。使い捨てカメラには枚数に限界がある。シャッターが押せなくなったとき現実に戻った主人公が見つめるものとは…。
鈴江誉志監督
「この作品は大学一年生のときに思い付いた作品です。せっかく出来た友達が大学をやめてしまったり、自分が大学生活に馴染めずにいたそんな頃に使い捨てカメラを持ち始めて友達って何だろう?限りあるものって何だろう?と考えたときに思い付きました。自分の中にある微かな優しいあたたかい記憶を胸に前を向いて歩いていく。そういう姿を描きたくて作品を作りました」
2.眠れない夜に(5分)
道の真ん中で眠る男と通りがかった女。ワンシチュエーションで撮影された短編。そこがどこかもわからないし、男女の素性もわからない。何事も起こらないのが逆に奇妙な後味を残した。
山川智輝監督
「お酒とか不眠とかに関する印象的な写真をいくつか見たことと路上やお酒の席で酔っ払った人達にインスパイアされて作りました。岐阜出身で今も岐阜に住んでいまして。本編を観ると全く岐阜感ゼロですが大垣で撮影しています。演出面としては気持ち良さそうに寝てほしいとか、羨ましそうな表情をしてほしいとかは言いましたが後半の長回しのところは役者の方たちに自由にやってもらっています。カメラも自分で回していますが細かく動きは決めずに撮影しました」

(左)鈴江誉志監督 (右)山川智輝監督
ポップな色とリズムに引き込まれる
3.Cで失神(10分・平野正和監督)
なかなかセンセーショナルなアニメーションだった。日本にある五十音順の席順の考え方は海外でもあるのかと感心しつつ、言葉遊びや一発逆転な発想の面白さも感じた。
独特な色使いがこの作品の世界観を作っている。
4.叙々苑へ行こう(8分)
叙々苑=普段行けない高級焼肉屋というイメージからつけられたタイトルだが個人的にセイラムライトを女性は吸わないという決めつけも好きだ。台詞がリズムに乗って紡がれていてちょっと水曜日のカンパネラを思い出させる。
加藤雅大監督
「何もかもはじめての状態で、とりあえず一人で何もわからず作ったんですがいくつかの場所で上映していただいてます。ちょっとでも、1ミリでも伝わるものがあればいいなと思っています」

加藤雅大監督
心が揺れてあたたかくなる
5.田吾作どんのいる村(20分)
ショートムービーだと撮影地をPRするために製作されることもある。内容が田舎の昔ばなしのため村おこし的なものかと思ったら全く架空の作り話だった。シナリオがしっかりしており、ドラマとしての完成度が高い。田吾作を演じた主演の加藤大輔さんの芝居、撮影途中で亡くなられたJSCの寺田緑郎さんが捉えた自然が美しい。
猪浦直樹監督
「新潟から参りました。新潟県内で一年間春夏秋冬撮影しました。地元の方から農具や服を寄付していただいています。録音・整音は岐阜出身の臼井勝さん、撮影は『舞妓はレディ』等を撮影された寺田緑郎さんなんですが秋を撮り終えた時点で急逝されまして実質遺作となっています」
加藤大輔さん
「台本をもらったら台詞が全くないんです。ど素人の自分にこんな役出来るんだろうかと不安だったんです。今見てもこうすればよかったなと思うところは一杯あるんですがスタッフの皆様のおかげと舞台になった新潟の自然が本当に美しくてそれに自分を重ねていった感じです。とてもシンプルなお話ですが何かを感じてくださればいいなと思います」

(左)加藤大輔さん(右)猪浦直樹監督
6.私とわたし(5分)
上京したが失敗続きの女性を呼び止めて食事に連れていってくれたのは雰囲気の全く違う自分だった。垂井町出身の大須みづほさんを起用した佃監督の短編は大須さんが8役。女優さんの可能性を見せつつ観る人も応援してしまう。ショートフィルムの大事な要素である分かりやすさ、伝えたいものがはっきりしていた。
佃尚能監督
「(猪浦監督の発言に続いて)一年中かけて撮影できるってうらやましいですね。本当に。主演の大須みづほは岐阜県垂井町出身です(マイクを渡す)」
大須みづほさん
「私は岐阜県不破郡垂井町出身です。この映画を岐阜で上映したいなと思っていたので本当に本当に嬉しいです。一人8役で大変だったのは撮るごとにヘアメイクも衣装も変えないと行けないので撮っている時間よりも着替えている時間の方が多いんではないかと思うほどでした。2日間で撮るハードスケジュールでした。岐阜のロケで映画を撮りたいなと思っています」

(左)大須みづほさん (右)佃尚能監督
部屋の中。家族のひととき
7.アパートメントコンプレックス(17分)
調布の団地を舞台に描かれる家族の7つの物語。
登場人物はほぼ母・兄・妹しか出てこないが展開が面白くてツボにはまった。
団地の棟数を話数に合わせて入れてきていたが、聞いたところによるともっとたくさんある団地なんだとか。
山村もみ夫。監督
「監督とテーマソング歌唱担当です。(『いのちの価値は』に引っ掛けて)いのちの重さをテーマに作ってみようと思いましてアパートメントコンプレックスという作品を作ってみたんですけど(笑)そんな思いが伝わったかどうかはわかりませんが伝わればいいなと思って岐阜まで来ました。最後蛇足のようについていた7話目は北海道に招待していただいたときに後から作ったので要らないかなと思いつつ。北海道ではあるあるな話なのでうけたんですよ」

山村もみ夫。監督
8.いのちの価値は(5分)
しっとりとした作品かと思いきや後半シュールを含んだコメディになっていった。オロナインをもじったシナナインの威力が絶大。この夫婦この関係をいつまで続けるのか…。と考えるとかなりホラーでもある。
森本諒監督
「真面目そうなタイトルなんですが真面目じゃないのであまり深い意味を考えすぎずに観ていただければと思います。実は僕、(『アパートメントコンプレックス』の)山村監督の作品を大和映画祭で観てからファンで。いろんな映画祭に出ておられる山村監督の作品の後で自分の作品が上映されるというのは非常に光栄でした。ありがとうございます」

森元諒監督
前後が気になるストーリー展開
9.ベルガマスク(10分)
ゾンビがはびこり荒廃した世界を逃げ続ける男女二人に迫る別れ。ここまではどんな話だったのか、これからどうなっていくのかが気になる作りの作品だった。
島田力規王監督
「日本大学芸術学科から来ました。初めて映画を作るときに面白いものを作りたいなと思っていたら有名な監督は初めはゾンビ映画を作ったと聞いて。僕も将来有名になるならゾンビ映画を作った方がいいかなと思って作りました。色々調べたんですがショートフィルムで作られている作品の中でもゾンビ映画は多くて。個人的に僕が感動したのが主人公が死ぬ作品だったのでそのセオリーにそって作ってみました」

島田力規王監督
10.カップケーキ(17分・張大尉監督)
いじめられているところを救われた男子高生は救ってくれた女子高生に恋をする。バスケットボールのシーンのアジアンテイスト色な映像美が凄い。そして一転男子高生のVRの世界への展開に驚いた。先が本当はあるそうなのでこれは最後までみたい。
荒井智晴プロデューサー
「この作品は日本と中国の合作です。監督の張大尉監督は私が中国に留学していたときの同期です。いつか能力をお互い高めたら一緒に作品を作りたいねと言っていてやっと去年の夏にそれが実現しました。監督は28才です。この年代の中国の人達は日本の文化が大好きです。凄く影響を受けていて監督が大好きなエヴァンゲリオンやドラえもんからイメージした造形で作品が出来上がりました。実はこの作品には続きがありまして長いバージョンもあります。この映画祭に出品したくて苦渋の選択で短くしています」

荒井智晴プロデューサー
登場人物が真剣であるほど笑えてくる
11.二者択一(9分)
去年グランプリを受賞した名倉監督の四字熟語シリーズ。花火大会というイベントを舞台に男子には究極の選択とそれを見越していそうな女子の姿が描かれる。花火って本当に大イベント。そして男子のストレートな欲望が面白い。
名倉健郎監督
「今僕たちは四字熟語を使っての短編シリーズを製作していますがその中の一作品です」
森山龍之介さん
「この作品はこれからの季節にぴったりの作品になっていると思います。男として葛藤と言いますか…。わかっていただければと思います(笑)。今年スイカを食べたときにどっちの女性を思い出すかで皆さんの捉え方が変わってくるのかなと思います」

(左)名倉健郎監督 (右)森山龍之介さん
12.動物大怪獣コアラ(2分)
これは何がなんでもコアラということにしておこう。ゴジラをイメージしたオープニングとセットの壊され具合がたまらない。役者陣の真剣な芝居が更なる笑いを生む。いつもぶれない佃監督作品に爆笑だった。
佃光監督
「ちゃんとしてない方の佃です(笑)。今日は急遽篠崎さんにも登壇していただきました」
篠崎雅美さん
「最後に大爆笑が起こってよかったですねえ(笑)。今日は珍しい名前なのにダブル佃監督が同じ会場にいることに感動しております。」

(左)佃光監督 (右)篠崎雅美さん
思い入れがすごすぎる!
13.CRYING BITCH (15分・津野励木監督)
ホラーものに佐伯日菜子さんが出ている時点でもう満足だが期待した方面の熱演で感動。怖いけどなんだか笑えてしまうところも。こういう作品好きだ。
春園幸宏エグゼクティブプロデューサー
「タクシードライバーも演じておりました春園です。元々映画好きで、ホラーが好きでどうしても映画が作りたくて作りました。わたし以外はみんなプロでお金がかかりました(笑)。佐伯さんも私が口説きました。笑ってほしいところで笑っていただけて本当に嬉しかったです」

春園幸宏エグゼクティブプロデューサー
犯人はセーラー服(4分)
セーラー服とはどこまでをいうのか。ブレーザーはセーラー服ではない。そのこだわりをしっかりと見せてくれる本作。女性としてもうらやましい制服&忍者コスプレが眼福でした。
繁田健治監督
「僕の周りでセーラー服というのは女子高校生の制服全般だと思っている人がいて。その事を説明するとマニアじゃないからと怒られるんですよ。刑事ドラマを作ったとき、セーラー服というとどこまで絞りこむのかと思いついて作りました。自分の娘のセーラー服を出してほしいというご要望を頂いたので津田さんに着てもらって出てもらいました」
津田菜津美さん
「ひたすら恥ずかしかったですね。制服が監督のこだわりでお芝居をしているより着替えている時間の方が多かったです。いろんな作品に出させていただいていますがこういう作品は初めてで斬新で楽しかったです。思いの外アップが多くて恥ずかしかったです。」

(左)繁田健治監督 (右)津田菜津美さん
思い出すとみえてくるもの
15.なぎさ(18分・古川原壮志監督)
プールサイドで話したクラスメイトの女子との思い出が描かれる。空の青、プールの青。切ない夏の思い出が台詞は少な目な演出で描かれていた。いなくなった女子生徒の思い出の中での表情が美しい。
16.LABEL(8分)
全編英語。自分がどうしても相手に持ってしまうイメージ。いわゆるレッテルは一方的な思い込みであることをしっかりと伝えてくれるエピソード。心温まる作品。
小林立依監督
「私は2年前までオーストラリアのシドニーにいたんですが大学院の卒業制作として制作したものです。キャストもスタッフも現地の人達で日本人は私一人だけでしたが日本ではクラウドファンディングで助けていただいています。コミュニケーションをテーマに描きましたが誰もがイメージだけで決めつけてしまってコミュニケーションを取らないということがあると思います。オーストラリアで英語でコミュニケーションがうまく取れなかったときにミスジャッジされた自分の経験が投影されています。」

小林立依監督
MKE映画祭の賞は誰でも設置することが出来るので自分で賞を送りたいという方は来年応募してみてほしい。
グランプリは観客の投票で決められる。
開票中には協賛の企業からの景品がプレゼントされるジャンケン大会も開催された。

結果は以下の通り
いつかこの映画を思い出しきっと笑ってしまう賞 『CRYING BITCH』
最優秀新人賞 『ベルガマスク』 島田力規王監督
STEP賞 『アパートメントコンプレックス』
TAEKO賞 『動物大怪獣コアラ』
君こそプリンセスブルーだ!女優賞 『私とわたし』大須みづほ
プリンセスブルーの生存作戦大賞 『カップケーキ』
ブレイクスルー賞 『LABEL』
隆盛賞 『私とわたし』
Director of Directors賞 『犯人はセーラー服』繁田健治監督
そしてグランプリ(作品賞)は『私とわたし(佃尚能監督)』
表彰の際には主演の大須みづほさんが仕事で不在。佃尚能監督が大須さんの目線で動画を撮りながらの表彰されるというパフォーマンスも。
佃尚能監督
「たくさんの賞をいただきましてありがとうございます。しっかりと受賞したことをキャスト、スタッフに伝えます!」

三冠の賞状とトロフィーを手にした佃尚能監督
世の中には今、沢山の自主映画がある。見てほしいのに上映する機会がないと
思っている方来年は是非この映画祭に応募してほしい。
観てくれたっていいじゃない。
これがこの映画祭の思い。岐阜の映画好きがまた来年も楽しみに作品を待っている。
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